葉月の異常な愛情~または僕は如何にして心配するのを止めて近界民を愛するようになったか~ 作:Amisuru
予定になかったシーンがぽんぽん生えてくる
「おー、やってらやってら。今日もブースは大賑わいだなっと」
という訳で、帰ってきました個人戦ブース。朝方に4000点まで稼いで以来、数時間ぶりの帰還になります。
……そうか。まだ一日経ってないんだよな、僕らが正隊員になってから。それからカゲさん達のとこ行って、風間隊のお世話になって、寺島さんに正トリガー作ってもらって、志岐さんと廊下で鉢合わせして、そして陽介と個人戦ブースへ……一日にイベント詰め込み過ぎじゃないか? そんなだからいつまで経ってもランク戦が始まらないんだよな。
公平は既にブースに着き、僕らが来るまで個人戦で時間を潰しているとのことである。遠征から帰ってきたのが昨日の夜のことだそうだが、長旅から帰ってきて即ランク戦とは随分と元気が有り余っているもんだ。まあトリオン体なら生身にそこまで疲れ残んないもんな。
「どの部屋にいるのかな、公平」
「ま、テキトーにモニタ眺めりゃ見つかんだろ。戦い方が無駄に派手だから判りやすいんだよな、あいつ」
そう言って陽介が顎をしゃくり、ロビーに設置された電光掲示板へと視線を促す。入隊指導の時と同じように、各部屋の番号が三分割された掲示板の上下にずらりと並んでいる。
中央の画面には、『101-212』だの『223-307』だのと隅っこに書かれた戦闘風景がサムネイル状に表示されている。なるほど、ロビーからでもどの部屋で誰と誰が戦ってるのか判別できるようになっているのか。しかし一つ一つの画面がえらくちっちゃいなこれ。もう少し大きくはならないものか――あ、なった。
分割表示されていた各部屋の映像、そのうちの一つが拡大されて掲示板の上部に映し出される。帽子を被った精悍な顔つきの隊員と、ス……スーツ? スーツ姿の鋭い目をした隊員が、激しく弧月で斬り結んでいる。そして中央の画面には、
という勝敗表示が。暫くすると画面が切り替わって、また別の部屋の映像と勝敗が拡大される。どうやら、こんな感じで順繰りに各部屋の映像をクローズアップする仕組みになっているようだ。
にしても、スーツ……スーツか。オペレーターならまだしも、戦闘員でああいう格好をしている人がいるとは思わなかったな。どう見ても防衛組織の兵隊がする格好ではないのだけれど、あれはあれで絵になるというか、周囲との違和感とかそういうものに目を瞑れば、まあ、悪くない。多分あの隊服を考えた人は周りの目を気にしない人というか、我が道を往く人というか、独自の世界を持っているタイプの人なんだろう。正直ちょっと興味深い。
「ねえ陽介。今モニタに映ってたスーツの人って、荒船さんと辻さん、どっちの方か判る?」
「ああ、そりゃ辻ちゃんだな。やっぱ最初は気になるもんか? あの格好」
「いや、悪くないね。正直に言うと僕もちょっとだけ着てみたい」
『正気か……?』
「ははっ、葉月ならそう言うと思ったぜ。――ま、着ようと思って着られるもんじゃねーけどな。二宮隊はもう定員一杯で人数増やせねーんだ」
二宮隊。それが辻ちゃんさんの所属している
今の試合が終わったら辻ちゃんさんに直接聞いてみようかな? あなたの隊長の二宮某さんってどんな人なんですかって。でも今日は陽介と公平の方を優先しないといかんしなあ。うーん、興味の湧くことが多過ぎて何から手付けていいのか困っちゃうぜボーダー。
とりあえず頭に留めておこう、二宮さんと辻ちゃんさん。いや、陽介がちゃん付けで呼んでるってことはさんはいらないか。じゃあ僕も勝手に辻ちゃんって呼ぼう。よろしくね! 辻ちゃん!
