葉月の異常な愛情~または僕は如何にして心配するのを止めて近界民を愛するようになったか~   作:Amisuru

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×3なのです




はじめての(ブレード)トリガー×3

 

 

「……よーするに」

 

 

 仮想戦場・河川敷A。本来であればランク戦の舞台として隊員達が鎬を削り合っている筈の空間にて、武器(トリガー)を手にする訳でもなく集まった我ら4(5)人。

 川沿いの傾斜に並んで座り込み駄弁っている僕らの姿は、格好さえ気にしなければ放課後を満喫する普通の学生集団に見えなくもない。人数バランスも男2女2でばっちりだ。傍から見れば。

 

 

「葉月のトリオン器官は死んだと思ってた双子の妹で? そのせいでトリオン体に換装すると()の身体になって? おまけにその妹には自我があって? さっき喋ってたのがその妹……」

「設定盛り過ぎじゃね?」

「設定って言うな」

 

 

 というか陽介はちゃんと僕の説明を理解できたんだろうか。きっちり困惑してくれてる公平と違って感情に大して揺らぎが視えないせいで逆に不安になってしまう。もっとこうウソだろ信じらんねー的な反応(リアクション)してくれてもいいのよ?

 

 

「……()()()()()()……そう、本当に存在していたのね……」

「あれ、前にもそんなこと言ってたっけ僕」

「心を病んでしまった大庭くんの生み出した妄想だと思っていたわ。ごめんなさい」

「うん、本当にごめんなさいだなそれは」

 

 

 ああ思い出した。コアデラ組の訓練を眺めていた時の話か。ホモ弁がどうたらこうたらの時の。心底しょうもないタイミングで口滑らせてたんだな僕は? まあ、おかげですんなり納得してくれたようで何よりだ。怪我の功名……これは何か違う気がする。

 何故僕らがこのような場所にいるのかというと、あのロビーでのクソデカ自己紹介が他の隊員達の注目を集め過ぎて、我に返って周囲を見回した陽花が()()()()を起こしたからである。どうやら数多の『好奇』が自分へと向いていることに耐えきれなかったご様子。僕は長年の経験でそういう多数の感情を視界に納めない術を身に着けているのだが、まだまだ修行が足らんなマイシスター。

 で、逃げ込んだ先がいつものROOM303(303号室)。陽介達も追っかけてきたものの、流石に1つのブースに4人は狭過ぎるということで、一旦バラけて仮想空間へと場所を移したワケである。対戦設定はとりあえず仮で僕らvs公平、時間無制限の天候は晴れ。観戦モードで陽介と那須さんが参加。水上さんとの一件がなければ出てこなかった発想だ。経験が活きたな……。

 

 

「……一応聞くけどよ、今喋ってんのは葉月の方なんだよな? 妹の方が葉月のモノマネしてるとかそーいうことは……」

『「私、死んでも『僕』って一人称だけは使うつもりないんで」』

「うお、出た! ……アレだな、見た目も声も変わんなくても雰囲気でなんとなく判るもんだな」

 

 

 『出た』って言い方はどうなんだ公平。

 それはそれとして、僕の中に陽花の人格があるという前知識さえあれば割と判別は容易だろう。逆に言えば、そうでない相手には幾らでも悪さし放題だとも言えるのだけれど。現に寺島さん達は若干の違和感を覚えながらも陽花の存在に言及しなかったし、異性が苦手だと語る志岐さんであっても僕の存在に気が付くことはなかった。

 当然のことだ。いくら露骨に口調が変わっても、男と女の人格が同居しているなどという発想に至る人間はそうはいまい。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから。SF(すこしふしぎ)ではあるかもしれないけど。

 

 

「ということで、これからはこんな感じでこいつが顔を出すようになるワケなんだけど――まあ、仲良くしてやってもらえると嬉しい」

『「……ども」』

 

 

