葉月の異常な愛情~または僕は如何にして心配するのを止めて近界民を愛するようになったか~ 作:Amisuru
(最後を除いて)ギャグ全振り回。
『「あ゛――――――――!!
く゛――や゛――し゛――い゛――――――――!!」』
大庭陽花の兄をやっている者ですが、妹の頭がおかしくなってしまいました。
たすけてください。
『「ああああああマジバカホントバカ信じらんない私絶対センスない……。
そうだよ……あんなちっちゃいシールド無理して割る必要なかったじゃん……。
あの人みたいにスコーピオンの形変えて脇から刺しちゃえば良かったんじゃん……。
それなのに猿みたいにゴリ押しに拘って負けるとか……もう嫌……。
自分がこんなに頭悪いなんて知りたくなかった……」』
「猿なのかゴリラなのかはっきりしろよ」
『「ゴリ押しのゴリはゴリラのゴリじゃないんだよォ!!」』
よく知ってんなお前。いや、これも僕の記憶から読んだのか。ゴリラみたく力任せに物事を解決するからゴリ押しだと思ってたんだけどそうじゃないんだよな。日本語って面白いね!
陽介との一戦を終えて、ブースへと戻った途端にこの有様である。やはり本人が起きていようがいまいが、
『はは、わりーなツンデレシスター。最初は弧月だけで相手するつもりだったんだけどよ、流石に入隊2日目の葉月にゃ負けらんねーと思って使っちまったぜ。ま、良いベンキョーになったろ?』
通話の繋がっている別室から、けらけらと笑う陽介の声が届く。おのれ、勝ったからっていい気になりよって。さっきはああ言ってやったけどな、正直割とギリギリだっただろお前。次やったらどうなるかわからんぞ? ああん?
『「もっかい! もっかい勝負して! ウチの兄もこんなんただのまぐれ勝ちだからノーカンだって言ってます!!」』
「人の主張を地味に盛るのはやめろ」
『ははーん? 盛ってるってことは盛れる程度にはそー思ったってワケか葉月? 上等じゃねーの、もう1戦でも10戦でもおまえらの気が済むまで相手してやんぜ』
『「聞いたね? お兄ちゃん」』
「聞いたぞ、マイシスター」
『「「
『おいコラ、ちょっと待ちやがれそこのバカ&バカ兄妹』
『「この人らと一緒くたにされるの心外なんですけど!?」』
むしろ今僕らの中で一番バカっぽいのおま……いや、言わんといてやろう。武士の情けだ。
それはさておき、新たに割って入った声の主は公平である。ちょっとしたリモート会議の様相を呈しつつあるなこれ。ボーダーもいよいよテレワークを採用する時代か……トリオン体を遠隔操作できるようになったらワンチャンあるよなその未来。自宅で始める界境防衛。どうですかねこのキャッチコピー、メディア対策室長の根付栄蔵さん。
『てめーらだけで勝手に盛り上がってんじゃねーよ、次はおれの番だっつーのおれの。おー葉月、てめーも
「雨の中、傘も差さずにレイガストを振り回す人間がいてもいい。自由とはそういうものだ」
『そりゃ自由じゃなくて
「……ほほう?」
面白い。大きく出たじゃないか公平。天才
『……お兄ちゃん、なんかどんどんレイガストに深入りしてない? 本当は大して
気付いてしまったか……。いや、僕が思い入れあるのはあくまで
僕みたいな半端な立ち位置の隊員はなんて言い表すのが正解なんだろうか。
「――OK、やってやんよ公平。お前のトリオン量も相当に多いみたいだけど、ウチの妹で出来たレイガストをそう簡単に割れると思うなよ」
『「言い方」』
『ま、確かにてめーのレイガストが硬えのはよーくワカったが――
「そいつは見るのが楽しみだ」
『――あら。大庭くん、次もあの
あ、那須さんも入ってきた。今更ながら普通に四部屋同時通話とかやってるけどどうなんこれ。まあ今出来てるってことは出来るってことでいいだろう。深く考えてはいけない。
「まあ、『対弾丸用トリガー』っていう触れ込みだからね。公平相手に使わずしていつ使うんだということで」
『そう、残念ね……久しぶりにまた大庭くんの
「なんで君はナチュラルに僕が自爆する前提で話を進めているのかな?」
『やっぱ遠征行く前と比べて微妙にキャラ変わったよな那須さん……』
それは間違いなくあの紳士の影響だな、公平。ウチの那須さんは巷と比べてお茶目度三割増しでお送りしています。いや巷って何処だ。
さて、そんじゃまぼちぼち始めるとしましょうか。公平の部屋は確か123号室だったっけな。
「……げっ」
とはいえ。
まさかここまで語呂合わせしてくるとは思っていなかった。
いちまんてん。1万持ってるよこの男。現代に蘇った福沢諭吉だよ。1万って数字を見て真っ先に諭吉さんを連想してしまうあたり僕の思考回路って俗物にも程があるなマジで。
陽介のスコーピオンも8000点越えててなるほど
「大したやつだ……やはり天才か……」
