無理矢理転生【リメイクの為、永久凍結】   作:ムメイノライデン

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前回のあらすじ
前回、残りの英霊、セイバーとバーサーカーを倒した士郎はいよいよ、美遊を助け出し、英雄王との最終決戦に挑む。
果たして勝つのはどちらか?本編をどうぞ。


夢幻の剣製

「ここが、美遊が捕らえられてる洞窟か……」

 

バーサーカーを倒してから歩いてすぐの距離にその洞窟はあった。

 

魔術を少し齧った程度の魔術師見習いとも言えない俺でもわかる。この先の魔力量は明らかに可笑しい。

 

それだけではない。ここには明らかに結界も貼られている。

 

それも人よけと言っていいレベルではなく恐らく、人だけではなく動物や果てには昆虫まで近ずかせないように構築された結界なのだろう。

 

洞窟の周りには文字通り虫の1匹も見当たらない。

それだけ、美遊の存在は必要不可欠らしい。

 

──それでも、助けるのが兄貴ってものなんだがね?

それじゃあ、念の為最初っからアーチャーを夢幻召喚(インストール)しておけ。

 

了解。

いざとなったらケルベロスを使わせてもらうぞ。

 

──もちろん。俺のクラスカードを持ってる君は一応、俺のマスターだからね。さぁ、そろそろ君の妹の所に向かうとするか!

 

ケルベロスの一言で自分にあらためて気合いを入れ、先に進む。

 

少し進む事に“これ以上進むな”と身体が警告してくる。これも結界の力だと考えると改めてすごい結界なのだと感じさせられた。

 

仲は美遊が閉じ込められているのかと感じさせられるほど静かで罠は仕掛けられてないように思えた。

 

──な〜んだ。やっぱり慢心してるじゃないか。

普通ならここら辺で魔術系の罠の1つや2つあってもおかしくないのにな……やっぱり置換魔術専門だと強すぎる罠は貼れないか。

 

ひとつの分野のみを極めるのも難点だな。

そういう俺も投影魔術と強化魔術ばかり極めているが…

 

──案外、そうでも無いぞ。エインズワースは置換魔術を極めに極めた結果、英霊の力のみを自身に置換するクラスカードと言う物を創り出したんだからな……技術力だけなら家の一族(アインツベルン)と同じぐらいか。

 

逆にクラスカードと同じぐらいの技術力を持ってるケルベロスの一族って何者だよ。

 

──気にするな。雑談はここまで……洞窟の構造を解析しておいた。単純に真っ直ぐ、一本道……罠は無く邪魔者も“まだ”来ていない。単純に俺達が来るのが速すぎて

対策が不完全なだけだろうな。早く行け、英雄王が来る前にとっとと済ませなさい。

 

「あぁ、分かっている。」

 

急ぎ足でさらに先に進むそこには何か怪しい石版らしきものが何個も置かれた大空洞に出た。

 

そこには謎の術式がそこら中に書かれておりその中心地に、丸で生贄を捧げる祭壇のようになっている場所に美遊がいた。

 

「美遊!」

 

「……お……にい……ちゃん?」

 

「随分と待たせちまって……ごめんな。」

 

本当に待たせてしまった。

だけどようやく助けられる。

 

「あの人たちに聞いた…………お兄ちゃんと切嗣さんがわたしを拾ったのは、わたしの力を使うためだって…………わたしはただの道具で、使い方を見つけられなかった切嗣さんの代わりに、エインズワースがわたしを使って世界を救うんだって…………なのに今更……どうして来たの!?」

 

そう言って叫ぶ美遊の目には涙が浮かんでいた。

きっと辛かったんだろう。

 

きっと悲しかったんだろう。

でもそんな辛いのはもう終わりだ。

 

「そんなの、考えるまでもない。」

 

持っていた7つのカードが美遊を囲むように浮遊し魔力を発し始める

 

思い出す楽しかった日々──

 

ほんの少しの時間だけだったが自分が死ぬ最後の瞬間まで優しくしてくれた兄の姿。

 

