葉月の異常な愛情~または僕は如何にして心配するのを止めて近界民を愛するようになったか~   作:Amisuru

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祝! 賢い犬リリエンタールリミックス版発売決定!!
しかも下巻にはROOM303まで収録されているという……奇跡か……?

~ワートリのこういうところが好きならハマると思います~
・基本的に『悪人』の存在しない世界観(モブ等例外もあり)
・ランク戦もいいけど日常回も好き
・葦原先生のギャグセンスが好き
・熱い自転車推し
・木虎や香取みたいな女の子が好き
・那須さん似の美人さんも出ますよ
・スパイダーみたいな武器も出ますよ
・体育座りで泣いてるときの村上と彼を励ます来馬先輩や荒船さんが好き
・ROUND8前の千佳ちゃんと栞さんのやり取りが好き
・要するに自分のことであれこれ悩める人達が一生懸命生きているのが好き

ああ…次はトリガーキーパーだ…(これだけ読んだことない)




風と雷の狭間で

 

 

「――それじゃあ早速、大庭くんのトリガーセット決めと行きたいところだけど」

 

 

 寺島さんが手にしていた紙コップをデスクの上に置き、代わりに取り出したるは我らがボーダー隊員愛用の玩具こと、トリガー。見た感じ僕の使っている訓練生用のものと特に変わりはないようだが、中身はてんで別物の筈だ。

 8種類。炸裂弾(メテオラ)だけでもぶっ放しててあれだけ楽しかったというのに、更に7つもの新装備が僕の手に……いやー、夢が広がるとはこのことですね。オラわくわくしてきたぞ。

 

 

「キミ、昨日入隊したばっかりなんだって?」

「はい」

「ってことは、まだ知らないトリガーの方が多いよね。訓練生はトリガー1つしか使えないから、防御用のトリガーやオプショントリガーに触れる機会は全然ないし――というわけで、今日はこういうものを用意してきたんだ」

 

 

 続けて寺島さんが、デスクに積まれた資料の中から一冊の本を手に取る。

 『BORDER BRIEFING FILE』……ボーダーの活動報告書、といったところか? こんなものも作られているんだなあ。例のメディア対策室長こときつねさん、もとい根付さんの仕事だろうか。ご苦労様です。

 

 

「ここのページから各トリガーの解説がざっくりと載ってるから、とりあえず読んでみて。前の方にはボーダーで測った各隊員の能力値なんかも載ってるけど、そこはまた別の機会ってことで」

「これはこれは、ご丁寧にありがとうございます――あ、弧月だ」

 

 

 『攻撃手(アタッカー)用トリガー』という見出しから始まったページに記載されていたのは、皆さん後存知の(ブレード)トリガーこと弧月であった。ここは読み飛ばしてもいいかなあとか舐めた考えが頭に過るも、そうやって慢心した結果があの笹森くん戦なので大人しく読み進めることにする。

 

 

 

 

 

-弧月-

TYPE:バランス STYLE:万能

攻撃力:A 耐久力:A 軽さ:C

 

基本性能の高さで信頼性No.1!

攻撃手(アタッカー)トリガーとしては最初に開発された物で、使用者が多い。

スコーピオンと比べて重量があり、形状も自由に変えられないが、攻撃力と耐久力に優れている。

 

 

 

 

 

「はえ~……こうして読むと、弧月って結構良いトリガーに見えますね」

「いや、こうして読むとも何も、弧月って一応技術者(エンジニア)の中では傑作扱いのトリガーなんだけど……弧月に対してどういうイメージ抱いてるのキミ」

「正直、C級ランク戦で相手にしてみた感想は――ただの刀! おわり! みたいな」

「……へえ?」

 

 

 ――お、おや? なんか寺島さんの内側に『怒り』の感情がふつふつと……いかん、仮にも傑作扱いされているトリガーをコケにするような発言は控えるべきであったか。というか慢心を捨てるとか言っておきながら全然捨てきれてないなこの僕は。

 などと考えていた僕の横から、風間さんによる驚きの新情報が。

 

