【お姉様のパンティー被って読書する】
…………コトちゃん……?
自室の扉を開けた次の瞬間、私の眼に飛び込んで来たその光景に思わず言葉を失ってしまう。
「すぅ……はぁ……すぅ……。
……あっお姉様、どうなされました?」
……えっと、どうしたのって聞きたいのは私の方なんだけど……とりあえずコトちゃん?
「はい?」
……なんで、私のパンツを頭に被ってるの……?
「読書のためです」
読書!? なんで読書なの!?
……えっ、読書と私のパンツになんの関係が……!?
「この前読んだ本に、被ると読書がやりやすくなるパンティーがあると書いてありました。
ワタシのデータには無いものだったので、実際に試そうと思いまして」
とんでもないデタラメ本ね……コトちゃんに悪影響だわ。コトちゃん、そんなのウソっぱちだから真似する必要はないわ。
……とりあえず、その本を出しなさい。そんなしょうもない本でも、お風呂の温度上げくらいには役に立つんじゃないかしら?
「お姉様、本は燃やさないでください。
それに、ワタシはあの本に書いてあることは間違いではないのではと考えています」
……えっ、なんでなの?
「お姉様のパンティーを被ってから、ワタシのパラメータが安定的に高水準を示しています。
今のワタシなら、どんな本でも瞬く間にインプット出来ると思われます」
どういうことなの……。
「集中力の増強効果……これがお姉様のパンティーの効果……。着け心地も丁度良いですし、常用しても良さそうですね……」
……コトちゃん……?
「お姉様のパンティーは肌触りも良くて……。
……すぅ……はぁ……、香りもとても素晴らしくて……被っていてとても落ち着きます……。
お姉様のパンティーというものはとても良いものですね……!」
…………コト…………?
「……あっ、そのコトって呼称でワタシのパラメータ値の急上昇を確認しました。なんだか、コアパーツの周辺の温度上昇も感じられます。
お姉様、もう一度、コトって呼んでくれませんか? もう一回だけでもいいのでぜひ」
…………コトルシィ? ……そこに直りなさい。
「……えっあ……はい……お姉様」
――その後行われた、小一時間にも及ぶお説教を、コトちゃんはパンツを被ったまま正座で受け続けるのであった。
――――――
【ある日のお姉様のお悩み】
……はあ……どうすれば良いのかしらねえ……。
どうすれば……どうすればー……あっイルちゃん丁度良いところに、ちょっと聞いて欲しいのよイルちゃーん。
「……はあ……さっきからワザとらしくアピールして、ちょっと気が散るんだけど……で、どうしたんだい?」
うーん……あのね、最近のコトちゃんがなんかこう……グイグイ来るのよねえ……。
「そうなのかい? 正直、初めも今もあいも変わらずお姉様お姉様って感じがするけど……」
そうだけどそうじゃなくてねえ……距離感がホントに近いというか……なんかちょっと、様子がおかしいように思えるのよねえ……。
この前も私のパンツ頭に被ってたし……。
「……あー、あれは衝撃的だったね。
ソフィが珍しくお説教なんてしてたから気になって覗いてみたら、パンツ被りながら正座して俯いてるトルシィがそこに居たんだからね……正直自分の目か頭を疑ったよ」
まあコトちゃんに他意は無いみたいなんだけどねえ……でも時々、ちょっと熱っぽい眼をしてる気がするのよね……。
「……うん、それってそのまんま、トルシィに恋されてるんじゃないのかい?」
……やっぱり、イルちゃんもそう思うかしら?
「そう思うも何も、そうだとしか思えないんだけど……ソフィは嬉しくないのかい? 意外だね」
うーん、そういう訳じゃないというか、コトちゃんの気持ちはとっても嬉しいんだけどねえ……。
でもちょっと、こういうのには慣れてないというか……だって、シュトさんもイルちゃんもグイグイ来ないから……。
「……まあそれはさておき、慣れてないだけならそんなに悩む必要も無いんじゃないかい?
結局のところ、ソフィもトルシィの好意は受け入れられるんだろう?」
そりゃもちろんよ! 大事な大事なかわいいコトちゃんが、お姉ちゃんのこと本気で大好きって思ってるなんて……。
もう嬉しすぎて堪らなく好き好きってなっちゃう。
「うん、その意気その意気。
……じゃあボクはもう戻ってもいいかい? まだ研究の途中なんだよ。惚気けたいなら本人の前でやりたまえ」
……はーい、ありがとねイルちゃん♪ 相談して良かったわ!
私の言葉を聞き、どういたしましてと言うように背を向けながら手を軽く振るイルちゃん。
……やっぱり、こういうクールなところがイルちゃんの良い所よねえ。なんでもスッパリ言ってくれるからね。
それに、何だかんだ言ってちゃんと付き合ってくれるし……だから相談もしやすいのよねえ。
……さあ、それじゃあ私も張り切っていこうかしらね!
――――――
【おやすみコト】
あまり寝付けなくてお水を取りに行った帰り、コトちゃんの部屋から薄っすらと明かりが漏れていることに気付く。
「すぅ……すぅ……」
半開きのドアからそっと覗いてみると、本の積まれた机に突っ伏しながらかわいらしい寝息を立てるコトちゃんが……!
か……かわいい……!
でも、このままだとコトちゃん冷えちゃって、風邪引いちゃうかもしれないわね……ちょっと部屋にお邪魔しましょ。
……コトちゃーん、そんなとこで寝てたら風邪引いちゃうわよー?
「…………んぅ……」
……コトちゃん起きないわねえ……。
……つんっ……ふにふに…………ふふっ柔らかい。
「……うぅん、おねえさま……ふふっ……」
……寝言もかぁわい〜!
もうコトちゃんってば、かわいい100%で出来てるんじゃないかしら!
……それにしても……ふふっ、夢の中でも私のことを見てくれてるのねえ……。
あなたの心の中には、いつだって私がいるのかしら……。
「……おねえさま、……もっと……ワタシを、……」
その言葉に答えるように、コトの青い髪をそっと撫でる。何度か髪を撫でていると、気持ちいいのかコトの表情がなんだか柔らかくなっていった。
「……んっ……あったかい…………」
私の胸の辺りにも、温かなものが広がってる感じがする。
……こんなにも想われてるなんて、私はホントに幸せ者ね……。
……ごめんね、コト。あなたの想いに、気付かないフリなんてしちゃって……。
……でももう大丈夫。私、もうあなたの想いから逃げないから……。
……だって、私も……あなたのことが――。
――――
よいしょっと……。
抱きかかえていたコトちゃんを、静かにベッドに降ろす。
あんなとこで寝てちゃ風邪を引いちゃうわ……やっぱり、ベッドで寝るのが一番よね。
「…………すぅ……んぅ…………すぅ……」
うんうん、どうやら起こさないで運べたみたいね……よかったあ。
……うん、そうね……せっかくだし今日は、コトちゃんと一緒に寝ちゃおっかな……。
「…………おねえさま…………ずっと、ワタシを……みて…………」
……ええ……いつでも、いつまでも……私はあなたのそばにいるわ……。
…………おやすみ、コト……。