 僕の言葉に続いて、会釈のように軽く頭を下げる陽花。なんていうとまるで他人事のようだが、実際はこいつの所作に合わせて僕もぺこりと頭を下げているわけで。この身体が勝手に動く感覚にも早いとこ慣れてしまわないといかんなあ。

 

 

「……トリオン器官に自我が宿るって、んなことあるモンか? いや、元は内臓じゃなくて葉月の妹なんだから、トリオンに()()()後で何やかんやあったって考えりゃそーいうことも……」

「なんだぁ? 弾バカ様からトリオン博士(バカ)に転職でもすんのか?」

「うるせーぞ単純バカ。こっちはてめーと違ってランク戦以外でもきっちり脳味噌回してんだよ」

「へーへー、だったらオレは単純バカらしく何も考えねーで絡んじゃうぜっと。つーことでよろしくな、ツンデレシスター」

『「ツンッ……!?」』

「陽介まだこいつがデレたとこ見たことないでしょ」

「弾バカが言ってただろ? 雰囲気でなんとなくワカんだよ。つーか妹がリアクション取った直後に真顔の葉月が出てくんのおもしれーな、これが怪人ニヒャクメンソーってやつか」

 

 

 二十な、二十。いくらなんでも二百は多過ぎるだろ、コナン君の犯人じゃないんだぞ。

 それにしても陽介は順応が早い。この状況に戸惑うどころか楽しんですらいるように()えるのだから、つくづくこいつは大物だ。公平は陽介のことを単純バカだと言ったけれど、むしろこいつは考えたところで答えの出ない問題は最初から考えないと理知的に割り切っている節があると思う。でも似たようなノリでテストの回答も白紙で出す癖は治した方がいい。そこは少しは考えろ。

 

 

「――陽花ちゃん。そう、陽花ちゃんね?」

 

 

 何やらうんうんと頷いた那須さんが、そう言って陽花に微笑みかける。これも彼女が見ているのは陽花の顔であって僕のことなど微塵も意識していない筈なのだが、思わず自分に向けられたものだと勘違いしそうになるから恐ろしい。これが百合の間に挟まる男の感覚ってやつか。ガッ……葉月(ガイア)ッッッ!!

 

 

「はじめまして――それとも、あなたにとってはそうではないのかしら? 私は那須玲、あなたのお兄さんのお友達よ。よろしくね」

『「……知ってます。その、夜の街で鬼ごっこしてた時から――見てたんで」』

「まあ、やっぱりそうなのね。あなたも今度、私と遊んでみる? 鬼ごっこで」

『「是非!! ……あ、ああいや、か、考えておきます……」』

 

 

 ……それにしても、この妹の会話のぎこちなさと来たらどうだろう。寺島さん達に猫被ってた時や緊張気味の志岐さんを相手にしていた時は割と普通に喋れていたのに、いざ本格的に大庭陽花として他者と接するとこんな感じになってしまうのか。僕に対しては平気でバカとかきっしょとか頭おかしいとか言ってたのにな。そうか、意外と内弁慶ってやつだったのかこいつ。

 

 

『いま割といっぱいいっぱいなんだから余計なこと考えないでほしいんだけど……!』

 

 

 うん、そうやって僕に内心の弱みを曝け出すあたり本当にいっぱいいっぱいなんだろうな。

 頑張れ妹。負けるな妹。僕はいつでも誰よりも傍でお前のことを応援しているぞ。

 まあ離れようにも離れられないんだけどな! というワケでほら、がんばれ♡ がんばれ♡

 

 

「よ……陽花ちゃん? 陽花ちゃんの方よね? その、苦虫を食い潰したようなというか、女の子がしてはいけない顔になっているのだけれど……私と遊ぶのがそこまでイヤだったのかしら……」

『「違うんです。それについては大いに歓迎するところなんです。ただその、さっきから頭の中で一匹の(サル)がきーきー喚いてて……外面を取り繕う余裕がないっていうか……」』