 

「大庭。寺島は今でこそこんな外見(ナリ)をしているが、現役時代はトップクラスの弧月使いとしてそれなりに名を馳せた男だ。言動には細心の注意を払うことだな」

「なんですと!?」

 

 

 マジか。確かにさっきもこれ以上太ったら二度と攻撃手(アタッカー)に戻れないとか言われてはいたが、そこまでの実力者だとは思いもいなかった。しかし、よりによって元弧月使いの前で弧月をディスってしまうとは……! バカ! 大庭葉月のバカ! この人間失格(人でなし)

 

 

「こ、これはとんだ失礼を……海よりも深くお詫びいたします……」

「……いや、キミの言う通り、C級隊員にとっての弧月はただの刀でしかない。それは認めよう。ただでさえキミは射手(シューター)なんだから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

「は……ははははは……そんなことは決して……」

 

 

 寺島さんの恨みがましい視線を前に、明後日の方角を向きながら乾いた笑いを浮かべることしか出来ない僕である。ヤバい、ヤバいですよ。多分これ僕がどうやって二日での昇格を果たしたのかまで勘付いてる視線ですよこれは。そういう感情をしておられますもん。

 こ、こんな筈では……炸裂弾(メテオラ)使いの僕であれば、開発者の寺島さんとは良好な関係を築けるものだと思っていたのに、いきなり雲行きが怪しくなってきたぞ。これ以上この御方の機嫌を損ねては調整(チューニング)の話がご破算になってしまう。

 とにかくもう、二度と弧月を侮るような発言はしないことだ。いや、むしろ崇めたてろ。弧月最高! 弧月最高! おまえも弧月最高と叫びなさい!! 来週で最終回ってマジ!?

 などと冷や汗だらっだらで考えている僕を前に、寺島さんが呆れたような溜息を一つ。どうやらお怒りを引っ込めて下さったようで何より。

 

 

「……今のうちに言っておくけど、正隊員のランク戦はC級ランク戦とは()()()だからね。一番の違いは(シールド)の有無だけれど、それだけじゃない。弧月もまた、ただの刀ではなくなるんだ。その下の項目を見てごらん」

「は、はい」

 

 

 言われるがままに視線を下げると、そこには『OPTION TRIGGER』なる項目と、聞いたことのない二種のトリガーに関する説明が。

 

 

 

 

 

-旋空-

トリオンを消費して、攻撃を拡大。間合いが大幅に伸びる。

 

-幻踊-

(ブレード)部分の形状を自在に変えられる。

 

 

 

 

 

「『旋空』と『幻踊』……」

「そう、弧月専用のオプショントリガーだ。弧月と同じ側にセットすることで効力を発揮する」

()()()?」

「ああ、そこからか――そうだな、分解(バラ)して見せた方が早いか」

 

 

 机の引き出しから電動ドライバーのような工具を取り出す寺島さん。そのままトリガーの中心部にぶっ刺してにゅいーん。それだけでトリガーの蓋が開き、中身が露になる。結構簡単にバラせる仕組みになってるんだなこれ。

 中には一枚の基板が入っており、基盤の上下に各4種ずつ、小さなチップを嵌め込むスペースが存在している。ここに弧月やら炸裂弾(メテオラ)やらのデータが入ったチップを嵌め込むわけだな。いかにも精密機械って感じだ。

 

 

「この上の4種が利き手用の(メイン)トリガーで、下が逆手用の(サブ)トリガー。同時に使用できるのは(メイン)(サブ)から各1種ずつで、(メイン)から2種、(サブ)から2種のトリガーを同時に使ったりなんかは出来ない」

 

 

 基盤の上スロットと下スロットを交互に指差し、丁寧に解説して下さる寺島さん。

 なるほど、例えば(メイン)トリガーに弧月と炸裂弾(メテオラ)をセットしたとして、その二つを同時に使うことは出来ないというわけだ。併用したいトリガーは(メイン)(サブ)、別々のスロットに入れろ、と。

 

 

