……9月6日、か……。
「妹の日だよお兄ちゃん! ねえ妹の日だよ! お兄ちゃん!」
脳内に押し寄せる強い主張が、今日が例のあの日であることを強く実感させる。
この日は本当に電波が痛い。物理的に痛い。うるさいし響くから本当に止めて欲しい。
リアルでも沢山の呼び声が聴こえてくるので脳と耳の二重責めである。精神への汚染である。
「そこまで言わなくても良くない? まあそんなお兄ちゃんも大好きなんだけどね!」
はいはいかわいいかわいい。
適当にマグの電波に返事をしてから一方的に打ち切った。相手にするのが面倒臭くなったとか、うっとおしく思ったとか、そういうのが理由では決してない。
たぶん。
さて、今日は妹の日である。妹の、妹による、妹の為の日。
我々の中で妹と言えば誰か。そう、フラニカである。
「お兄ちゃん! わたしは!?」
妹と言えばフラニカである。異論は認めない。
という訳で、フラニカの部屋にやってきた。
「……? しゅー様、なに?」
フラニカ、今日は妹の日なんだ。
「そうなの……?」
ああ、今日一日は妹に焦点が置かれていて妹も沢山やってきてパーティー状態になるんだ。
さらには、その年に活躍した妹だけが選ばれるノースティリス妹大賞なる物もあるとか。
「おぉ、すごい日……!」
という訳でフラニカ、今日はお前が主役だ。だから何でも言ってくれ。出来る限りのことをやろう。
「……? ……なんで?」
……なんでって……?
「なんでメノが主役?」
……え、そりゃあ……フラニカが妹だからじゃ?
「メノ、べつに妹じゃないけど」
………………。
「………………?」
……まあいいんだよ! そんな細かいことは!
一応皆の妹的ポジションだし! 妹召還も使えるし! フラニカは実質妹だって! な!?
「そうなの?」
そうなの!
「そうなんだ。うん、じゃあそうする。メノは実質妹」
「ゴリ押したね」
静かに……。
じっとりとした視線を乗せた電波が頭に流れ込む。
だって仕方ないじゃない……仕方ないじゃない……。
「しゅー様、元気だして? よしよしする」
背伸びをして手を伸ばし、優しく頭を撫でてくれるフラニカ。
……ああ、温かい。妹ではなくむしろ母親……いや、ママであったか……。
「正直ドン引きだよお兄ちゃん……」
「よしよし、いいこ」
しばらくフラニカに頭を撫でて貰い、温かさを堪能する。
……そういえば、フラニカが仲間に加わったのも妹の日だったな。温かさの中でふと思い出した。
まあ最初に出会ったのはもうちょっと前だった気はするが。
「そうだっけ。たしか、お洋服とか買ったり、名前付けてくれた時?」
そうそう、その日。
「おいしいのいっぱいだった時……!」
うんうん、歓迎パーティーした時だね。
「たのしかったし、おいしかった! もっかいしたい……!」
フラニカの表情がぱあっと明るくなり、両手を上げて喜ぶ。
それは良かったよ。またやろうな、フラニカ。
しかしふむ……そう考えると、今日は本当にフラニカが主役の日だな。
となると、今日またパーティーをやっても良いかも知れないね。
「ほんと……? やってくれるの?」
ソフィたちにも相談してみるか! せっかくの妹の日でフラニカが主役の日なんだ、全力で楽しんでいこうじゃないか。
「……! しゅー様、ありがと! やった! おいしいの、いっぱい食べる!」
うんうん、美味しいものも一杯用意して、全力で祝っていこうか!
「うん……!」
さて、それじゃあ買い出しとかに向かうかあ……何か食べたいものはあるか?
「んー、おいしいのがいい……!」
無垢な笑顔を向けるフラニカに、違うそうじゃないとは言えず、ただそっかあ……としか言えなくなる。
……なら、一緒に買いに行こうか。
「うん!」
ワクワクを全面に出しながら、楽しそうにうなずくフラニカ。
だがその前に、一つ寄っていかなければならない場所がある。
さあフラニカ、牧場に行くぞ。
「……うん? 牧場に行ってどうするのお兄ちゃん?」
……決まってるだろう? もう一人の主役を迎えに行くんだよ、マグ。
「……! お兄ちゃん! やっぱりお兄ちゃんは、最高のお兄ちゃんだよ!」
満開の花のような色の電波が脳内に響き渡る。
やっぱり、皆で楽しむのが一番だな……!
「しゅー様、早くいこ?」
「お兄ちゃん! わたしこういうのが食べたいかな! あ、でもお兄ちゃんの手作りなら何でもバッチリオッケーだよ!」
そうか、それなら今日は一杯腕を振るうとしよう。さあ、それじゃあ行こうか……!
賑やかで明るい二人の妹を連れて、和気あいあいとパーティーを目指して街に繰り出すのであった。