翌朝、朝食を済ませ、タツキはルネジムへ向かう。
(ミオリにバトルの事も教えなきゃだし、早く終わらせよう。)
浅瀬の洞穴ではバトルする訳じゃないと言っていたミオリだが、ヒマワキシティへ行く前にボロ負けした時にタツキからバトルを教えてもらう約束をしており、タツキも今後するしないに関わらず知識としてバトルの事を知るのも大切だと思っていた。
「待っていたよ、タツキ君。今日は一段と美しい私と最高の華麗なバトルをしよう!」
「ミクリさん、華麗に勝たせて頂きます。」
ニヤリと笑うとタツキはホルダーのボールに手を伸ばした。
*** ***
「まさか、一段と美しい今日の私をあっさり破るなんて…。こんなに華麗なバトルは久しぶりだったよ。ダイゴがあそこまで君を気にしていた理由がわかったよ。」
「ありがとうございました。私がそんなにダイゴさんに?」
「あぁ、じゃなければ昨日帰ったりしない筈さ。君のチャンピオン大会での華麗なバトルが今から楽しみだよ!」
「ご期待に添える様頑張ります。」
「頑張ってね。これがバッジだ。おめでとう。チャンピオン大会予選へのエントリーは最後のジムで行うことになっているんだ。手続きをするから私に付いてきて。」
無事最後のバッジを獲得し、予選へのエントリーを済ませたタツキはポケモンセンターにいた。
これからの予定はミシロタウンのオダマキ研究所で場所を借り、ミオリにポケモン講座を行う予定となっている。しかし、肝心のオダマキ研究所への連絡をしていなかった事を思い出したタツキは、ポケモンを回復してもらうついでにポケモンセンターのモニターを使い連絡を取る事にしたのだ。
『はい、オダマキ研究所。おぉー、タツキ君じゃないか。どうしたんだい?』
『サクさん。お久しぶりです。実はオダマキ博士にお願いがありまして…。』
『わかった。今代わるね。』
モニターに映ったのはサクで短い会話からオダマキ博士へと取り次いでくれた。
少ししてオダマキ博士がモニターに映る。
『タツキ君、久しぶりだね。何か用があるんだって?』
「はい、いきなりで申し訳ないんですが、昼過ぎから会議室をお借り出来ませんか?」
『会議室を?特に使う予定もないから大丈夫だけど何に使うんだい?』
と用途を聞かれ、素直にポケモン講座に使いたいと告げる。
『わかった。気にしないで使ってよ。』
「ありがとうございます。こちらから向かうので昼過ぎには着くと思います、よろしくお願いします。」
『待ってるね。それじゃあ。』
使用許可が出た事を家族に伝え、早速空からミシロへ向かう。
現在、タツキがフライゴン・ボーマンダ、ミオリがチルタリスと飛行機要員は揃っている為、家族全員でのフライトになる。
*** ***
ミシロの近くで降り、少しの距離を歩く。ミシロに着くと正午を少し過ぎたところだった。研究所へ向かう前に食事を済ませることにする。
食事を終え、研究所へ向かう。
「お久しぶりです。タツキです。」
と扉を開けるとオダマキ博士が出迎えてくれた。
「タツキ君、久しぶり。元気そうで良かったよ。さ、皆さんもこちらへ。」
タツキ達は会議室へと案内される。
会議室に入るとそこにはオダマキ研究所のメンバーとハルカちゃんまでおり、タツキは首を傾げた。
「皆さん、何故ここに?ハルカちゃんまで。」
タツキの質問にひときわ仲の良いサクが答える。
「そりゃ、タツキ君のありがたいお話を聞けるんだ。みんな研究なんかほっぽり出して集まったんだよ。」
と良い笑顔とサムズアップで教えてくれた。
「今日はミオリへの講義だったんですが皆さんも聞きたいと?」
「「「そう言う事。」」」
息の合った研究所メンバーに対して溜め息を吐くタツキ。
「で、ハルカちゃんは?」
「ハルカは僕が呼んだんだよ。これから先ポケモンと関わる事が増えるだろうからそのためにね。」
とサムズアップしながらオダマキ博士が答える。
「まぁ、わかりました。て事だけど、父さんと母さんも聞く?」
