コトルシィのお披露目とイルジト目
さて、改めてお披露目といこう。
今回新しく仲間に加わった、アンドロイドの『コトルシィ』だ!
はい、自己紹介どうぞ!
「……了解。
この度マスターの仲間に加わることになりました、アンドロイドのコトルシィです。
ワタシ、ボロボロの部品の状態からマスターに組み立てていただいた身故、至らない点もあると思いますがどうかよろしくお願いいたいします」
とても礼儀正しい自己紹介を終えコトルシィは一寸の狂いもない見事なお辞儀をする。
青髪に特徴的な赤いラインのある黒い服を着た少女は、俺がアンドロイドの残骸から作った新たな仲間だ。
「かっ……かわいい……!! それに礼儀正しくてとっても良い子ね……!!
私はソフィ、皆のお姉ちゃんよ! 気軽にお姉ちゃんって呼んでね♪ よろしくね、コトちゃん♪」
いや、気軽でもなんでもないだろお姉ちゃん呼びは。別にお姉ちゃんと呼ぶ必要はないぞコトルシィ……。
「了解。データに書き加えておきます」
……それは俺とソフィ、どっちへの了解なのだろうか……まあいいか。
「ボクはイルミカ・ヨル。あっちの大ボケが信仰してやまないエヘカトル様から遣わされた眷属の黒猫さ。
こんな見た目だけどこれでも一応女だよ。これからよろしく、コトルシィ」
「イルミカ・ヨル、データに記録しました。こちらこそよろしくお願いします。
……ところで、あっちの大ボケとは……?」
「ああ、それはキミのご主人のシュトのことだよ」
……おい。
仲間たちと仲良くやっていけそうなのは良かったが、何故かイルミカの俺に対する当たりが強い。
思い当たる節がないのだが……。
「……ソフィ様……? なぜワタシを抱き寄せているのですか? 理解不能」
なぜかソフィまで俺から庇うようにコトルシィを抱き寄せている。
しかもめっちゃジト目で俺に抗議している……何故だ……。
「……おいシュト、キミってやつはよくもこうぬけぬけと知らん顔でいられるね……いや、素で分からないみたいな顔してるんじゃないよ」
そう言われたって思い当たる節がないのだから仕方ないだろう。
コトルシィに酷いことをした覚えなんてこれっぽちもないぞ。
「はあ…………。
……自分が何してるか分かってないようだから言うけど……キミ、コトルシィを自分が作ったって伝えたそうだがなんて言って教えたんだい?」
……うん?
そりゃ、ボロボロのパーツが【偶然】沢山あったからそれを組み合わせてお前を作ったって……。
「何が【偶然】だよ、自分に都合の良いことだけ吹き込んでるんじゃないよ!」
……あっそういうことか……。
「やっと分かったかい? 自分が何をしたのか……割と長い時間一緒に居るからキミのことは結構理解してるつもりだけど、流石のボクもこれはドン引きだよ!」
あーそうかあ……それが不味かったかあ……いや、素直に教えるのもなんかアレじゃん……?
「……あの、マスターは一体どのようなことを……?」
コトルシィは少し遠慮がち手を上げイルミカに聞いてきた。
イルミカは一つ大きな溜息を吐くと、最大級のジト目で俺を見ながらコトルシィの誕生秘話を語りだした。
「こいつは偶然ボロボロの部品があったとか抜かしてたけどそうじゃない。
材料にしたのはコイツが力試しで行った狂信者の塔で倒した主のアンドロイドの残骸。
わざわざいくつもの塔を周って、キミの材料を集める為にアンドロイドを次々倒して残骸を拾ってたのさ」
「ちょっとイルちゃん、コトちゃんの前でそんなこと言うのは……」
コトルシィのことを思ってイルをやんわりと咎めるソフィ。
これにはイルミカも申し訳無さそうな顔して、すまないと言い軽く頭を下げた。
なお俺は、両者からのじっとりとした目線に肩身の狭い思いでいた。
「……まったく、シュトさんったら……。
……大丈夫、コトちゃん? 辛くない……?」
「……なるほど、理解。ソフィはワタシを気遣って抱き寄せてくれたのですね。ありがとうございます。
心配はありません、ワタシは平気です。
ワタシのパーツがマスターの倒したアンドロイドで出来ていたというのは少し驚きましたが、こうしてワタシがここにいるのも、全てはマスターがワタシを組み立ててくれたが故。
こんなにも優しいお二人と出会えたのも、マスターがワタシを作ってくれたが故です。
なのでワタシはまったく気にしていませんですよ」
コトルシィの許しの言葉で肩の力を抜く。
ソフィとイルミカも、本人がそう言うならと矛を収めてくれた。
俺は本当にありがとう、と言ってコトルシィに頭を下げる。
「いえいえ、マスターが謝る必要はありません。
……それにしても、ソフィ様とイルミカ様は本当に優しいのですね。
会ったばかりのワタシの為に、こんなことまでしてくださって……」
「そんなの当たり前よ、コトちゃん。
だってコトちゃんは、私の大切なかわいい妹なんだからね♪」
そう言ってソフィは腕の中のコトルシィに優しく微笑む。
「ソフィ……様……!
本当に、ありがとうございます……!
……あの、ソフィ様……?」
「どうしたのコトちゃん、遠慮せずに何でも言って?」
少し顔を赤らめたコトルシィはモジモジとしながらもソフィに聞く。
「あの……ソフィ様のこと……お姉様と呼んでもよろしいでしょうか……?」
コトルシィのその許可の言葉に少しの間固まったソフィだったが、程なくして動きを取り戻しコトルシィを強く抱きしめた。
「ええ!! もちろん!! 存分に呼んでいいわよ、私のカワイイカワイイコトちゃん!!
あーもうカワイイ!! なんて素直でカワイイ娘なのほんと!! あーもう駄目、我慢できない! お姉ちゃん我慢できない! こんなの初めて……素直に私をお姉ちゃんとしてくれる娘が……ああカワイイ……カワイイ!!」
自分を素直に姉と慕ってくれるコトルシィへの可愛さで突如として興奮しだすソフィ。
そんな中強く抱きしめられているにも関わらず満更でもない顔をするコトルシィを見て、二人は良い関係になれそうだなと思うのであった。
――――――
「……うーん、これから大変なことになりそうだなあ……ボクに火の粉が降りかからないうちに自室に退散するとしようかな。
……しかし二人はホント相性が良さそうだね」
そうだな……仲良くやっていけそうでホントに良かったよ……。
「まあそうだね、ボクも彼女とは上手くやっていけそうだって思うよ。
……しかし、なんだ……あの二人を見てるとなんだか疲れてくるね」
何度もお姉様と呼んでみてというソフィと何度もお姉様と呼ぶコトルシィのやり取りを見て、うっへりとした顔を見せるイルミカ。
……確かにアレを見てるのは疲れるな……。
「やっぱりシュトもそう思うかい……? ……じゃあ二人でボードゲームでもして気晴らししないかい……?」
それも良いな、と言って俺はイルミカと共に部屋を後にする。
背景で永遠に繰り返される『お姉様』の合唱に耳を塞ぎながら。
「お姉様!!」