『5本勝負終了。勝者、荒船哲次』
『あ、辻ちゃん負けた』
うっかり彼の動きを狂わせる毒電波でも飛ばしてしまったかな……。
まあいい。辻ちゃんには悪いのだが、今日のお目当ては君ではないのだ。公平はどこだ公平は。という訳で再び縮小された無数のサムネイルを見回していると、
『あ』
不意に、陽花が小さく声を漏らした。丁度そのタイミングで、とある試合の画面が拡大される。
舞台は夜の市街地。立ち並んだ民家の屋根を、
少女は空中で身を捻りつつ、己の周囲に
二つの大玉が細かく砕け、衛星の如く彼女の周囲を取り囲む。そして彼女の口が開いた。こちらに声は届かないのだが、僕の耳にははっきりと、彼女の代名詞たるそのトリガーの名が聞こえた。
『――
「おー、やるなーあの女の子。隊服が訓練生のまんまってことはB級上がりたてなんだろーけど、あの腕だったらすぐにでもマスターになっちまいそーだぜ」
「そうだろうそうだろう」
「いや、なんでおまえがドヤ顔なんだよ。ひょっとして知り合いか? つーか同期?」
「そういうこと。――僕にボーダーの
那須玲。陽介と同様に、今日の僕が探し求めていた相手だ。上手い具合に二人とも見つけられて良かったぜ。後は彼女に
……あれ、そういや僕はどうして彼女に会わないといけなかったんだっけか。何かを依頼されていたような気がするんだが、その内容が思い出せない。何だったっけマイシスター?
『……ああ、やっぱり綺麗だなあ……
駄目だ。いつもの陶酔モードに突入してやがる。まあいい、本人に直接聞けばわかることだ。
それにしても、那須さんが全弾ぶっ放したというのに試合が終わってないな。もうとっくに相手が散体しててもおかしくない筈なんだが――そう思った直後。
路地裏の隙間から、
『「「なにィ!?」」』
なんだあの量。雨か? 嵐か? それ以前に、路地裏に潜む相手は一体どうやって那須さんの弾丸を掻い潜ったのか――その答えは、彼女自身が示してくれた。
那須さんの両脇を庇うように半透明の円体が浮かび上がり、飛来した無数の弾丸がそれによって防がれる。なるほど、あれが普通のシールドってやつか。レイガストと違って手を空けたまま使えるのはいいところだな。浮かせて使えるってことは重たくもないんだろうし、飛んだり跳ねたりを得意とする那須さんにはこっちの方が合っていそうだな。やっぱり僕も今からでも一枚入れて……いやいや。
とにかく、謎の路地裏マンもこのシールドによって那須さんの弾丸を凌いだのだろう。そして、どうやら路地裏マンのトリオン量は那須さんを一回りは上回っていると見える。大量の弾丸から身を護るために那須さんはかなり大きめにシールドを展開しているのだが、弾丸の雨に曝されたシールドはあちこちに罅が入っており、今にもパリンと砕けてしまいそうだ。
「な、那須さんが撃ち合いで押されている……正隊員の
思わず連邦の白い奴を前にした赤い人のような呟きが漏れてしまった。いや、那須さんがザクだとか言うつもりはないけれど。個人的にはキュベレイ辺りがよく似合うと思う。名前も玲だしね。詳しくないけど。
「いや、実際あの子より上手い
頭の後ろに手を組んで、リラックスした姿勢でモニタを眺めている陽介。普段通りの飄々とした笑みを崩さぬまま、続ける。
「流石にまだ、火力も
「――え」
陽介がそう口にした直後、路地裏の陰から
両の掌に一個ずつ、人間の頭部ほどはある巨大なキューブを掲げている。
で、そのメドローアがぶっ放される。分割無しの大玉一発。防ぎ切れないと察したか、那須さんが再び屋根を蹴って別の民家へ飛び移るのだが――何とこのメドローア、軌道を変えて追っかけてきやがった。
那須さん、再度シールドを展開。罅割れが回復し切っていないが、先程よりも発生範囲を絞っておまけに二枚重ねている。そういえばBBFのシールド解説にこう書いてあったな。シールドの強度は展開範囲に反比例して、小さくすれば小さくするほど硬くなるのだと。ということはこれこそ、那須さんに構築できる最大最硬の防御円なのだろう。ニジイロクワガタの甲皮! みたいな。
「よーしいける! まだいけるぞ那須さん!」
「と、思うじゃん?」
『あ、本家だ』
やめろォ!! おまえがそれ言ったら100%何か起こるって僕は知ってんだぞォ!!