「そうだな。面白そうだし聞いてみるか。」
「楽しみね。」
と席に着く二人。
「では、思ったよりも人数が増えましたが始めますね。これから話すのはポケモンについて私なりに考えたものをまとめたモノになります。簡単に言うとバトルとかコンテストというものを行う上で必要になる基礎知識だと思って下さい。」
これから話す内容はこの世界では確立されておらず何となくそう感じる、といった根拠のないものである。
しかし、それらは前世では確立されて考え方でそれらをもとに前世のタツキは厳選を行なってきた。
「良いですか?ポケモンとは私達人間と同じ生き物です。それを踏まえた上で、ポケモンには6つのステータスがありますよね。バトルではこのステータスが高ければ高い程有利だと言えます。そしてこのステータスを決定付ける三大要素を三値と私は呼んでいます。まず、三値とは3つの値と書いて三値です。ではこの3つの値とは何の値なのか?と疑問に思われるでしょう。まず一つ目が種族値です。この種族値とはポケモンの種族ごとの得意・不得意な能力を数値として表したモノになります。例えば、攻撃の種族値が高いポケモンは攻撃力が成長しやすく、逆に低いポケモンは成長し難いという訳です。と言っても私も観測データが少ない為、今の段階では明確な事はあまり言えませんが、そこはご了承下さい。動物で例えると、人間もチーターも同じ生物ですが足の速さは圧倒的にチーターの方が速いですよね?つまり大きく動物と言う括りではありますが人間とチーターではそもそもの能力に違いがあると言った考え方です。次に二つ目、個体値です。個体値とはその名の通り、個体の素質の事を言います。先程の種族値は人とチーターでの能力の比較で使う値でした。今度の個体値は同じ人の中での能力の比較に使う値です。これは、人の中にも足の速い人、力の強い人がいると思いますがそれらを比較する際に必要な値です。最後に三つ目、努力値です。この努力値は他の二つよりも圧倒的に情報が少なくうまく説明できませんが、この値はトレーナーがそのポケモンのどの能力を伸ばそうか考える時に使う値であると言えます。人で言うと腕相撲に勝ちたいから腕立てをするとか、足が早くなりたいから走り込みをするとか、ポケモンの能力を見てトレーナーの手でどの能力を伸ばすかを選択できる数値です。こちらも未だ検証不足ですのでそんなもんかと聞いていただけたら幸いです。ここまでで何か質問などは?」
タツキが捲し立てる様に説明を行い、質問の有無を確認する。
聞いていた人達は皆瞬きさえ忘れたかの様に固まりタツキを見ていた。
「無いようなので続けますね。」
「「「いやいやいや!ちょい待てや!」」」
「もう!あるなら言って下さいよ。」
溜め息を吐きながら再度質問を確認するタツキ。
「で、質問は?」
「すまない、タツキ君、この三値?はどうやって調べたんだい?」
「小さな頃から同じポケモンなのに速い子や遅い子がいて気になって調べてました。あとはジム巡りの途中ですね。博士のお手伝いで図鑑作成をしていたこともあって、ある程度は信用出来る情報は集まっていると思ってます。」
「一匹ずつ検証したのかい?」
「そうですよ。それ以外にどうやるんですか?私、案外こう言う作業好きなんですよね。」
「な、なるほど。ありがとう。続けて。」
タツキは話を再開する。
「今説明した三値のほかにもう一つ、ポケモンを育成する上で大切な要素があります。それは、ポケモンの性格です。ポケモンも生き物ですのでそれぞれ個体によって性格が違います。同じポケモンでも寝てるのが好きな子、歌が好きな子、おっとりしてる子などポケモンを研究している皆さんなら何となく理解出来ると思います。ミオリとハルカちゃんは同じポケモンでもいろいろな子がいると思ってくれて良い。」
「確かに研究をしているなかで思い当たる節はあるけど、それがバトルにどう関係するんだい?」
