今年も、七夕の日がやってきた。
笹の葉は既に飾り終え、ソフィイルコトの三人は夕食のそうめんの準備をしにいった。
「笹の葉は、さらさらと。軒端に揺れておる……」
縁側に腰掛け、風情に想いを馳せる怠惰猫神のランカ。
「七夕で宴とは中々良いでは無いか♪ 季節行事は大事じゃからのぅ〜」
縁側でご機嫌に足をぶらぶらさせるランカ。
以前七夕の宴をやった時はランカが仲間になる少し前のことだった。
それからは、割と忙しくてやる機会を逃してしまっていたのだが……。
「ぬしよ、この七夕の催し、開いてくれてありがとのぅ♪」
……うん、ランカのこの楽しそうな笑顔が見れたのだから、開いた甲斐があったというものだな。
「――おほしさまは、キラキラ……じゃない!」
ランカとは少し離れた所で宙を見上げ、星空に想いを馳せていた……筈だったフラニカがキレた。急にキレた。これが所謂キレやすい若者なのだろうか……。
「しゅー様ぜんぜん違う。メノ、知ってるもん」
……この段階で、デジャブを感じた俺は先に言葉を言葉に被せることで、幾年か前の二の舞を踏まないようにした。
確か、星はこっから見ると小さくていっぱいあってキラキラなのに、宇宙から見ると大きくてあんまり近くには少なくて暗い、という話だったか?
「そう! メノ、とても不思議」
まあ、それぞれ解説もできなくも無いけど。
「そーなの? ほんと? してくれる?」
……面倒だが、これもフラニカの勉強の為だ……。
仕方がない。と、頭をフル回転させて解説の準備を進めていたが――。
「いーや、やっぱわたしに聞こ」
――――"わたし"。何だかよく分からないがフラニカは時々、居もしないナニカに話しかけることがある。イマジナリーフレンド、というやつだろうか?
「ん? わたしってなーに? って?」
フラニカによる、心を読み透かしたような突然の発言で、あの七夕の時の気狂わされた記憶が鮮明に蘇る。……まあなので、思わず身構えてしまったのは自然でかつ仕方の無いことだろう。
「しゅー様ダイジョーブ。こんどは眼を使ったりしない。ちゃんと伝える……!」
十抹くらい不安は過るが、ここは信じてフラニカの話を聞こうじゃないか。
フラニカに向かい合うように、縁側の廊下に腰を下ろす。
「メノ、おそらの上の上から来た。うちゅーじん? ってやつ。メノ、ルミカみたいな感じで、ぷかぷか浮いてる一番おっきいののしたっぱ」
フラニカの正体が、かの邪神シュブニグラスであることは知っていたが、フラニカはシュブニグラスの眷属でもある、ということだろうか。
「そんなかんじ。一番おっきいの、何考えてるかわかんない。いまのメノも、おっきいのと心のなかがちょっと繋がってるけど、ぜんぜんそんな感じしない」
意識が無いのか、それとも理解ができないのかはさておき、フラニカの人格にシュブニグラス本体は関わってない、という訳だな。
「ん、でも。おっきいのの下には、たくさんのけんぞく? がいる。それは皆、色んなこと考える。性格もバラバラ。好きかってやりながら、おっきいのに色々教えてる」
言い方は悪いが、自律行動する触手みたいな物か。それで、その中にお前の言う"わたし"が居るのか……?
「そう……! 流石しゅー様、話がはやい。わたし、色んな世界を見てる。いっつもゴロゴロしてヒマしてる。ダメなやつ」
……いや、それは他人のこと言えないんじゃないか……?
