高速船で無事トクサネシティに着いた神原一家。
「さっさとジムに行こう!明日の為に!」
「明日何かあるの?」
「明日行きたいところがあるから、なるべく長くいられる様にしたいんだよ。」
母からの質問に答えるタツキ。
トクサネの近くには浅瀬の洞穴がある。
ここには、タツキの求めるポケモンが生息しており、なんとしてもお近付きになりたいのだ。
(待っててくれ!ユキワラシ!俺は明日会いに行くからな!)
にやにやしながら明日の事を考えるタツキ。
ことポケモンに関しては変態性が抑えきれず溢れ出して来てしまっている。
トクサネジムへ向かい、サクッとジム戦を済ませ、七つ目のバッジをゲットした。
家族は宇宙センターなど見てみたいと言う事でタツキは一人ポケモンセンターで休む事にした。
2時間程で観光から帰ってきた家族と合流し夕食を摂る。
タツキは早めに部屋に戻り明日出会えるだろうユキワラシに想いを馳せ横になる。
*** ***
翌朝、神原一家は朝食を済ませるとタツキの目的とする場所へ向かっていた。
タツキは進化したばかりのサメハダーの背に乗り海を渡る。
ミオリはチルタリスに乗り、両親はタツキのフライゴンに乗り空から浅瀬の洞穴へ向かう。
ミオリのチルットは道中のタツキのレベリング中に似たようにバトルをしていた事でレベルが上がり進化していた。
モコモコの羽で今ではミオリの枕としても大活躍である。
浅瀬の洞穴内へ進み、分布の調査を行う。
レベリングは普段から行っている為、特に予定はないがサメハダーとヒンバスは未だレベルが低い為洞穴内の戦闘は基本的にこの二体が行っていた。
一階の調査を終え、地下へ降りていく。分布調査を行なっていくがほとんど一階と変わらない。
「あのアザラシ可愛いよねー。」
どうやらミオリは途中で見たタマザラシを気に入った様だが全く見かけなくなってしまった。
ミオリの手持ちはグラエナのエナちゃん、チルタリスのチルちゃん、ヒンバスのレイくんの三体。
「今の三体でバランスでいいんじゃないか?ここは水・氷タイプが殆どだからなぁ。」
「別にオラは、バトルする訳じゃないからバランスとか別にいいし。可愛い子だったらいいし。」
と言う事でタマザラシを探しに行く事に。
それから洞穴内を歩き回りタマザラシを捜索するが一向に見つからず、今回は諦める事になった。
「さっきお兄ちゃん何匹か捕まえてたじゃん。お願い!!」
「嫌です。」
ミオリから譲ってくれと言われるがタツキはキッパリと断る。
「なんで!いいじゃん!」
「俺の夢だから。ダメです。」
「何夢って?」
「出会えたポケモンと一緒に生活する事。そんで皆を研究する。」
「何匹くらいと?」
「捕まえられたポケモン全部。」
「…今ってポケモンどれくらいいるの?」
「800種類くらい。」
「無理じゃん!場所ないし。」
「どうにかするんだよ!その為に博士の研究とかしてお金稼いだりしてんの!だからあげません!誰になんと言われようが嫌です。」
タツキがそう言うと頬を膨らせながら何も言わなくなるミオリ。
タツキからもらう事は諦めた様で静かになる。
一応更にタマザラシを探しながら下へ向かおうと考えながら歩いていると奥の方に特徴的な笠の様なモノが見えた。
しかし、その色はタツキの知っているものではなかった。
笠は震えている様に見え、近づいて行くと急に振り返り違う方に走って行ってしまった。
(ユキワラシだよな。泣いてた…?てか色違い⁈)
振り返るが姿は既に見えなくなっていた。
「お兄ちゃん、あの子怪我してたし泣いてたよ!」
どうやらミオリも気が付いていた様だ。
近くを探してみるが見つからず、仕方なしに下へ向かう。
下の階層を調査していてもなぜかミオリのお目当てであるタマザラシは出てこない。トドグラーはこれまでに何体か見ているがミオリは自分で育てたいからとトドグラーは捕獲しなかった。
(あと何部屋かで調査も終わるな。)
と洞穴内を歩いていると奥で何かが騒いでいるのがわかる。
近寄って行くとオニゴーリに囲まれているユキワラシが見える。
しかもそのユキワラシは他の個体と大きく体色が違っていた。
