ポケモンと現実の混ざった世界で   作:チュロッシー

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独自の設定があります。ご了承下さい。


16.可能性

タツキは公共交通機関を乗り降りし、まだ見ぬポケモンを捕獲しながらミシロタウンへ戻ってきた。博士に連絡した様に日も暮れてきている。夏なので空は未だ明るいがあと30分もすれば辺りも暗くなる事だろう。

 

「タツキです。ただいま戻りました。」

 

そう言いながら研究所に入っていく。

 

「タツキ君、待っていたよ。もう少し遅くなるかもと思っていたが案外早かったね。」

 

出迎えてくれたオダマキ博士がそう口にする。

 

「思いの外スムーズに戻って来れました。」

 

「無事で何よりだよ。着いて早々に申し訳ないがお願いしても良いかな?あっちの部屋に皆んな揃ってるよ。ついでにオーキド博士もね。」

 

「オーキド博士もいらっしゃるんですか?」

 

既にカントーに戻られていると思われたオーキド博士まで居ると言うオダマキに驚いた表情のタツキ。

オダマキは、タツキの顔を見て悪戯が成功した少年の様な顔でその訳を話す。

 

「ここの所、休みが取れていなかった様でね。ご自分の研究所に連絡をされて休みを捥ぎ取られていたよ。モニター越しに助手の人達の慌てる様が見えて、見てる方としては面白かったけどね。」

 

と朗らかに笑いながら話すオダマキ博士にタツキは思わず苦笑いが漏れる。

 

(本当行動力があると言うか何というか…。オーキド博士の助手の人達には同情してしまうな。)

 

話ながら歩く内に目的の部屋に着く。部屋に入るとこの研究所に勤める研究員とオーキド博士が椅子に座り待っていた。

 

「皆さん、遅い時間にも関わらず残って頂き感謝します。まず話をする前にグライガーを進化させようと思いますので裏のポケモン用のスペースまで同行願います。」

 

タツキがそう言うと皆席を立ち、研究所の裏にあるポケモンを放し飼いにしている庭の様なスペースまで移動する。

このスペースはタツキとグライガーが初めて会った場所でもある。

 

目的の場所に到着するとタツキは腰のホルダーからモンスターボールを2つ外し間隔を空けて投げる。片方からはグライガーがもう片方からはシャモが飛び出してくる。

シャモとグライガーのバトルが始まりバトルの途中でグライガーが光に包まれる。進化の光である。

光が収まると小さなグライガーを一回り程大きくした身体を持つグライオンがそこにはいた。

 

タツキがバトルを止め、シャモをボールに戻す。

タツキがグライオンに近付き、あらかじめ預かっていたどくどくだまをグライオンに渡し、するどいキバを預かる。

 

研究員達は、専用の機械を使いグライオンの状態を把握する。

 

「本当だ、先程のバシャーモとのバトルで減った体力が徐々に回復している!」

 

「毒状態の筈なのに…。」

 

などあちこちで声が上がる。

それを聞き、タツキはグライオンを撫でる。撫でられたグライオンも目やや細め気持ち良さそうにしている。

 

「おめでとうグライオン。良く頑張った。ゆっくり休んでくれ。」

 

そう言いながらグライオンをボールに戻し、博士達を先程の部屋へ誘導するタツキ。

 

「それでは皆さん詳しい説明をしようと思いますので先程の部屋へお願いします。」

 

その声を聞き、それぞれ先程の部屋を目指し歩き出す。

 

「タツキ君。これは凄い発見だよ。」

 

今目にした事に若干興奮気味なオダマキ博士が声を掛けてくる。

 

「そうじゃぞ。ここまで画期的な特性ポイズンヒールの運用は今後のポケモン界に一石を投じる事になるじゃろう。」

 

オダマキ博士と同様にオーキド博士も声をかけてくる。

2人と話ながら先程の部屋へ戻る。

 

「それでは、詳しくお話しさせていただきます。特性ポイズンヒールは特別な特性である為個体数は少ないですが既に発見されている特性です。ですが、現在その運用は敵からの攻撃を受けて毒状態になった時の保険といった意味合いが強いと思われます。が、敵が毒状態にしてくれない場合は全くの無意味。そう考えられてきた筈。しかし、どくどくだまをポケモンに持たせる事で意図的に自らを毒状態にしその恩恵を得る事ができます。」

