葉月の異常な愛情~または僕は如何にして心配するのを止めて近界民を愛するようになったか~ 作:Amisuru
まずは挨拶代わりに。
笹森くんの足元目掛けて、分散したキューブの3分の1程度を雑にぶっ放す。
笹森くん、即座に地を蹴ってこれを回避。跳ぶのではなく僕から見て時計回りの軌道で走って、地面に触れた
『狙いがバレてるねえ』
「……足元狙いは露骨だったかな」
跳んで回避したところを残る3分の2で撃ち落としたかったのだが、横軸から向かってくるのか。今までの対戦とは違って、大通りっていうのが面倒だな。走れるスペースが広過ぎる。流石にこの広さを纏めてカバー出来るだけの弾丸はバラ撒けない。
まあ、だからこその足元狙いだ。周囲のメテオラキューブが壁の役割を果たしている間は、笹森くんも容易にこちらへは近付けまい。のんびり行こう。
もう3分の1を発射。これも同様に避けられるが、
「くっ……!」
おっと、気付いたかな? ぐるぐる回って時間を稼ぐのも限度があるということに。笹森くんの感情に『焦り』が
という訳で、彼にターンを渡さないためにもここで一度とんずらこかせてもらいましょ。
「どろん」
後方へと大きく跳躍、同時にそれまで自身の立っていた足元目掛けて残りの
「……いないっ!?」
ややあって視界が晴れてきた頃、ぽつんと一人取り残された笹森くんの驚声が響く。
ふふふ……近接オンリーの身で標的を見失うというのはさぞかし不安になることだろう。
『その代わり、今のお兄ちゃん立ち回りがすっごいワルモノっぽいけどね』
それは言うな。
見晴らしの良すぎる大通りのど真ん中でぼっ立ちは流石に不味いと判断したか、笹森くんもまたその辺の木陰に身を隠す。そして首だけを出して辺りをきょろきょろ。やっていることは僕と似通っているが、未だに僕を探している時点で君の負けだ。だってほら、もう僕の手元には新たな
という訳で死ねィ! 笹森日佐人ォ!!
「
「――!?」
『なんで不意打ちするのにトリガー名を叫んだ?』
「わ、わざとだよ! ついだよ!!」
『どっちだよ』
これはいかん。よーく狙って撃つ時はトリガー名を叫ぶというのがすっかり癖になってしまっている。どうせ叫ぶなら『僕はボーダー隊員、階級・C級! 大庭葉月だ! 今からお前を撃つ!!』ぐらいのことは言っておきたかったぜチクショウ。
とにかく、僕の声に反応して木陰から跳び出す笹森くん。彼の背後で無人の街路樹を必死こいて吹き飛ばしている
仕方がない、那須さんと遊んで以来の鬼ごっこと行きますか。今度は僕が逃げ回る番だ。新たな
「とうっ!」
最初に転送された歩道橋の上へと跳躍する。高いところなら何処でも良かったのだが、パッと目に付いたのでここへと避難することにした。さて、笹森くんは追って来てくれるかな。どうかな。
「うっ……」
おっと、勢い任せに跳び移っては来ないか。彼が跳び移ろうと地を蹴ったら僕が道路へと降下、それを追いかけてきたら歩道橋の下を潜って再跳躍という最高にウザい無限ループを決めようと思っていたのだけれど。絵面がギャグにしかならないから出来なくて良かったかもしれない。
……というか、待てよ? この歩道橋というポジション、中々に悪くないのでは? ここから笹森くんが僕を斬るために採れる
王手だ。期せずして僕は王手を指してしまっていたらしい。『負けました』という水上さんの声が思い起こされる。投了の際にはそう宣言するのが将棋のマナーなんだと祖父は言っていた。あのタイミングでその言葉が出てくるってことは、水上さんもやっていたのかな、将棋――
――まあ、とにかく。
「
『なんで英語で言った?』
うーむ、なんでだろうか。
スターウォーズは見たことがないと那須さんに言った筈なんだが……。
――やはり厳しい展開になってしまったと、笹森日佐人は内心で歯噛みする。
弾丸トリガーを相手にするのはこれが初めてのことではない。諏訪洸太郎、堤大地と別れてからの数時間、笹森もまたランク戦へと身を投じ、幾人かの訓練生と矛を交えてきている。その過程で思い知らされていたことだ。弧月で弾丸トリガーの相手をするのは非常に辛い、と。
特に
「
