図書館では、状態異常の自然治癒とレベルによる指示の拒否について調べて来た。
研究している人が少ないのであろう事がわかる蔵書の少なさだった。しかし、その中で目についたものが『ポケモンの感情と生態の関係性』と言う題名の論文だった。著者はオダマキ博士となっていた。幸運な事にオダマキ博士は、ホウエン地方のミシロタウンに研究所を構えており、明日行ける距離の所なのだ。
(これは、直接話を聞きに行っても良いかもしれないな。でもまずは、まとめよう。)
・ポケモンは自身の感情的な要素により部分的な体調の回復が可能
・ポケモンは基本的に強者に従うものだがごく稀にそうでない個体が存在する。
・自分とシャモ達はシャモ達が産まれた時からずっと一緒
・家族意識が体調や従うものを変えさせる?
・野生の他種間でも同様の事が確認されている
・他種間となると家族意識とは言い切れない
・親愛の情であれば他種間でも考えられる
・トレーナーとポケモンに置き換えるとどれだけ懐いているか
上記の事が情報を整理し考察したものである。
早速これで小論文みたいな物を書いてしまおうと思っている。今日のうちに書き上げ、明日にでもオダマキ博士に読んでもらいたい。
(まぁ、会えればになるが…
オダマキ博士、フィールドワーク好きだからなぁ…)
その前にシャワーを浴び、夕食を摂ろうとシャモとフェルの入ったボールと鞄を持って食堂を目指す。
(確か、センター内の食堂ならトレーナーカードで無料なんだよな。)
適当に食事を済ませ腹を膨らませる。シャワーでさっぱりとした頭で3時間で論文を書き上げる。
時計を見ると22時を少し過ぎた所。論文も書き終わり、机の上を片付けベッド入る。
タツキがベッドに入ると2つのモンスターボールからそれぞれポケモンが飛び出してくる。
「シャーモ。」
「リーア。」
小さい頃から一緒に寝ていた事もあり一緒に寝たいようだ。
2体とも布団の端を小さく引っ張っている。
「進化してお兄さんとお姉さんになったってのにな。」
笑いながら布団をまくりベッドの中に入れてやるとシャモが俺の左、フェルが俺の右側といつもの定位置につく。
「おやすみ。」
「シャモ。」
「リア。」
いつものように声を掛け合い就寝する。
*** ***
タツキは眩しい朝日で目を覚ます。
左にはシャモが、右にはフェルが未だ眠っていた。
2体を起こさないようにゆっくりとベッドから抜け出し、少しカーテンを開け朝日を直に浴びる。
部屋が少し明るくなった事でシャモとフェルも身動ぎ、目を覚ます。
「ごめん。起こしちゃったか。」
「シャーモ、シャモ。」
「リーア。」
2体とも首を横に振り、眠そうに目を擦りながらテトテトとこちらに向かって歩いてくる。
時計を見ると6時を指している。
「よし2人とも今日は、午前中のうちにミシロタウンへ行くぞ。バスが出てる筈だから朝ご飯を食べたらバス停を探そう。」
今日の簡単な予定を告げてタツキは着替え始める。
センターの食堂で3人で朝食を食べ、ジョーイさんにミシロタウン行きのバスが出てる場所を聞く。
トウカシティからミシロタウンへ行くには、一度コトキタウンで乗り換えなければいけないらしい。
とりあえずコトキタウンへ向かうバスが出るバス停は、センターから徒歩5分程らしい。ジョーイさんにお礼を言い、早速バス停へ向かう。
太陽の位置も少しずつ高くなり、仕事に向かう人達が街を進んでいく。
街を行く人達を見ながら歩いているとバス停が見えてきた。
既にバス停には仕事や学校に行くのだろう、スーツや制服・ジャージを着た人達が4人おり、バスを待っていた。
5分程待っているとバスがやって来た。
順番に乗り込み、空いていた席に座りノートパソコンを取り出し昨日書いた論文に誤字や脱字がないかを確認する。
いろいろなバス停に止まりながらバスに乗る事1時間。
タツキはコトキタウンへ到着した。
現在9時まであと3分、近くのバス停を見ているとミシロタウン行きの文字が目に入る。これ幸いと時刻表を見てみるとちょうどミシロタウン行きと書かれたバスがやってくる。
どうやら9時発の便があったようだ。
バスに乗り込み、バス内の液晶画面を見るとミシロタウンへの到着時刻は30分後となっており終点のようだ。
もう少しで本物の博士に会えると思うと緊張してしまう。
しかしそれ以上にこれからの事を考えると興奮してしまう。
今回は、論文を見てもらう事が大きな目的だ。
しかしいつか共同研究をしてみたいと思っている。博士達は、専門にしている事が違うため変化技などの技の事は、アローラのククイ博士にも話をしたい。
