今日は自分たちにとって凄く特別な日。これは壮大に祝わなければということで、現在この我が家では仲間たちによる賑やかなパーティが開かれているのだった。
色とりどりの飾り付け。美味しそうなごちそう。楽しげな皆の声。
……そして、グラスに注がれ続ける沢山のお酒。
パーティが盛り上がりごちそうやお酒が無くなるにつれて、次第に皆の正体も無くなっていくのだった……。
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【ソフィの場合】
「……ご主人様ぁ……」
皿も酒瓶もかなりの数が空いた頃、ソフィから滅多にないご主人様呼びで声を掛けられた。
相当呑んでいるのだろう。これまた滅多にない真っ赤な顔をしているソフィは、前のめりになって自分に顔を近づけた。
「わたし……いっぱい頑張ったんですよ……?
飾り付けもしたし、盛り付けもしたし……テーブルの用意も……」
普段ならすることなど絶対にない、私頑張りましたアピールをするソフィ。
常に皆のことを思い、そっと気遣い、さり気ない気配りを欠かさない……そんなソフィが、自分が自分がと主張しているのだ。中々の正体の無くし具合である。
……もっとも、いつも頑張ってくれているソフィには普段からこれくらい言って貰っても構わないというか、むしろどんどん言って欲しいと思っているのだが。
「だからご主人様ぁ……いっぱい頑張ったわたしを、いっぱいいーっぱいほめてください!」
身を乗り出してバンっと手を突き、褒めて褒めてと跳ねるソフィ。
その可愛らしい姿に胸を温めつつ、幾度も突き出される頭を撫でながら、心からの言葉を惜しげもなくソフィに贈った。
「えへへ……ご主人様ありがとう! わたし、これからもいーっぱい、ご主人様のために頑張るから、これからもずっとみててね……!」
温かな言葉とその溶けそうな笑みをかみしめながら、幾度もソフィを撫で続けるのであった。
――――――
【イルミカの場合】
「……いやはや、ソフィが泥酔してる所を見るのは初めてだったけど……まさかこんな感じになるとは想像もしてなかったよ」
ひとしきり頭を撫でて貰い満足したソフィが再び席に着くのを見計らって、イルミカが珍しい物を見たという表情をしながら話し掛けてきた。
まああまり言ってやるなよ? お酒の魔力は人から話を聞く時が一番ダメージを与えるのだから。
「……いや、流石にそんな非道なことをするつもりは無いよ。
……シュト相手なら別だけどね?」
普段はあまり呑まないイルミカも、今日ばかりはかなりの本数を開けていたと思うのだが……どうやらイルミカはいつも通りのままなようだ。
……耳はかなり赤くなっているが。
「まあボクくらいになれば、アルコールのコントロールなんてお茶の子さいさいってやつだね。うんうん」
自分でしっかりと把握してるのは流石だな……お酒は呑んでも呑まれるなとは何とも含蓄のある言葉である。
「そうそう、呑まれるな呑まれるな。ホントに大事だね。
……よいしょっと……あっちょっとここ借りるよ」
イルミカは突然立ち上がると、ここを借りると言い出し何故か俺の膝の上に座り込んだ。
……あの……イルミカさん……?
「なんだい? ちょっとこの席を借りただけじゃないか……今日はせっかくのパーティなんだから無礼講と行こうじゃないか」
イルミカとは無礼講が出来るほどかしこまったことも、かしこまられたことも無い気がするのだが……いや、そうじゃなくてだな。
なにゆえ膝の上に……?
「何でも良いだろう。ケチケチしてないでシュトもパーッと行こうじゃないか」
……ははーん、貴様さては酔っておるな。
シラフな顔して、その実イルミカも相当正体を無くしいたようだ。
何が楽しいのか鼻唄混じりに身体を揺らすイルミカ。
「そうそう、うだうだ文句言わずに大人しくボクの言うことに従ってればいいのさ♪」
楽しげなイルミカの自慢の真っ黒な尻尾でぺちぺちと叩かれながら、いつもより積極的で少しワガママなイルミカに振り回されていくのだった……。
――――――
【コトルシィの場合】
「……お姉様もヨルも大変なことになってますね」
……なんだか、いつもの何十倍も疲れた気がする……。
……コトルシィも……いや、何でもない。
今日はパーティなんだ、コトルシィも好きに楽しんでくれ……。
「マスター、心配は御無用です。
アルコールの摂取量・限界量はしっかりとデータに記録しています。
なのでこのワタシがオーバーヒートを起こす可能性は0%……これ以上マスターに負担を掛けることなど絶対にありません。
むしろワタシもお手伝いします。特にお姉様のお世話とかお姉様のお世話とか」
コトルシィ……! ありがとう……ありがとう……。
コトルシィの何とも頼りになる言葉に思わずじーんと来てしまった……後半欲望が漏れていた気がするのはまあ気にしないようにしよう。
「なになに〜? わたしのこと呼んだかしら〜」
「あっお姉様!」
……酔っていても地獄耳は変わらないようで、ソフィが千鳥足でこちらへと近づいてきた。
愛しのお姉様が来てくれたことでコトルシィは顔を輝かせているが、自分には嫌な予感しか感じられずにいた。
「ふふ〜コトちゃんも楽しんでるかしら?
