無理矢理転生【リメイクの為、永久凍結】 作:ムメイノライデン
ページが焼ききれてしまったな。
まぁ、いい。
では、話の続きをしよう。
自分を知らぬ獣は嘆く
「俺は何をしたいのだろう」と
自身の存在意義も、何もわからぬ獣は
それでも、
では、
答えは単純、あの人類悪なりかけのメロン峠……いや、ある女よりもタチの悪いものだ。
少なくとも、あの女は自分の目標を持ち、自分の欲望もあった。
だが、獣はどうだ?
自身の欲望すら曖昧、セイギの為だけに動く機械人形と来た。
そんな奴からセイギを剥奪したら、残るのはただの殺戮兵器……ただの虚無だ。
所で、あの女と獣には共通点と明確に違う点があるが、分かるかね?
その共通点は、恋を知らないと言うこと。
あの女は正しき愛というものを知らず、それ故に、恋を知ることは無いだろう。
では、獣はどうか?
正しい愛が、どういう物かは知っている。
真実の愛とは何かを知っている。
だが、恋と言うものを知りえはしない。
何故なら、アイツは人形だからだ。
感情もない抑止力に動かされる人形に、恋は分からない。
だから、二人共、最後は恋を知る者に敗れるだろう。
“恋を知らぬ怪物”と言うのは“何かに恋する英雄”に負けると言うのが、物語としてのオチなのだからな。
さて、ここまでは共通点だ。
では着眼点を変えて話しをしよう。
先程も言った通り、二人には恋が分からない。
それはあの女にも、獣にも言える事だ。
では、何が違うか、だと?
決まっているだろ?
チャンスがあるかないかだ。
あの女は成長をし過ぎた。
今後、恋を知るチャンスなんて、それこそ、天と地がひっくり返り宇宙創成ぐらいしなければないだろう。
それくらい、あの女は歪んでいる。
だが、獣はどうだ?
幸いな事に、彼は幼いまま成長を止めている。
肉体的にも、精神的にもな?
更にいえば、あの獣の事を気に掛ける馬鹿な英霊もいるらしい。
美女と野獣…………いや、怪物と怪物か。
恋知らぬ怪物が、乙女と時を過ごし、恋を知るのはよくある話だが、怪物が怪物と共に過ごすとはな?
何とも、創作意欲が湧くが……無いな、没だ。
何故没か、だと?
決まっているだろ。
登場人物の両方が怪物なら、それはもう異質では無く、普通にすぎないからな。
怪物と怪物の恋話なぞ、人間の色恋沙汰となんら変わりは無い。
強いて言うなら、共感を持ちやすいか、持ちにくいか。
感情移入をしやすいか、しにくいかの違いだ。
話がそれたな。
……では、獣がどのような末路を辿るのか。
精々、適当に見て行くといい。
【挿絵表示】
────き───い────
……いつも、なにかのおとで、めがさめる
じぶんがだれか、なにものなのか、どこからきたのか、なにをしたいのかは、ぜんぶ、わすれた。
おもいだせることは、なにひとつない。
それでも、そのおとだけはひびいていた。
ずっと、ずっと、えいえんに、むげんにしずみつづけてるまいにち。
からだにちからははいらない、なにもかんがえたくない。
それなのに、あのおとでめがさめる。
このおと───
このめざめはいったい、だれのために────
ゆめを、みた。
きれいな、ゆめ。
よくわからない、ゆめ。
にんげんが、にんげんといっしょにいるゆめ。
にんげんが、にんげんとあそんでるゆめ。
にんげんが、にんげんをなでているゆめ。
あのこはだれだろう。
あのにんげんはなんだろう。
かんがえてもわからない。
でも、なぜかじぶんは。
ものすごく、なつかしいと思った。
────き─く──い────
また、目がさめた。
目のまえには、何もない。
生きるいみも、きぼうも無い。
ぜんぶ、とっくの昔にわすれたはずだ。
何もおもいつかないのに、何もするきはないのに、なぜ、いつもあのおとで目がさめるのだろう。
かんがえてみよう、いや、かんがえなくてもいいか。
ひたすらにそんなことばたちがあたまの中をまわりつづける。
そんざいいぎもなくなったじぶんはなぜ、目ざめるのだろう……
この音は、なぜひびきつづけるのだろう。
