タツキは現在猛スピードで空を飛んでいた。
流星の滝を出てミシロタウンへ向かう。鞄に入らなかったタマゴをフェルに頼み、俺の体と共にサイコキネシスでビブラーバの背中にくっつけてもらう。後はビブラーバにミシロタウンへ向けて飛んでもらうだけ。方角はその都度指示し飛ぶ事1時間。
ミシロタウンのポケモンセンターへ到着した。
急いで中に入りジョーイさんにモンスターボールを渡す。
ジョーイさんはいつもの回復機にボールをセットすると表情を変え、タツキを別室に連れて行く。
「このボーマンダ、どう言う事ですか?話の内容によっては警察に連絡する事になります。」
真剣な表情で話すジョーイさん。
タツキは、ジム巡りをしておりそのついでに流星の滝へ行ったこと。そこで地震に巻き込まれたこと。ボーマンダ達はその時に助けたポケモンだということ。治療が終われば野生に帰すこと。近くのポケモンセンターだと混乱していてすぐに治療出来るか分からずミシロタウンまで来たことを話した。
ジョーイも地震が起こった事はニュース速報で知っており、流星の滝がボーマンダ種の生息地であることも知っており一応は納得した。ただ、タツキが未成年ということもあり、保護者とも話がしたいと言い出した。
これには、タツキも考え込んでしまう。
(保護者って言っても家族はホクリク地方だし…。申し訳ないけどあの人に連絡してみるか。)
タツキは連絡してみます。と部屋を出て携帯を使いオダマキ研究所へ連絡を入れる。その際、両親から多くの着信があり、メールで大丈夫。とだけ連絡を入れておいた。
『はい。オダマキ研究所です。』
電話に出たのは研究員の立花サクだった。
「サクさん。タツキです。オダマキ博士をお願い出来ますか?」
『タツキ君かい⁈大丈夫なの?流星の滝で地震があったってニュースで観て、研究所はタツキ君は無事か⁈って大騒ぎだよ!』
「俺はまぁ、大丈夫です。オダマキ博士にお願いがありまして。」
『わかった。無事なら良かった。 オダマキ博士ー!タツキ君からです!』
『タツキ君大丈夫かい⁈心配したんだよ!』
「俺は、一応無事です。すみませんがミシロタウンのポケモンセンターまで来てもらえますか?」
『そこにいるのかい?わかった!すぐに行くよ!』
と言うと通話が切れる。5分もしないうちにオダマキ博士がポケモンセンターへ現れた。走って来てくれたのだろう額に汗が浮かんでおり、肩で息をしていた。他にもサクや他の研究員達も来てくれた。
オダマキ博士に簡単に事の次第を話しジョーイの元へ戻る。
「ジョーイさん、この子の身元は僕が保証しますし、この子はポケモンを虐待する様な子じゃありません。」
そう力強く話してくれた。ジョーイもオダマキ博士が言うならとポケモンの治療へと戻って行った。
少しすると外傷のなかったポケモン達のボールが戻ってくる。
その中から一つのボールが勝手に開きタツベイが出てくる。
タツキの腕に噛み付いたタツベイだ。
タツベイは、出てくるなりタツキの左腕を舐め始めた。
その場にいた事情を知らない人が首を傾げるなか、ジョーイだけがタツベイの舐めている所に薄らと傷跡があるのに気がつく。
「タツキ君と言ったかしら、この傷跡は?」
その声にオダマキ研究所の面々も気がつき
「どうしたんだい?この前までは無かったよね。」
と真剣な表情のオダマキ博士から追求を受ける。
「いや、実はボーマンダ達を助ける時にこの子に噛まれまして…。」
「「「はい?」」」
まさかのカミングアウトにその場が凍り付く。
「こうでもしないとこの子達の警戒心が「なぜ早く言わなかったの!あなたもこっちにいらっしゃい!!」
タツキが言い終わるより早くジョーイがタツキの腕を引っ張り治療室へ連れて行く。その後を研究所の面々がついて行く。
その後をは骨に異常がないかレントゲンを撮ったり、抗生物質を注射され、最後に
「いくら、ポケモン達の警戒心を解く為とは言え自分の腕を噛みつかせるなんて!!」
とみっちりとお説教を受けた。
話の間にタツベイがタツキとジョーイの間に入り抗議らしきものをするも
「あなたもあなたです。本当にこの子のポケモン達があなたを攻撃したらどうするつもりだったの!!」
と怒られ、タツキの足にしがみ付き隠れてしまう。