(あの時の子だ。)
と思っている間にユキワラシの近くにいたオニゴーリが大きな口を開けユキワラシに噛み付こうとする。
タツキはホルダーからシャモのボールを取り投げる。
「シャモ!かえんほうしゃ!」
シャモの口から放たれた炎がユキワラシを狙ったオニゴーリに当たる。オニゴーリは不意の攻撃に吹き飛んでいく。
他のオニゴーリ達もタツキとシャモの存在にユキワラシから距離を取り始める。
「あの怪我そう言うことか。」
とタツキはオボンの実をいくつか取り出し。傷ついたユキワラシの所へ向かう。
シャモはその間も警戒態勢を崩さずオニゴーリ達を見張っている。
ユキワラシは近付くタツキに怯え、離れようとするも痛みからか上手く動けていない。
「ほら、食べな。少しは楽になる。」
タツキはユキワラシの隣にしゃがみ込みユキワラシにオボンの実を差し出す。ユキワラシはタツキの顔とオボンの実を交互に見る。
タツキはその内の一つを自らが食べ、害がないのをユキワラシに見せる。
ユキワラシは離れたいが怪我の為動けず、仕方なくオボンの実を口にする。
タツキはユキワラシがオボンの実を食べ始めたのを見て、鞄から更にいくつかきのみを取り出しユキワラシの前に置く。
「きっと気が付けばさっきみたいに仲間に攻撃されてたんだろ?」
タツキの言葉にユキワラシの小さな身体が震える。
「人間もそうさ。自分達と少しでも違う所がある人間を爪弾きにしようとする。ポケモンも人間も変わらないよ。」
タツキの言葉を聞き、その両目に涙を溜め、震えるユキワラシはタツキを見つめる。
「人間はな、小さな時は今のお前みたいに目立つやつはダメなやつって言われるんだ。みんなと同じ子が偉い子だねって。でも大人になると今度は個性がない。凡庸だ。って言われるんだ。おかしいだろ?小さな時は皆にも色んな個性や得意な事があったのにさ、大人達に皆と違う事をする子は悪い子だ!って言われて子供達は自分の個性や得意な事を潰して苦手な事を克服して“普通”になろうと努力するんだ。それなのに大人になると色んな所で個性を出せとか、苦手の少ない人よりも得意な事が一つある人が良いとか言われるんだ。小さな頃に大人達が捨てさせた個性を大人になって要求してくるんだよ。だから、お前のその身体も別に気にしなくて良いさ。俺達の生きる大きな世界で見たらちっぽけなもんさ。」
ユキワラシはきのみを食べるのを忘れてタツキの顔をジッと見つめる。
タツキはユキワラシの目を見ながら頭を撫でる。
初めはビクついたユキワラシだったが徐々にタツキの手を受け入れていく。
「お前は変わらなくて良い。変わる必要なんてないんだよ。もしお前が良いなら一緒に来るか?」
ユキワラシはタツキの言葉を聞き、伏し目がちに頷く。
「おし、そしたらあそこにいるお前の仲間達にお別れのバトルだ。」
ユキワラシは目を見開き、首を振る。
「どうした?戦っても勝てないって?」
頷くユキワラシを見てタツキが言う。
「今までは勝てなかったかもな。でも今はお前一人じゃないだろ。俺がいる。任せとけ。大抵は一人より二人の方が強いんだぜ。」
タツキはそう言うとニッと笑いポケモン図鑑を使いユキワラシの情報を読み取る。
『ユキワラシ レベル26 ムラっけ にらみつける こおりのつぶて まもる こごえるかぜ』
「ムラっけ⁈お前ムラっけ⁈マジか⁈」
機械を操作したかと思うと興奮するタツキを見てユキワラシは首を傾げる。
そんなユキワラシを見てタツキは再度頭を撫でる。
「お前は俺が探してたポケモンて事だよ。行くか!」
タツキは立ち上がり、ユキワラシを連れてオニゴーリ達に近付く。
「こいつは俺と一緒に行く。だから最後にバトルだ。」
そう言うと先程ユキワラシに噛み付こうとしたオニゴーリが前に出てくる。しかし、その後ろから一匹のユキメノコが出てきてオニゴーリを押しやる。
ユキメノコはタツキと目を合わせ小さく頭を下げる。
チラッとユキワラシを見やると微笑んだ気がした。
ユキメノコはそのままオニゴーリ達を押しやり、集まっていたユキワラシ種達と一緒に洞穴の奥へと消えていった。