「シールドが万全の状態だったなら、ひょっとしたら耐え切れたかもしんねーが――」
シールドに大玉が接触した瞬間、衝撃で圧し潰された大玉がぐにゃりと形を変えて――そして、爆発を起こした。那須さんの姿も爆炎の中に飲み込まれて、目視が叶わなくなる。
「――半壊の盾でどうにかできるほど、あいつの
『5本勝負終了。勝者、出水公平』
煙が晴れたとき、その中に那須さんの姿はなく――無機質な合成音声が、彼女の戦闘体が消し飛んだことを僕に伝えていた。
ロングコートの少年は、試合の決着を確かめるとふーっと一息を吐き、それから嬉しそうに口元を綻ばせた。……いや、
どうやら那須さんとの試合は、あいつにとっても確かな満足を得られるものであったらしい。
天才
その底知れぬ才能の一端を、僕はこの日、初めて目の当たりにしたのであった。
「コウヘイヘェーイ!!」
ブースから出てきた公平にそう叫びながら駆け寄ると、公平はぎょっと目を見開きこちらに視線を向けて、直後にぶーっと吹き出した。うん、典型的な驚愕の
「は――葉月!? いや、滅茶苦茶似てっけどなんか微妙に違うみてーな……誰だてめーは!?」
「いやだなあ、君のクラスメイトで出席番号も君の次で席も君の後ろの大庭葉月ですよ? そう、いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌……」
「こ、このウザ絡みは間違いなく葉月のヤロー……いや待て、顔だけじゃなくて声も微妙に高くなってんじゃねーか! 大体、なんでてめーが知らない間にボーダー隊員になってんだ!? おれ何も聞いてねーぞ!」
「そりゃ、弾バカ様は
僕の後ろからニヤニヤしながら公平を煽りに行く陽介。基本的に僕らが三人集まると弄られ役は公平の担当になる。僕と陽介に比べて根っこのところが真面目というか、アホになり切れないとこがあるんだよな公平は。別に欠点じゃない、むしろ美徳と言い換えてもいいところなんだけども。
「……それでも、昨日てめーに連絡した時教えてくれても良かっただろーがデコ出しバカ」
「いきなり顔合わせた方が絶対おもしれーって思ったから黙ってたんだよ。最初は弾バカ捕まえてから葉月のとこに連れてくつもりだったんだけどよ、たまたま先に葉月に会ったからプランを変更したっつーわけ。どーよ、この演出上手っぷりは」
しれっと言いのける陽介である。その初期プランだと僕の方もそれなりに驚かされる羽目になっていたな、公平が帰ってくるだなんて聞かされてなかったんだから。『言ってなかったっけか?』じゃないぞこのヤロウ。つくづくこいつもノリと勢いで生きてやがる。流石は僕の同類だ。
ともあれ、これでようやく三人揃った。
とりあえず、立ち話も何だから適当に空いているソファでも使わせてもらおうか。そう思って、僕が二人に移動を促そうとする寸前――
「――そう。二人はお友達だったのね? 大庭くん、出水くん」
別のブースから出てきた那須さんが、いつも通りの薄い微笑みを湛えて僕らに声を掛けてきた。
……うん? まるで僕だけでなく、公平の方とも顔馴染みであるかのような言い方だな。というか普通に出水くんって言ったな今。ちょっと待て、その話僕は初耳だぞ。
「や、こんにちは那須さん。……もしかして、前に言ってた
「ええ、出水くんのことよ。まさか大庭くんのお友達だとは思いもしなかったけれど。世の中って意外と狭いのね」
それはこっちの台詞である。しかしそうか、公平が那須さんの師匠……そして僕にとっても那須さんはボーダーの師匠……つまり僕は公平の孫弟子……? そ、そんな馬鹿なことが……。
「対戦ありがとう、出水くん。5本やって結局1本も取れなかったわね。悔しいわ」
「いや、遠征行く前に比べてかなり上手くなってたからビビったぜ。跳び回りながらきっちり狙い付けられるようになってたし、おかげで思わず
「そう? ――だとしたら、鬼ごっこと
「は? 鬼ごっこ?」
「そう、楽しい楽しい鬼ごっこよ。ね? 大庭くん」
「ねー」
「「は?」」
那須さんの振りに満面の笑みで返したら何故か野郎二人から殺意の籠もった目線を向けられたでござるの巻。あまり強い視線を向けるなよ。弱く見えるぞ……。
「……おい、おれの知らねー間に随分とお楽しみだったらしいじゃねーか葉月? いつの間に那須さんとそんな仲良くなりやがったこら」
「ははは、そういう公平くんも
「つーかおめーら三人揃って
「「知るかバカ」」
なんか一人だけ全然関係ないことでキレてるアホがいた。まあ陽介ってモテたい願望あんまりないらしいからな……意外なことに公平の方がモテたい寄りなんだよな……この二人は似た者同士のようで割と細かいところに違いがあって
脇腹を肘でつつき合いながらひそひそ話に興じる男3人(なお内1名は内面のみ)。そんな僕らの様子を、那須さんが何処か尊いものでも見るように眺めている。どうしたのかね、別に見ていても面白いことは何もないと思いますよお嬢さん。
「どしたの? 那須さん」
「いいえ、その――出水くんって、トリオン体の大庭くんと会うのは今日が初めてなのよね?」
「え、おれ? そうだけどよ、
「……そう。ごめんなさい、何でもないのよ。――良いお友達を持ったわね、大庭くん」
「――まあね」
僕と那須さんを交互に眺めて、訳がわからないというように目をぱちくりさせる公平。そんな弾バカ君の様子を、ニヤニヤしながら陽介が眺めている。勉強はからっきしの癖にこういうとこだと聡いんだよな陽介って。つくづく意外性の男だよ、おまえは。
那須さんの言いたいことは、なんとなく理解る。今の僕は
『…………』
……なんていうか。いや、なんだろうね? 僕は今一体何を思ったんだろうか。ようわからん。
とにかく、那須さんと公平が顔見知りだというのは都合が良い。僕らの新たな自己紹介に、せっかくだから那須さんも交えてしまおう。陽介も嫌な顔はすまい。
勿論おまえも大歓迎だよな? 陽花。いよいよおまえの大好きな那須さんと面と向かって言葉を交わせるチャンスだぞ。それに、僕が前々から考えてたことを那須さんに提案する良い機会だ。
あのな陽花、もし那須さんがお前のことを受け入れてくれたのなら、その後は――
『……いいのかな』
What?