「お前は気にするな。お前は自分のできる事をしたんだ。俺は気にしてないから。」
そう言ってタツキはタツベイの頭を撫でる。
その姿を見たジョーイは2人とももっと自分の身体を大切にしなさい。と呆れた様に溜め息を吐きながら口にする。
ボーマンダの回復には時間がかかる様でこの日は一度オダマキ研究所へ戻る事になった。
研究所に着くと今度は研究所の面々からのお説教が待っていた。
(皆んなこんなに俺の事心配してくれてるんだな。)
と思うと心なしか頬が緩んでしまう。それを見た皆んなから
「「本当にわかってるの⁈」」
とさらにお説教が長引いてしまった。
俺のその姿にオダマキ博士も呆れながら
「ちゃんとご両親にも連絡してあるんだよね。」
と聞かれ、メールで大丈夫と伝えたと言うと
「「それだけ?」」
とまた皆んなに怒られ、皆んなの監視の元研究所のモニターを使い実家へ連絡する事になった。
数回のコールでモニターに父親の顔が映し出される。
『タツキか⁈お前、大丈夫って一言じゃわからんだろーが!ホウエン地方で地震があったってニュースで観た連絡しても繋がらない。だいぶ時間が経ってから大丈夫としか言ってこない!怪我とか無いのか?』
「大きな怪我とかないから大丈夫。心配かけてごめんなさい。」
そう言うと後ろから
「僕にも話させてくれるかい?」
とオダマキ博士。
「はじめまして。タツキ君のお父さん。僕はホウエン地方でポケモンの研究をしているオダマキといいます。」
『ホウエンでポケモンの研究のオダマキってあのオダマキ博士ですか?』
全国的にも有名な人が息子の後ろから出てくるとは思ってもいなかった父が驚き声が上ずっている。
「多分ご存知頂いているオダマキです。実はタツキ君にはポケモンの研究で力を貸してもらっていて、ジム巡りの合間にポケモンの分布調査をお願いしていました。それもあってジム巡りとは関係のない震源地の近くにいたんだと思います。御子息を危険な目に遭わせてしまい、誠に申し訳ありませんでした。」
そう言うと父の映るモニターに向かい深々と頭を下げる。
全国的にもポケモン研究で知られている博士が頭を下げているのだ。
タツキも父もその姿に慌ててしまう。
『いえ、無事ならそれでいいんです。所でタツキがポケモンの研究ですか?』
「えぇ、最初はちょっとしたハプニングでの出会いでして、その後に彼から独自で調べたというポケモンの生態に関する論文を読んで欲しいと言われたのが始まりでした。」
『うちの子が論文?まだ10歳ですよ?』
「信じられないかもしれませんが彼の書いた論文は今までの考え方を大きく変えるものでした。そこに私は研究者としての才能を感じ、助手として私の研究の手伝いをお願いしたんです。」
さらにオダマキ博士から自身の助手と聞き父は目を白黒させ驚く。
『ほ、本当にうちのタツキがですか?』
「えぇ。その時に読んだ論文が素晴らしく、カントーのオーキド博士に送った所すぐに会ってみたいとオーキド博士もホウエンに来られまして一緒に研究をした程ですよ。」
『うちのタツキがそんな…。』
更なるビックネームの登場に信じられない、と言う様に目を見開き固まる父。
「実は、タツキ君。先程怪我はないと言っていましたが地震の際に巻き込まれたポケモンに腕を噛まれていまして、骨や神経には異常は見られなかったのですが痕は残るそうで…。」
怪我のことを父に伝えるオダマキ博士。
『噛まれた⁈ポケモンに⁈本当ですか⁈タツキ!明日には家族でそっちに行く!その時に詳しく話しなさい!』
息子が怪我をしていたと聞き、ホウエンに来ると言い始めた父。
「父さん、仕事もあるんだし無理しなくていいよ。」
『良いわけあるか!!このバカもん!!明日、きっちり聞かせてもらうからな!!』
その言葉を聞き青ざめるタツキ。父ヒロトは普段は温厚だが怒ると怖いのだ。
「神原さん、こちらに来られるんでしたら我が家に泊まってください。部屋ならありますし、その方がタツキ君の事で色々とお互いに話せますから。」
『いや、しかし博士の家にお邪魔する訳には…。』
「お気になさらず。その方が節約にもなりますし。」
と博士の圧に父が折れる形となり、神原一家がオダマキ家に滞在する事が決まったのである。