「もう、ダメよ大庭くん? 陽花ちゃんをあんまり困らせたら」

「その前に妹が僕をサル呼ばわりしてることは叱ってくれないのか那須さん」

「……そこのバカもそーだけどよ、那須さんも慣れんの結構はえーな……あれこれ考えてるおれが逆にバカみてーな気になってきたぜ……」

 

 

 おや、何やら一人で悶々としている出水公平くん。相も変わらず根が真面目というかバカになり切れない男よ。

 とはいえ、公平も別に僕や陽花に対して忌避だの嫌悪だのを抱いている訳ではない。少しばかり常識を捨て去れていないだけだ。そんな彼には、かの名優が遺したこの言葉を贈らせてもらおう。

 

 

「公平……Don't think, feeeel...」

「ちょっと顎突き出してブルースリーっぽい顔作ってんじゃねーよ」

「あら、意外と今の大庭くんと陽花ちゃんにぴったりの言葉かもしれないわよ?」

 

 

 何故か唐突に人差し指を立ててそんなことを言う那須さん。僕達3(4)人の視線が彼女の指に集中したところで、こう続ける。

 

 

「Don’t concentrate on the finger」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()、と。

 

 

「It is like a finger pointing away to the moon. Don’t concentrate on the finger, or you will miss all that heavenly glory――この指は遠く彼方の()を指差しているけれど、指の方に気を取られていると、指の先にあるもの(heavenly glory)を見落としてしまうぞ――かの有名な『考えるな、感じるんだ』の後には、こういう台詞が続くのよね」

「……映画好きっていうのは知ってたけど、カンフー物にまで手を出してるのは予想外だったな」

「あら、アクション映画はむしろ好物よ? 見ていて興奮するし、憧れるもの。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、って」

『「……わかります」』

 

 

 生身の身体を満足に動かせない少女の言葉に、生身の身体を持たない妹が同調する。

 那須さんはもう一度笑みを浮かべて、幼い子供に語りかけるような優しい声色で、言った。

 

 

「――良かったら今度、おすすめの映画を貸してあげましょうか? それとも……一緒に観る?」

『「観ましゅ!!」』

 

 

 こいつ噛みやがった。しかも盛大に。

 

 

『「……いま答えたのは兄の方です」』

「お前ふざけるなよ」

「あら、勿論大庭くんも一緒のつもりで誘ったのだけれど……ダメだったかしら?」

観ましゅうううううううううう!!

「……世界で一番アタマわりー空間に居合わせてるような気がしてきたぜ……」

「だったらてめーも大人しくアタマ悪くなっちまえよ、弾バカ」

 

 

 相変わらずのへらへら顔で公平を煽っていく陽介。流石、元から自分をバカだと割り切っている男はこういう時に強い。

 とはいえ、陽介の言うことにも一理ある。三馬鹿扱いは御免だと公平は言っていたが、そうこう言っている間に那須さんの方はさくっとこっち側(バカ)に堕ちてきたのだし、いい加減にお前も腹を括りなされ。

 

 

「――ま、確かに那須さんの言う通り、pointing to the moon――たとえ陽花が顔を出してても、大庭葉()はいつでもここにいるってことでさ。あんまり難しく考えるなよ、公平」

「……ちょっと上手いこと言った感出してんじゃねーよ、ったく」

 

 

 公平はわしゃわしゃと髪を弄ると、意を決したようにこちらへと向き直った。その眼差しは僕達二人を見据えているけれど、きっとこれからこいつが声を掛けるのは僕ではないだろう。

 ようやくこいつも、ウチの妹と真正面から向き合う準備が整った。そういうことだ。

 

 