本当の兄弟になりたいと願ってくれた美遊の姿。

 

思えば、俺は助けられてばかりだったからな……

 

だから今回は──

 

 

「俺は“お兄ちゃん”だからな。妹を守るのは当たり前だろ?」

 

それはいつか自分に言われた言葉を繰り返したに過ぎないかもしれない。

 

だけど、それはかつての兄さんの言葉ではなく、確かに俺の言葉だった。

 

ある日の事を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お〜い、士郎!!そこら編は崖崩れしやすいから、あまり遠くに行くなよ!!」

 

「分かってるって!ほら、兄さんも遊ぼうよ!」

 

「ハイハイ、今行く……士郎!?危ない!!」

 

その日、俺は遊んでいて、崖から落ちかけていた所を兄さんに助けられていた。

 

兄は崩落する崖から、強化魔術を使い、崩れ落ちる地面から地面へ、俺を庇いながら飛び跳ね、何とか地面に着地したのだ。

 

そのせいで兄はボロボロになっていたがお陰で俺の命は助かっていた。

 

「大丈夫か、士郎?」

 

「うん……俺は大丈夫だけど……」

 

「ふぅ〜なら良かった……」

 

「ねぇ、なんで兄さんは俺を助けてくれたの?あのままだと兄さんも死ぬかもしれなかったのに。」

 

「何言ってんだよ士郎。兄が弟を守るのは当たり前だろ?俺はね、父さんが憧れたような万人が望む“正義の味方”には慣れないかもしれない、だけどさ家族の味方になら誰だってなれるだろう?それが俺の目標!家族を守る最強の守護者!それってカッコイイと思わないか?」

 

「えぇ〜正義の味方の方がカッコイイじゃん。と言うか、守護者って何?」

 

「アチャ〜まだ士郎には早かったかな?う〜ん……まぁ、家族を守る人とでも思っておけ!」

 

「う〜ん……分かった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは今や夢となった過去の景色。本当に今更だがようやく兄さんが言っていたことの意味がわかった。

 

理屈なんていらない

ただ単に大切だから守るだけ

 

兄が妹を守る当たり前の事をする

それは善も悪も関係が無く、とても有り触れた普通の行為。

 

こんな普通の事を理解する為に数年かかるなんてな……馬鹿らしいや。

 

──願いは決まったみたいだな。さぁ、あいつが来る前に早く。

 

あぁ、分かっているさ。

 

「我、聖杯に願う──

 

美遊がもう苦しまなくていい世界になりますように──

 

やさしい人たちに出会って

 

笑いあえる友達を作って

 

あたたかで ささやかな 幸せをつかめますように」

 

それは自身を“贋物”と呼んだ人間のたった1つの“本物”の願い。

 

7つのクラスカードを持つ聖杯戦争の勝利者の願いを聖杯は聞き取り、願いを叶える為に起動する。

 

空間内に光が溢れ、美遊を中心として光で構成された木が見える。

 

それは、この世の全ての悪に汚染された別世界の聖杯とは違う神秘的な光景だった。

 

───やっぱり、これも世界の違いか……でも結局、汚染されていようがなかろうが、聖杯なんてろくでもない代物だな……そら、敵が来た。全力を持ってあの英雄王を止めるぞ少年!

 

 

 

「悪いな……今妹が頑張っているんだ。もう少しだけ待ってやってくれないか?」

 

念の為、話し合いを試みるも、

 

「ならぬ。貴様の望みは叶わない。聖杯戦争に紛れ込んだ贋物が、奇跡を手にする等……あってはならぬ。」

 

話し合いにはやはり応じず、こちらに黄金の波紋から剣や槍等の武器を宝具を放ってくる。

 

対する俺は反応が間に合わずに後ろへ飛ばされてしまう。

 

「この能力、やはり……本物の英雄王、ギルガメッシュの、カードか……」

 

それは桜を騙す為に使用されたカードであり、俺が持っていたアーチャーの英霊……英霊エミヤの天敵でもある人類最古にして最強の英雄王。

 

