タツキが研究所の職員に自己紹介をして一緒に食事をしてから1時間、オダマキ博士から話があると中庭に呼び出されていた。
「博士、話とは何ですか?」
「ごめんね。資料を読んでいたみたいだったのに。」
「いえ、オダマキ博士が助手として迎えてくださった事でいつでも見れますから。」
と特に気にしていないことを伝える。
「タツキ君の手持ちは、ワカシャモとキルリアだよね。これから仲間にするポケモンで何か拘りとかあるのかな?」
まさか、自分手持ちの話をするとは思っておらず流石のタツキも返答に困る。
「えっ?手持ちですか、特にこれと言った拘りはありませんけど。あぁっとでもユキワラシは今後の研究の為にもゲットしたいですね。」
「なるほどね。ユキワラシじゃなくて申し訳ないんだけど、タツキ君このポケモンもらってくれないかな?」
そう言ってボールから出したのは一体のグライガー。じめん・ひこうタイプのとびさそりポケモン。そんなに珍しいポケモンではないが、ホウエン地方には、生息していないはずのポケモンである。
グライガーはボールから出るとススっと博士の後ろに隠れチラチラとこちらを見てくる。
「グライガーですか。ホウエン地方では珍しいポケモンですね。野生での生息地が新たに発見されたんですか?」
「いや、カナシダトンネルの中で倒れているのを保護したんだよ。トレーナーに捨てられた可能性が非常に高いんだ。」
博士は、捨てられた可能性が高いと考えているらしい。単純に新たに生息地が出来た可能性もあるがそちらの可能性は限りなく低いと教えてくれた。
「まず、トンネルの中にはこのグライガーが一体しかいなかった。さらに周辺でもグライガーの目撃情報はないんだよ。そして僕が捨てられたと思う1番の理由はこれさ。」
そう言うと博士は、白衣のポケットからある物を取り出し見せてきた。
「これは、するどいきばですか?」
このするどいきばと言う道具は、グライガーに持たせて夜にレベルアップを行う事でグライオンに進化する事が出来る。
(なるほど、これは確かに捨てられたと考えた方が辻褄が合うな。)
「確かにその道具を見ると捨てられた可能性が高いですね。」
タツキの言葉に博士も同意する。
「そうだろう。さっきも言ったけどこの子を君に任せたい。この研究所にいるよりも君と旅に出た方が気分も晴れると思ってね。」
「なるほど。そう言う訳だったんですね。俺は、全然構わないですけどグライガーが何と言うか…。」
博士は、そう言いながら足にしがみ付いているグライガーの背中を押して前に出してくる。
その姿を見ながらタツキはポケモン図鑑を使い、目の前のグライガーの特性を調べていた。
「おぉ!君、特性めんえきじゃないか。グライガーを育てるならこの特性が良いなと考えていたんだ!どうかな、一緒に強くならないか?君なら四天王相手でもそう簡単には負けないと思うよ。」
「グ、グラァ?」
いきなりテンションの上がったタツキに若干引きながらも、まるで本当に?と言うように首を傾げながらタツキを見るグライガー。
「本当さ! 君の特性はめんえき、進化するとポイズンヒールって特性になるんだ。」
タツキは、今後どのようにグライガーを育てたいのかを直接伝えていく。
「ポイズンヒールは、自身がどく・もうどく状態の時ダメージをくらわずに逆に回復するんだ。さらに回復するとはいえ、どくと言う状態異常になっているから他の麻痺や火傷なんかの心配をしなくても良いんだ。
それを活かしてどくどく玉って道具を持ってもらう。」
この話を聞いてオダマキ博士も反応する。
「なるほど、普通ならどくどく玉は持っているポケモンをどく状態にするだけの道具。しかしグライオンの特性、ポイズンヒールと共に使うのなら状態異常を恐れなくて良くて、ついでに回復も出来ると言う事か。」
「そう言う事です。技構成は、まもる・どくどく・みがわり・じしんを考えています。みがわりとこおりのキバで悩むかもしれませんが、基本的な構成はこんなところです。立ち回りとしては、早いうちにみがわり・どくどくを使いあとはじしんで沈める感じですね。厳しそうな時は、時間を稼ぐまもるで相手のスリップダメージで落とします。」
タツキの話を聞き、オダマキ博士は苦い顔をする。
「確かに理に適っていると思うが、今の世界のバトルスタイルと全く違う攻め方じゃないか。それにみがわりなんて効果の良くわからない技、大丈夫なのかい?」
心配そうに聞いてくるオダマキ博士に対し
「すぐには、大丈夫じゃないですね。でもやりようはいくらでもあります。博士もご存知でしょう?ポケモンの技の約半数ほどの効果が解明されていないのを…。」
タツキの話を聞き今度は、目を見開き驚いたように声を震わせるオダマキ博士。
「き、きみは、その技たちの、こ、こうかが、わ、わかるのかい?」
「今のところ全てではありませんが、旅に出るまでの5年間に身近で調べられるモノは一通り調べてあります。」
タツキのその話を聞きオダマキ博士は思わずタタラを踏み腰が抜けた様に座り込む。
その際に博士の足元にいたグライガーは、博士に潰されない様にしっかりとタツキが抱き抱え避難済である。
「そ、その論文は出来ているのかい?これは、世紀の大発見だよ!!」
冷や汗を流しながらも興奮しているのか、大きな声でまくし立てる。
「いえ、実はこの研究が博士号をとった後に発表したい研究でして…。こんなガキが発表しても信じてもらえそうにないので、せめて博士という地位で多少無理やりにでも多くの人に論文を読んでもらわないと、と思いまして。それに多くの人がこの研究を認めて自分の力にしてくれれば、バトルはもっと楽しく白熱したものになると思うんです。ただの力と力のぶつかり合いではなく、いかに相手の裏を読み、相手を罠に掛けるか、そんな駆け引きの末の力のぶつかり合い。きっと今以上に盛り上がる事間違いありません。」
「なるほど。確かにこれは、一般人が今の君の年齢で発表しても笑われて終わってしまうだけだね。この為に博士号の取得に急いでたんだね。」
タツキの話を聞いて納得した様に目を閉じ、何度も頷いているオダマキ博士。
「いろいろあったけど俺たちと一緒に来ないか?」
自身の腕の中で大人しくしていたグライガーに話しかけるタツキ。
「グラァ⁈グラッ!!」
はじめは、いきなり話しかけられた事に驚いたのかビクッと身を縮こまらせたがタツキの問いかけに笑いながら元気に右手を振り上げた。
「よし、ならこれからよろしくな!」
こうしてタツキの手持ちに新しい1体が追加されたのである。
いろいろと考えていたオダマキ博士が顔を上げ口を開く。
「タツキ君、決して発表しないと約束する。少しだけでも技の効果を教えてくれないか?」
「えぇもちろん大丈夫ですよ。とりあえず、中に戻りますか。」
タツキはグライガーをボールに戻し、オダマキ博士と一緒に研究所の中へと歩いて行く。