葉月の異常な愛情~または僕は如何にして心配するのを止めて近界民を愛するようになったか~   作:Amisuru

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2期のOPイントロで毎回独りぼっちの緑川のところで一時停止するじゃないですか。
見る度に『俺! 総勢1名参上!!』を思い出して笑ってしまうので
3期になったらちゃんと他3名が追加されてたらいいなと思いました。
でも戦闘員しか立たせないみたいなんで今度は草壁隊長がハブになってしまうというジレンマ…隊長なのに…

長くなってしまったので今回も前後編です。
後編はなるべく早いうちに。




甘えんボーイと求めたガール(前編)

 

 

 ――ところがどっこい、そう何もかもが上手くいったら苦労はないという話で。

 

 

変化炸裂弾(トマホーク)

『「「ほげえええええええええええええええ!!」」』

『戦闘体活動限界、大庭ダウン。勝者、出水公平』

 

 

 負けました。

 というか、その、試合になりませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

『「……はっ!? 私また死んでる!?」』

 

 

 ブースのベッドに叩き落とされた直後、即座に身体を起こして頭を抱える私の身体(マイシスター)。なんか増々こいつの自由っぷりに磨きがかかっている気がするな……(メイン)トリガーとは……大庭葉月とは……ドワオ!!

 

 

『……葉月? 妹? なんでてめーら、いつまでもキューブ抱えたままぼっ立ちだったんだ……?』

「いや、例の変化炸裂弾(トマホーク)――だっけ? 僕らも公平に対抗してあれをぶっ放そうとしたんだけど、その……陽花さん?」

『「…………」』

 

 

 そう。ノータイムで合成弾を創れる射手(シューター)の誕生、そこまでは良かった。口をあんぐりと空けた公平に対して、

 

 

『「うふふふふ……これは私がボーダーNo.1射手(シューター)の座に君臨する日も近いかもしれませんね? ねえいずみサン、ポッと出の私に自慢の必殺技(合成弾)をパクられて今どんな気持ちですか? 別に教えてくれなくてもいいですよ、()()()()()()()()。ふへへへへ」』

 

 

 とかウチの愚妹が過去最高に調子乗ってたことも記憶に新しい。

 で、合成弾のコントロールも僕は陽花に任せることにした。というのもこの変化炸裂弾(トマホーク)、あくまでも『炸裂弾(メテオラ)の特性を付与した変化弾(バイパー)』という感じで、炸裂弾(メテオラ)は単なる添え物という印象を受けたからだ。実際に陽花もノリノリでその提案を受け入れた。そしていざ実戦、というところで事件は起きた。

 大庭陽花(マイシスター)フリーズ事件。レイガストやエスクードで公平の変化炸裂弾(トマホーク)を防ごうにも合成弾のキューブを抱えたままでは切り替えもままならず、あえなく僕らは消し炭になってブースへと送り戻されたのであるが――

 陽花さん、事件に関して何かコメントをお願いします。

 

 

『「……どんな風に描いたら(撃ったら)いいのかわかんなかった」』

「などと被疑者は意味不明の供述をしており――」

『「私の頭がおかしいみたいに言うなあ!! ……伝わんないかなあ? 変化弾(バイパー)って、これ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」』

「…………?」

 

 

 何のこっちゃ。普通に何も考えずどばばばばーって雑にぶっ放せばいいだけの話じゃないのか? 僕が炸裂弾(メテオラ)使うときっていうのは割とそんな感じだぞ。そんなんだから狙った相手に真っ直ぐ飛ばないのかもしれんけども、それでも描く(撃つ)ことすら出来ずに固まるよりかはよっぽどマシだろう。

 

 

『……あー、そういうことね』

 

 

 そんなことを思っていたら、意外なことに公平が納得したかのような反応を見せている。え? わかんの? 変化弾使い(アーティスト)特有の共通認識とかそういうこと?