この音はなぜ────
この目ざめはいったい、だれのために
ゆめを、見た。
さびしい、ゆめ。
悲しい、ゆめ。
にんげんが、にんげんになにかを向けていた。
それが、何かはわからない。
でも、そのにんげんが死ぬことはわかっていた。
にんげんは、泣いていた。
もうひとりのにんげんは笑っていた。
何でかは、わからない。
でも、ものすごく泣いてほしくない。
こっちに来ないでね。
そう言いたくなる、悲しいゆめ。
────き─くだ─い────
また、目が覚めた。
目の前には何も映らない。
ただ、沈み続けるだけの毎日。
何か、思い出せそう。
何も、思い出せない。
永遠と、ずっと、ずっと、同じ事を繰り返している。
その意味も、何も思い出せないから。
だから、考える。
無意味だけど、何も無いけど、思い付かないけど。
けど、何だか、変な気持ちになるから……
いつか、あの事で目が覚める理由を知りたいから。
この音は一体───
この目覚めは一体、誰の為に────
夢を、見た。
何処か、遠い、遠い所の夢。
三人の人間が、楽しそうに暮らしていた。
皆、くだらない会話で笑って、くだらない事で喧嘩をして……
とても、とても楽しそうだった。
良かったね。
思わずそんな事を口にした
あぁ、自分も、あの人間達のように、笑えたら良かったのに……
そう思わずにはいられない、楽しい、楽しい夢だった。
────きてくだ─い────
また、目が覚めた。
音は、段々と強くなって来ている。
死が近いのだろうか、それとも何かを思い出せるのだろうか?
どちらにせよ、興味は無い。
同じ毎日の繰り返し、どうせそんな日々ならば。
いっそ、全て無に還ればいいと思った。
無限の繰り返し。
何かの渦に永遠と呑み込まれる。
あぁ、せめて……
せめてこの世界にもう一人誰かいたのなら。
どんなに楽で、楽しかったのだろう?
この音のように、毎日話せる、誰かが。
この音は一体、誰の────
この目覚めは、誰の為に────
夢を、見た。
燃えるような夢。
今にも、消えそうな夢。
一人の人間が、人を殺し続ける夢。
正義と言う、曖昧な物の為に戦い続ける夢。
とても、羨ましいように思えた。
何かのために、戦えるなんて。
戦える力が、あるなんて。
誰かの夢を守れる力があるなんて……
同時に、とても愚かに見えた
何かを壊する力ばかりだ、と。
何かを殺す力ばかりだと。
誰かの夢を壊す力があるなんて……
矛盾……矛盾…………矛盾………………
一体何が正義か、既にわからない身だけども
これだけは言えた。
矛盾した正義の果てに、何があるのだろう?
そんな、文句のような言葉しか言えなかった。
─起きてください
目が覚めた。
あの声は、ハッキリと聞こえる。
何を言っているか分からなかった声は、いつの間にか明らかになっていた。
──起きてください
一体何から?
これは全て現実、全てが夢。
覚めることも、起きる事もできない、地獄だ。
───起きてください
騒がしい……自分には何も出来ない
自分には思い出せる事は無い。
だから、放っておいてくれ。
────起きてください
もういいだろ?
自分は……俺は十分に頑張った。
何も思い出せない程に、自分は消耗した。
何も思い出したくないと思う程、自分を嫌っている。
だから、放っておいてくれ。
だから、もう俺に関わらないでくれ。
─────起きてください
もう、いいだろ。
放っておいてくれ。
関わらないでくれ。
忘れてくれ。
消してくれ。
見ないでくれ。
話しかけないでくれ。
殺してくれ。
何も知りたくないんだ。
何も見たくないんだ。
何もしたくないんだ。
だから、何もしないでくれ。
もう、何も……何もかもが嫌なんだ。
誰が死ぬのを見るのも。
誰が戦うのを見るのも。
誰かを失うのも。
誰かと別れるのも。
誰かに関わるのも。
誰かに覚えられるのも。
誰かを覚えるのも。
もう、ウンザリだ。
もう嫌なんだ。
だから、だから…………自分を……俺を見ないでくれ。
それでいいのですか、セイギノミカタ!!