「カードも持たず、生身の人間が英雄王の前に立つなど愚昧極まる。」

 

──嫌、カードはあるのだが……気を付けろ少年。自慢じゃないが俺は英雄王に対抗出来る切り札だ。決して俺のクラスカードを持っていることを悟られるなよ。

 

あぁ、了解した。

 

「東西を問わずに、古今を問わずに、人類の成した全てがこの英霊の力だ。」

 

「なるほど、そりゃ桜が最強のカードと言うわけだ。」

 

古今東西、あらゆる英雄の宝具の原典が蔵にしまわれているのだ。

 

当然、最強と言われている訳だ。

それに加え、エインズワースの技量により、隙もほとんどない。

 

それに──

 

「人類……人類か…………大きいものだよな。言葉以上に。そんな途方もなく重いものがお前達のその背中に乗っている訳だ。けどさ……俺にも、背負っている物があるんだよ。」

 

──(正義の味方(エインズワース)は人類の未来を、衛宮士郎(人類悪)は家族の未来をね?本当に何処までも似ているな。第四次聖杯戦争に……)

 

「個人の感情か? あるいは感傷か? いずれにしても、この世で最も下らぬ物だ。」

 

そう言うと、アンジェリカ(英雄王)は先程放った宝具を黄金の波紋に回収し再び放ってくる

 

「くだらない……か?お前にとってはそうかもな?だが、その感情や感傷こそが俺の力でもある。

 

 

───投影、開始(トレース・オン)

 

 

 

放たれた宝具は即座に投影した干将・莫耶により、俺に当たることは無かった。

 

投影(トレース)だと?馬鹿な…………その戦い方はまるで──!?」

 

「自分が至ったかもしれない未来。その理想の体現者を憑依させ、戦いを繰り返してきた俺は、その起源までは至らずとも。その戦闘技術、魔術回路の殆どを先取りした。」

 

そう、ケルベロスによる半強制的な制限で、英霊エミヤの全てを自分に投影する事は出来なかっただがそれでも半分は力を譲り受けた。

 

「俺をただの人間だと言ったな?認識が甘いぞ英雄王(正義の味方)!お前がこれから挑むのは──人類にとっての悪であり、正真正銘!英霊のまがい物だ!」

 

英霊のまがい物……これ以上に俺を強く表せる言葉はないんじゃないかと思う。未来の俺とも言える英霊エミヤの力を連続で使用し、戦い続けてきたのだ。

 

英霊と同じ戦い方をして、同じ物を目指した……だけど、結局俺は英霊エミヤ(贋作者)の偽物なんだ。

 

彼が進んだ道……正義の味方には絶対になれない。

だけど、美遊の味方ぐらいにはなってやる!

 

贋作者(フェイカー)風情がァ!」

 

「それはお互い様だろ!贋作屋(カウンターフェイカー)!!」

 

英雄王が武器を射出してくると同時に、その全ての武器を解析、投影し、即座に射出し、少しでも自分に被弾する物を減らしながら接近する。

 

対して、英雄王は俺が近付く度に射出する武器を増やし、より守りを強化していく。

 

状況はどうみたって英雄王が有利だった。

こっちがどんなに贋作を複製しようとあちらは幾つのも真作を射出できる。それも無限にだ。

 

本来なら、俺のような贋作は即座に殺されていても可笑しくない。それでもまだ死んでいないのはまだ相手が慢心しているのと、俺が奥の手を隠しているからだ。

 

その奥の手は魔力消費が大きく発動し終えた後に俺が活動できるかすら怪しい諸刃の剣だ。

 

こんなだけど、美遊が逃げるぐらいの時間稼ぎができるなら使ってやる!それに……

 

「妹の前なんだ……かっこ悪い所ばかり見せられないもんな!」

 

「ふん。ついに狂ったか?なら、これで決めるとしよう。」

 

英雄王は黄金の波紋を展開し、士郎に狙いを定める。

士郎は避ける動作も、防ぐ動作のひとつもない。

 

普通の人が見たら諦めたように見えるのだろう。

だがそれは諦めではなく

 

