ポケモンと現実の混ざった世界で   作:チュロッシー

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駄文で短いですが読んで頂きありがとうございます。


2.初めてのタマゴ

父の車に揺られる事10分程、父の実家である神原家へと到着した。

祖父の家は、元は農家だったが曽祖父が大工もしていた関係で曽祖父亡き後父の弟、タツキからすると叔父が大工を継ぎ神原建設として建築業以外にも手広く事業を展開している。また祖父は農家として田んぼや畑をしており日に焼けた肌は黒く逞しい。

代々続く農家であるため家自体も大きく、農機を入れる納屋も大きなものとなっている。

 

父と2人で車を降り母屋の玄関へ歩いて行く。玄関前の庭にもポケモンがおり、池にはトサキント、木の上にはエイパム、植木鉢の周りにはナゾノクサやマダツボミなどがいた。さらに納屋の方を見ると畑仕事の準備をしているゴーリキーが見える。

 

父の話では祖父のポケモンはゴーリキーだけでトサキントは父が小さい時にお祭りで祖父から買ってもらったと言う。今の家に水槽か池でも用意出来れば連れて行きたいそうだ。他のポケモンは勝手に住み着いた物だが基本的には、人里に降りてくるようなポケモンなのでイタズラをしない限りはいい子達だそうだ。

 

父が玄関の引き戸をガラガラと開ける。

 

「親父〜。来たぞ〜!」

 

「おぉ、まぁ入って茶でも飲んでけや。」

 

奥の部屋から祖父が急須を持って出てきた。その言葉に父は「どんが?すじまき終わりそうら?」と田植えの準備の話をしながら框を上る。

それについて俺も同じく框を上がり、テーブルの前に置いてある座布団の上に座る。以前の世界ではこの歳の頃は正座は苦手だったが、そこは中身30歳のオッサン、特に正座も苦にならず祖父の淹れてくれたお茶を飲む。

 

(あぁ〜、緑茶うま〜。子供の頃はこのほのかな甘味がわからなかったんだよな。)

 

呑気にお茶を飲んでいると

 

「タツキや、しかし本当にあんな拾ったタマゴが誕生日のプレゼントで良いんか?他のでもいいんだぞ。」

 

祖父がお茶を飲みながら聞いてきた。

 

「タマゴがいいんだ。どこにあったとかそんなの関係ないよ。今日ここにあるって事が大事だから。プレゼントはタマゴがいい。」

 

そう祖父の目を見て伝えれば

 

「そこまで言うなら持って来るら。…もっといい物を買ってやりたかったんにの。」

 

と最後の方は、ボソりと呟きながら腰を上げ奥の部屋へと消えて行く。

少しすると祖父が大きな楕円形のものを抱えて戻ってきた。

 

「ほれ、タツキ。誕生日おめでとう。」

 

タツキは目を輝かせ目の前のものを見つめる。バスタオルに巻かれた楕円形の球体。触るとほのかに温かく生きている事を感じる事が出来た。ゆっくりとタマゴを抱き寄せ自らの腕で落ちないようにしっかりと固定する。

 

「じいちゃん、ありがとう。大切にするよ。まだタマゴだけど初めてのポケモンだ。じいちゃん本当にありがとう!」

 

タツキは満面の笑みで祖父へ感謝の気持ちを伝える。

その言葉に父と祖父の2人が固まる。

 

初めてのポケモン…

 

その言葉の意味に気が付いた大人2人。

 

「なぁ、タツキ。やっぱりタマゴじゃなくて他のものにしないか?タツキも初めてのポケモンは好きなポケモンがいいんじゃないか?」

 

「なーにを言っとる。タツキはこのタマゴがいいと言っとるんだ。親がそれを取り上げてどうする。全くお前は…。」

 

両者の表情は対照的で[初めてのポケモン]とはその名の通り人生で初めて貰うポケモンのことで、人生のパートナーとも呼ばれる存在。昨今誰が子供にその役割を行いポケモンを渡すかで大喧嘩をする家庭も少なくないのだ。

 

そんななかお互いにそこまで考えていなかったのだろう。祖父の顔は、初孫に初めてのポケモンをタマゴではあるが渡す事が出来たことにより緩みきりだらしなく笑っていた。

逆に父はと言うとタマゴとしか認識していなかったらしくタマゴの先にポケモンの孵化がある事を認識し、慌てていた。息子には自分が初めてのポケモンを渡そうといろいろと構想を練っていただけに思わぬ落とし穴だった。

 

なんとかタマゴを諦めてもらえないかと息子に声をかけるが、息子の気持ちは固いようだ。更に自らの父も孫の為とは言っているが転がり込んできた初めてのポケモンをあげるチャンスを逃すものかといつになく優しい声で孫の援護射撃をしている。

 

普段は、仕事にも真面目な父の事は尊敬していた。しかし今日の父は自分の息子の人生で一度きりの記念すべき役割を掻っ攫っていった憎むべき相手であるが、息子の表情や話を聞く限りあのタマゴを手放しそうにないことはわかる。

 

恨めしくも父の顔を見れば60近いのおっさんがデレデレと勝ち誇ったような顔で自分を見ていた。このクソ親父が!と叫びそうになるも息子の手前なんとか心を落ち着かせる。

 

「よし、タツキ。タマゴももらったしそろそろ帰るか。」

 

「うん。じいちゃん、本当にありがとう。」

 

「おぉ。なんて事ないわ。また遊びに来いよ。」

 

祖父に頭を撫でられて玄関を後にする。

前の人生では身長も既に祖父を超しており、自分の成長とは逆に小さくなっていく祖父の背中を思い出す。だが、今はまだ祖父の方が大きく力強さも見てとれた。タマゴを貰えた事と元気な祖父の姿を見れた事がタツキは嬉しかった。

 

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