「いいの! ヒマつぶしにアイツ、メノに話しかけてくる。だから、答えてる。メンドー、やめて欲しい」
…………なんか、フラニカのお姉さんって感じがするな……。
「あんなのお姉ちゃんじゃない。ぜんぜんチガウ。お姉ちゃんはソフィねえで充分。ソフィねえの方がやさしいし」
……はは、いつか話してみたいものだな。フラニカの"わたし"にも。
「……んー、気が向いたら、だって。やめといた方がいいよ、しゅー様。メノの話になるとアイツ口うるさい。さいきんチョーシどう? とかみんなのことどう思ってんの? とか今楽しい? とか。聞かなくてもわかるクセにわざわざ聞いてきてウザい」
……フラニカは否定的だけど、やっぱり自分にはフラニカの良いお姉さんに思えるなあ……。
……流石にこれは、言ったらフラニカの頬がプクーって膨らんじゃうから言わないでおこう。
……まあ、何はともあれ話せる時が楽しみになってきたなあ……。
「わたしも、楽しみって言ってる。……メノは別にそうじゃないけど……。ん、なんかアタマの中うるさくなってきたから、メノあっち行ってくる。そうめん早くたべたい」
プイっと顔を反らして、とてとてと台所に向かうフラニカ。ちらりと見えた耳が少し赤くなっていた気がしたのははてさて。
それにしても、まさにお姉ちゃんに対してつっけんどんな対応をする妹そのものだったな……。
微笑ましい……。
本当に、フラニカの"わたし"と話せる時が楽しみだな……。
――――――――
「…………おい、ぬしよ」
ちょっとご機嫌に鼻歌でも歌っていると、先程まで沈黙を貫いていたランカが、深刻そうな表情で話し掛けてきた。
……あの楽天家のランカがこんな表情をするとは、何か本当に深刻な問題でも発生したのか……?
こちらも心持ちを変え、真剣な表情で向き合う。
「……………………」
………………。
………………沈黙。そして、そこに生まれる緊張。
果たして、どのような深刻な話題が出てくるのだろう――――。
「――――ぬしよ、わらわと温泉入るぞ」
………………。
「……………………」
…………。
…………はい……?
……えっ、何急にそんな……そういうキャラだったっけ……?
「…………はへ……? …………あっ、いや!? これは違くてのぅ!?」
……予想外の提案にシンプルに驚いたのだが、どうやらランカ的に他意は無いようだ。
……何の他意かは知らん。
「いやこれはぬしを心配しての発言であって、わらわもちょっと危ないから二人とも温泉入った方が良いじゃろ? って話であっての!?」
顔を赤らめ必死に弁明するランカ。かわいい。
……しかし、普段あれだけベタベタに甘える癖して妙に初心なのはなんとも……難しい。
まあこれは、ランカの観念がしっかりしていることの証左なのかもしれないな。
「――分かったか!」
あっはい。
……所で、何故温泉に……? 危ないって、何かあったか……?
「……ぬし、やはり気付いておらぬか……」
……ええ……?
……何か不穏な感じになってないか……?
「……ぬし、めのうと色々話しておったようじゃったが……めのう、あの会話の中で、たまによく分からぬ言語を使っておったからの?」
…………は?
「ぬしは自然に会話してたみたいじゃが……。……わらわ、聞き耳立てておったが会話の内容は本当にひと欠片しか分からなかったからの?」
――アイデアロール成功済。
――あなたはフラニカを理解していた。
……………………。
…………何そのコズミック・ホラー……。
「外なる神の連中は、わらわたちの常識から外れた狂気の世界に生きてるからのう……とりあえず、狂気度は大丈夫かの?」
……あー、なんか改めて考えてみると、頭グワングワンする気が……。
「大丈夫かぬし……? 温泉、入るかのう……?」
……んー、だがこれから七夕パーティをやるからあまり時間を掛けるには行かないしなあ……二人分だと流石に時間が掛かり過ぎる。
「む? わらわも多少狂気度は増えておるがこれくらい……」
いや、ランカには七夕の宴を全力で楽しんで欲しい……だからランカが最優先で温泉に浸かって……。
こっちはその間にユニコーンの角をどこかから入手して……。
「おい、無理するでない! ぬしはかなり狂気度が上がっておるのじゃ、わらわのことは良いから風呂に……」
……いや、だからランカに七夕を……。
「じゃーかーらー……! ………………これでは、埒が明かないのう……」
……譲る気は無いからな……。
「…………あい、分かった……」
……ふう……やっと、ランカが折れてくれたか……。