貴方のやるべきことは……貴方の大事なものはまだある!!
貴方は、まだ一度たりとも、願った事がない。
一度くらい、弱音を吐いて、誰かに助けを求めて……
願ってください!
戦いたくないなら、戦いたくないと。
守って欲しいなら、守ってくれと。
だから、諦めないでください!!
だから…………私と、また─────
また、私を召喚して、私に……私に貴方の力となる権利をください!!!
だから────起きてください!
顔をあげてください!
前を向いてください!
いつものように、笑って、怒って、泣いて……
また、私に……誰かに愛された▅▅▂▅▅▂▂に!!
そんな事、言われなくても分かってるよ。
あぁ、分かってるさ。
最初から、ずっと分かってる。
自分のすべき事も。
自分が念の為にいるのかも。
抑止力……
それが“俺”なんだ。
でも、もう“自分”には関係の無い事だ。
自分の名前すら、思い出せないのだから。
あぁ、でもなぜだろう……
無意識の内に、手を伸ばしていた。
虚数の海へ堕ちて行く自分の腕を掴める者は、いないと言うのに……
あの声も、きっと幻聴なのだろう。
でも…………少し、懐かしかった。
だから、俺は……
初めて、個人的な願いを込めて、手を伸ばして見た。
そうだ、人は何かを願って生きているんだ。
俺もきっと……何かを願っていたのだろう。
この目覚めは一体、誰の為……
目覚めはただ一人、自分の為。
目覚めは常に、他人の為。
だから……人は、何処かに向かって手を伸ばすんだ。
他の誰の為でもない、自分自身の願いの為に。
「……誰もいないのは知ってる……だけど───」
もし、もしもこの声が聞こえるなら。
「誰かが、こんな俺の存在に気が付いてくれるなら」
こんな愚か者の手を掴もうとしてくれるのなら。
「もう一度だけ……」
ほんの、少しだけでもいい。
「もう一度だけ!」
俺と────
「俺と一緒に!」
こんな、
「
一緒に───!!!!
「守る為に、戦ってくれぇぇ!」
伸ばした腕を掴んだのは─────
「呼ぶのが遅いんですよ!!さぁ、ここからは、私達の反撃です!!行きましょう、守る為に!」
あぁ、やっぱり君は最高の
「行こうか、
「勿論です、
伸ばした腕は、最高の思い出を掴んだ。
俺のやりたい事は─────
─────いつでも、誰かを守る事だった。
◇
◇
「くっ……これでもダメなのか!?」
「なんと言う生命力……執拗いですね!!」
「うふふ……そう簡単に、神すら喰らった私を殺せると思いまして?」
ムーンセル中央区。
そこでは、この電子空間に生きる全ての……
いや、星にすら影響を与える端末を賭けた最終決戦が行われていた。
本来なら、表の聖杯戦争を勝ち進まなければ辿り着けないこの領域。
歪んだ形で到達し、全てを自身の快楽のまま飲み込もうとする
しかし、状況は圧倒的に劣勢。
神と混ざっていた獣を喰らい、ムーンセルと繋がった
「ッチ、あの愚弟の力も喰らったとか、チートにも程があります……」
「いいでしょう?彼を態々罠にかけて、喰らった甲斐がありました。」
「BBや、メルト……リップだけじゃなくて、サーベラスまで!?」
勝ち目は見えない。
それでも諦めない。
だが、圧倒的な力……圧倒的な絶望の前にはそれも無意味なのだ。
立っているのがやっとなのだ。
満身創痍。
対抗する為に英霊の力を、神話レベルで解放する神話礼装も、神を喰らった者には通用しない……
「こんなの……どうすれば!?」
対抗策が思い付かない。
いつ、どんな時でも諦めず、前に進み続けた歴戦のマスターとはいえ、この絶望の前にはどうする事も出来なかった。
「では……そろそろ戯れは終わりと致しましょうか。」
「っ……最低最悪な宝具が来るぞ、防げ!!