「ただ例外も存在する。それがこの『旋空』や『幻踊』といったオプショントリガーで、これらは弧月と同じ側のスロットに装備しないと機能しないんだ。同じオプショントリガーでも鉛弾(レッドバレット)とかになるとまた話が変わってくるんだけど……ややこしくなるから今は置いておこう」

 

 

 ……赤い弾丸(レッドバレット)?。またなんか知らない単語が出てきたな。

 まあいい、とりあえず旋空・幻踊と弧月はセットで入れようということだけは覚えた。ついでに一つ、(メイン)トリガーと(サブ)トリガーの話から()()()()()()()もあるのだが――これも今はいいかな。

 

 

「例外ってことは、たとえば旋空と弧月の1セットを(メイン)(サブ)の両スロットに装備して、『必殺! ツイン旋空弧月!!』なんてことも出来ちゃったりするんですかね」

「勿論。それで強いやつもいるし――というか、攻撃手(アタッカー)1位のやつがまさにその構成だからね」

「おおー……二刀流で最強だなんて、まるで宮本武蔵みたいですね」

「……確かに奴は、()()ボンドと呼ばれるのがお似合いだがな」

「あ、風間さん。正しくはバカじゃなくてバガですよバガ、バガボンド」

「いや、バカで合ってるよ大庭くん。……というか風間、太刀川ってまだ1位のままなんだっけ? ()()()()()?」

「――ああ。昨日抜いた」

 

 

 ……うん? なんか今さらっとすごいことを聞いてしまったような気が……。

 

 

「そりゃおめでとう。というわけで大庭くん、キミの隣にいるそのちっこいのが今のボーダーNo.1攻撃手(アタッカー)だよ」

「風間さんはちっちゃくないですおめでとうございます!!」

「静かにしろ。他の技術者(エンジニア)たちが仕事中だ」

はい……いやでも、No.1攻撃手(アタッカー)……マジかあー……凄いじゃないですか風間さん」

 

 

 今更ながらとんでもない人の世話になってしまった。No.1。男が憧れる単語それこそNo.1だ。ならなくてもいいとか歌ってる人もいるけれど、なれるもんならそりゃなりたいに決まっている。むしろ()()()()()()()()()()()()()()()()くらいの気持ちまである。皆と一緒がいいよ、うん。

 ……なんか話がズレてきたような気がするな。とにかく、やっぱり(Y)風間さんは(K)すごい(S)。ところが肝心の風間さんに、そんな自分を誇らしく思う気持ちが欠片も視当たらない。うってぃー君といいこの風間さんといい、きくっちー君に自尊心を吸い取られているんじゃないだろうなこの人らは。

 

 

「――()の居ぬ間に掠め取った、空き巣のようなものだ。とても喜ぶ気になどなれん」

「そういうものですかねえ。風間さん、棚から出てきた牡丹餅は食べられないタイプの人です?」

「口にしたはいいが、味がしないというのが正直なところだ。……いいから続きを読め、大庭」

「あ、はい」

 

 

 うーん、オールマイトが引退した後のエンデヴァーみたいな心境なんだろうか。自尊心(プライド)がないとか言ってしまったけれど、むしろ逆だな。順位ではなく純粋な力量で、太刀川さん(バカボンド)こと元1位の人を追い抜きたいのだろう。というかこの太刀川さん、思い返せばちょくちょく風間さんの口から名を挙げられていたっけな。最近は本調子ではないとのことだが、一体何があったのやら。

 その辺りのことを詳しくつついてみたい気持ちもあるにはあるが、せっかく御二方が貴重な時間を割いて僕に付き合ってくれているのだ。寄り道は控えよう。というわけで風間さんの言に従い、僕は大人しくBBFの続きを読み進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――買い物っていうのは、物を手に入れた時よりも商品を選んでいる時の方が楽しい説、あると思います。

 一通りの解説を読み終えてページを閉じた時、僕の脳内は仕入れたばかりのトリガー知識でパンパンになっていた。あのトリガーにはこういう使い方もあるんじゃないか、あれとあれと組み合わせたらこんなことが出来るんじゃないか――と、妄想が膨らみ続けて止まらない。いやホントに、有意義なものを読ませていただきました。