笹森日佐人の学力は平均よりやや上、決して低くはないが取り立てて高くもないと言ったところである。洋画も吹き替え派だった。故に、中学二年生の英語力で彼は素直にその言葉を翻訳する。
何故このタイミングで英語なのかはさっぱり理解らないが、確かに窮地だ。歩道橋という侵攻ルートが極めて限られた位置に陣取られてしまうと、刀一本では到底攻め込みようがない。相手にキューブのない今なら――とも思ってしまうが、最悪なのは
「どうした笹森くん! 僕はこのままタイムアップでもいいんだが――言ってみてから思ったんだけど、個人ランク戦って時間制限とかどうなってるのかな? 笹森くん知ってる?」
「え!? い、いや知りませんけど……」
「そうかありがとう! 返事のお礼にこの
絶叫と共に頭上より放たれた
……いや、やはり狙うのは心臓にしておこう。いくら中身と言動がアレであっても、女性の顔を両断するのは流石に抵抗がある。ただでさえ男性の隊員であっても、首やら胴体やらを斬り落とすのにはまだ慣れていないというのに――
「みいつけた」
ひっ、と喉の奥から漏れかけた悲鳴を寸でのところで堪える。歩道橋の上から逆さ吊りに首を突き出して、大庭葉月がこちらを覗き込んでいた。爪先を手すりにでも引っ掛けているのだろうか? トリオン体なら落ちたところでダメージはないとはいえ、よくもまあそんなことを――
首の横からキューブの浮いた手も生えてきた。そして即座に発射される。ひいひい言いながら橋の下から脱出しつつ、笹森は考えた。相手が不安定な体勢を取っている今なら、跳び上がって斬りかかるチャンスだろうか? 大庭葉月が顔を出していない側から廻り込むように――いや、それも駄目だ。爪先を引っ掛けることで身体を支えているのなら、軽く足を上げるだけで向こうは歩道橋から
チャンスは一度だけだ。大庭葉月が歩道橋の上から動くことなく、こちらの跳躍を許してくれる
駆け出した背中が爆風に煽られる。痛みも熱さも感じないのだが、熱波とは別に背中を叩く感触がある。
訓練の際に流れたアナウンスを思い出す。
……待てよ。
もしかすると、これなら――
「――む」
逆さに映る視界が晴れて、笹森くんの姿が露になる。今、隊服のポケットに
気がかりなのはそれだけではない。焦りと混乱に支配されていた彼の感情に変化が
これはこっちも気を引き締めた方がいいかもしれない。ひとまずこの間抜けな体勢を止めよう。背筋運動の要領で背中を持ち上げて復帰する。トリオン体じゃなければ絶対に出来ない動きだな、これは。
「――今の僕、隙だらけだと思うんだけど、跳び込んでこないのかな?」
口プレイで誘ってみる。実際のところ、いつでも落ちる準備は万全だ。このまま歩道橋の上から悠々と眼下の笹森くんを撃ち続けても構わないのだが、彼自身がここへと上ってきてくれるのならそれに越したことはない。
「……いいえ。多分ですけど、もうその必要はないと思います」
「――ほう?」
これは異なことを言う。弧月使いがこちらに近づくことなく、如何にして僕を斬るというのか。
万全の体勢で歩道橋へと舞い戻り、全回復した
『うわ、負けフラグがビンビンに立ってる』
やめろ。ただでさえさっきから『これどう見ても僕がかませで笹森くんが主人公みたいな空気になってるよな……』って不安を抱いてるとこなんだぞ。
とはいえ、空気、フラグ、感情――そんなものは結局、勝敗を決める絶対条件にはなり得ない。根性論というやつは、知略の限りを尽くした上で最後の最後に縋りつくべきものだ。最初からアテにするようなものじゃない。いま僕は笹森くんの感情に気圧されかけているわけだが、そんな自分に喝を入れる意味合いも込めて、あえて内心でこう唱えさせてもらおう。
「――行きます!」
駆け出す笹森くん。僕はキューブを掲げたまま動かない。足で搔き乱す作戦に切り替えたのだろうか? それならこちらも最初の足場削りに戻るまでのことだが、またしても橋の下へと潜り込まれてしまった。さて、前後どちらから出てくるのか、或いはまたも身を隠し続けるのか――あれ、何気に今、中々に面倒な三択を迫られていないかこれは。跳び移ってきたところを即座に撃ち落とせばいいとばかり思っていたのだが、そもそもちゃんと反応できるのか僕?