「――――ならば、こうしようぞ……?」
――――――――
「わぁー! ランカちゃんの浴衣か〜わい〜♪」
「……そそ、そうかのう……? いやー、わらわは美少女じゃからのぅ……!」
「所で、ランカちゃん顔まっかっかだけど……一体全体どうしたの♪」
「えっあっ! いやあ……ちょっと湯を浴びてこようかなー……となってな……? それでまあ、ちょっとのぼせちゃったかのー? たぶんその所為かも知れぬな!」
「へー、そうなんだー……♪」
楽しげなソフィの瞳がチラリとこちらを向いた。
…………そっと、目をそらした……。
「やあ、シュト。キミも中々似合っているじゃないか、その浴衣」
服装への褒め言葉など滅多に言わない筈のイルミカが、横腹を拳で何度も小突きながらそんなセリフを吐く。
「一体全体、いつ着替えたんだい? なんかやけに体温も高そうだし。珍しく風邪でも引いたかい?」
言外にバカと言われてる気がするが、その挑発も含めて無視しておこう。
とりあえず、冷たいラムネでも飲みたい気分だ。
「はいよ、多少時間は経ってるからキンキンとまではいかないがね」
そう言って、どこからともなくラムネを取り出すイルミカ。
……なんだ、やけに気が利くじゃないか……怖くなってきた。
「失敬な。ボクを何だと思っているんだい。これはただ、誰にも何も言わずにどっかに消えた二匹の猫を探してた時に、風呂の前で頂戴しただけだよ」
……へー、そんなはた迷惑な猫たちが居たのか。
それは知らなかったなあ……。
「ははは、大変だったよ。庭にも部屋にも居なかったからねえ……」
…………後で、なんかお詫びするか……。
「……ああ、そういえば、風呂の方も見たんだったかなあ?」
嫌らしい黒猫が、小さくニヤつく。
「……ハハ、まあ脱衣所まで探して誰も居なかったんだけどね? うん、探していた二匹、は。居なかったよ? いやはや……一体全体、どこに行ってたんだろうねえ」
やけに"は"を強調する性悪黒猫。
とりあえず、脱衣所の棚の籠の中に何を見つけたかとかは考えないでおこう。考えたくない。
「いやはや、大変だったなあ? 猫探しは。折角そうめんパーティの準備が終わったから呼びに言ったのに、こんなに時間掛かっちゃうとはなあ?」
……はいはい、ご苦労様でした。
「他には?」
……お待たせいたしました申し訳ございません。
「うん、そうだね。それでよし。……さあ、それじゃあみんな、台所の物をテーブルに運びたまえ」
「はーい♪ それじゃあコトちゃん! メノちゃん! 行くわよ〜♪」
……そうして仲間たちは、俺とランカを取り残し奥へと消えていった……。
「…………なあ、ぬしよ……」
……なんだ、ランカ。
「…………これ、バレておるよな……」
…………考えないようにしよう。
「…………そうじゃな、……きっとあやつらは何も気付いてない。……ということにしておこうかの……」
………………。
「…………わ、わらわも手伝いに行かないとじゃな」
……よし、行くか。
「……うむ、楽しい宴はこれからじゃからな……! よし、そひー! くろー! わらわも手伝うぞー」
そう言ってパタパタと廊下を走っていくランカを見送りながら、仲間たちの元へとゆっくりと歩きだした。
――――――――
「ごちそうさまでした〜♪ うーーん! 美味しかったわねえ♪」
「とても美味しかったです、お姉様……!」
「ふふ、出来合いだけどねー」
「いえ、お姉様が色々と準備をしてくれたからこそです……!」
「それを言うならコトちゃんもいっぱいお手伝いしてくれたじゃない! コトちゃん、ありがとね♪」
「……いや、あんまり変わらないだろう……」
「ふふふー、イルちゃんもお手伝いありがと♪」
「い、いや!? 別にボクは褒めてもらいたかったわけでは……」
「良かったですね、ヨル……♪」
「違うと言っているだろう……!?」
「そーめん、ツルツルでつめたくて良かった。ピンクと緑のもいっぱい食べれてよかったー」
「めのう、器用に全部取っていったからのう!」
「ふふん。メノ、すごいでしょ」
「すごいのう……すごいのう……♪」
七夕のそうめんパーティは、終始ワイワイ明るく楽しく賑やかであった。わが家で食卓を囲んで食べるのは、本当に楽しくて良いな……。
「……さて、そろそろ宴と行くかい? 勿論、酒は用意してあるんだろうね?」
先程からどこかソワソワしていたイルミカが、酒宴の提案をしてくる。
勿論、酒の準備はしてある。
ビアにクリムエールにウイスキーに、しっかりと揃えてあるぞ?
