ポケモンと現実の混ざった世界で   作:チュロッシー

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4.ありがとう

図書館での情報収集から更に1ヵ月。

最近の日課は、過去のポケモンリーグの録画を観ながら指示出しの練習をすること。何度も観ている映像の為、次の行動がわかってしまうので今後どうやって練習をしようか悩んでいるところだ。

 

    コツ…コツ…

 

「タツキ。タマゴ、コツコツいってるわよ。」

 

母の言葉に驚いで抱えているタマゴを見る。

 

「えっ⁈本当だ!!産まれる!」

 

テレビのバトルに集中し過ぎてタマゴの変化に気が付かないとは何たる不覚…

どうやら動きが活発になってきているタマゴは祖父がくれた方のタマゴのようだ。もう一つのタマゴも鈍くも動いている為、少し間を開けて孵化すると思われる。

 

 

タマゴ達に出会って2ヵ月。

常に自分以外の命が近くにいるという感覚は、初めは慣れないものであった。しかし、日が経つとそこにあるのが当たり前だと感じるほどに愛おしく思っている自分がいた。寝る時も風呂の時も一緒にいられる時はずっと一緒にいた。

さぁ、早く顔を見せてくれ。ずっと待ってた相棒達。

そして、俺の元に産まれて来てくれてありがとうと言わせてくれ。

 

   バリ…バリバリ…

 

タマゴの穴が少しずつ大きくなり頭らしきものが見えている。

赤みがかった黄色とオレンジ色が見えている。

 

俺は、この配色を見て腰を抜かしそうになった。

何故ならまだタマゴから完全に出てきた訳ではない為、そうとは言い切れないが限りなく近いのだ。全800種以上いるポケモンの中で俺が最も長い時間を共に(ゲーム内で)過ごし最も信頼したエースの幼体のその頭頂部に。

 

(もし違っても嬉しい事には変わりないが、ここまで期待させたんだ、そうであってくれ!)

 

殻を破るのに必死なポケモンをジッと見ていると、それまで一心不乱に殻を壊そうとしていた顔を止め、こちらを見返して鳴きかけてきた。

 

「チャモチャモ!チャーモ!」

 

一際大きな声を出したかと思うとタマゴから勢いよく飛び出し、俺の前に着地かと思うと

 

「チャモ!」

 

と両脇の赤みがかった黄色い羽?を動かしてこちらを見ている。

ゆっくりとしゃがみ、産まれたばかりのアチャモを丁寧に抱きしめる。

 

「チャ、チャモチャモ。」

 

くすぐったかったのか身を捩らせるアチャモ。

 

「俺と出会ってくれてありがとう。俺はタツキ。これからよろしくなアチャモ!」

 

「チャモ!」

 

俺こと神原達樹の初めてのポケモンは、ホウエン地方の御三家、アチャモだった。

これは、本当に嬉しかった。ホウエン地方が初めて登場したのはゲームボーイアドバンスのソフト、ポケットモンスター ルビー・サファイアだった。

このゲームが発売された当時確か小学4年生だったと思う。少年誌に掲載される発売前の情報を読み耽った記憶がある。砂地を歩くとつく足跡や水面に写るキャラクター達、バトル画面でのポケモン達の動き。そのどれもが自分の心を掴んで放さなかったのを覚えている。

 

そして、ポケモンというゲームを理解した後に初めてプレイしたソフトでもある。

初代は、流行っていたからとりあえずやってみた。金・銀・水晶は初代からの流れでプレイしたがやり込むまではいかなかった。

しかしルビー・サファイアは、違った。年齢的にもゲームの内容を理解出来るだけの脳の発達に加え、前作まで無かった特性という新要素の追加。

最もらしいことを言ったが俺がルビー・サファイアに嵌った最も大きな理由は、何より少年誌に掲載されたアチャモのイラストが可愛かったからである。

実際にプレイする中で可愛いアチャモが少しずつ逞しくなっていく姿はとても嬉しかった。それ以降、常にエースとして自分を支えてくれたバシャーモ。世代が進むにつれ、新特性や新ポケモンの追加もあり使用者が減少したバシャーモだが夢特性の解禁で息を吹き返すことになる。

 

「寝返った奴らがお前(バシャーモ)に帰ってきたぜ。」

 

恥ずかしい事に前世の俺のいつかの口癖である。

もちろんゲーム画面に向かって呟かれる言葉である。

しかし、第8世代の開発時の発表で俺は血の涙が本気で出るかもと思ってしまう程の事態と直面する。

ポケモンのリストラである。ポケモンは、既に総数が800体以上おりその全てを新作の為に新たなデータとして作り直すにはあまりにも時間が足りなかった。

その為に行われたのが大規模なポケモンのリストラ、単純に新作には出てきませんよって事だ。

悲しいかなそのリストラリストにマイエースであるアチャモ一族の名前もあったのだ…

 