とオダマキ博士が聞く。
「性格があると言う事は、同じポケモンにも個体によって得意な事と不得意な事があると言う事です。この性格はレベルが上がる際のステータスの上昇率に関係していると考えていますが正直な話、重要ではありますがそこまで拘る必要はありません。」
「お兄ちゃん、大事な事なのはなんとなくわかるけど気にしなくて良いの?」
「理想の話だよ。気にしなくても良いと言うより実際にはそこまで非情な判断は難しいのさ。」
「どう言う事?」
ミオリはタツキの話を聞き、首を傾げる。
「じゃあ、ミオリはエナちゃんを育てる上でエナちゃんの育成にそぐわない性格だからと言って違うグラエナを育てようとは思わないだろう?」
「そうだね。エナちゃんはエナちゃんだもん。」
「そう言う事。この性格まで考慮するなら数多くのポケモンを捕獲し、その中から目的の性格の子だけを育てると言った方法しかない為、必ず気に入った子を育てられる事は稀な事。ポケモンとの出会いは一期一会。バトルでの強さを追い求めるのであれば性格の厳選は必須ですが普通にバトルをしていく分にはそこまで気にしなくても良いと思います。」
タツキの説明に聞いていた人達は頷く。
「そうだね。そこまで行くと非情だと思ってしまうね。だからこの事を論文として発表するなら性格の事は伏せた方がいいだろうね。」
オダマキ博士もタツキの意見に賛成のようでそう、口にする。
「ただ、知っておく事で今後の育成の方向性を決める指針の一つになる事は間違いないので頭の片隅にでも置いていて頂けたらと思います。そして、実際にバトルをする際に大切になってくる事はポケモン達のタイプ相性です。ジムリーダーなどは基本的に統一されたポケモンでバトルしていますが、初心者はバランス良くパーティーを構築する事をお勧めします。タイプ相性の相関図は後で用意してお配りしますし、調べて頂いてもすぐに分かると思います。最後にミオリの手持ち達で実際に種族値を考慮し、育成の方向性を出したいと思います。じゃあ、ミオリこっちに来てポケモン達を一体ずつ出してもらえるかな。」
タツキに誘導されミオリが前に出てくる。
「では、まずこちらのグラエナですが、私の集めた情報では種族値として一番高いのは体力の値だと思われます。しかし、防御や特防といった守りに関する能力は高いとは言えない為、打たれ強いとは言えません。その分攻撃力の値が体力に次いで高い為、物理技で攻めるといいかと思います。しかし、物理技だけでは遠距離の相手に対し対抗策がなくなってしまいますし、素早さの値もそこまで高くない為に素早く近付いて攻撃という事が難しいです。覚える技としては遠距離ではバークアウトやあくのはどう、近距離では三属性の牙、かみくだく、じゃれつくなどですね。変化技ではほえる、いばる、あくびなど能力変化ではないですが勝手の良い技を覚えます。次にチルタリスですが…」
とタツキは自身の情報とミオリの手持ちを照らし合わせ大まかな特徴を伝えていく。
「今の情報からミオリの現在の手持ちであるグラエナ、チルタリス、ヒンバスでは多くのタイプに対して大きなダメージを与える事が難しく、今後新たにポケモンを育成するのであれば、はがね・じめん・いわ・ゴースト・でんきタイプをお勧めします。」
と伝える。タツキはハルカの話をしようとするも現在ポケモンを持っていないとの事で保留となった。
「バトルをする上での基礎的な部分をお話しさせて頂きました。今日はこの辺で一旦終わりにさせてもらいます。ミオリは自分のポケモンと触れ合う中でもっと良くポケモンの事を知らないといけないよ。」
タツキがそう言うと、研究所メンバーがタツキに押し寄せる。詳しく三値について聞きたい。やそれに近しい記録があるから見てくれ。など四方八方から話しかけられ、タツキも全てに応えきれない。研究所メンバーの話を聞き終わる頃には日が沈み辺りは暗くなっていた。