『この人達に、私のことを教えるってことはさ。
……あらあらあら、あらあらまあまあまあ。
『その最っ高に腹立つ返しは何なのマジで!?』
――いや、なんていうかね。
何だかんだ言って、やっぱりおまえは僕の妹なんだなって、そう思っちゃったわけだよ、今。
影浦隊の作戦室に、初めて足を運んだあの時。カゲさん、ゾエさん、ヒカリの三人によって築き上げられた関係が、他者の割って入る余地がない完成されたものであるように思えて、自分のことが海鼠か何かのように思えた、あの時。
あの時の僕も、こいつのように余計な不安を抱えていた。己の願望に蓋をして、黙って身を引くのが正しい判断なのではないかと、そんな考えに囚われかけた時があったのだ。
けれど、そんな僕の背中を、紳士が押してくれた。そして彼の口にした言葉は、今まさに陽花が遠慮を抱いている、三人のうちの一人が愛用している言葉なのだ。
だから僕もあいつに倣って、お前の抱えている不安や遠慮を、この一言で笑い飛ばしてやろう。
――と、思うじゃん? だぜ。マイシスター。
「いやいや、良い友達とか全然そんなんじゃねーから。こいつもそこのバカに負けず劣らずのバカだから。三馬鹿トリオ扱いだけは真っ平御免だから」
「おーおー、弾バカ様がここぞとばかりにぼくは違いますアピールしてやがる」
「うるせーぞ言い訳の余地も何もねえバカ。知ってっか? あの太刀川さんですら、大学入ったら今までみてーなランク戦三昧の毎日から脱却して真面目な学生生活送るって言ってんだぞ。てめーも高校入ったら少しはベンキョーしろ、ベンキョー」
「いや待て。オレの成績はともかくとして、太刀川さんが真面目な学生生活って何の冗談だそれ。小南じゃねーんだしオレはそんなウソ信じねーぞ」
「おれだって京介じゃねーんだからこんなウソつかねーよ、本人がそう言ってんだよ。実際に最近あの人あんまりランク戦やってねーだろ」
「……マジかよ? 迅さんショックで頭おかしくなっちまったのかあの人……?」
「太刀川さんという人のことはよく知らないのだけれど、学業に励むと言っているのに正気を疑われるのはあんまりじゃないかしら……」
な? 楽しそうだろ? 『私も混ぜてよwww』的な気持ちになってくるだろ? 『間に挟まりてぇ~……』でもいいぞ。でもそれ言うと顔面ボッコボコにされるのがお決まりなんだよな。ガッ……
『誰がガイアじゃい!! ……はああああ……』
あの、人の脳内で心底馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの溜息を吐くのは止めていただけないでしょうか。耳がぞわっとします。
『言わんばかりっていうか、実際そう思ってるし……もういいです、わかりました。私が悪うございました。煮るなり焼くなりお好きにどーぞだよこんちくしょう』
言質取ったわよおおおおおおおお……。
「あー……こほん」
和気藹々と雑談に興じる御三方の意識をこちらに向けるべく、わざとらしい咳払いを一つ。正直に言うと僕は咳払いで自身の存在をアピールする人があんまり好きではないのだが、言葉で注目を集めるのもそれはそれで気恥ずかしかったというか、とにかくそんな訳で甘えてしまった。許せ。
「んだよ葉月、無駄に改まった空気出しやがって」
「とりあえず公平、僕を陽介と同レベルのバカ扱いしたことは不問にしておいてやる」
「あれ、その流れで行くとオレ一人だけバカ扱いにならね? おかしくね?」
「「うるせーぞバカ」」
「おかしくね?」
「私を見られても困るわ」
文句があるなら勉強しろ。赤点連発が許されるのは中学生までだぞ陽介。ボーダー隊員が学力不足で大学進めないなんてなったら笑えないだろ。太刀川さんを見習え、太刀川さんを。まだ会ったことないけど。
「唐突な話なのですが、この度わたくし大庭葉月に
「「マジか!?」」
「あら、おめでとう」