さもなければ貴様らは終わりだ!!」
青髪で、子供のような姿をしたのキャスターが叫ぶ。
しかし……
「どうやって……どうやって防げばいいの…………」
歴戦のマスターは、ついに、絶望に染まりきった。
「すまぬ……奏者よ…………余も、もう策が……」
「ご主人様……すいません、すいません……」
それは、サーヴァント達も同じようで、空間は絶望に包まれていた。
「ふふ……では、これにて…………」
絶望の一撃が、すぐそこまで迫る。
これで……何もかも終わりなのだ…………
そう、誰もが思っていただろう。
ただ、二人の
『───
七つの光り輝く花弁が絶望の一撃を防いだ。
「……馬鹿な、あ、貴方は!?」
「よぉ、久しぶりだな、殺生院……
悪いけど、こいつらは殺させないよ。
さて…………あの子達を返してもらおうか?」
「え、な、なんで…………」
信じられない光景が、その場にいた全員の目に映った。
驚くのも当然だろう。
殺生院に喰われ、消滅したはずの英霊が……どのからともなく現れたのだ。
それも、あの一撃を受けても尚、無傷でたっている、守護者を見て…………
「おいおい、驚かないでよ。
守るって決めたら、守りきる趣味でね?」
お気楽そうな口調で、その守護者は呟いた……
よく見ると、手には令呪らしき模様が刻まれている。
「なーにが、守りきる趣味だ、ですか?
先程は諦めかけてましたよね??」
「分かってるっての……と言うか、目の前であんな事をされた上に、虚数の海に放り込まれたらそりゃあぁなるさ。
俺も万能じゃねぇーんだよ。
だいたい、ランサーだって、虚数の海に来たは言いものの、耐性なくて死にかけてたじゃんか。
俺が耐性もってて、泳げてなかったら今頃パァ、だぞパァ!二人揃って虚数行きだよ?」
「そ、それとこれとは別でしょう!?」
「まぁ、そうなんだけどさ……
無駄話はここまでにしない?
そろそろ抑えられる気がしなくてね? 」
「それもそうですね。
二人で行きますよ?」
二度目の驚愕。
サーヴァントであるはずの彼が、サーヴァントを連れていたのだ。
これには、彼を呑み込んだはずの菩薩ですら理解をする事ができなかった。
「なぜ……何故、呑み込まれたはずの貴方がここに!
何故、サーヴァントを連れているんですか!!」
「悪ぃな、キャス狐。
質問に答える暇なんてない。
強いて言うなら、元マスターとそのサーヴァントの縁だよ。」
「元マスター……!?」
あまりの驚きに、言葉が出ない。
そう思っているのはあの二人以外全員だろう。
「さて……改めて自己紹介を。
サーヴァント、
今だけは、抑止力の守護者関係なく……純粋な私欲により、貴様を殺す者。」
「そして、私はランサー。
彼のサーヴァントであり、彼の剣であり、盾であり、相棒です。」
「それじゃあ……行くぞ、防げるもんなら防いでみろ。」
「私達の連携力を崩して、どちらかを止めれれば、ですがね?」
言葉が終わると同時に、二人は動き出す。
その動きには、一切の無駄も、隙も無く。
まるで、同一人物かのように同じタイミングで。
別方向へと。
「くっ……ですが、神の力はこちらに───」
「あぁ、悪ぃな。
俺に混じってたヤツらなら、さっき殺したよ。
勿論、合意の上でな?
お前に利用されるなら、死んだ方がマシなんだとよ。」
「なんですって……!?」
「余所見を、するなぁ!」
告げられる衝撃の真実。
菩薩はもう、神の力は使えないのだ。
そして、守護者の言葉に気を取られた隙に、後ろからランサーの持つ巨大な鎖鎌が迫る。
しかし、菩薩はそれを空間内をテレポートするように移動する事で回避した。
「ま、まだです!
こちらにはムーンセルがある!!
いくら、貴方が規格外でも、この空間を維持しているムーンセルは殺せないはず!!」
「確かに、このままだと埒が明きませんね。」
「だけど、忘れんなよ?
俺の力の源は、俺の心だ。
心こそが、俺にとっての最大の力だ。
さぁ、招待してやるよ……
ランサー、後そこで突っ立ってる三人!!