そんな自分の山あり、谷ありなポケモンライフを共に(勝手にそう思っている)過ごしたバシャーモの幼体であるアチャモが初めてのポケモン。

さらにどんな事があれ、ポケモンを本当に好きにさせてくれたのは、この目の前にいるアチャモというポケモンなのだ。

特別な子になって欲しいと願うのは、いけないことだろうか…

しかし、この子自分の中の特別である事には違いない。

 

「なぁ、アチャモ。」

 

「チャモ?」

 

俺の呼びかけにこちらを見つめながら首を傾げるアチャモ。

 

「ニックネームを付けようと思うんだ。お前が俺の特別なんだって証をさ。」

 

「チャモ!チャモチャモ!」

 

ニックネームと聞き、産まれたばかりでわかってるのかは、謎だがどうやら喜んでくれてはいるらしい。

 

「お前の名前は、シャモだ。お前が大きくなるとバシャーモってポケモンになる。簡単だけどそこからとらせてもらった。どうかな?」

 

「チャモ?…チャモチャモ!」

 

初めは、思案顔だったが喜んでくれた様だ。

 

シャモを抱きしめながら体を温かいタオルで拭いてやっているともう一つのタマゴからコンコンと音がしてきた。

 

シャモと2人でジッとタマゴを見入る。コンコンと音が続き、ズボッと殻を突き破り白い手の様なものが出てきた。その手の様なものは、殻に開いた穴を広げようと殻を叩いている様だ。

 

殻に開いた穴から緑色の傘の様なものとそこから飛び出た赤い突起が見えた事で俺は、アチャモの時と同じ衝撃を受けた。

前述した特徴から産まれたポケモンはラルトスでほぼ間違いないだろう。

 

このラルトスも初登場はアチャモと同じ第3世代のルビー、サファイアである。

出現率の低いポケモンで裏ライバルのような存在のミツル君のパートナーとして登場するポケモンで、ミツル君のラルトス捕獲イベントで全プレイヤーが目にするポケモンなのだ。

さらに元々は、エスパー単タイプだったが第6世代以降タイプにフェアリーが追加されている。

この事からドラゴンタイプへ対抗も出来、技範囲も広い事から多くのパーティーで活躍したポケモンである。

 

そしてもちろん、第3世代をやり込んだ人間としてとても馴染み深いポケモンである。

最新作の第8世代では、新たなキョダイな姿も発見されている。

 

ラルトスについての考えを頭でまとめていると、どうやら頭が出るほどの穴を開け終わったらしい。

ゆっくりと自らのサイコパワーを使いタマゴから出てくるラルトス。

俺とシャモの前に降り立ちこちらをジッと見てくる。

 

「はじめまして。俺はタツキって言うんだ。よろしくな!」

 

「チャモチャモ!」

 

「ラ、ラル!」

 

シャモの勢いに押されながらもペコリと頭を下げてくる。

ゆっくりとラルトスの頭に手を伸ばし優しく撫でてみる。

初めはビックリしたようで体がビクついたがその後はされるがままだ。

心なしかラルトスの目もトロンとしてきたように思う。

 

「なぁ、ラルトス。お前も俺の特別なんだ。ニックネーム付けさせてよ。」

 

ラルトスの目を見て自らの気持ちを伝える。

 

「ラル!」

 

ラルトスは、元気に頷き笑顔を返してくれた。

 

「じゃあ、ラルトスは今日からフェルだ。妖精みたいに見えるしさ、フェアリーとラルトスって名前からとったんだ。どうかな?」

 

「ラル!ラルラル!」

 

俺の目の前で産まれたばかりのラルトスが笑顔で万歳をしている。

 

「あぁ…母さん、父さん、先に逝く息子をお許し下さい。2人のこの様子を見たら最早思い残す事は何もありません。」

 

  パシッ!

 

「なにバカな事言ってるの!!もう少しでお父さんが帰ってくるからシャモちゃんとフェルちゃんの3人で先にお風呂入ってきなさい。その間にご飯仕上げておくから。」

 

どうやら心の声が口に出てしまっていた様だ。しかし、この2体初めてのポケモンフィルターがかかっているからか想像の範疇を超えてくる可愛さをしている。

これから先の2体の可愛さを真剣に考えながら2体を抱え風呂場へと向かうタツキであった。

 

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