ユキワラシを一度ボールに入れ、再度外に出したタツキはユキワラシを持ち上げ、肩車をしながら家族の元へ戻る。
ユキワラシはいきなり変わった目線の高さに驚いた様だったが次第に慣れ、今までキョロキョロと顔を動かして今までとは見え方の違う世界を楽しんでいた。
(ノリで肩車したけど重たっ!)
タツキはユキワラシの重さに失敗したか?と思うも肩越しに伝わるユキワラシの姿を思い、気合で洞穴の出口を目指す。
浅瀬の洞穴を出ると既に13時。
ポケモンセンターで回復をお願いし、遅めの昼食を食べる。
「今日は、この後どうするんだ?」
と父が食事をするタツキに聞く。
「この後はルネシティに向かうよ。ルネシティはここからそう遠くない様だし、ご飯を食べたら移動だね。」
「ルネシティねぇ。どんな所なのかしら。」
「ルネシティはカルデラ状の街だよ。確か大昔に隕石の影響で出来た窪地に街ができたみたい。」
母の質問にタツキが簡単に説明する。
「カルデラって、船じゃ行けないだろ。空から行くのか?」
「どうやら船着場から専用の潜水艇が出てるみたいだよ。だから海底の様子も潜水艇から見られてツアーなんかもあるみたい。」
ガイドマップに書いてある事をそのまま伝えるタツキ。
そんな話をしていると食事も終わり、揃って船着場へ向かう。
出発の時間が来るまでは自由行動という事で各々好きに過ごしていた。
乗船の時間となり、潜水艇へ乗船する。
潜水艇はトクサネから少し離れると海底を目指し潜水を始める。
船内には窓として大きなガラスが嵌め込まれており、そこから海中の様子を見る事ができた。
海中には、たくさんのポケモンが生活しており、時間を忘れ幻想的な景色に魅入っていた。
海中を見ている間にカルデラ部分に侵入した様で潜水艇が浮上を始める。
無事ルネシティへ到着し、船着場へ降りる。
「まずポケモンセンターで部屋をとってから自由行動で良いんじゃない?」
タツキの提案に皆了承し、思い思いに夕食までの時間を過ごす。
タツキは家族と離れ、ある場所に向かっていた。
その場所とはルネシティ1のイベントスポットである目覚めの祠である。
ゲームではこの目覚めの祠でカイオーガ・グラードンがゲンシカイキし、ホウエン地方に天災が降りかかるのである。
中に入れない事は百も承知だがこの場所をタツキは自身の目で見てみたかったのである。
ルネシティは建物などが基本的に白い建材を使い建てられている為、景観が良く、異国に来た様に思われる。
(白い建物に青い海、前世だとギリシャとかに似た様な景観の街があったよな。そっちは行った事ないけどきっとルネみたいに綺麗だったんだろうな。)
街並みを見て前世のテレビで観た異国の街の風景を思い出すタツキ。
辺りを見回しながら目的地へと向かい歩いていく。
目覚めの祠の場所を地元の人に聞くとルネシティでは年に一回、祠開きという祭りがある様で親切に目覚めの祠の場所を教えてくれた。
(祠開きかぁ、どんな祭りなんだろ?読んで字の如くって感じなのかな?)