「……あー、なんか出だしがグダグダしちまったけどよ――兄貴のダチやってる、出水公平だよ。よろしく頼むわ、陽花ちゃん」

『「……男のひとにちゃん付けされるの、なんかイヤ」』

「はぁ――!?」

「「ぎゃーっはっはっはっは!!」」

「てめ、そこのバカはともかく葉月までその顔で笑うんじゃねーよ……! つーか葉月だよな!? 妹の方だったらいくら女でも流石にキレんぞコラ!!」

『「へっ!? い、いや今笑ったのは私の方じゃ――」』

「おにいちゃーん、この人いきなり距離詰め過ぎでワタシちょっと無理かも……」

「吹っ飛ばす!!」

『「いやウソでしょこの人マジでキューブ出してるっていうかそういえばこの部屋の対戦設定って私ら対この人じゃんってことはこれ吹っ飛ばされたら私らの負け扱いになるやつじゃあああああああああああああ!?」』

「ふふ……良かったわね、陽花ちゃ――あら、私達も巻き添え食らうやつねこれ」

「アンタ結構動じないタイプだよな色白ガール?」

 

 

 とまあ、こんな感じでブチ切れた公平がよりにもよって炸裂弾(メテオラ)をぶっ放したせいでこの場にいた全員が緊急脱出(ベイルアウト)するというアクシデントもあったりしつつ。

 ウチの妹は晴れて、僕の愛すべき友人(バカ)たちに受け入れられたのであった。

 

 

 

 

 

 

 で。

 

 

「……んじゃ、始めっぞー……」

 

 

 『I am trigger happy.(私は弾バカです。)』と書かれた紙をコートの背中に貼り付けた公平(紙とペンはそこらの民家から拝借した物が使えた。何でもアリだなトリオン空間)と、その隣でくすくすと笑っている那須さんを挟んで、15mほどの間隔を空け。

 舞台は引き続き河川敷A。ただし対戦設定はきっちり変更したうえで、川に掛けられた巨大な橋の上、僕らと陽介は対峙している。僕の右手には待望の新トリガーことレイガスト、陽花の左手は今のところ空っぽ。一方の陽介はというと、すっかり見慣れた()()()()()を上段に構えている。

 

 

「――陽介の愛用トリガーはスコーピオンだって、何度か耳にした覚えがあったんだけどな」

「そういうおまえこそ、ご自慢の炸裂弾(メテオラ)はどーしたんだよ。3.1秒の対大型近界民(バムスター)訓練、客席からばっちり見てたんだぜ? 遠目だったから顔がビミョーに変わってんのは気付かなかったけどよ」

「買ったばかりの玩具で遊びたい小学生の気分なんだよ、今の僕は」

「そーかよ。ま、オレも似たようなモンだけどな」

 

 

 そういえば、ウィルバー氏に会ったとき陽介は言っていたな。次に使うトリガーがどうたらこうたらって。けれど、僕の記憶が確かなら誰も使っていないようなトリガーを試したいとの話だった筈だが――流石に弧月のことじゃないよな。一体何を企んでいるのやら。

 

 

『……大人しく炸裂弾(メテオラ)で遠くからドカドカすればいーのに、わざわざチャンバラごっこに付き合うつもり? ムボーだよねえ……』

 

 

 いいんだよ。せっかく攻撃手(アタッカー)の陽介と射手(シューター)の公平がいて、僕らはその両方に合わせられる構成してるんだ。異種格闘技戦も悪くはないが、同じ土俵でやり合った方が互いにやりたいことやれて楽しいだろ、きっと。

 とはいえ、流石に本職の攻撃手(アタッカー)を相手にはじめてのレイガストでまともに斬り合えるとは思っていない。となれば、勝負の鍵を握るのは――理解ってるよな、マイシスター?