 

 

「たしかなまんぞく……」

「満足するな。まだ何も決まっていないだろう」

「いや、本当にどのトリガーも魅力に溢れていると言いますか、ここから8つに絞るだなんて勿体ないといいますか……倍の16、いやせめて14枠くらいあれば選べそうなんですけど」

「木崎みたいなこと言ってるなあこの子は」

「キザキ?」

 

 

 知らない名前だ。……いや、どっかでちょこっとだけ耳にしたような気も……いずれにしても、どういう人物なのかはまるで知識にない。

 

 

「木崎レイジ。俺らと同世代の隊員だよ。攻撃手(アタッカー)銃手(ガンナー)、それに狙撃手(スナイパー)の3つでマスターランク――8000ポイント以上を稼いだことから、『完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)』だなんて呼ばれてる」

「やだ、カッコいい……!」

「そう? 俺とか諏訪がそう呼ぶと嫌がるんだけどな、あいつ」

「おまえらが『あ、完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)のレイジさんだ。飯奢れ』だの『完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)はいつになったら恋愛も完璧(パーフェクト)になるんですか?』だのと面倒な絡み方をするからだろう、それは」

「何やってるんですか寺島さん」

「いや、あいつって隙のないキャラぶってるから逆に弄り倒したくなるっていうかさ……風間にも似たようなこと言えるんだけど」

「その気持ちは理解らなくもないですが」

「わかるな」

 

 

 僕は思った。風間さんが年長者で良かったなあと。仮に同世代であったのなら、間違いなく僕も寺島さんや諏訪さんらの側に回っていたと思うので。

 というか、恋愛がどうとかすごいプライベートな話を耳にしてしまった。ボーダー隊員も恋とかするんだなあ。

 そりゃそうか。人間だもんな。

 

 

「――で、8つに絞れないって話だっけ大庭くん」

「そうですね。オプショントリガーとか正直全部ぶち込みたいくらいの気持ちまであります。……あ、でもこれはいらないかも」

 

 

 

 

 

-バッグワーム-

レーダーから完全にロストする狙撃手(スナイパー)の命綱!

 

マント状のトリガーを着用すると、微量ながらトリオンを消費し続けるが、

その間は着用者がレーダーに映らなくなる。

対電子戦用の隠密(ステルス)トリガーであり、役割上、後方に身を潜める狙撃手(スナイパー)の殆どが利用している。

肉眼に対しては何の効果もないが、遮蔽物の多い地形や、雪など視界の悪い天候の場合は、

攻撃手(アタッカー)銃手(ガンナー)射手(シューター)も着用することがある。

 

 

 

 

 

「僕、狙撃手(スナイパー)になるつもりはないですし。そもそも隠れてじっとしたりとか苦手なんですよね」

「うーん、シールド2枚とバッグワームは正トリガーの基本セットなんだけどなあ……」

「……え、そうなんですか? シールドも1枚あれば充分だよなとかと思ってたんですけど……」

両防御(フルガード)の選択肢を持っているのといないのとでは、いざという時の守りが雲泥の差だ。大人しく2枚入れておけ」

 

 

 ってことは実質5枠しか自由に組めないじゃないですかー! やだー!!

 いやだいいやだい、僕はもっと自由に好みのトリガーだけぶっ込んだ構成にしたいんだい。基本がどうとかんなこた知ったこっちゃないんじゃい。元々特別なオンリーワンなんじゃい。桜井和寿もこう歌っていたじゃないか、一つにならなくていいよ、と。まったく、もっと一人一人の個性を尊重してほしいものですわね。嫌んなっちゃうわ、まったくもう。

 ……うーん、陽花(あいつ)が寝てると脳内でいくら掌モーター回転させても虚しいだけだなあ。そろそろ起きてきて貰わないと困ってしまうんだが。

 いや、ツッコミ役がいなくて寂しいとかそういう理由じゃなくて、割と真面目に。

 

 

「――どうしてもシールド2枚入れるのが嫌なら、エスクードのピン差しで誤魔化すっていう手もなくはないね。あんまりオススメはしないけど」

「あ、このトリガーも気になってたんですよ。地面から飛び出す壁、面白そうじゃないですか」

 

 

 

 

 

-エスクード-

隠れ場所にも最適の堅固なる障壁!