『「まるで八丸くんみたい……」』
『おいコラ、葉月と妹どっちの台詞か知らねーが後の方は言われても全然嬉しくねーぞ』
『あー、ついでにこのバカ
「
『「うん!」』
『金剛夜叉流って書いて『弾丸トリガー』って読むのやめろ』
おまえは物事をあせりすぎる……。
もう……
というワケで、帰ってきました河川敷A。今更ながら、市街地Aを選ばなかったのはC級ランク戦で選び過ぎて飽きたからである。せっかく市街地だけでもCとかDとかあったり工業地区みたいなマップもあるのだし色んなところを体験してみたい。そう、たまには終点以外でも遊ばないとね。詳しくないけど。
転送位置は先程と変わらず橋の上。各々の配置も公平と陽介が入れ替わった以外は同じである。しかし陽介と那須さんが並んで立ってるのって違和感すごいな……公平と違って二人の間に何も共通点ないから絡みが一切想像付かんぞ。強いて言うなら二人とも身体動かすのが好き、くらいか。ただし片方はトリオン体に限る。
『対戦ステージ「河川敷A」。
『「――あー、始める前にちょっといいですか? いずみサン」』
「お、おお? どーした陽花ち……妹の方」
転送早々にキューブを二つ作ってやる気満々だった公平が、妹の一声でそれを掻き消す。ちゃん付けを拒否られたせいで陽花の呼び方に困ってるなこいつ……。
『「あの、お姉さm――こほん、なすサンと戦ってた時にあなたが使ってた、キューブとキューブをくっつけるやつあるじゃないですか。あれって一体何なんですか?」』
「あ、それ僕も気になってた」
メドローア、もとい
『「……やっぱり聞きたくなくなってきました」』
「つれないこと言うなよマイシスター」
「……変な感想なんだけどよ、合成弾ってなんか
『「これ以上私の質問意欲を削ぐのやめて貰えませんか?」』
「いや、妹の方がさっき言ってたろ? キューブをキューブをくっつけるって。そのまんまだよ、こーやって
僕らの傍まで歩み寄ってきた公平が、そう言って再び手元にキューブを作り出す。なんか脳内でピコ太郎のアレが流れ出してきたな。ほら……みんなも想像して……パンチパーマの公平が色眼鏡を掛けて歌っているところを……。
「右手に
アッポーゥペェーン。
「左手に
パイナッポゥペェーン。
「
「ペンパイナッポーアッポーペェン」
「ぶふうっ!!」
『「お姉様!?」』
あ、那須さんが
「
「そう怒るなよ出水大魔王」
「呼び方変えたらセーフとかそういう話じゃねーんだよ!!」
「ふ……ふふっ……これから出水くんがその弾を作る度に思い出し笑いしてしまいそう……やってくれたわね大庭くん……」
「や、ちょい待った那須さん。ちげーから、おれだけじゃねーからこの技使うの。
「……あれ?
「ははっ、弾バカ様のチーム順位だけ知ってるやつにありがちな勘違いだなそりゃ。
ああ、例の黒スーツ
いや、スーツはともかく合成弾は別にネタでもないんだけど。でも既に僕の中の二宮さん(仮)はPPAPのリズムに乗って軽やかにキューブを捏ね繰り回す面白お兄さんのイメージで出来上がりつつあるんだよな……きっと雪だるまなんかを作るのも上手いんだろう。知らんけど。
『「……ふーむ、合成弾。キューブとキューブをくっつける……」』
おや、
……待てよ。この流れ、普通に合成失敗して
『「いいから。お兄ちゃんはキューブ出すだけでいいからじっとしてて。ほら、早く」』
「……はいはい」
「――げっ!? お、おい待ちやがれ葉月妹! 葉月の弾丸トリガーって
『「ほいっ」』
マイシスター、公平の制止を振り切り僕の
『お兄ちゃんさっきからうるさい』
「ほげええええええええ……お、おお……?」
生きている。なんか知らんが生きている。来る筈の衝撃が襲ってこない。思わず閉じてしまっていた瞼を、恐る恐る開いてみると――
「「……マジか?」」
僕と公平の感想が
絶対に破綻すると思われた二つのキューブの融合が、成り立っていた。
……そうか。考えてみれば、ウチの妹は
スコーピオンの時にも予兆はあった。人の手みたいな複雑な形の刃を、いきなり形成してしまう発想力。それもその筈だ。こいつにとって、トリオンを弄り回すのは人間が手足を動かすのと何ら変わらない行為なんだろう。合成弾にしてもそうだ。
『「――ふふん」』
陽介と那須さんの二人も、ぽかんと口を開けて僕の眼前に浮かぶキューブを眺めている。その中でただ一人、僕の妹は
『「トリオン器官、ナメんなよ」』
その時の
……なるほど。
トリオン器官が意思を持つとは、
そりゃあ、スコーピオンの形を変える発想に至らなかった自分をあれだけ罵る訳だな。納得。
話数を抑えようとすれば文字数が嵩む
文字数を抑えようとすれば話数が嵩む
つまりハサミ討ちの形になるな…
ペンパイナッポーアッポーペェン