エヘ狂猫の日誌集   作:エヘ狂信者の猫

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百合の日のソフィとコトルシィ

「お姉様お姉様!」

 

 ノックの響いた自室の扉を開けると、一冊の本を抱えたコトちゃんがわくわくを抑えきれないみたいな眼をして立っていた。

……コトちゃん、また本で新しいことを読んで覚えたのね。

ふふっ、今日はどんなことを知ったのかしら?

 

「はい……! お姉様、今日が何の日だか知ってますか?」

 

 ……んー……? なんだろう……全然分からないわね……。

 

「実はお姉様、今日は百合の日とされているらしいんですよ」

 

 ……百合っていうのは、お花の?

 

「誕生花? というものがあるらしいです」

 

 へえ、そんなものもあるのねえ……百合の花ってとても綺麗よね。

……うん、あっちの意味の百合な訳はないわよね。

 

「そして、それが転じて女性同士での恋愛の日でもあるらしいです」

 

 ……ああ、やっぱりあっちの意味でもあるわよね……。

それで、その本はやっぱり……?

 

「はい、ヨルの本棚から拝借した女性同士の恋愛を描いた漫画本です」

 

 ……イルちゃん、そんな本まで持ってたんだあ……ふーん……。

それで、コトちゃんはその本を持ってきて、……私と何をしたいのかしら?

 

「それは……。

……お姉様と、この本に書かれてることを一緒にやってみたいです……。

ワタシは、お姉様が好きです……これが百合と呼ばれるものであると判断しました。しかし、ワタシは百合というものを完全には理解し終えていません」

 

 ……だから、私と一緒に試して、百合について理解したいのね?

 

「はい……ダメ、でしょうか……?」

 

 ……そう、ね……。

…………もちろんオッケーよ! やりましょう、コトちゃん!!

もういっぱいいっぱいコトちゃんとイチャイチャしちゃうわよ〜!!

 

「……お姉様……! ……はい!」

 

――――――

 

 ベッドに腰掛けて、二人で百合の本を覗き込む。

……なんだか、こういうこと自体がイチャイチャって気がするわね。

 

「……まずはこの、一つのマフラーを二人で着けるっていうのはどうでしょう」

 

 マフラーなら確かあそこに仕舞ってたわね……早速やってみましょ♪

 

「――これは、……近いですね」

 

 ……うん、顔がとっても近いわね……。

ここまで近かったら、コトの表情も、息づかいも、ぜーんぶ丸わかりね……♪

 

「……お姉様のも、よく分かります……」

 

 ふふっ、やっぱり本に載ってるだけあってとってもドキドキするわね……あったかい……。

 

「体温の急激な上昇を感知しています。これも、お姉様とやっているのが原因でしょうか……とても温かいです」

 

 …………というより、こんな時期にくっついてマフラーなんてしてるからじゃないかしら……梅雨とは言ってももう夏よ?

 

「…………それも、そうですね……」

 

 ……見るからに表情が曇るコト……なんか、悪いこと言っちゃったかも……ごめんねコト。

あ、それでも……コトと一緒にこうしててドキドキしてるから温まってるのもあると私は思うわよ?

 

「……はい、ワタシもそう思います……♪」

 

 ……それじゃ、名残惜しいけど次のもやってみましょ?

 

「――次は、……手を繋いで体温を確かめ合う、というのはどうでしょう……?」

 

 それ、すっごく憧れるやつ……!

いいわよね〜なんだか愛し合ってるって感じしちゃう……!

やりましょう! 今すぐやりましょう! いっぱい確かめ合っちゃいましょ!

 

「……すごく積極的ですねお姉様……でも、ワタシもとても興味があります。やってみましょう……!

……えっと、手を繋ぐのですよね? こうでしょうか?」

 

 そっと手を差し伸べて握手をするようにギュッとするコト……んー、やっぱり最初は分かり辛いわよね……。

……そうじゃなくてね、……こうやって握るのよ?

 

「…………あっ……」

 

 コトの手を広げさせて、自分の手とコトの手を合わせて指を絡めるようにそっと握る。

コトにとっては初めての体験だったせいか、身体をこわばらせて顔をほんのりと赤く染める。

 

「…………この手の握り方、なんだかお姉様と深く繋がれているという気がします……」

 

 そうね、いっぱい繋がっちゃってるわね……ふふっ、もう片方の手でもしましょ?

 

「……先程とは違って、手から緩やかな体温上昇を感知しています……こういうのも、とてもいいですね……」

 

 じんわりって感じよねえ……お互いの体温を溶かし合ってるというか……こうしてこのままずっと手を繋ぎ続けてたら、私とコトの手が溶け合っちゃうかもね♪

 

「……それは……少し、嫌ですね……お姉様の手が溶けてしまったら、お姉様から頭を撫でて貰うことが出来なくなってしまいます……」

 

 ……ふふっ、それもそうねえ……♪

それじゃあ溶けちゃわないうちに次のに行ってみましょ♪

 

「――それでは、髪を梳かすというのはどうでしょう」

 

 髪をいじり合うのもとっても良いわよね……女の子同士の特権よね♪

これは長さ的に、まずは私の髪をやって貰うのが良いかしら?