 

周りの人達の反応を見ながらタツキは続ける。

 

「そして、なげつけるやトリック、すりかえ等の技で相手にも道具の効果を付与することが可能と思われます。」

 

タツキの話を聞き、今まで話を聞いていた人達が騒めきだす。

この世界でも説明した技は使われているが基本的にどくどくだまなどの自分にデメリットのある道具は持たせない為、この戦術は研究されるどころか発想すらなかったようだ。

 

「タツキ君、それは本当かい?もしそうだとすれば更なる発見だよ。」

 

「そうじゃな、積極的な検証の必要があるじゃろう。」

 

オダマキ博士、オーキド博士の両名の目も先程とは違い幾分か真剣度が増している様に感じる。

 

「勿論、要検証ではありますが…。もともとトリックやすりかえはお互いのポケモンの持っている道具を強制的に交換する技です。そうなると相手にどくどくだまを押し付ける事が出来、さらに相手はどくどくだまの効果で毒状態になると考えられます。また、毒タイプは毒状態にならない為、ポイズンヒール持ちのポケモン程ではないですがアドバンテージは取れると思います。なげつけるはその名の通りポケモンの持っている道具を相手に投げる技ですので相手に当てなければいけませんが同様の効果が望めます。」

 

タツキの説明を聞き、部屋の中からなるほどと声が聞こえてくる。

 

「さらに、ここからは私の“更なる”個人的な考えですが毒状態と言うのは、本当に体力が減っていくだけなのでしょうか?」

 

この発言にオーキド博士が姿勢を正しながら聞き返す。

 

「どう言う事じゃ?毒状態にそれ以外の効果はないはずじゃが…。」

 

「皆さんも研究者であれば、常識の中にこそ非常識が存在する事をご存知の筈。過去の大発見は常識を見直した先にあったものも多いのです。例えば、ポケモンが火傷状態になると攻撃力が下がるのは周知の事実ですよね?毒状態はポケモンが毒に侵されており、その影響で体力が減っていくものです。人であれば毒に侵されれば、その患部に出来るだけ触れたくない・触れて欲しくないと思うはずです。ではなぜポケモンにその理屈を当て嵌めないのか、おかしくありませんか?ポケモンも人と同じ生物の筈。」

 

タツキのこの話を聞きオダマキ博士が納得した様に声を出す。

 

「確かに僕らも怪我なんかしているとその場所を庇ったり、出来るだけ使わない様にするよね。」

 

「そう言う事です。足が毒に侵されれば移動速度が落ち、腕が侵されれば出来るだけ使わない様にする。これはポケモンでも同じ事が言えると思われます。ですので、例えば足などの機動部位が毒に侵されれば移動速度や瞬時の踏ん張り、それらの部位を使用した攻撃などを行い難くなる可能性があります。ですのでポケモンのステータスに当て嵌めると、機動部位から毒状態になると素早さ、回避率、一部の攻撃力の低下が考えられます。次に腕やそれに近しい攻撃・防御部位から毒状態になると攻撃力、防御力、命中率の低下が考えられます。」

 

タツキの考えを聞き、室内の皆が考え込む。

 

「確かにタツキ君の言う通りかもしれない。火傷や麻痺に比べて数値上の変化は小さいかもしれないが十分可能性として考えられる。」

 

タツキにどくどくだまを提供してくれた研究員が声をあげる。彼の名前は立花サク、今年20歳になった青年でこの研究所でタツキと1番歳の近い研究員である。

 

その声を聞き他の面々も全く新しい可能性が出てきた事で目が輝いている様に見える。

 

「確かに理に適ってるように思う。ポケモン達は人よりも圧倒的に力強く、人の概念に当て嵌めるという事はして来なかったが、タツキ君の話を聞いて、それも考え直さねばならんかもしれんな。」

 

オーキド博士も頷きながらそう口にする。

そこでタツキは更なる個人的な意見を述べる為に口を開く。

 

「ただ、この考えが通用しないポケモンも考えられます。」

 

「特性とかのことかい?」

 

オダマキ博士が聞き返す。

 

「それもありますが、研究をする者として数値に出来ないものや目に見えないもの、証明出来ないものなどは引き合いに出したくないのですが…。所謂精神論です。」

 