時間稼ぎは任せた!」
「え、あ、はい!!セイバー、キャスター!」
「うむ……分かったぞ、奏者!」
「何をするつもりかは知りませんが……ご主人様の命令とあらば、お任せを!」
「任せてください、サーベラス!!」
心こそが、最大の力。
獣が言った意味を理解しているのはランサーだけだが、それでも、これが切り札であることを全員が理解した。
故に、菩薩は獣を止めに。
その他は獣の為に時間を稼ぐ。
そして……
「世界の幻影、我が元に──
我は世界を救う守護者なり
我は世界を滅ぼす
我が力は破壊の力
されど、我が力は守る為にあり
全てを移す鏡なり
我、抑止の守護者の名の元に
顕現せよ、我が心──
『
世界が、一変する───
無限と無……即ち、矛盾の概念を内包する地獄へと。
「…………これ……は…」
「驚きましたか?
これはサーベラスの宝具……彼自身の心象風景を表した場所…………
固有結界。
魔術世界ではそう呼ばれていますね。」
「「「固有結界だとぉ(ですって)ー!?」」」
固有結界……その人間のみに許される魔術の最奥、魔法に近い物のひとつ。
その力は、その人間の心象風景によって変わるが、絶大な力を発揮できる。
ただし、世界を上塗りする魔法の為、抑止力による時間制限がある。
それ故に強力なのだ。
「驚くもんじゃねぇだろ?
さて……
さぁ、行くぞ似非菩薩。
覚悟は、出来てるなぁ!!」
「ぐぅ……『シェイプシフター』!!」
「あ?何だこれ??」
「ふふ……再び虚数の海へと堕ちてください!」
「ふーん……シェイプシフター。
“BB”や保健室のAI“間桐桜”の元になった魔術師の魔術をイメージした能力ね?」
「サーベラス!?くっ……あれに呑み込まれたらもう…………」
「残念ですね、殺生院。
貴方、案外甘いのですね。」
「私が……甘い?」
ランサー、と呼ばれた英霊の言葉に戸惑う菩薩。
シェイプシフターに呑み込まれたら最後、虚数の海へ堕ち、墓地に呑み込まれるのがオチなのだ……
オチなのだが……
「そーらよっと!!あ〜あ〜、面倒だった。」
なんと、守護者はいとも容易く脱出したのだ。
面倒くさそうに欠伸をしながら。
「何ですって!?」
「脱出したぁ!?」
「お生憎様、シェイプシフターはこっちが本家だ。
あれば元々、汚染された聖杯から派生した能力だぜ?
その能力に対して、俺が耐性を持っていないとでも?
さて……本家大元、聖杯その物の力を見せてやろう。
……これが、本物のシェイプシフターだ。」
守護者の影から、何か奇妙なものが姿を見せる。
それは、BBの……電子の海のシェイプシフターと姿形はほぼ同じだが…
「っっ……!?
奏者、下がれ!」
「あれは危険です、ご主人様。
今すぐに避難を!」
「くっ……私のシェイプシフターが!?」
性能はやはり、段違い。
それもそうだろう。
BBの、シェイプシフターは所詮、現実のシェイプシフターをモデルに電子の海用に作り出した物だ。
虚数に干渉する力はあれど、虚数その物であり聖杯その物とリンクしている影には勝てない。
そして何よりも──
「貴様のじゃねぇだろ。
それはBBの能力だ。
貴様は所詮、見様見真似で使ってるだけなんだよ。
贋作である俺よりも酷い……と言うか、再現度は皆無だな。
やる気あんのか?
スペックにだけ頼って、肝心の技術を磨かない。
宝の持ち腐れとは、この事だ。
所詮、屑は屑って所か?
守護者を甘く見んなよ。
ただ、デカいだけの人間風情が。」
経験の差、実力の差、技術力の差。
あらゆる面において、殺生院は守護者に劣っているのだ。
それはそうだろう。
月の海でようやくマスターとしての力を得た殺生院と、産まれた時から、魔術的な教育ばかりを受けた守護者……
精々100年程度しか続いていない魔術的な家系……更にいえば魔術よりかは宗教の家系である殺生院と、300年以上も前から存在する魔術家系アインツベルン。
家系の時点で差は歴然。
せめて、守護者がもう少し短い年数で派生した魔術家庭だったら、殺生院にも勝機はあっただろう。
そこを踏まえて、改めてみると。
やはり、運命とは残酷なものだ。
「くっ……ふふ…………
えぇ、確かに貴方を甘く見ていましたね。
ですが貴方でも、これは防ぎようが無いはず。
『クラック・アイス』!」
「なっ!?」
時が、止まる。
クラック・アイス。
それは、アルターエゴ、ヴァイオレットの
彼女の元となった、とある
通常の魔眼と違う点……そこを簡単にあげるとするなら…………
魔眼と違い、自分が見た空間の時間その物を停止させることが出来る所だ。
この時間停止内で動けるのは、当然使用者のみ。
これなら、技術力関係無く、殺生院が守護者に勝ることができるのだ。
「意思だけが残るのもいい所ですよね?