いやまあ、順当に行けば背後を突いてくるだろう。という訳で振り向き、眼下を覗き込む。流石にもう逆さ吊りにはならない。手すりに腹を乗せて上半身だけ突き出すような格好だ。
発見した。ちょうど真下から笹森くんがこちらを見上げている。やはり後ろに回り込もうとしていたのか。さあどうする? 跳び込んでくるか? 迎撃準備は万全だぞ、と見せつけるように
笹森くんが、手に持っていた
『「あ」』
その瞬間、僕と陽花のリアクションがハモった。
どうやら笹森くんが握り締めていたのは、僕が景気よく吹っ飛ばしたアスファルトの破片だったようだ。砂利と言い換えた方が伝わりやすいだろうか? 細かく砕けた無数のそれは、散弾の如き鋭さでこちらへと殺到し、僕の身体と
たかが砂利と侮ることなかれ。何しろ、戦闘体の強化された腕力で投げつけられた砂利である。痛みはなくとも
『――ちなみに少年のトリガーには
数瞬後に待ち受ける未来を連想して、僕は即座に地を蹴った。
手すりを跳び越え歩道橋から離脱した直後、衝撃を与えられたキューブが盛大な爆発を引き起こして、歩道橋を真っ二つに叩き割った。
「――なんとぉ!?」
間一髪、爆発に巻き込まれることなく歩道橋からの離脱には成功したものの――やられた。僕ではなく、キューブの方を狙ってくるとは思わなかった。水上さんとの撃ち合いでは
「――やっと降りてきてくれましたね、大庭先輩!」
「げっ」
最悪だ。着地地点へと笹森くんが既に先回りしている。これもまた理解していたことだ。歩道橋の上で
『言うほど策士だったか?』
反論しようとすればするほど惨めになる追い打ちはやめろォ!!
「せぇいっ!!」
「くぬっ……!」
必死に空中で身を捩って、心臓目掛けて突き出された刃を避けようと試みる。完全に悪足掻きだったのだが、まさかのこれが功を奏した。といっても刺さる箇所が胸から腹に変わっただけで、回避自体は成功していない。単に即死を免れただけだ。傷口から鮮血のようにトリオンがガンガン漏れまくっている。いやもう、生身を刺してもここまで景気よく噴き出さないだろうという勢いで漏れまくっている。死ぬ。これは普通に死んでしまう。
「……う」
おっと、弧月を握る笹森くんの手がやや緩んだか? これだけ近いと心の中もよく
……いや、僕というか
『――まーた私に命を救われてしまったね?』
いや、まだ
笹森くんがぶんぶんと頭を振り、弧月を握る手に力を込め直した。どうやら腹を括ったようだ。こっちは腹を裂かれようとしているのにな。ハハハ、ナイスジョーク。
「や、やめろ……こ……これ以上押し込むのはやめろ、死……死んじまうゾ」
「このタイミングで承太郎の物真似とか、結構余裕あるじゃないですか大庭先輩……!」
「ところでなんでこの時の承太郎って語尾がカタカナだったんだろうね? ギャップ萌え狙い?」
「本当に余裕あるなこの人! ああもう、変に躊躇ったのがバカバカしくなってきた……!」
「――そりゃまあ、実際にまだ余裕あるからね」