 

体は剣で出来ている──

 

 

逆転への第1歩だった。

 

 

 

 

無限の剣製……それは正義の味方(衛宮士郎)に唯一許されていた魔術……

 

 

血潮は鉄で心は硝子──

 

 

無限の幻影……それは家族の守護者(サーベラス)にのみ使う事を許された世界の影を映し出す魔法

 

 

幾度の戦場を越え、不敗──

 

 

 

人類にとっての悪であり美遊の味方である衛宮士郎にはその両方は使えない。

 

 

たった1度の敗走もなく──

 

 

 

何故なら魔法を使う程の魔力は無く、正義の味方でも無く、起源も剣では無いため、“無限の剣製”は発現し得ないはずなのだ。

 

 

 

「ッチ!『天の鎖(エルキドゥ)』」

 

アンジェリカは士郎が詠唱を始めたのを気についに本気を出したのか士郎を天の鎖で縛った。

 

だが、それも遅かった。

 

 

 

たった1度も理解されない──

 

 

 

士郎を中心に空間内に青白い線が無数に走る。

 

それはそれぞれ、特定の位置につくと未だ完成していない別々の剣に姿を変えた。

 

それは空中にまで侵食しており巨大な歯車を形作っていた。

 

 

 

守護者(遺子)はまた独り──

 

 

 

アンジェリカは焦り、宝具を射出する。しかし、そのどれもが『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』に防がれてしまう。

 

 

 

偽りの剣製にて、砕氷を砕く──

 

 

アンジェリカは今止めなければ不味いと感じたのか、倉のなかから大剣を取り出し、士郎に向かって走り出す。

 

 

 

我が生涯は未だ果てず──

 

 

けれど──

 

 

アンジェリカは既に士郎の1歩前まで来ており、その大剣を今にも士郎に振るわんとする。

 

 

 

偽りのこの体は──

 

 

アンジェリカが斬りかかる。しかし、その剣が士郎を斬り裂く事は無かった。

 

 

それでも剣で出来ていた!!

 

世界が一変する

 

 

アンジェリカは剣を振り下ろした体勢のまま絶句しており、動きが止まっている。

 

 

それもそうだろう。目の前にいたはずの敵はいつの間にかいなくなり、場所は先程までいた大空洞ではなく雪原によく似た“剣製”と言えるような場所に変わっていた。

 

 

それは夢のように儚く、幻のように消えやすい印象を持たせる。これは()なのか?と錯覚するほどに

 

 

だが、確かに剣製は存在していた。だが、それは“無限(ムゲン)”と言うにはあまりに出来すぎた夢幻……まさに、“夢幻(ムゲン)の剣製”だった。

 

「これは……………………」

 

「個と世界、空想と現実、内と外とを入れ替え、現実世界を心の在り方で塗りつぶす。魔術の最奥『固有結界』……ここは(英霊エミヤ)の、そして俺の心象風景だ…………なぁ、お前には何に見える?」

 

士郎はそう語ると同時に雪原(剣の丘)を見渡す。

対する英雄王は未だに驚きのあまり、固まったままだ。

 

「無限の剣を内包する世界。俺にはこの全てが、墓標に見えるよ。」

 

文字通り、この雪原に刺さっている剣の一つ一つはかつて、何処かの戦士が、あるいは狩人が、あるいは蛮族が、あるいは侍が、あるいは英雄が使った武器なのだろう。

その持ち手から離れ、雪原に突き刺さっている風景はまるでアーサー王の最後の地と言われるカムランの丘を想像させられるほど、墓標を思わせるものだった。

 

「悪いが付き合って貰うぞ。俺の(からだ)が尽きるまで!」

 

そう言うと士郎は、一振の剣を地面から抜き、それをアンジェリカに向けた。まるで、宣戦布告するように。

 

「…………勘違いをしていた。貴様は元より、勝ち負けの舞台にすらたっていなかったのだな。他者の命も、自分の命も勘定に入れぬ、獣に劣る存在…………

 

まさしく似合いの光景だ、偽物(フェイカー)!貴様こそ死者を真似た人形その物……望み通り墓標の下に沈めてやろう!