やられている本人は、見ている事しか出来ない……あぁ、なんて素晴らしいのでしょう?
楽しめそうですね。
ふふふ……では、まずは誰から頂きましょうか?」
停止した時間の中、動けるのは殺生院のみ。
しかし、停止させられている本人達は何をされているのか認識できる……
認識は出来るが、行動はできないのだ。
これだけでも、十分な絶望だ。
勝ちを確信した殺生院は、ゆっくりと獲物を見極める。
さて、“四人”の内、誰にしようかと。
「ちょっと待ちなさい。
四人?後一人……ランサーは何処に───」
「───だから、甘いと言ったのですよ、殺生院。」
「ぐっ、後ろに!?」
殺生院の後ろから、不死殺しが首元にまで迫る。
殺生院はそれを、たった一度の無敵能力を使い、何とか回避したが、目を離した事で魔眼の効果は切れ、守護者達は自由になってしまった。
「ナイス、ランサー。
作戦は成功か?」
「いえ、首を断てなかったので失敗ですね。
一撃で仕留めようと思ったのですが…………」
「まぁ、そんな時もあるさ。
次こそ、上手くいくだろ。」
「何故……何故貴女だけ私の後ろに!?」
本日、何度目かの驚愕。
それはそうだ。
時間を止める時には目の届く範囲にいたランサーが、いつの間にか自分の後ろにいたのだ。
当然、驚くだろう。
「そんな事も分かりませんか?
私はサーベラスの後ろに隠れて魔眼を回避し、サーベラスが繋げておいた影と影の間を移動しただけですよ。」
そんなの、分かるわけないだろ。
と言う、奴らの心の声は方っておけ。
これが、守護者。
これが非常識なバケモノだ。
無理矢理だが、そう思って納得するのだ一番楽だろう。
あの守護者に関しては、理解できる方がおかしい。
それこそ、聖杯と繋がっていて、ガイアとアラヤ……両方の抑止力に使われる身で無ければ理解出来ないくらいに。
「そんな非常識なっ!?」
「非常識はお互いだろ。
この人類悪擬きが……いや、人類悪か。
アンタには、お似合いだと思わねぇか?
さて……次こそ殺してやるよ。」
「くぅ………ならば。
『トラッシュ&クラッシュ』!」
「おっと、ランサー!俺の後ろに!
潰されんぞ!!」
「っ……はい!」
「動きが、遅いですよ!!
もう手遅れです。」
「手遅れだと思うか!!
甘いぞ、菩薩!!」
パッションリップの
それは、ヴァイオレットの『クラックアイス』と似ている条件があり、条件さえ達成すれば最強とも言える能力。
目に映る範囲の物をキューブにする……
それを例えるなら、空に浮かぶ月を手で掴み覆い隠す様なものだ。
実際には掴めていないが、視界には掴んでいるように見えるだろう?
パッションリップの『トラッシュ&クラッシュ』はそれと同じ行動を必要とする。
簡単に言うなら、手で覆い隠した物をキューブにする能力だ。
これも、視界に映るかつ、手で覆い隠せる範囲でなくては行けないが、条件が揃えば無限の質量を持っているキングプロテアですら、キューブにされて死ぬだろう。
そんな物を、さて、どう防いだかと言うと……
「っち……腕の一本程度くれてやるよ。」
自身の後ろにランサーを隠し、そのまま菩薩に急接近。
視界に腕だけを映させ、腕を犠牲にして生き延びたのだ。
「なっ!?目がっ!?」
「今だ、ランサー!」
「任せてください!!」
腕を切り離された身体からは、大量の血が溢れ、菩薩の目を使えない物にした。
偶然か必然か、いや、恐らく計算通りなのだろう。
何故なら、守護者は見たものが寒気を覚えるような笑みを浮かべていた。
「これで、トドメぇ!!」
「くっ、トドメを刺されるくらいなら……!