「……!?」
左手でがっしりと笹森くんの手首を抑え、右手は彼の胸元へ。前者は言うまでもなく刃の進行を食い留めるためだが、後者については
覚えているだろうか? 開戦当初、僕が笹森くんに掴みかかろうとしていたことを。頭か胸さえ掴んでしまえば、一撃で仕留められる技があると嘯いていたことを。あれは法螺でも何でもない、純然たる事実だ。いやまあ、実戦で使用するのはこれが初めてのことになるのだが、上手くいくと信じている。
それでは食らいたまえ、笹森くん。
大庭葉月先生による、
ぼんっ、という軽い破裂音が響いた後、笹森くんの瞳から光が失われ、彼の戦闘体にぴきぴきと亀裂が走っていく。なるほど、戦闘体っていうのは
「な……爆発の威力が……!?」
おっと、まだ喋れるのか笹森くん。致命傷は負わせた筈だが、動けるのであればのんびりしてはいられないな。ええい、刀を握る手を放しなさい。ぐいぐい。
「
「……相手に寄られた時の対策も、ちゃんと用意していたんですね……勝ったと思ったのに……」
「いや、本当だったら完全に僕の負けだったでしょ。やる事成す事どれもこれも逆手に取られて、穴があったら入りたいくらいの心境だよこっちは」
「……でも、やっぱりオレの負けですよ。だって今オレ、めちゃくちゃ悔しいし――」
うん、そうだろうな。
僕の確信を裏付けるように、笹森くんは僕の顔を真正面から見据えて、力強くこう断言した。
直後、笹森くんの戦闘体が割れた風船のように弾け飛び、視界が煙によって覆われてしまった。な、なんだ?
……終わった。笹森日佐人、紛れもない強敵であった。いや本当、ここまで苦戦させられるとは思ってもみなかった。"君の刃が僕に届くことは決してない"とかほざいてた頃の自分を助走付けてぶん殴りたい気分だ。汝、弧月使いを侮ることなかれ。
『っていうか、弧月がどうこうじゃなくて
おまっ……なんてことを言うんだこの妹は! いいか、この
『別に外せとは言ってないけど――ふーん、
「――うん?」
『私からの借り物じゃない、
「……ノーコメント」
……借り物、か。
確かにまた、その事実を再確認するような一戦になってしまった。いや、目を背けていたつもりも拒絶するつもりもないと思っていたのだが――
『……釘刺しておくけど、そうやって中途半端な態度取られるのが一番腹立つからね。譲るんなら譲る、譲らないなら譲らないではっきりしてくんない』
「……そういうお前は、どうしたいのよ。無理矢理取って代われるんなら、どうしてさっさとそうしないんだ?」
『今はまだ私が動くべき時ではない』
「なんだそりゃ」
やっぱりこいつの考えていることはよく理解らん。
……正直に言うと、今は自分の考えていることも、よく理解ってはいないのだけれど。
僕は結局、大庭陽花をどういう存在として扱っていきたいのだろうか?
妹だなんて言ってはいるけれど、僕は単にこいつの身体を体よく利用しているだけなんじゃないのか?