 

その宣戦布告に乗るように、アンジェリカは先程と比べ物にならない数の黄金の波紋を展開する。

 

しかし、そのどれもが、武器を射出する前に剣製から放たれた剣によって、そのどれもが蔵の中へ押し戻されてしまった。

 

「何!?射出前に──!?」

 

「遅い!!」

 

アンジェリカが驚いた一瞬、士郎は自信に強化魔術を使い、一瞬でアンジェリカに接近し、無銘の剣でアンジェリカの首を斬り裂いた───

 

否、斬り裂いてはいなかった。アンジェリカは即座に置換魔術を使用し、士郎の剣技を防いでいたのだ。

 

「舐めるなよ、エインズワースを!!」

 

アンジェリカが置換魔術を使用していなければその首を跳ねる程の力を込めていた士郎はその一撃を避けられた事により体制を崩した。

 

たった一瞬。士郎は天空20mに強制的に転移させられていた。

 

「空間置換!?」

 

「戯れは終わりだ……来い!『千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)』『万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)』」

 

山を斬り裂くほどの巨大な剣と、海を焼き祓う水平の剣は同時に士郎に襲いかかる。

 

本来ならば、それは神造兵装……神が作った仕組みが未知なる武器。士郎には投影できるはずの無いものだ。

 

しかし、士郎はその“中身”を、投影せず外見だけを投影し、同じ質量の剣をぶつける事によって威力を相殺。

 

剣を足場にする形で落下速度を減少させ、大怪我は免れ、そのまま雪の大地に墜落した。

 

固有結界全体が、先程の万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)の炎で燃え上がる。

 

炎と煙の先には英雄王が突っ立ったままだった。

 

「貴様の存在は破綻している。我々在来人類最後の神話において、貴様の存在は汚点に過ぎない。」

 

そう言い、アンジェリカは1歩、また1歩と士郎へ近づいて行く。

 

「その忌々しい能力も、その不可解な魔術行使も、その死人めいたおぞましい信念も……全てを斬り裂こう─

貴様の世界ごと!

 

そう言うとアンジェリカは蔵の中から英雄王の最強の宝具を……世界を裂き、神々との決別に使われた乖離剣エアを取り出し、起動した。

 

士郎は驚きのあまり、言葉が出ない。

それはそうだろう何故ならあの剣は……否、剣とすら呼んでいいのか分からない兵器はたった1本しか存在しない概念。

 

形、質量だけを投影した所で無意味な“究極の一”……“無限の剣”では到底届かない程の力を秘めた物だからだ。

 

「あぁ、確かにその剣に見合う剣はこの世界のどこにもない。だから……無作法で悪いが、全霊は──」

 

士郎は目を閉じ世界全体にイメージを、戦意を送り込む。同時に地面が……否、世界そのものが揺れ始め、空には数え切れないほどの剣が……この世界全て(無限)の剣がアンジェリカに狙いを定める。

 

(この世界)の全てで返させてもらう!」

 

「原初に帰れ!『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』」

 

そして、その全てがアンジェリカが放つ宝具に向かって射出される。

 

アンジェリカの方からは世界を斬り裂く究極の一撃が放たれる。

 

力の差は歴然。世界を裂く一撃にただの剣が耐えられるはずもなく、全ての剣がその一撃にあたる度に消滅する。

 

絶剣、名剣、聖剣、魔剣、邪剣、宝剣、神剣、業物、魔剱、妖刕、鋭刃、鈍、刀、名刀、妖刀、宝刀、鈍刀。

 

あらゆる種類、形、能力をした剣のどれもが、塵も、欠片も、跡形も残さず、いとも容易く消滅する。

 

明らかに士郎の方が押されていて、10秒も……嫌、5秒たりとも持つはずはない。

 

しかし、士郎はこんな状況でも諦めなかった。

全てはたった1人の妹を守る為に、自身の命すら捨て、人類全ての悪となっても戦い続けるであろう信念だった。

 