 

任意の場所からバリケードを発生させ、身を守るトリガー。

単純に盾として使うことも、相手の射線を遮る簡易的な隠れ場所として使うことも出来る。

透明なシールドと違って、自分の視界も遮られるので注意が必要。

 

 

 

 

 

「……エスクードか。確かにこいつは、1枠だけでも両防御(フルガード)並に機能はするが……」

「おお~……いいじゃないですか、これ使いましょうこれ。シールドはポイーで」

「いいけどこれ、シールドに比べて消費トリオンかなりデカいよ。大庭くんってトリオンには自信ある方?」

「それはもう。()()()()()()()()

「……?」

 

 

 いかん、寺島さんが全力で何言ってんだこいつ的な目をしておられる。そりゃそうだ。

 そんな彼と僕を一瞥して、仕方がないと言わんばかりに溜息を吐く風間さん。あ、ひょっとしてフォローして下さいます? ありがたやー。

 

 

「……大庭は副作用(サイドエフェクト)持ちだ。エスクードを使うには充分なトリオンがあると考えていい」

「あ、そうなの。ちなみに妹がどうとかっていうのは……」

「今は気にするな」

「さいで。……で、バッグワームもいらないんだっけ? 物陰から不意打ちする時なんかに使えるんだけどな、狙撃手(スナイパー)じゃなくても」

「僕、漫画とかに出たら『不意打ちができない男』って注釈付けられるタイプの人間なので」

 

 

 炭治郎くんみたいに真っ当な理由ではないけれども。詳しくは笹森くん戦を読み返してほしい。

 とにかく、(メイン)トリガーの半分はこれで埋まった。炸裂弾(メテオラ)とエスクード。ええ、勿論外しませんとも、炸裂弾(メテオラ)。これから先、他のトリガーがどれだけ入れ替わろうとも外すことはない。絶対に。

 

 

「そういえば、防御用トリガーには含まれてなかったですけど――こういうのもありましたよね」

「うん?」

 

 

 既にエスクードの採用を決めてしまった後なのだが、そういえば他にもシールドの代わりになりそうなのがあったなと思い、ページをぱらり。

 そこに記載されているのは――

 

 

 

 

 

-レイガスト-

TYPE:防御 STYLE:重装

攻撃力:刃B/盾E 耐久力:刃B/盾SS 軽さ:刃D/盾D

 

攻防一体の重装トリガー!

ブレードを変形させて盾にする『(シールド)モード』を持つ、守備的トリガー。

専用オプションの『スラスター』が存在する。

 

 

 

 

 

「――これ、攻撃手(アタッカー)用トリガーに分類されてましたけど……射手(シューター)は使っちゃいけないとか、そういう決まりはないですよね?」

 

 

 レイガスト。C級ランク戦では見かけなかったトリガーだ。いや本当に、リストを眺めてみても使っている隊員が一人もいなかった。なんでこんなに人気ないねんこれ。軽さDのせいだろうか? 弧月にしてもそうなのだが、トリオン体の筋量でも重たく感じるトリガーっていうのを生身の人間に持たせたらどうなってしまうのだろう。ゼットソード持たされたキビトさんみたいな感じになるんだろうか。

 それはさておき、やはり目を惹くのは驚異の耐久力SSだ。ただのSじゃない、SS。なんかもう、硬い! 絶対に硬い!! と言わんばかりである。象が踏んでも壊れなさそうだ。と言っても、レイガストに限らずトリオン製品っていうのはそういうものらしいけれど。バムスター君が戦車の砲撃をも容易く弾き、三門市を蹂躙した大規模侵攻当時の映像はあまりにも有名――

 

 

 

「――よくそいつに目を付けてくれたね、大庭くん」

 