タツキの精神論という言葉にオーキド博士が首を傾げる。

 

「精神論がどう関係するんじゃ?」

 

「とても簡単な話、状態異常になっていようがポケモン自身が勝負に負けたくない、自分のトレーナーを勝たせたいと思っている場合、多少の痛みや身体の動かし難くさなど関係なしにトレーナーの指示に従う可能性が高いからです。格闘漫画などをお読みになられるかわかりませんが、それらの中に「精神が肉体を凌駕する」と言う表現があります。肉体の損傷などで立つ事もままならない者が意志の力を元に自らのベストパフォーマンス以上のパフォーマンスを行う様な時に使われる表現です。トレーナーとの付き合いが長く精神的に強い繋がりがある場合や相手のポケモンと何らかの因縁のようなものがあるポケモンにも、この現象が起こり得ると思われます。逆にトレーナーとポケモンとの間にそれ程の精神的な繋がりのない場合、例えば捕まえたばかりのポケモンなどでは、このような現象は起こり難いと思われます。」

 

「なるほど。確かに精神的なものでは証明が難しいがこれは一つの論文として発表していいくらいじゃ。人も誰かの為になら頑張れる事もあるものじゃ。ポケモンも同じと言うことか。」

 

「オーキド博士の言われる通りだよ!タツキ君。これは論文にするべきだ!確かに精神論では証明なんかがネックになってくるけど、毒状態に対する考察を主として、トレーナーとポケモンの精神的な結びつきが強い場合にこれらに対抗し得ると記載しても良い。」

 

オーキド博士の発言にオダマキ博士も食いつく。

 

「そうじゃな。精神的なところはすぐには証明出来んじゃろうし、まずは論文でその事に触れる事で触発されたもの達が研究を始めるじゃろう。そうすれば検証件数も増えより多くの情報が集まるじゃろうな。どうじゃ?タツキ君、論文を書いてみんかね?」

 

部屋中の目がタツキに注がれる。

タツキもまさか自分が論文を書く流れになるとは思ってもいなかったが今後のポケモン界の事を考え書いても良いかとも思う。しかし自分は夏休みを利用してバッジを集めに来ている為、論文に必要な資料や情報の用意をしている時間はない。

 

「大丈夫さ、タツキ君。情報収集なんかは僕たちがする。君はその中から論文の構築に必要な物を使えばいい。こんな研究の手伝いが出来るなんて、こんな嬉しい事はないからね。」

 

悩んでいたタツキの背を押すように面倒な作業をしてくれると言うサク。彼の言葉を聞いて他の面々も任せろ!なんでも言ってくれ!と意気込んでいるのがわかる。

 

「わかりました。なんとか書いてみます。お忙しい中お力を貸していただきありがとうございます。」

 

深々と頭を下げるタツキ。

そんなタツキの頭を撫でながらオダマキ博士は言う。

 

「それは、僕らの言葉さ。これは今後のポケモン界を変える可能性のある論文だ。その手伝いが出来るなんて夢のようだよ。」

 

「全くじゃ!この歳になりこんな歳の離れた少年に常識を疑うと言う研究者としては当たり前な事を言われるとは思わんかったわ。ワシも出来る限りサポートしよう。」

 

オダマキもオーキドも気持ちのいい笑顔でそう言ってくれる。

再度頭を下げるタツキ。

 

「皆さん、本当にありがとうございます。」

 

「良いんだよ。こちらこそありがとう。さて、皆んな興奮している所悪いがお腹が減らないかい?今日はここでお開きにしよう。この話はまた明日にしようか。きっとこれ以上話して興奮して眠れなくなると困るからね。主に僕が。」

 

最後の一言で部屋の中は大きな笑い声が響く。真面目な雰囲気を一気に緩める絶妙なタイミング。

 

「タツキ君、今日もウチに泊まりなさい。明日も早いからね。皆んなもしっかり休むんだよ!」

 

その声でこの日は解散になり皆、近くの人と話しながらそれぞれの家へと帰って行く。

 

 




誤字、脱字が多くて申し訳ありません。
見つけたら報告いただけると嬉しいです。

気が付けばこんな展開になりました。反省はしていますが後悔はありません。

ちなみにここまで書いてますが未だプロローグあたりです。
頭の中で出来ている本編は社会人になってからなので気長に書いていきます。
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