「力を貸せぇぇ!!クラスカード人類悪(ビースト)夢幻召喚(インストール)!!」

 

地獄の番犬を自称する英霊を自身に憑依させる。

たったそれだけで贋作を投影する速度、そして贋作の質が限りなく本物に近付いた。

 

「正体不明のクラスカード……それも我らエインズワースには必要の無いもの。まとめて滅びされ!贋作者(フェイカー)!!」

 

それでも、乖離剣エアの力には及ばずついに一撃は士郎の元に到達する。

 

士郎の意識は少しづつ遠くなるが同時に士郎は小さな笑みを浮かべた。

 

その時に士郎から何かの繋がりが切れたのだ。

それはこれまでこの世界の維持を支えた魔力。

 

これまでの士郎の戦いを全て支えてきた聖杯(美遊)との繋がりが切れたのだった。

 

だが、それは敗北ではなく……士郎にとっての勝利の証だった。

 

(大丈夫だよな美遊…………きっとお前なら、すぐに友達もできるさ…………

 

 

でもやっぱり

 

もっともっと、色々と教えてやりたかったな

 

 

 

そういや、海に連れていく約束、忘れてた

 

 

 

まずいなぁ、怒ってるかな美遊、怒ってるよなぁ……

 

 

 

まあでも、俺もちょっとは頑張ったし

 

 

 

許してくれよな……美遊

 

 

 

どうか、幸せに───────)

 

胸に少しの後悔と心残りを秘めたままだが、既に覚悟を決め終え、自分の役目を果たした、たった1人の為だけの英雄(衛宮士郎)は笑みを浮かべながら手を掲げる。

 

 

 

「勝ったよ…………切嗣、兄さん。」

 

 

 

天国、もしくは地獄にいる家族への思いを込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、お前の勝ちだよ士郎……なぁ〜んだ!たった一瞬とはいえ、お前でも俺には勝てるじゃないか!たったこれだけのサポートで英雄王の一撃を10秒も耐えきるなんてさ!」

 

アンジェリカは信じられない光景を見ていた。

そこには、世界を裂く一撃を、受けたのに、未だ無傷で立っている贋作者(フェイカー)がいたのだ。

 

「馬鹿な……ありえない!!……何故、乖離剣の一撃を受けて尚、無傷で立っている……貴様、贋作者(フェイカー)……嫌、違う!貴様一体何者だ!!」

 

アンジェリカは、問いかける。

そこにはアンジェリカが失ったはずの感情が…………恐怖の色が見て取れる。

 

“それ”を認めたくはなかった。

“それ”は人の姿をした化け物……この世の物とは思えない魔力を、神秘を、そして呪いを放っていた。

 

「ん、俺か?」

 

“それ”がアンジェリカの方を向く、それは衛宮士郎の体を借り、限界した“悪”……破壊の化身だと思わされた。

 

 

「そうだな……俺はな───

 

 

 

 

 

 

───ただの守護者だよ。」

 

爆風が走る。

アンジェリカの目の前から、衛宮士郎の世界が崩壊する……否、それは崩壊ではなかった。まるで光が闇に呑まれるような光景。

 

太陽が上り、月を呑み込み、地上は暗闇に包まれた。夢であり、幻であった“夢幻の剣製”は一瞬にして世界を映し出す影……“無限の幻影”へと姿を変えた。

 

「これは─────」

 

アンジェリカは絶句する。

この世界自体は先程の剣製によく似ていた。

 

だが、似ているようで全く似ていなかった。

先程まで雪原だった場所は荒れ果てた荒野に──

 

贋物(ニセモノ)”だった剣は全て“真物(ホンモノ)”に───

 

そして何より、そこには無数の宝具があった。

それだけなら驚きはしないだろう。なぜなら、英雄王のように無数の宝具を使う英霊がいても可笑しくはないからだ。

 

しかし、それは明らかに異常だった。

ただの宝具のみならず、神造兵装や、見たことの無い武器がそこらかしこに存在していた。

 