本当にこいつのことを想うのであれば、僕は大人しくこいつに身体を明け渡して、心の隅っこで体育座りでもしているのが正しい態度なんじゃないのか――とか。
『――まあ、じっくり考えなよ。私のこと、ちゃーんと
「……善処します』
『勝者のトリオン体を
……そうだな。
本当に、考えてみよう。じっくりと。
――それはそれとして、早いとこ訓練生という立場は卒業しなければならない。
笹森くんとの一戦、今までにない長丁場になってしまった。充実した戦いではあったが、左手の甲に燦然と輝く『3800』の4文字を確かめてしまうと、思わず溜息が漏れてしまう。8ポイント。あの激戦の末に得られたのがたったの8ポイント……なんて割に合わない勝負だったんだ……。
もう逃げがどうとか言ってはいられない。弧月に拘る必要もない。とにかく一番の高ポイントを狙うのだ。一分一秒でも早く、偽隊員の立場を卒業するのだ。などと逸る気持ちでパネルを叩き、新たな試合を申し込もうとしていた僕の背中に――
「――22時だ。18歳未満の隊員は速やかに
淡々とした語り口ながら、有無を言わせぬ迫力のある男性の声が掛けられた。
22時――そうか、もうそんな時間になってしまったのか。通りでパネルを眺めても碌に隊員が残っていない訳だ。入隊即日昇格の夢、今ここに潰えたり。
仕方がない、僕ではない誰かがこの大記録を達成してくれることに期待しよう。具体的に言うと2年後くらいに。そんなことを思いながら、声のした
「…………?」
「――何をしている。早く上がれ」
「あ、うん――いや、はい……?」
子供が。
子供が立っていた。
いや待て、僕の背中に呼び掛けた人と確かに同じ声をしている。ということはこの子――いや、この人はまさか、18歳未満ではないというのか? この外見で? 目つきの鋭さ以外に大人らしいパーツが欠片も見当たらない。肌もやたらと若々しいし、それに何より、そこから年齢を推し量るのはあまり褒められた行為ではないと思うのだが、どうしようもなく第一印象が――
『わー、ちっちゃくてかわいー』
それな。
いや、"それな"じゃないよ僕。失礼にも程があるだろう。こんな呼びかけをしているのだから、相手は正隊員に間違いないんだぞ。たとえ今は私服姿で、本部基地にうっかり迷い込んでしまった迷子の小学生か何かにしか見えないとしてもだ。
「……おまえが何を考えているのか、大体の想像はついている」
「へえっ!? い、いやあの誤解だよじゃなくてその滅相もございませんですますことよ!?」
「嘘を吐くのならもう少し上手くやれ。……まあ、初めて俺と会った時の
何やら遠い目をしながら左手を握ったり広げたりしている青年隊員(仮)。表情こそ何の変化も見受けられないが、それでも僕には
となると、やっぱり外見弄りは控えた方が良さそうだ。僕の
『でも怒ってやることがほっぺたぶにーっていうの想像すると可愛くない?』
やめろ。僕の想像力を迂闊に刺激するな。何が出てくるかわかったモンじゃないぞ。
「――それにしても、見ない顔だな。まさかとは思うが、今日が入隊初日か?」
「は――はい、そうです。訓練が終わってからずっと、この部屋に籠もってランク戦してました」
「……一日中か?」
「まあ、結果的にそうなっちゃいましたね」
「……まるで太刀川だな」
「タチカワ?」
「馬鹿の代名詞だ」
なんだか酷い言われようである太刀川氏。いや待て、僕は今その
「その、タチカワさんというのがどなたかは存じ上げませんが、お馬鹿さんの同類扱いというのも悲しいので名乗らせていただいてもよろしいでしょうか」
『お兄ちゃんも今タチカワさんに大分失礼なこと言ってると思うよ』
「たしかに」
「――そうだな。俺もはっきりとおまえに年齢を伝えておくとしよう。二度と余計な想像力を働かせないためにもな」
「よ、余計な想像なんてしておりませんですわよ……?」
「……次会うまでに、顔か口調のどちらかは誤魔化せるようになっておけ」
妙な課題を出されてしまった。うーん、他の部分はともかく、この氷のような視線と静かな声のダブルセットには確かな威圧感がある。小学生には決して出すことの出来ない、凄みというやつを感じる。
僕も大人になったらこんな感じの迫力が身に付いたりするのかなあ、などと思いつつ。
「――大庭葉月っていいます。15歳で、男です」
「風間蒼也、19歳だ。はじめまして」
それから、若干の沈黙があって。
「19……」
「……男……?」
そんな呟きが、互いの口から漏れた。
体内にシールド張れるんだったら体内にキューブ作れてもいいじゃないですか理論
自分の身体の中に張るのと他人の身体の中に作るのとじゃワケが違う?
それは…まあ…そうねえ…