オダマキ家で朝を迎えたタツキ。
客間から出ると朝食の支度をしていたオダマキ夫人に挨拶をし、日課の散歩に出かける。
玄関を出ると朝という事もあり、程よい暖かさの風が頬を撫ぜる。
いつもの様にポケモン達を外に出す。グライオンがシャモとフェルに近付き進化して一回り大きくなった身体を見せる。昨晩はオダマキ家にお邪魔していた事で3体共大人しくしていたが今は外という事もあり嬉しそうにシャモとフェルの周りを飛び回るグライオン。それを見てシャモとフェルも微笑ましい表情をしており、進化してもグライオンの末っ子気質は変わらないらしい事がわかる。
その後は、グライガーの時と変わらずフェルに抱き抱えられておりこちらも進化して変わらないらしい。側から見たら種族こそ違えど家族にしか見えない。
タツキとしても種を超えた親愛の情がある事は嬉しく思う。
そして今後後輩が出来た時、グライオンはどんな対応をするのか楽しみでもあった。
朝の散歩を終えてオダマキ家へ戻ってくると家主のオダマキ博士、オーキド博士。娘さんのハルカちゃんが食卓に着いていた。
「おはよう御座います。オダマキ博士、オーキド博士。ハルカちゃんも。博士は良く休めましたか?」
「タツキおにーちゃん、おはようございます!」
今日ハルカちゃんは元気いっぱいだ。
ハルカちゃんは5歳で未だ自分のポケモンを持っていないにも関わらず1人で草むらなどに突撃して行く事もある程パワフルな子で、常にオダマキ夫人が目を光らせその動向を見守っている。
「おはよう。タツキ君。しっかりと休む事が出来たよ。これで今日からの研究もバッチリさ!」
新聞を広げながらサムズアップするオダマキ博士。
すかさずキッチンから朝食を持ってきたオダマキ夫人に頭を小突かれる。
「何言ってるの…。寝るまでずーっとタツキ君の研究が!とか、これは学会が震撼するぞ!とか騒いでいたじゃない。この人なかなか寝なかったのよ…。」
と疲れた表情で溜息を吐くオダマキ夫人。
まるで遠足前の子供じゃないか…。とタツキは思ってしまうがそれも仕方ないかもしれない。
そんな話をしているとテーブルの上に朝食が揃い、食事を始める。
朝食後、博士らと一緒に研究所へ向かう。
「皆んなおはよう。昨日はしっかり休めたかな?僕はしっかり休んで英気を養ったよ。」
と揃った全員の顔を見てドヤ顔でオダマキ博士は言う。
「ちなみにオダマキ夫人の話だと遅くまで騒いでいたらしいですよ。」
タツキの裏切りに物凄いスピードで首を回しタツキを見るオダマキ博士。
「何が英気を養ったよ!ですか…。」
サクも一言ツッコミ、全員が笑顔になる。
「ンンっ!まぉ、それは置いておいて。今日から我等オダマキ研究所では昨日聞いたタツキ君の理論の検証や類似した情報などがないか調べて行く事となる。これは皆んなもわかっていると思うけど学会を震撼させる程の論文になる事が大いに予想される。常識を打ち破り新たな常識を作る手助けをして行こう。オーキド博士からは何か?」
そう口にすると隣にいたオーキド博士に話を振る。
「そうじゃな、オダマキ君の言った通り悔しい事に今の時代の最先端がこの研究所で立証されようとしておる。研究者としての本音を言うと、なぜワシがこの研究の中心にいないのかと悔しく思う限りじゃ。じゃが、ワシの様に長い事ポケモンの常識という不確かなモノの中におったからこそワシには気付かんかったと思っとる。ワシもそうじゃが皆タツキ君に良い刺激を受けておる筈じゃ。この研究で凝り固まった考えでは新たなモノは見えてこないと学会に殴り込んでやる気でやるぞ。」
オーキド博士の目は、ポケモン研究の権威と呼ばれる人のものではなく、1人のポケモンの事をもっと知りたいと思う少年の様に輝いていた。
オーキド博士からの言葉でより一層研究所内の空気が引き締まるのがわかった。
「さぁ、主役のタツキ君からは何かあるかい?」
オダマキ博士から話を振られたタツキは少し考え込んでから話始める。