『インセクトイーター』!!」
(ここで、インセクトイーター?アレは最弱の……
いや、アイツまさか!?)
「ッチ、セイバー、キャスター!!テメェらのマスターを守れ!!」
「っ!?」
「ランサーは、もう一回下がれ!
喰われるぞ!!」
「くっ……また仕留め損ないましたか!!」
「それよりも今は防御だ!
あの黒いのに触るなよ、触った所から喰われるぞ!
ッチ、俺の真似のつもりか、クソ菩薩!!」
インセクト・イーター。
慈愛のアルターエゴ、カズラドロップの
それは本来なら最弱の能力であり、とても戦闘には使えない代物だ。
それは、BB由来の物、つまりは他のアルターエゴを吸収できる程度の能力なのだ。
しかし、菩薩が最後の足掻きとして発動したこれは既に菩薩によって、変質していた。
最弱から最悪に。
それは、己の欲求が満たされるまで相手を喰らうという能力へと変質してしまった。
その姿は、まるで
「腕が一本ねぇーんじゃ、防御も薄いか……
残念だな、俺は影で代わりのものをいくらでも作れんだよ。
さぁ、守護者の本気を見せてやろうじゃないか!!
行くぞ似非菩薩!!」
影が守護者を包む。
獣のような影が……
それは、守護者の欠けた身体……
殺生院によって抉られた、腕とその半身を瞬く間に埋め、不安定だが腕の形へと変形した。
獣のような爪、不安定故に変形を続ける影。
言うまでもなく、戦場では凶悪な武器だ。
あの影の腕は変幻自在……自身の意思で変形させられると考えると、それは正しく凶器以外の何物でもない。
攻防一体。
なんでも出来るある種の無敵性能。
怒る獣と、目を潰された手負いの
それは、本当に酷いものだった。
獣を喰らおうとする菩薩の攻撃を、ものともせず、影の腕を千切られては再生し、千切られては再生。
その繰り返し……まるで埒が明かない。
それでも守護者は一歩づつ、確実に進んで行った。
その姿は醜い獣なれど、それはまるで希望に向かって走る少年を思わせた。
「悪いが……」
「くる────」
来るな。
そう殺生院が呟く前に。
「返して貰ったぜ、俺の家族を。」
殺生院は巨大な爪により切り裂かれ。
獣となった守護者の腕に、いくつかの光が見えた。
それはまるで桜の花びらのようで、次の瞬間、風に乗るように、その花びら達は遠くへ飛ばされた。
「ランサー、殺生院はまだ現在だ!動きを止めるぞ!」
「はい!!」
「岸波白野!!お前達はトドメをさせ!この長きに渡った因縁に、ケリをつけてやれ!」
「───うん!」
「「令呪を持って命ずる──!!」」
最後の命令が、サーヴァント達に下される。
「我がサーヴァント達よ、我が敵を打ち倒せ!」
「俺と共に、奴を打ち倒せ!」
その命令に、サーヴァント達は逆らうことも無く全てを受けいれ……
「そんな……そんな!」
その身の全てを使ってでも、この事件の元凶……
一人の怪物と化した女の人生に──
「
最後の、幕を下ろした。
……教えてください、私の何が、何が負ける理由になったんですか……
貴方には……いいえ、
何故、私は負けたのでしょう……
実力でも、計画性でも、何もかも私が上だったのに……
「憐れだな、お前は、自分が持てなかった“少女の夢”を持ったAIに負けたんだよ。
それも、人魚姫のような、泡になって消えそうな、小さな恋心に。」
何故───
何故、恋などと言うくだらぬ物に──
「馬鹿め、恋とは即ち夢だ。
夢とは、生きる意思、生きる意味……そして何より、自分の存在証明だ。
夢を抱けなかった時点で、お前は、負ける宿命だったのさ。
まぁ、俺もそうなんだけどよ。
俺に夢は無い。
俺にも、恋の意味は分からない。」
だったら、何故──
何故、貴方は負けないのですか───!!