 

 

『……ま、いいでしょ。やるだけやってやろうじゃん』

 

 

 おや、思ったよりもノリノリじゃないの。やっぱりお前もテンション上がってるんじゃないか? なんてったってデビュー戦だもんな。今宵の妹は血に飢えておるわ……。

 

 

仮想(ここ)現実(リアル)も今宵っていうような時間じゃないし、トリオン体をいくら斬っても血は出ません』

 

 

 やだ……ウチの妹が常識人キャラみたいなマジレスかましてくる……怖い……。

 

 

『「……いずみサン、ウチの(サル)がさっきから煩いんでちゃっちゃと始めちゃってください」』

「お、おう……その顔で出水さんとか呼ばれんの違和感すげーな……

「今更だけど、訓練室でもないのにわざわざ人力で合図(コール)するのってなんだか変な感じね」

 

 

 相も変わらず余計なことを考えている公平の隣でそんなことを言う那須さん。既に自動音声さんが試合開始を告げて10分くらい経ってるからね。もう一回お願いしますって天に言ってもシステムは応えてくれないからね。仕方ないね。

 

 

「……あー、そんじゃ行くぞ! よーい――」

 

 

 公平が手を掲げるのに合わせて、レイガストを(シールド)モードに変形。そのまま右手一本で持ち上げ――お、重ぇ……! 話には聞いていたが、これは確かに片手で容易く振り回せるような代物じゃないぞ。寺島さんには申し訳ないが、攻撃手(アタッカー)に敬遠された理由が一発で理解ってしまった。

 ……とはいえ、これで投げ出すようなら最初(ハナ)からレイガストを選んだりはしない。初めはなんだこれって思いながらも、噛めば噛むほど味が出るのがレイガストだと僕は信じている。それにだ、こいつには思いもよらない()()()があるということも、今の僕は知っていることだし。

 そんじゃま、いっちょ皆の度肝を抜いてやろうぜ! 陽花(マイシスター)レイガスト(マイブラザー)

 

 

『「勝手に新しい家族を増やすなぁ!!」』

「はじっ……はァ!? は――始め!!」

 

 

 出水公平、肝心の合図(コール)で詰まりまくる痛恨のミス。不測の事態に弱い男よ……。

 さて、陽介との相対距離はおよそ15m。チャンバラをおっ始めるにはいささか遠過ぎる。というワケで、まずはこいつで一気に距離を詰めるとしよう。さあ行くぜ、今必殺のスラスター()――

 

 

「旋空弧月」

 

 

 ――()、と言おうとしたその瞬間、袈裟斬りに振るわれた陽介の弧月が一気に僕らの首筋まで伸びてきた。

 

 

『「「うおお!?」」』

 

 

 手持ちの鞄を掲げて雨から頭を守るような格好で、レイガストがその一撃を防ぐ。腕から爪先にかけて強烈な振動が走り、思わず盾を取り落としそうになってしまった。というか、痛覚あったら絶対に今のでポロリしてたなレイガスト。

 

 

「よく反応できたじゃねーか葉月! C級じゃ旋空(こいつ)は食らったことねー筈だろ、おい!」

「生憎だけど、寺島ゼミで習ったとこだったんでね……!」

 

 

 やっててよかった寺島ゼミ。とはいえ、流石にもう侮れないぜ弧月。こんな距離から必殺の一撃が飛んでくるとあっては、のんびり豆腐(キューブ)を構えてもいられない。旋空すらも届かない距離、20mや30mほどから一方的に仕留められる腕があればいいのだが、残念なことに僕の炸裂弾(メテオラ)はそこまで命中精度がよろしくない。

 それにどの道、今回は射手(シューター)ではなく攻撃手(アタッカー)として勝負を挑むと決めているのだ。となれば結局やることに変わりはない。さあ、気を取り直して今度こそ行くぜ!

 

 

「スラスター起動(オン)!!」

 

 

 シールド部分の四隅からトリオンが噴き出し、瞬く間に急加速へと飲まれる僕らの身――は、迅ぇ……! なんかさっきも似たような反応(リアクション)したような気がするぞ僕! 制御出来ている感じがまるでしないというか、暴れ馬の尻尾に無理矢理しがみ付いている気分というか――ぶっちゃけるけど滅茶苦茶扱い辛いなこのトリガー! 誰だこんなもの使おうだなんて言い出したのは!?