「えー、ワインとか無いのかい」
そんなもんこっちじゃ売ってないわ。というか七夕でワインは合わないだろ。
「……いや、全部洋酒じゃから七夕には合わないのではないかのう……? それより、和酒は無いのか? 焼酎でも良いぞ〜」
それもこっちには無いな。
「えー、それは残念じゃのう……。ああ、和酒が恋しいのう……」
……うーん、知り合いのエヘ教徒に掛けあって色々酒作ってもらうか……?
流石に種類が寂しい気もするしなあ……。
「……キミの知り合いの幅も、相当広いよね。……いや、全員エヘ教徒だからある意味狭いか……」
宗教は人を結ぶのだよ、イルミカくん。
「一丁前に宗教を語るなこの狂信者」
「しゅー様、メノもお酒のみたい……!」
いつの間にか近くに来ていたフラニカが服の裾を掴んでねだる。
「絶対ダメじゃ。めのうはまだ子供、そんな内から飲酒しておったら身体に毒じゃぞ? 成長止まって小さいままぞ?」
「メノいつでもないすばでーになれるからヘーキだもん……!」
「そういう問題じゃなくてのう?」
「らんちーには聞いてないもん。メノはしゅー様に聞いてるの!」
「がーん……じゃ……」
こら、フラニカ。ランカはフラニカの事を思って言ってくれてるんだから、そんな言い方しないの。
「……つーん」
……はあ……。
……というか、そもそもお前酒飲めないだろ。一口で酔い潰れて寝るんだから……。
「ウソつき、メノ一回もお酒飲んだことない。皆が飲んでてイイなーって言ったあたりで気付いたら寝てるもん。だからいっかいも飲んでない……!」
「いや、それ酔って前後の記憶失くなってるだけだから」
「むぅーーっ」
ほっぺをぷっくり膨らませて涙目で訴えてくるフラニカは大変可愛らしい……。
……が、大人の責任としてここはキッパリ断らねばならない。
ほら、代わりにラムネ好きなだけ飲んでいいから。
「………………それだけ?」
……七夕ゼリーも付けよう。
「分かった。きょうはお酒あきらめる……」
えらいぞ、フラニカ。いいこいいこ。
「えへへー……♪」
「ふふっ、一件落着ね♪ でもみんなちょっと待ってね? ……ほらそこの大人たちもストップ〜!」
酒瓶を物色していた二人のダメな大人……もとい大猫をソフィが止める。
……しかし、何かまだやることがあっただろうか?
「ほーら、忘れてないかしら? 七夕と言えばこれでしょ?」
そう言ってソフィは色とりどりの紙を取り出す。
……ああ、そう言えばまだ誰も書いてなかったな。
「ほう、短冊じゃな? 良いのう良いのう♪ ちょうど笹の葉が寂しいと思ってた所だったのじゃ!」
「ささ、みんなお願いごとを書きましょうねえ♪」
ソフィはしっかりと片付いたテーブルの上でペンと短冊を配っていく。
「……願いごと、か……ううーん、今度はもっと即物的な願いごとにするか……二の舞は流石に……」
……そういえば、前回の七夕は偶然みんな同じ願いごとになっちゃってたんだったな……。
そのことで大いにソフィが盛り上がっていたな。
……そして、短冊なんてと斜に構えてた筈のイルミカが実はちゃんと願いごとを書いていたという事実を、テンションの上がったソフィに大々的に公表されてしまいイルミカは羞恥に悶えた。
「くっ…………」
「…………くろに一体なにがあったというのじゃ……気になるのう……」
……イルミカの名誉の為に、このことは黙っておくか。それを知ったらランカは確実にイルミカを弄る。かわいい所もあるんじゃのう♪ とか言って。
「お姉様ともっと……いえ、本が……いや、やはりお姉様と……!」
「んー、お願いごと何がいーかなー」
なんやかんやありつつも、それぞれが思い思いに願いごとを呟く。
前回のもろ被りがあったからこそ、今年はより個性的な短冊が出来上がる気がした。
「……よし、こんなもんで良いだろう。ボクはお先に失礼するよ」
そう言って、イルミカは短冊を持って庭へと向かっていった。
……結構七夕を楽しんでいたことが前回壮大にバレてしまったからか、イルミカは変に斜に構えることもなく短冊を書いた。
うん、素直なのは良い事だ。
……ソフィ、イルミカが居る前でその温かな目をするのはやめておけよ?