 

 

「出水さん、解説をお願いします」

『妹の方とややこしいからその呼び方やめろ! ……あー、変化弾(バイパー)っつーのはよ、弾丸を撃つ前に頭ん中で弾道を引く必要があんだよ。弾道ってのは読んで字の如く弾の通り道のことな。んで、変化弾(バイパー)を使いこなすにはその弾道を即座に引ける想像力――まあざっくり言うと、『おれこんな弾撃ちてーなー』っていう、()()()()()()()()()()()()()っつーの? そういうのが求められるワケなんだわ』

「……ふむ」

 

 

 そういえば那須さんも言っていたな。自分の中にある()()()()()を、現実のものにしてくれるのが変化弾(バイパー)だと。となると、さっきの陽花が変化炸裂弾(トマホーク)を撃てずに固まってしまったのは、こいつの中に撃ちたい弾丸のイメージがパッと思い浮かばなかったからということになるんだろうか。

 ……なるほど。確かに妹の言う通り、()()()()()()()()と言われたらそれはそれで迷うかもしれない。いかにこいつが自由自在にトリオンを操れる()を持っていようと、手に命令を送る頭の方が働かなければどうしようもないのだ。

 で。

 僕の知る限り、こいつにとっての理想の弾丸っていうのは――

 

 

「要するに、那須さんみたいな弾が撃ちたいんだよな。おまえは」

『「ふぇあっ!?」』

『あら。私?』

 

 

 自分の名前が挙がるとは思っていなかったのか、意外そうな反応を示す那須さん。でも実はそうなんすよ。ウチの妹、ちょっと前になんて言ったと思います? 聞いて驚くことなかれ、那須さんの全てが欲しいだなんて大胆発言を……。

 

 

『バラしたらころすぞ……』

 

 

 まあ怖い。最近の子は気軽に死ねとか殺すとか口走るから教育に良くないわ。誰に似たんざましょ。でもちょっと前に僕も陽介にぶちころすぞとか言ってたような気がするな。なんだ僕か。

 それはさておき、空から降る一億の(バド)、口の中が弱点だった大型近界民(バムスター君)、路地裏に潜む公平――僕らが見てきた那須さんの変化弾(バイパー)というのは、ある程度狙い撃つべき目標というか、弾丸の()()()が決まっていたような印象を受ける。

 しかし今回、陽花が相手にしたのは周りに遮蔽物も何もない状態の公平である。路地裏に潜んでいたことで弾丸の進路が限定されていた時と違って、3()6()0()()()()()()()()()()()()()。それが逆にこいつの迷いを生んだのだろう。スコーピオンの例にしてもそうなのだが、もしかしてウチの妹、意外と頭が固いというか思考に柔軟性がないのでは……。

 

 

『「殺す!!」』

「きゃあ、じぶんごろし!!」

『まあ、ダメよ陽花ちゃん。そんな物騒な言葉を使ったら』

『さっきから全っ然話が進まねぇー……』

『おまえはまだ話に混ざれるからいいだろ弾バカ。オレの今味わってるソガイ感ってやつわかるか? だからオレ一人だけ攻撃手(アタッカー)はさみしーっつったんだよな』

 

 

 すまん陽介。おまえがそんな寂しさを抱いているだなんて気付かなかった。感情が()えない状況だとついつい気遣いってやつを忘れちゃうぜ。あとお前疎外感なんて言葉知ってたんだな……。

 とりあえず、どうもウチの妹は無から何かを生み出す能力に欠けているようだ。とはいえ、別に悲観するような話でもない。誰だって最初は模倣から始めるのだから。

 初めに好きや憧れがあって、それを真似しているうちに、少しずつ理想と現実のズレを自覚するようになっていくのだ。()()()()()()()()()()()()()()。僕にとっての人生の師は祖父であり紳士ウィルバーであり米屋陽介であるのだが、どうも僕は彼らに比べておちゃらけが過ぎるというか、人間的魅力に欠けた存在だという自覚がある。

 けれど、そんな自分を否定しようとは思わない。笹森くんにも言った通り、僕は『こいつ死ねばいいのに』って感じの大庭葉月だ。その自分を受け入れている。だから陽花も、まずは無心で那須さんの真似から始めてみればいいのだ。どうせ描いてるうちに、『私ならもっとこうしたい』とか『ここはこう描きたい』とか思うようになる。だって僕らは人間だから。