 

 

 ……などとしょうもないことを考えていたせいで、僕はその瞬間、寺島さんに生じた感情の変化に気付くのが遅れてしまった。

 それは、ついさっき栞さんがきくっちー君について全力で語ったときと同じ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()特有の――

 

 

射手(シューター)としてC級ランク戦を駆け抜けたキミに、()()()()()()()()とわからせるにはうってつけのトリガーだ。そう、俺はずっとキミにこいつの力を見せつけてやりたかった――」

 

 

 

 ――情熱(passion)だ。

 

 

 

「大庭くん、風間。場所を変えよう」

「え、いやあの決して攻撃手(アタッカー)を舐めているつもりは……というか、移動ですか?」

「紙資料だけでレイガストを知った気になられたら困るからね、全力でプレゼンさせてもらうよ。そう、開発者としてね……」

 

 

 デスクの引き出しをごそごそと漁り、分解(バラ)したものとは別のトリガーを取り出す寺島さん。

 ……そういえば昨日、風間さんが言っていたっけか。炸裂弾(メテオラ)にばかり気を取られていたが、このレイガストもまた、寺島さん謹製の逸品であるのだと。それにしても、僕が炸裂弾(メテオラ)使いであることをアピールした時は割かし塩対応だったというのに、この異様なまでのレイガスト推しは一体どういうことなのか。元攻撃手(アタッカー)という出自が関係しているのか……?

 

 

「そこの奥の部屋が、開発室備え付けのトレーニングルームになってるんだ。開発中のトリガーを試し打ちしたりするのに使うんだけど、ちょっと借りさせてもらうことにする。ついてきて」

 

 

 顎をしゃくって目的地を示すと、そのままのっしのっしと机と机の間を掻き分け進んでいく寺島さん。思い立ったが即行動と言わんばかりの勢いに呆気に取られている僕の横、巻き添えを食った風間さんがやれやれと首を振って。

 

 

「……寺島が技術者(エンジニア)に転向したのは、弾丸トリガーの強化と流行に腹を立て、自身の手で対・弾丸トリガーを開発しようと思い立ったのがきっかけだ。奴の怨嗟に火を点けてしまったな、大庭」

「え、怨嗟と来ましたか……というか、そういう話は前もって聞いておきたかったんですが……」

 

 

 アカンですやん。僕なんかもう存在自体が地雷みたいなもんですやん。出会ってはならない二人だったのでは……? というか、その転職経緯でなんで炸裂弾(メテオラ)なんか開発しているんだ寺島さん! 罠か!? 僕みたいなカモを吸い寄せるために用意した罠だったのか!?

 などと被害妄想を炸裂(メテオラ)させている僕の前で、風間さんは相変わらずの無感動な表情で。

 

 

「だが、奴の言うことにも一理ある。正隊員のランク戦は、C級ランク戦とは別世界――シールド軽視と攻撃手(アタッカー)というポジションへの不理解、おまえが現時点で抱えている二つの問題点を、寺島とレイガストの組み合わせは浮き彫りにしてくれることだろう。良い機会(チャンス)だと思っておけ」

「……前向き(ポジティブ)な考え方ですねえ」

「それが俺の教育方針だと、おまえは知っている筈だがな」

「ぐうの音も出ないであります」

 

 

 ――まったく、強いわけだよ、風間隊。

 OK。腐っていても始まらない。元トップクラス攻撃手(アタッカー)のご指導、有難く受けさせていただこうじゃないですか――!

 ビシィ!! と両の手で頬を一叩きして、僕と風間さんは部屋の奥へと消えていく丸い背中を追いかけていった。

 

 

 

 

 

『……ねえ、ほっぺた痛いんだけど』

 

 

 あ、起きた。

 





今日のダウトポイント:No.1攻撃手(アタッカー)風間蒼也、爆誕。
筆が…筆が滑ってしもてん…小南に抜かれるまでの束の間の夢ということでどうかご容赦を…

無駄にカッコいいサブタイから男三人がわいわい持ち物選びしてるだけの回
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