「確かに、恋の意味は分からないが……
だけど、俺には少なくとも、信じ合える友達や相棒……守るべき家族がいた。」
家族……ですって…………
「皮肉な事だ。
お前がもっと普通の家庭に生まれて、普通の愛情を知っていれば、こうはならなかったかも知れないのにな。
互いに守り合い、互いに愛し合える。
そんな家族を作り直して、改めて愛というものを知って……
“生まれ変わって出直しな”殺生院キアラ。
じゃあな。
一足先に、地獄に行ってろ。」
────貴方、一体何者?
「俺か?地獄の番犬を名乗ってはいるが、そんなもんは、俺じゃねぇ。
俺は────」
“ただのセイギノミカタだ”
殺生院を倒し終え、抑止力としての使命を果たした守護者と、そのサーヴァント、ランサー。
岸波白野含めたマスターや、サーヴァント、NPC達が、表の聖杯戦争……
正しき世界へと戻される中、彼等は最後まで、桜の木を見上げていた。
「綺麗ですね…………」
「あぁ、俺なんかが見ていい景色じゃないよな、これ。
…………士郎達にも、見せてやりたいもんだよな。」
遠く離れた家族の事を思い、守護者が呟く。
「えぇ、サクラにもお見せしたいですが……
ここにはサクラと同じ顔の人物が多すぎて、きっと混乱すると思います。」
「だよなぁ〜俺もそう思うよ。
まぁ、アイツらはアイツで桜を見てるだろうよ。
魔術師、魔術殺し……そんな家系の問題をも超えて、幸せにやってけるだろうしな。」
願いを込めた一言を守護者は呟く
「…………もう、終わりですか?」
「あぁ、もう帰る時間だ。
次の仕事が待ってるんだよ、俺には。」
「……そうですか。
それで、やりたい事は見つかりましたか?」
彼の相棒……
かつての女神が、彼に問いかける
「あぁ、見つかったよ。
俺は、俺らしく皆を救う!
偽善者と言われようと、俺はいつまでも守護者だってな!」
「ふふ、サーベラスらしいですね!」
当たり前の事を、当たり前のように話す。
その時間は、二人にとってはとても短く……そして、とても長く感じられた。
「また、会えますか?」
「あぁ、俺達は友人……いや、相棒だろ?
会えるに決まってるさ。」
「…………そうですね!
あ、そうだ……サーベラス、ちょっとしゃがんでくれませんか?」
「ん?なんだよ、ランサー?」
それはとても楽しくて────
「そうですね……私は───¦」
『私は人間が嫌いですが……貴方にならまぁ、いいでしょう』
「私は、人間も捨てたものでは無いなと、ほんの少しだけ思っていますよ。では……」
───また、何処かで!
「勝ち逃げ、と言うやつです!」
「ら、ランサー!?」
それは、まるである日の光景。
獣が、守護者へと変わり果てた日のように──
また、勝ち逃げをするランサーと
「……はぁ、いきなり何を……
…………また今度。
敵同士になっても、また会おうぜ、ランサー。」
一人、静かな笑みを浮かべた獣がいたという。
作者の〜後語り!!
EXTRA編、完 結 !
疲れました……
二週間以内に最新話を投稿した自分を褒めて欲しい。
とまぁ、戯言は置いときまして。
このコーナーも今回で最後回!
次回からは何が起こるか分からない!
ワクワクドキドキカルデア編!
無限に続く、守護者の道〜
という訳で作者の次回予告も、ヒントも今日でおしまい。
そんな訳で、もういっそ吹っ切れて答えを出そうかと!!
外伝集のパスワードは
『セイギノミカタ』
なんとも、サーベラスらしいでしょ?
カタカナにしたせいで、コピペして貰わないと見れないのですが……すいません。
後、前書きの絵は自作なんですが……
……イラストの容量足りるかな…………
サーベラス君、描きたいけどなぁ……
画力と容量が足りるかどうか……
誰か書いてくれ〜
いや、書いてもらうのは悪い気がするし、画力とかプリーズ(強欲で謙虚な作者)
まぁそれも置いといて、改めまして……
ここまで読んでくれてありがとうございました!!
これからも、よろしくお願いしま〜す!!