それには、まずはこれからオダマキ博士にしっかり会って論文に目を通してしただけるかが今後の鍵である。
(頼むから研究所にいてくれよ、博士)
フィールドワークで研究所を空けることが多いオダマキ博士に念を送っているとそれまで動いていたバスがゆっくりと減速しバス停に止まる。
バス停には、ミシロタウン・フレンドリーショップ前 と書いてある。
バスを降りフレンドリーショップに入る。喉を潤すためにお茶を買い、論文を印刷する。
印刷した論文をファイルに入れ鞄にしまう。
フレンドリーショップの店員さんにオダマキ研究所の場所を聞くと町もそう大きくないとの事でショップを出て右方向へ5分程歩くと着くらしい。
店員さんにお礼を言い早速研究所へ向かう。
天気も良いため、2人をボールから出し一緒に歩く事にする。
「シャーモ!」
「リアリーア。」
暖かい陽気で外に出られたのが嬉しいのか2人とも笑顔である。
「車も来るから離れないんだぞ。」
と気をつけるように声をかけ歩き出す。
トウカシティから比べると流石に自然が多く感じる。
(やっぱり緑が多いと気分が穏やかになるよな。まぁ、生まれがホクリクって田舎だからかもしれないけど。)
なんて事を考えていると
「ぎゃーーーーーー、いててててて、だれかー、だれかいませんかーーー?」
どこからか叫び声と助けを求める声が聞こえる。
声色ならして成人男性である事がわかる。さらにこの町でこんな声が聞こえる理由が頭に浮かんでしまう。
(こんな初対面、主人公かよ…。きっとフィールドワークで何かに追われてるんだろうな…。)
とりあえず、声の聞こえた方に向かって走る。
どうやら、声の主は予想通り男性でタツキのいた場所から路地に入り少し茂みに入った所にいた。腰を抜かし木を背に目の前で牙を剥き出しにし唸るポチエナにまるで『こっちに来るな』と言うかのように両手を前に出し首を横に振っている。
「シャモ、でんこうせっか!」
「シャモ!!」
俺の指示に一緒に隣にいたシャモが高速でポチエナに突っ込んで行く。
横からぶつかられたポチエナは近くにあった木にぶつかり目を回してしまう。
(このポチエナ、ミオリにあげようかな…。ホウエン地方に来たがってたし。前世では、高校生くらいの時のミオリは男運無かったからな。番犬だな。)
そう考えたタツキは、人生初ゲットを妹の為にポチエナを捕まえる事に使うのだった。
聞く人が聞けばシスコンと言われるだろう考えである。
ポチエナが入り、揺れの止まったモンスターボールを手に取り振り返ると先程腰を抜かしていた男性がこちらに近づいて来る。
「いやぁ、ありがとう。本当助かったよ。僕はオダマキって言うんだけどこの町でポケモンの研究をしていてね。フィールドワークをしていたら鞄を置いたところから離れてしまったみたいで、あんな事に…。君は、命の恩人さ。」
「いえ、そんな。でもお力になれて良かったです。実は、この町にはオダマキ博士にお会いしに来たんです。さっきバスで着きまして、研究所に向かっていた所にオダマキ博士の声が聞こえてきまして。」
本人が目の前にいるのだ正直に会いに来た事を言った方が良いだろうと思い口にする。
「えっ?僕に会いに来たの?」
「はい。実は先日博士の『ポケモンの感情と生態の関係性』と言う論文を読みまして…。」
「君が?あの論文を?」
訝しげな目で見られる。
そりゃ、小学生が論文読んだって言って一回で信じる大人の方がどうかしてるよな。
「はい!自分も気になった事があり調べていたら博士の論文に行き当たりまして。とても参考になりました。そこで博士の論文と自分の考えをまとめてみたんですが読んで頂けないでしょうか?」
と鞄から自分の論文の入ったファイルを博士に渡す。
俺からファイルを渡された中の紙束を掴み出す。
変わらず訝しげな目で見られてはいるものの軽い調子で手に持った紙束を2枚3枚とめくる。
次第に真剣な表情に変わり、論文から目を離しこちらを見てくる。
「君、名前はここに書いてある 神原 タツキ 君で良いかな?あといくつ?」
「はい。神原タツキです。歳は、今年10歳になりました。」
「君これから時間ある?すぐに僕の研究所に行こう。」
(そんなに興味をそそられる内容だったかな?)
なんて考えながらオダマキ博士に返答する。
「大丈夫です。この町に来たのは博士にお会いする為だったので時間はあります。」
「なら、早速行こう。」
と俺の手を引き走りだすオダマキ博士。
予想外な展開もありながら目的のオダマキ博士に会えた事喜ぶタツキだった。