「俺の宝具『無限の幻影(アンリミテッド・シャドウ・ワールド)』……文字通り、この世界の影を映し出す物さ。神造兵装の10個や、100個、あっても驚かないでくれよ?」

 

“それ”は平然と語る。まるで、この風景がさも当たり前のように……それは生物ならば恐怖を覚える冷たい声だった。

 

「そうだ、そうだ。俺が何者だったかだよな?俺は、あんたらが言う通り、贋作者(フェイカー)でありそして…………この世全ての悪を喰らいし、守護の獣だ。そして俺の真名(なまえ)は───」

 

アンジェリカはこの瞬間悟った。

“これ”だけは、自分の世界に連れて行っては行けないと、これに、負けては行けないと!!

 

「クラス人類悪(ビースト)、空想上の可能性『if』、この世全ての悪と聖杯を喰らいし者、そして……衛宮家の長男………………

サーベラス・フォン・アインツベルンだ!」

 

自身の名を語った瞬間、獣がごとき、殺意がアンジェリカに向けられる。

 

「行くぞ、英雄王…………武器の貯蔵は十分か?」

 

静かに語られるその言葉は死の概念を押し付けてくるように冷たかった。

 

「くっ……滅びろ!『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』!!」

 

アンジェリカの行動は早かった。フルパワーに近い威力で乖離剣の一撃を放つ。先程までとは違い、手加減は無しなのだしかし、次の瞬間アンジェリカに突きつけられたのは…………

 

「直死……投影開始(トレース・オン)……乖離剣よ、世界を裂け……原子は塗り固まり、天は堕ち、地は消え去る──天変地異を今此処に……『天地乖離す開闢の死星(エヌマ・エリシュ)』」

 

同じ威力の、同じ能力の、同じ世界を裂く一撃により相殺され、絶望がアンジェリカに突きつけられた。

 

そして、一瞬……

 

「お終いだ。」

 

アンジェリカは未知なる英霊に……人類の悪により、断ち切られ意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜……全く疲れるなぁ〜。ギリギリで殺さず、英雄王との繋がりのみを断ち切るなんて無茶な技。俺じゃなきゃできないぞ?」

 

俺は俺しか聞いていないと言うのに、自然と愚痴をこぼしていた。

 

現状、俺を夢幻召喚(インストール)したまま、意識を失った士郎の体を一時的に借りる事によって俺は現界している。

 

目的は1つ!我が弟、士郎と、その後輩の幸せを願うためにここにいる。

 

「さてさて、英雄王のカードは回収して……って無い!?もしかして美遊に引っ張られて先に持ってかれた!?クッソ……ここで壊してやろうと思ったのにぃ〜!!」

 

あぁ、本当に残念だ。

あの愉悦金ピカ慢心野郎のカードが無ければこれからも事故は起きないかもしれないのに…………

 

あぁ、もう!!これだから英雄王は嫌いなんだ!

はぁ〜、胃痛がする。

 

嫌、正式には胃痛がしている気がするだけで胃痛は無いけどね。

 

だって、士郎の体は健康的だもの。

そんな事より、とっととやる事だけやって、座に帰りますか。

 

そう思い、俺は影を使い、一瞬で衛宮邸まで移動する。

現在、衛宮邸にいる人物といえばたった1人、そう!この世界の間桐桜ちゃん!

 

今回俺は桜ちゃんと士郎を幸せにする為にここに来たんだ。とっととやらないと、抑止力に、引き戻されちゃうからねぇ〜!!

 

「貴方……誰ですか?先輩じゃ、ありませんね!!」

 

「っと、肝心の桜ちゃんは敵意MAXと……嫌、確かに俺は士郎じゃないけどさ?同時に、紛れもない士郎の体なんだよ?今回はちょっとそれを借りてるだけ。何も振るつもりは無いから落ち着いてよ。」

 

「本当に、貴方が何もしないという保証は?」

 

やっぱりそこを聞くよね……この場合の返答は……

 

「俺は士郎の兄さんだよ。証拠はそれだけさ。さてと、突然だけどちょいとだけチクッとするから我慢してね!」

 

そう言い、俺はちょいとした魔術を行使する。

 

「え!?ちょ、何をするんですか!?」

 

その魔術はいわゆる変身の魔術……と言っても俺風にアレンジして、他者の姿を別の物、にするようにしたものだけどね?