「ふふっ、わかってるわよ♪」
「できました。ワタシも短冊吊るしてきますね」
「メノもー。あ、メノいっちばん上がいいから誰か肩ぐるまして」
「それなら、ワタシが肩車しますよメノウィ」
「わーい、しーちゃんの肩ぐるまー♪ いまからしてー」
「ええ、良いですよ」
仲良く肩ぐるまをしながら庭へと向かう二人。
コトルシィとフラニカも凄く仲が良いよなあ……。
「――うおっ!?」
「――えへへー、ルミカよりたかーい♪」
賑やかな音が庭から響いてくる。
……なんか、良いよなあ。
「ふふっ、良いわよね〜♪ ランカちゃんは書けてるかしら?」
「むー、もうちょっと考えさせておくれ……。いざ願いごとをと言われると、なんか色々浮かんできては消えていってのう……」
唇の上に筆を載せて宙を見つめるランカ。
まさに悩んでます、って姿に思わずちょっと笑ってしまった。
「うんうん、わかる〜♪ 大丈夫よ、焦らないでじっくり考えましょ? たぶんランカちゃんより時間掛けちゃう人も居るから……♪」
……こっちを見ないでくれ。
「はーい♪ それじゃ、私も飾ってくるわねー」
「なぬっ、いつの間に書き終えたのじゃ!? ああ、もう行ってしもうた」
庭からの声がより一層きゃっきゃと賑やかになる。それとは逆にこちらには、穏やかな静けさが辺りを包んでいた。
「…………しかし、改めて思うのじゃが……」
………………。
「……わらわは、幸せじゃのう……こんなにも温かな居場所ができて……こんなにも温かなみなと出会えて……」
…………みんな、本当にやさしくて温かいからな。
「……うむ、みなには……感謝してもしきれないのう……。……勿論、ぬしにも、ぞ? わらわを呼び出してくれて、迎えてくれて、ありがとの……♪」
日のように温かな微笑みをくれるランカ。
…………そんなことより、願いごとは良いの思い浮かんだか?
「……むー? ……うーむ、そうじゃなあ……。……うん、これが良いかもしれんのう……!」
……短冊、書けたか?
「……うむ、できたぞ……♪ それじゃあ、わらわも笹の葉に吊るしてくるぞ!」
耳をぴょこぴょこさせながら、庭へ歩いて行くランカ。……これは後で短冊を見るのが楽しみだな。
「――ランカちゃんの見せて見せて〜!」
「――ほう、これは……ふふ、パーフェクトな願いごとだね、ユキ」
「――流石ですね、ヒノユキ様」
「――おー、らんちーすごい……!」
「――も〜〜〜、さいっこうね! ランカちゃんすきすき〜」
「――な、なんじゃ皆して!? わらわの願いごとがなんなのじゃ!?」
「――実は……」
…………庭が一段と賑やかになったなあ……。
……俺も、書き終えないとだな。
楽しげな仲間たちの声を聴きながら、色鮮やかな短冊に願いを込め、想いの筆を動かすのであった。
――――――――
その後、みんなに囲まれながら帰ってきたランカは、赤面しながらにへらにへらと笑い続けていた。
それとなくイルミカに理由を聞いてみたけれど、早く短冊吊るしてこい、としか言われなかった。
目の前には、色鮮やかに飾られた笹の葉。この色のひとつひとつに、みんなの温かさを感じた。
……さて、飾りましょうか。
……………………。
…………これでよし、と。
…………それじゃあ、皆のを見てみようかな……。
――――――
……なるほどね、納得がいった。
……ふふ、……本当に、温かくて素敵な仲間たちだな……。
「――早くこっちきて宴会始めましょー♪」
「――早くしないとキミの分のも全部飲むよ」
「――ヨル、飲みすぎには気を付けてくださいね」
「――しゅー様ラムネー! 七夕ゼリー!」
「――ぬし、さあ始めようぞ!」
仲間たちの温かな声に導かれ、幸せに満ちた灯りの元へと歩きだす。
――色鮮やかなこの笹船は、天ノ川をも越えみなの想いを運ぶであろう。
――温かな願いを乗せて笹の葉は、星の海に揺らめいた。
――――――――
『みんなの願いを、叶えられますように』
『来年の七夕パーティは手料理で……!』
『最高の杖をボクに渡したまえ』
『銃も魔法も知識ももっと磨いて、役に立てますように』
『イタズラもっといっぱいしたい。あと、いいこいいこいっぱいされますように』
『この幸せで温かな時間を、永く永く過ごせますように』