 

 

『あばばばばばばばば』

 

 

 いかん。ツッコミ役が僕以上に振り回されてやがる。真面目にやろう。

 一度振り下ろした弧月を今度は逆に斬り上げて、陽介が二発目の旋空弧月を放つ。シールド部分で身体の前面を覆い隠し、その一撃も防いでみせる。とりあえず身体の前にぽんと置いておけば、技術(テク)とか一切不要で前方からの攻撃はシャットアウト出来るのが大盾の良いところだ。とはいえ、二発の大技を受けて(シールド)の見た目も大分頼りなくなりつつある。流石に三発目は撃たせん。

 

 

「おいおい、葉月のレイガストかってーな……! 二発目は距離がイマイチだったとはいえ、旋空に二発も耐えんのかよ! それともやっぱ、オレのトリオンで()()()は欲張り過ぎたか……?」

「はっはァー! これぞ自慢の(トリオン)様よォー!!」

『「うお……おえ……」』

「自慢の妹ゲロ吐きそうな声出してっけど大丈夫か?」

「トリオン体にも酔いの概念って存在するのね……気を付けなくっちゃ……」

 

 

 射手(シューター)コンビが遠くの方で何か言っているが気にしない。

 とにかくついに捉えたぞ陽介。このまま(ブレード)モードに移行して斬りかかってもいいのだが、流石にスラスター斬り一発で勝てるほど陽介は甘くないだろう。防がれたら反撃で間違いなく死ぬし、そもそも防ぐまでもなくカウンターを狙われる恐れすらある。となれば、このまま(シールド)モードで突っ込んで――

 

 

「陽花! やれぇ!!」

『お……おお――』

 

 

 ――()()の方は、我が妹(マイシスター)にぶん投げだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()

 兄から操縦桿(コントロール)を奪ってトリオン体を動かしている時はともかく、普段の私は兄の体内で波打つだけの流体物(トリオン)だ。人間にとっての血液のように、トリオン体のあっちこっちを駆け巡っている。

 私が選んだ()()()()()()は、そんな私自身(トリオン)を一ヶ所に掻き集めて、トリオン体の外側へと伸ばすものだ。不定形の私。揺れ動く私。

 間違っても、人間とは呼べない、私。

 それでも私は憧れる。人間の身体に憧れる。大地を踏みしめる確かな足と、他者と触れ合える手の存在に憧れる。誰の物でもない、私だけの手足に憧れる。

 それさえあれば、私はきっと、何処にだって行けるのだ。

 だから()()()()

 この容れ物(トリオン体)の外へと伸ばせる、()()()()()()を生やそう。

 それで私は。

 それで、私は――

 

 

 ――あれ、何をすればいいんだっけ?

 

 

『「陽花! やれぇ!!」』

 

 

 ……ああ、そっか。チャンバラごっこの真っ最中だったっけ、今は。

 ったくもう、か弱い(トリオン)を散々こき使っといて更に仕事を増やしてくるとか――

 

 

「――っとにこの、バカ兄がぁ!!」

 

 

 とまあ、そんな気持ちを抱いた状態で生やしたもんだから。

 初めて私が起動させたトリガーは、トリオン体の左手を丸ごと包み込む、()()()()()()みたいな形をしていた。

 グローブの先に鍵爪を無理矢理括りつけたような、不格好で、刺々しい見た目だけれど――

 

 

 私が初めて()()()()()()()、私だけの、自由な手(スコーピオン)だ。

 

 






米屋がうっかり横薙ぎの旋空をぶっ放しちゃって巻き込まれた出水と那須さんがぶった斬られるとかいう没ネタ
そもそも観戦者にも攻撃って当たるんですかね? 教えてイコさん!

槍バカがいつまで経っても槍バカになれない問題

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