 どれだけ理想を抱いてみても、()()()()()、他人と全く同じ存在になることなんて出来やしないのだ。

 両親がどれだけ手を尽くしても、大庭葉月が大庭陽花(かみさま)になれなかったのと同じように。

 

 

『「…………」』

 

 

 そうだね。楽しくない話はやめようね。せっかく皆とおもちゃ(トリガー)で遊んでる最中だもんね。

 とにかく、今の妹に必要なのは『那須さんだったらどう描く(撃つ)か』という手本だ。憧れに少しでも近づくために、こいつはもっともっと那須さんの作品(バイパー)を鑑賞する必要がある。とはいえ彼女もB級上がりたて、いきなり同期に弟子にして下さいと言われても困ってしまう筈――

 ……いや待て、案外快く引き受けてくれるかもしれない。紳士ウィルバーによって魔改造された那須さんの思考はイマイチ読みづらいところがあるからな。どうする? いっちょ駄目元でお願いしてみるか……?

 

 

『――ねえ、陽花ちゃん? あなたさえ良ければ――』

『「……!? は、はい! はいはいはいはい!!」』

 

 

 おっとぉ? おっとっとぉ? この流れはまさか……あるのか? まさかの逆オファーあるのか? しかしもう少し食いつきを隠せんものかなウチの妹は……目の前に餌を吊り下げられたワン公じゃあるまいし。返事を丸々鳴き声に変換しても違和感ないぞこれ。ワ、ワン! ワンワンワンワン!

 

 

『――あなたも一度、()()()()()変化弾(バイパー)の撃ち方を習ってみるのはどうかしら?』

『「わん(はい)!?」』

『……へ? おれが? 葉月妹に……?』

 

 

 そう来たかー……まあ、願望っていうのは打ち砕かれるためにあるようなモンなんだよ。勉強になったなマイシスター。

 とはいえ、これはこれで願ってもない提案である。A級1位射手(シューター)の教えを直々に受けられる機会なんて早々あるまい。人によってはむしろ、那須さんに教わるよりお得だとすら思うだろう。

 けれど生憎、大庭陽花は大庭葉月の妹な(普通じゃない)ので――

 

 

『「やだ! 小生やだ! お姉様の変化弾(バイパー)じゃなきゃイヤだぁぁぁぁぁ!!」』

『……これ本当に妹の方が喋ってんだよな? 葉月じゃねーよな?』

「超心外」

『ショーセイってなんだ? サウザーとなんか関係あんのか?』

『これ以上バカが増えたら収拾付かなくなるからてめーは黙ってろ』

『「いずみサン? ()()()()って何ですかいずみサン? まるで他にも馬鹿がいるかのような発言は控えてもらえますかいずみサン?」』

『そこで葉月じゃなくて自分のこと言われてると思っちまう時点で自覚あんじゃねーかバカ妹……つーか那須さん、そういう提案はおれから妹に持ちかけるモンでしょーよ』

『ああ……ごめんなさい。私の変化弾(バイパー)も元はと言えば出水くんに習ったものだし、私のような弾を撃ちたいのなら出水くんに師事するのが理に適っていると思ったのだけれど――話が一足飛びになってしまったわね』

 

 

 なるほど。理屈自体は間違っていない。しかし僕の個性理論に基づくのであれば、公平の変化弾(バイパー)と那須さんの変化弾(バイパー)にも何かしらの()()がある筈で、そのズレ(個性)の部分に妹は惹かれているのだろうから、やはり公平から直接教えを乞うのは微妙に話が違うのだ。アレだよ、澤井啓夫は松井優征の師匠だけれど、ネウロが描きたいと思って澤井先生に弟子入りしても出来上がるのはボーボボだよという話。ごめん、正直この例は割とふざけて考えた。

 

 

『「そんなの嫌……私いずみサンに鼻毛真拳の使い方なんて教わりたくない……」』

『てめーら兄妹の脳内会話は一体どうなってんだ……?』

『はなげしんけん?』

「『『『那須さんは知らなくていい』』』」

『そ、そう……みんなは普通に知っていることなのね……少し寂しいわ……』

 