お酒もいーっぱいのんでいいのよ? ほら、どうぞ♪ どうぞ♪」
「ありがとうございますお姉様っ!」
ソフィからなみなみ注がれたグラスを受け取ると、コトルシィはお姉様が注いでくれたお酒だと嬉々として飲み干していく。
……そしてソフィは、その空いたグラスに何度でもお酒を注ぎ続ける……。
「えへへ……いいのみっぷりねコトちゃん〜♪」
「お姉様の注いでくれたお酒ならいくらでも飲めます。いくらでもおかわりします……!」
「うれしいこと言ってくれるわね〜もぅ、お姉ちゃんがんばっちゃう!」
……そうしてコトルシィは永遠に無くならないお姉様のお酒を飲み続け……やがて、強制終了(シャットダウン)した。
「……あれ? コトちゃんねちゃった……? じゃあかわりにシュトさーん……?」
潰れてしまったコトルシィに合掌しつつ、揺らめきながら迫るソフィという現実に目を瞑るのだった……。
――――――
【フラニカの場合】
「………………じーっ……」
……フラニカは駄目だ……お酒は20歳になってからという言葉がとある国にあってだな……。
「しゅー様、メノは人じゃないからダイジョウブ。
……それに、もう20歳になってる……だから、いい……でしょ?」
……そうか、見た目が変わらないから意識してなかったけどそういえば20歳も超えてたなフラニカは……。
……いや、でも人じゃないからこそまだ駄目という可能性も……。
「しゅー様って、心配しょー?」
……そうだな、少し心配し過ぎなのかもしれないな……アルコールが回ってる所為か、何故だか疲労が溜まっている所為なのか……。
仕方ない……と呟きながら、グラスに度数の低いお酒を少量注いでフラニカに渡す。
「……おぉ、これがお酒……ふしぎなニオイ」
フラニカは酒に慣れてないんだから、とりあえずは少しずつにしておきなさい。
「うん、わかった……ちょびっとだけ、ちょびっとだけ」
好奇心を抑えきれない様子で恐る恐るグラスに舌を伸ばすフラニカ。
なんとも微笑ましいその光景にほっこりとしながら見守っていた。
「……ちかくだと、ニオイ、さらにクル……なんか、ニオイだけでふわふわする……んしょっと」
しばらくは頑張って舌を伸ばしていたフラニカだったが意を決してグラスを傾けた。
……フラニカ、どうだ……?
「……………………」
……あれ、フラニカ……?
……大丈夫か……? フラニカ?
「………………すー……すー……」
…………なん、だと……? もしかして、寝てるのか……!?
……まさか、あのひと口で……酔い潰れたのか……?
お酒に弱いというにも限度というものがあるのでは……?
そんな異次元的な弱さなんてありえるのだろうか……いや、フラニカは邪神的なサムシングの存在だ……きっとありえない話ではないのだろう……。
それに、邪神として考えれば20歳程度など赤子も同然な年齢に違いない……早過ぎたんだ……。
「…………すー……すー……むにゃ……もう、……たべれな……むにゃ……」
……典型的な寝言を呟きながら気持ち良さそうに眠るフラニカを見ながら、二度とフラニカにはお酒を呑ませないようにしようと心に誓うのであった。
――――――
ソフィとイルミカの大暴走……完全に沈黙したコトルシィとフラニカ……何とも悲惨な状態になってしまったパーティ会場……。
……そして唯一残った俺は、大暴走組の集中砲火を受け疲労困憊となってしまった……ああ、なぜ自分は酒に耐性があるのだろうか……他の二人のようにリタイア出来ないのが恨めしい……。
……ええい! もうヤケだ!
こうなったらもう! 飲んで呑んでノミまくってやる!!
「よっ! ご主人様いいのみっぷり!」
「ほらほら、まだまだお酒はいっぱいあるから、ボクが注ぐからほらほら」
よしきた! のむぞのむぞのむぞーー!
――そうして、夜は更けていき……。
……二日酔いの頭に輝く朝日を響かせながら俺たちは、めちゃくちゃになったパーティ会場の中心でああやらかしたと一同に呟くのだった……。