「…。皆さん。昨日も言いましたが私の為に貴重な研究の時間を割いて頂きありがとうございます。私もどこに出しても恥ずかしくない論文を書くつもりですのでお手伝いよろしくお願いします。ただ、わがままを言わせて頂くと私のジム巡りの事もあり3日程しか時間がとれません。予定通りにジム巡りが進まなかった時のことを考えて数日は残しておきたいので過密スケジュールになるかと思いますがよろしくお願いします。」
そう言い頭を下げるタツキ。
頭を上げるとさらにおずおずと話し始めた。
「実は、かえんだまの使い方についても思いついた事があるんですが…。」
そう口にすると、慌てたオダマキ博士が捲し立てる。
「ちょっ、ちょっと待って、タツキ君。これ以上は流石に僕も皆んなも受け止めきれないから!それはこの論文作成が一段落したら教えてくれないかな?」
そうだろうなと思っていたタツキは素直にわかりましたと話を止める。
それからはオダマキ博士の号令のもとそれぞれが資料探し、毒ポケモン達との検証なとが行われた。
タツキもグライオンと共に検証に参加し、その結果を資料としてまとめていく。
気が付けば昼時だったらしく、オダマキ夫人とハルカちゃんが全員分のお弁当を差し入れしてくれた。
タツキも資料の整理を一旦やめ、夫人のところまで向かい、お礼を口にする。
「すみません。差し入れまでいただいて。」
「良いのよ。昨日のあの人の様子を見たら、研究に夢中になって時間なんか忘れちゃうんじゃないかって思ったのよね。」
笑いながら話す夫人。
「夫婦の勘ですか?」
「そうね…。そうかもしれないわね。あの人ハルカが産まれる前は今日みたいに時間を忘れて研究に熱中しててね。まぁ…、そんな何かに一生懸命になれるところを好きになったんだけどね。これ、あの人には内緒よ。恥ずかしいんだから。」
と恥ずかしそうに笑いながら話してくれた。
研究所は、お昼休憩となり一旦作業が中止された。
ハルカちゃんは研究所のポケモン達と遊んでおり皆がその姿を微笑ましい表情で見ていた。
休憩が終わり各々作業に戻り出す。
タツキも資料の整理を再開する。色々な論文や違った実験・検証の結果も転用出来そうなモノがありなかなか進まないのが現状である。
技の事であればアローラのククイ博士が何か情報を持っていそうなものだが、いかんせんアローラはアメリカ合衆国であり、日本語は通じないと言っても過言ではないだろう。さらに資料を見せていただくにも事情の説明などで時間をとってしまう為、今回は断念する事となった。
(今後他国の博士達との共同研究の可能性も考えれば、英語・フランス語ら辺は習っておきたいな。)
と旅を終えた後で言語教室に通いたいと思うタツキ。
皆んなが急ピッチで資料を作成してくれている為、タツキは論文の作成に取り掛かった。
どくどくだまなどのデメリットのある道具の使い道や毒状態からのステータスの変化など自分なりにまとめて記入して行く。
そうしている間にもどんどんと資料が運ばれてくる。
タツキも夕食の時間までに論文の骨組みを作成し終え、後は検証結果などを記載し論文の骨組みに肉付けして行く作業である。
気が付けば窓の外から見える景色は暗くなっており1日が終わる事を教えてくれる。
(今日はここまでか。)
そう思いパソコンの前で座ったまま背伸びをするタツキ。
パソコンに論文を保存し、電源を切りオダマキ博士のもとへ向かう。
「オダマキ博士、失礼します。」
「どうぞ。」
オダマキ博士の部屋の扉を開ける。
そこには、タツキと同じく読み込んだ資料を整理し片付けているオダマキ博士とオーキド博士がいた。
「お疲れ様。これを片付けたら帰ろうか。」
「久しぶりのこの手の作業は、老体には堪えるわい。」
そう笑いながら口にするオダマキ博士とオーキド博士。
タツキは博士らを待ち、一緒にオダマキ博士の自宅へと向かう。
他の研究員たちもきりの良い所で資料を整理し帰宅すると言う。
この日も食事に寝床とオダマキ家にお世話になる。
(明日、明後日で完成させられるか分からないがやるだけやって見よう。)
と論文に思いを馳せながら就寝するのだった。