「遂に大みそかねぇ」
ノイエルの聖夜祭を終えて1週後ほど。
雪の降りしきる夜に、炬燵を囲んでみかんを頬張る少女たち。
「お姉様、みかん剥きならワタシにお任せを。白すじからうす皮まで、見事に剥いてみせます」
「……いやいや、おことよ。みかんの白すじにも薄皮にも栄養満点ぞ? 健康に良いぞ〜?」
「……なるほど、流石はヒノユキ様。……つまり、皮ごと丸ごと食べればもっと栄養満点ですね。はいお姉様、どうぞ……♪」
得意げに知識を披露するランカと、それをちょっと間違った受け取り方をしつつも、好意と厚意を全開にソフィお姉様へと差し出すコトルシィ。
「……トルシィ、キミちょっと勘違いしてないかい? 厚い方の皮は剥いて渡した方が……」
「いやあ、ありがとね〜コトちゃん! せっかくだからいただくわ〜♪」
「はい、どうぞ♪」
「キミたちねぇ……お熱いことで、このバカップル」
呆れ顔のイルミカを他所に、鮮やかなオレンジ色のみかんを幸せそうに頬張りイチャつくソフィたち。
「しゅー様、バカップルってなに? あっぷる?」
……あー、なんていうかなあ……甘々イチャイチャって感じかな?
「……じゃあ、しゅー様たちのこと?」
……いや、それはちょっとちが――。
「――そうよ!!」
「喰い付きこわ……」
ガンっと手を付いて前に乗り出す暴走お姉ちゃんと、心の声を代弁してくれるヤレヤレ黒猫。
「……そこで同調してる猫二人よ。おぬしらこそ無言でいちゃつきあってるで無いわ!」
「んなっ!? 言い掛かりはやめたまえユキ!」
「心と心が通じ合う……それこそが最高の関係性であると本で読みましたよ、ヨル。……ワタシもお姉様やマスターとそういった関係に……」
「あっメノ、てれぱしー使えるよ? つまりみんなとサイコーな二人?」
「ふふっ、そうねー! きっとそうよー!!」
キャッキャとかしましいやり取りが暖かな和室に響く。
唯一の男であることから、この場に居ることに少しの気まずさを覚えつつも、その暖かな空気をぬくぬくな炬燵とともに浸かり感じる。
夜は深まり、どこからか鐘撞く音が響く。
ランカから聞いた、和の国の風習――ジョヤの鐘である。
「毎年思うのじゃが、一体誰がどこでついておるのかのう? 近くに神社仏閣は無い筈なのじゃが……」
「和風の文化なんだっけ? ならユキ、それは恐らく温泉街のラーナから来てるんじゃないかい?」
「はぁ、なるほど。そういえば近くにあるもんなあ。見事な名推理、流石はくろじゃな!」
「……ま、まあ。これくらいは考えるまでも無かったがね?」
ランカの純粋な褒める言葉に、照れ隠しを隠せぬイルミカの態度。
微笑ましくその様子を見ていれば、イルミカからジト目で無言の圧力を掛けられる。
……まあ、その反抗的な視線すらも、己のかわいさをより引き出すだけなのだが。
「ほらほら、そろそろ一年が終わるわよ? 今年はどんな一年だったかしら?」
「んー、ルミカとらんちーと一緒に、いっぱいゲームした!」
「まあ、シュトが金稼ぎで全然帰って来なかったからねぇ。まあ、仕事も無くてラクな一年で良かったよ」
「なんじゃなんじゃくろよ、素直に寂しかったと言えば良いものを……♪ ふふっ、そうじゃなあ〜そろそろげーむも飽きてきた頃だし、来年は沢山わらわに……いや、皆に構うがよい!」
……そうだな。必ずや、約束しよう。
「ワタシは……そうですね、お姉様との仲を更に更に深めることができました。来年は、お姉様と二人で共同作業とかもしてみたいですね」
「えへへ、そうねえ♪ 二人の共同作業……とってもステキだもんねぇ♪」
「――……それから、マスターとお姉様と三人で、もっともっと仲良くラブラブイチャイチャするのも目標ですね」
「うんうん!! そうね!! 絶対やりましょ!! 三人一緒に……ねっ♪ もっちろん、やってくれるわよね? シュトさん♪」
「……マスター……♪」
ああ、皆で想い出を、作ろうな。
「……さあ、シュトさん? 今年と来年について……どうぞっ!」
………………。
……そう、だな。今年は色々あったが……あまりお前たちと一緒に過ごせなかったな……。
まだまだ、こっちはこっちでやることがあって、また家を長いこと留守にすることもあるけど……。
でも、俺は絶対に忘れない。そして、この暖かな家に、愛する皆の元へと帰ってくる。
……また、たくさん一緒に、想い出を……物語を紡いでいこうな。ずっとずっと、永遠に続く物語を――。
――何処までも、何時までも、俺についてきてくれるか――?
「――……ふふっ、……そんなの、決まってるじゃない?」
見渡せば、五つの微笑みが迎え入れてくれる……。
「ふっ……キミの身勝手に、このボクがどこまでも、……付き合ってやろうじゃないか♪」
「ワタシはどこまでも、愛しきマスターと、愛しきお姉様と、愛しき友人たちとともに」
優しく暖かな視線が、声音が、響き共鳴する。
「……メノ、みんなとずぅーっと一緒……! みんなダイスキだから、いっぱいいっぱい、もっともっと……楽しいこと、しよ♪」
「おぬしらといると、退屈しないからのう……♪ わらわもみーんな、大好きじゃぞ! たくさん遊んで、たくさん甘えさせて貰おうぞ♪」
いっぱいの気持ちの籠もった言の葉は、胸へと伝わり、染み渡り、広がりゆく。
――ああ、俺は……幸せ者だな……。
「……これからも、ずっとずっと末永く……私たちと一緒に居てね♪ 私の……私たちの愛する、ご主人様……シュトさんっ♪」
……暖かさから湯気でも出てきたのでは無いか、と。曇り歪みゆく、和室と愛する仲間たちから顔を背け、そっと目尻を拭って向かい直る。
――ありがとう……来年も、よろしく頼む……俺の愛する、仲間たち……!
――――――
「ふふっ、シュトさん感極まっちゃった?」
「くっくっ、まったく、歳老いた訳でも無かろうに……♪」
「マスター、タオルは要りますか? あるいは、泣き止むまでワタシがあやして差し上げましょうか?」
「しゅー様、ぎゅーってしてあげる……♪ メノがいいこいいこしてあげる♪」
「ははは、たまにはぬしを甘やかすのも良いかもしれぬなぁ♪ よしよし、わらわのもとで好きなだけ泣くがよいぞ!」
……あーあー、うるさいぞ。決して泣いてなどいない。……ホントだぞ……?
「またまた〜♪」
――――ゴーン……ゴーン……。
新年の幕開けを告げる、鐘の音が響く――。
そうして互いに顔を見合わせ、幸せそうに一斉に、挨拶を放ち交わし合う――。
『――新年、明けまして……おめでとうございます!』
――みんな、今年もどうか、……よろしく頼むぞ……!