 

これにより、士郎の肌の色をアーチャー(士郎)と同じ、褐色肌へ、髪色も俺やイリヤに似た白へと変える。

 

そして、桜ちゃんの見た目も変える。

その見た目は俗に言う黒桜!まぁ、自分で黒桜の部屋とか言う物を開くぐらいだし、これぐらいはいいよね。

 

「あれ?なんで私の髪色が……それに先輩の肌の色や髪色まで!?」

 

突然、自分と士郎の見た目が変わった事に桜ちゃんは驚く。まぁ、それも仕方ない訳だが……時間が無いな。

 

「時間が少ないから手短に教えさせてもらうよ。俺はこれから、自分の中の力を使って、桜ちゃんと士郎を美遊ちゃんと同じ、平行世界へと飛ばす。そして、その世界にも、間桐桜や、衛宮士郎ら存在するんだ。世界のバランスを保つ為、みたいな物かな?君達の姿をほんのちょいとだけ、変えさせてもらったよ?」

 

「え、え?どういう事ですか?何ですか?その、私と先輩と美遊ちゃんが別世界に飛ばされてそこで暮らすみたいな言い方は?」

 

「大正解!まぁ、戸籍とかは、万能の聖杯の力によって作ってるから、あっちで暮らすには障害はないと思うけど、勝手に飛ばすってのもややこしいからね?見ての通り、士郎は寝てるから代わりに桜ちゃんに、教えに来たって訳。」

 

「ちょっと待ってください。という事は本当に貴方は先輩の…………」

 

「無駄話はここまでのようだね。さてと……これが俺が聖杯に頼む初めての願いだ。

 

聖杯たる我が願う──

 

 

士郎と、桜ちゃん……そして、美遊ちゃんに幸せを」

 

 

「え?何ですか、これは?体が浮いて……」

 

「それじゃあ、桜ちゃん!士郎によろしく伝えておいてね!後、いいお嫁さんを貰ったなとも!」

 

最後に伝えたい事だけを伝えて、桜ちゃんに後を託す。

 

「え、ちょ!?それって!?」

 

おぉ、顔が真っ赤に、それもまるで、士郎の赤いマントのような……うん、これ程、士郎のことを好きだと思ってくれてるなんて、本当にいいお嫁さんを貰ったな、士郎!兄さんは嬉しいぞ!!

 

結婚式に参加出来ないのは残念だけどね……

 

「それじゃあ、俺の義理の妹になる者よ!家の弟と末永くお幸せに!後、俺は会ったことないけど、美遊も俺の妹だからな、美遊の事も頼んだぞ!!」

 

 

そして、俺は意識を士郎の体から再び闇に落とす。

次に目が覚めた時にはもう英霊の座…………

 

 

では無く、鏡によく似た世界(冬木)の中のアインツベルン城だった。

「なっ、、、なっ、、」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでさぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

守護者の声が、誰も居ない城に響いた。




作者の〜次回予告!
さて、今回はゲスト達が次回予告をしてくれるよゲストは遠坂凛さん(SN)と、ライダー事、メドゥーサさんです!

凜「うぅ〜(涙)良かったね、桜!本当に良かったね!」

ライダー「本当に、おめでとうございます桜!そしてありがとうございますサーベラス。うぅ(涙)」

フォウ「フォフォフォーウ!(僕をハンカチ代わりに使うんじゃない!)」

え〜と……フォウくんも、ゲスト達も使い物にならなそえなんで普通に俺がやりますか……え?尺が無い、本編に使い過ぎたからタイトルだけ?

そんなぁ!?

次回!「風雲 アインツベルン(サーベラス)城」お楽しみに!

うぅ……語り足りない。


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