脈絡一切無しの近況報告だったのだが、割と素直な反応が返ってきた。僕だったら「それ今言うことじゃなくない?」とか平気で言い放っているような気がする。いや、相手の心境にもよるけれども。
「……いや待て、おまえ確か家出したっつってたよな? 妹が生まれたなんていつ知ったんだよ? それとも家を出る前の話か?」
「はァ!? 家出!? おい葉月、てめー一体何やって――」
「あー、その辺の話はややこしくなるから置いとくとして……せっかく親しい方々が一堂に会しておりますので、この機会に妹を皆さんに紹介しようと思い立った次第です」
「どうしてそんなに堅苦しい喋り方なのかしら大庭くん?」
「いやね、こうしてふざけた僕の印象を強く植え付けておけば、
「「「…………?」」」
『何言ってんだこいつ』的な困惑の視線が一斉に突き刺さってくる。つらい。僕の
『……そんな視線の下に曝されて、必死こいて自己アピールしないといけない私への優しさとか、そういうのは?』
がんばれ♡ がんばれ♡
『いつか殺す……』
僕が死んだらお前も道連れだけどな! HAHAHA!
『「あ゛ーーーーー!! も゛ぉ゛ーーーーーーーーーー!!」』
「「「!?」」」
豚のような悲鳴、もとい牛のような鳴き声が、
三人が、そしてロビーにいる隊員の誰もが、ぎょっとしたように目を見開いて、僕の妹を眺めている。
丁度いい。御静聴あれ、ここに御座すは断じて大庭葉月にあらず。外見に惑わされることなく、心の目でとくと見極めよ。
――いや、違うな。むしろこっちが、本来の在るべき姿なのかもしれない。
見た目は
だからお前は、堂々とその名前を名乗っていい。
永久にという訳にはいかないけれど――たまには月も一休みして、太陽の昇る時間があってもいいだろう。
普通っていうのは、そういうものだ。
『「はじめまして! 私の名前は大庭陽花! 生後一ヶ月、
すぐには理解されないかもしれない。
はっきり言って僕達は、真っ当な人間の目からすれば、
それでも僕は信じている。大庭葉月が、大庭陽花が、あなた達にとっての
『「
信じている。
僕は、信じている。
――何の気もなしに個人戦ブースに立ち寄ったら、
「
そう叫ぶ女の子の未来は、普通の人間と比べて、妙に予測が不安定だった。一度は確定したかに思えた未来が、次の瞬間にはふっと掻き消えて、全く別の未来へとすり替わっていたりする。かと思えば、消滅したかに思えた可能性が再び浮かび上がって、そちらの道にも未来が広がっていく。
ぐちゃぐちゃで捉えどころのない、
それでも確かに、変えようのない未来だけは、はっきりと
「……いやはや、どーしたもんかねこれ」
ずり落ちてきたサングラスを額の上へと持ち上げて、青年は再び、ロビーの中央で注目を集めている少女に視線を向ける。
大庭陽花。自身のことをそう名乗った少女の外見は、今期に入隊した新人隊員、大庭葉月のものと瓜二つだ。目を通したのは生身の写真だけだったが、遠目からではこれといった違いが見受けられない。嵐山准から変わった訓練生がいるとは聞かされていたのだが、こういう意味で
果たして今、自分の目に視えているのは、
「いずれにしても――」
すぐにという話ではない。その未来に映る少女の姿は、今よりもそれなりに成長を遂げている。1年か、或いは2年か――逆に言えば、その程度の猶予しかないということだ。少なくとも、来たるべき第二次大規模侵攻のタイミングよりも、少女が
「
さて。
この未来を視てしまった自分は、果たして今後、どう動くべきなのだろうか。
未来視の
Q.大玉一発サラマンダーならシールド貼らずに空中で迎撃してしまえば良かったのでは?
A.那須さんはこれが合成弾初体験でした。ちょっと変わった
B級1日目に初見殺しをぶち込みやがった出水公平とかいう畜生を許してはならない
過去最高にしょうもないサブタイトルだと思いました