 

「そうですね、この本でも髪の長い方を梳かしてますし。……それではお姉様、失礼します……」

 

 コトの細い指が私の髪にそっと触れ、そしてサラサラと流れていく……。

 

「……以前から思っていましたが、お姉様の髪はとても綺麗ですね。艶があって、とてもサラサラしていて……こうして梳かしていると、私の手を通してよく感じられます……」

 

 ふふっ、ありがとう……♪ 髪を褒められるのって、こんなに嬉しいことなのねえ……。

コトの髪も、とってもとっても綺麗よ……!

そのターコイズブルーの髪はホントに美しすぎてとっても羨ましいって思っちゃうわ! 次は私に梳かさせてよね……♪

 

「……そう、ですか……?

……髪を褒められるのは、……確かに、とても嬉しいですね……」

 

 コトに背を向けている所為で、そう言った時のコトの表情が見られなかったのはすこし残念ね……。

ふふっ、でもそうよね……とっても嬉しいわよね。

 

「……ええ、ホントに……そうですね……」

 

 ……………………。

 

「……………………」

 

 ……………………。

 

 ……しばらく、お互い無言で髪を梳かし梳かされる……。

この静寂の中でも、私はとても安心感を感じていたし、たぶんコトも同じことを思っていると思う。

すごく優しくて、温かい気持ちで心が満たされていくのを、静かなこの時間の中で確かに感じていった……。

 

――――――

 

「……さて、一通り終わりましたね」

 

 ……そうねえ、ホントにいっぱい色んなことをしたわよね……。

 

「中には、既に日頃から行っていた行為もありましたね」

 

 いっつもコトとはイチャイチャしてるもんね♪

 

「今日はありがとうございますお姉様……とても、楽しくて、とても温かかったです……」

 

 ふふっ、私もいっぱいドキドキしちゃった……♪

こちらこそ、ありがとうね!

……あ、ところで……。

 

「……はい、何でしょう?」

 

 百合、については何か理解できたのかしら?

そもそもはそれが目的だったのでしょう? ……私は途中からすっかり忘れてコトとのイチャイチャに夢中になっちゃってたけど……。

 

「……それなんですが、今回ので色々な行為を覚えて、百合について何となく分かったような気もするのですが……やはり、何か足りないというか、まだまだ完全な理解には至れてない、ですね……」

 

 あら、そうなの?

それはちょっと残念だったわね……。

 

「申し訳ありません……こうなったら、さらに新たな百合についての本を探してそれを実践しなければ……!」

 

 ……コト、ちょっといいかしら……?

 

「……はい、何でしょう……?」

 

 ……私、思ったんだけどね?

コトは、私のことが好きで、それが百合だと思ったから、百合のお勉強をしようって思ったのよね?

 

「……はい、そうですね」

 

 ……でも、ね?

コトは、百合が好きだから私が好きっていう訳でも、女の子が好きだから私が好きっていう訳でもないわよね?

 

「……そう、ですね……ワタシは、お姉様のことが好きだから、お姉様が好き……です……」

 

 ……そう、……だから、ね?

私は、百合がどうこうっていうのに縛られる必要は無いと思うの。

百合を理解したりとか、百合の行為を覚えたりとか、そういうのは別にしなくても良いんじゃないかなって思うのよ。

 

「…………では、どうすれば……?」

 

 ……コトが心から、私としたいと思ってることを、一緒にやっていけば良いんじゃないかしら?

 

「……ワタシが、本当にお姉様としたいことを……やればいい……」

 

 ……私も、コトのしたいことを、私とコトで一緒にやっていきたいの……いい、かしら……?

 

「……それは……もちろん、です……!

ワタシと、お姉様と、二人で、一緒に……やっていきましょう……!」

 

 ……さて、それじゃあ……今、コトが私と一緒にやりたいことって何かある……?

 

「…………それでは、ワタシ……お姉様と――」

 

――――――

 

 ――静かな時間。コトは私のひざに頭をあずけて、すやすやと眠っていた。

ひざ枕を始めてすぐは色々とお話をしてたけど、しばらくしたら安心しきっていたのかコトは可愛らしい寝息を立てて眠ってしまった。

コトが寝ちゃった後も、私はコトのその美しいターコイズブルーの髪を撫でるのはやめなかった。

何度も、何度も……その髪を優しく撫でながら私は、心から溢れた想いをこぼすのだった。

 

「…………コト、……愛してるわ……」

 

 

 

 

 

「……おねえ、さま…………ワタシも……おねえさまを……愛して……ます……」

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