と考えながら進んでいると下の方にゲームでも見た橋と祠の入り口の様な建物が見えてきた。
タツキは階段を降り、祠へ向かうと祠の前で二人の男性が話しているのを見かける。
「ありがとう、ミクリ。君がいてくれてよかったよ。」
「いや、私の方こそ力になれずに済まないね。私達ルネの民は祠の中に入れなくてね。君は私の友じゃないか。私に出来る事なら協力させてもらうよ。」
タツキの前方で話をしている男性は一方がこの街、ルネシティのジムリーダーであるミクリ。もう一方が以前、タツキが宣戦布告したダイゴその人だった。
突然の宣戦布告の事もあり、何とも近寄り難いと思うタツキだったが夕食までには戻らないといけない為ここで帰るわけにはいかなかった。
明日もう一度来る、という発想はタツキの中には出て来ず結局二人の所に近付いて行く。
近付くタツキに先に気が付いたのはダイゴだった。
「おや?君はいつかの少年じゃないか。」
「お久しぶりです。チャンピオン。あの時は生意気な事を…。すみませんでした。」
「いや、良いんだよ。ボクもいい刺激になったからね。」
そう言うダイゴの目が一瞬鋭いモノに変わったが、タツキは敢えて気が付かないフリをしてミクリに話しかける。
「すみません。外からでも祠を見せて頂きたいのですが。」
「あぁ、構わないよ。祠開き以外でここに地元の人以外に二人も来るなんて、今日は珍しい日だね。」
ミクリからの許可をもらい、扉の前まで進むタツキ。
扉には石の洞窟で見た壁画と似た模様が書いてあり、思わず触ってしまう。
「何か感じるモノでもあるのかい?」
すぐ横に来ていたダイゴがそう尋ねる。
タツキは扉を触りながら
「いえ、以前石の洞窟で大きな壁画を見たんですがこの模様がどうにも壁画に書いてあったモノと似ている気がして。」
と素直に答える。
「キミもダイゴと同じ事を言うんだね。ボクはその壁画を見た事がないからわからないけどきっと私やこの祠の様に美しいんだろうね。」
(ミクリってちょっとナルシストっぽいキャラだけど自分と祠や壁画を比べるなんて…。)
「そうか、君もボクと同じ事を感じたんだね。」
そう言いながらダイゴはジッとタツキを見つめる。
(なんか今ダイゴの方見ちゃダメな気がする。)
と身震いしながら話を合わせる。
するとダイゴが話を変える。
「そう言えば自己紹介がまだだったね。知っていると思うけど、このホウエン地方のチャンピオン、ツワブキ ダイゴだよ。よろしくね。チャレンジャー。」
「チャレンジャー?私はミクリ。華麗にこのルネのジムリーダーをしているよ。」
チャレンジャーの部分に圧を感じながらもタツキも自己紹介をする。
「私も紹介が遅くなりすみません。神原タツキです。タツキと呼んでください。バッジ集めをしていて、今年のチャンピオン大会で優勝するつもりです。よろしくお願いします。」
「なるほど、チャレンジャーとはそう言う事か。でもまずはこの美しい私からバッジを受け取らないとエントリーすら出来ないよ。この私から華麗にバッジを獲れるかな?私もこのダイゴと華麗に凌ぎを削ったトレーナーさ。そう簡単にやられないよ。」
(この人の華麗とか美しいとか本当謎だよな…。)
「わかってます。ですが私も大会までにしっかり調整したいのでここで足止めされる訳にはいかないんですよ。」
思わず好戦的な表情をしてしまうタツキ。
「タツキ君。バッジはどれくらい集まってるんだい?」
「後は、ミクリさんから頂ければ全て揃います。」
「それなら私の華麗な全力でお相手しよう。バトルは明日でも良いかい?流石に今日は遅いしね。」
「はい。よろしくお願いします。」
「これは、タツキ君がバトルフィールドでボクの前に立つ日が楽しみだね。君はどこか他のトレーナーと違う気がするんだ。君とのバトルを楽しみにしてるよ。」
話終わるとダイゴはエアームドをボールから出す。
「おや、ダイゴは明日の華麗なバトルを見ないのかい?」
「見ないさ。タツキ君のバトルはフィールドで正面から敵として見たいからね。そう決めてるんだ。」
と言うとタツキへ視線を送り、他には何も言わずエアームドに乗り飛び去る。
「全く、ダイゴは相変わらずだね。顔は私に引けを取らないほど美形なのに頑固なのが玉に瑕だね。じゃあタツキ君明日は9時にジムで良いかい?」
「はい。大丈夫です。よろしくお願いします。」
「こちらこそ君に私とポケモン達の華麗なバトルをお見せしよう。」
明日のジム戦の約束をするとタツキはその場を離れ、ポケモンセンターへと向かう。