 

 すまない那須さん。しかし理解ってくれ。いかに紳士の魔改造を受けた那須さんであっても越えてはいけない壁というものは存在するんだ……那須玲とボーボボの組み合わせなんて合体事故以外の何物でもないんだ……ビュティのようにコマの隅っこで目ん玉飛び出しながらツッコミ入れてる那須さんとか誰も見たくないだろ……? 少なくとも僕は見たくないぞ……。

 

 

 閑話休題。

 

 

「真面目な話に戻ろう」

 

 

 かつてないほど男らしい声で僕は口にした。この流れは良くない。僕の良くない癖が出ている。話が明後日の方向に脱線し続けていつまで経っても進まない悪癖がモロに出ている。5000字近く話してるのに本筋が微塵も進んでないとかあり得ないだろう。ぼちぼち僕らは、お使いを済ませて()に帰らなきゃいけない時間なんだよ。

 

 

 ちら、とブース備え付けの時計を見る。

 16時を僅かに回ったところだった。

 

 

「那須さん。聞いての通りウチの妹は、那須さん以外の変化弾(バイパー)なんて考えられないと駄々をこねるワガママクソシスターなワケなんだけど」

『「キレそう」』

「でも、こいつの気持ちが理解らないこともないんだ。僕は」

『「――え」』

 

 

 何しろ僕も、()()()()()()()()()()()()()()()()()なので。

 他人に期待はしないという信条を掲げていた癖に、その信条を捻じ曲げて影浦隊へと入った僕。那須さんの変化弾(バイパー)に心を奪われ、彼女の全てが欲しいと望んでいる陽花。つくづく僕らは兄妹だ。欲しがることを、求めることを止められない。甘えんボーイと求めたガールの二人三脚。まったくもって、ろくでもない。

 ただ――ろくでなしの兄が願望を叶えておいて、妹の方が夢を抱いたら駄々っ子呼ばわりというのも筋が通らない。こいつにだって、()()くらいは放つ機会を与えてやってもいいだろう。無論、その矢が刺さるかどうかは那須さん次第だが。

 

 

()()()()()()()()()()()()――そんなこっ恥ずかしいことを想ってしまうような相手が、世の中には意外といたりするわけなんだよね。で、どうもウチの妹にとっては、那須さんが()()()()()()らしいんだよ」

『「な、なななな……!」』

『あら、それは光栄ね』

 

 

 さすが那須さんは器がデカい。割と大胆な告白だったと思うのだが、実にすんなりと受け止めて下さっている。それと陽花さん、自分(ぼく)の頭をぽかぽか叩くのはやめなされ。じぶんごろし。じぶんごろし。

 

 

「どうだろう那須さん。こいつの願望(ワガママ)、聞いてあげる気はある?」

『そうね――』

 

 

 今、僕の瞳に那須さんの感情は()えていない。けれど彼女の声はどこか愉快そうで、スピーカー越しにお馴染みの薄い微笑みを湛えているのが目に浮かぶようだった。それも願望じゃないのかと人によっては思うかもしれないが、僕としては異を唱えたい。

 去年の末から2週間程度の付き合いではあるが、那須玲という少女と言葉を交わすうちに、僕が抱けるようになった――

 

 

 

『――私なんかで良いのなら、喜んで。素敵な絵を描ける(弾道を引ける)ようになりましょうね、陽花ちゃん?』

『「…………!」』

 

 

 

 ――彼女への、()()によるものである。

 

 

 

『「わ――!! きゃ――!! ぅやほぉぉ――――う!!」』

「喜ぶのはいいけど先に感謝の気持ちを伝えなさい」

『「あなたの犬になります!!」』

「そんな感謝の表し方ってある?」

『まあ、かわいいワンちゃんね。うふふ』

『……これ本当に』

「公平くん」

『いやー、なんつーかマジでツンデレシスターって葉月の妹なんだなってのがよくワカったぜ』

 

 

 それは一体どういう意味だ陽介。僕だってここまで猿みたいな奇声は上げなかったぞ。なんだか今日一日で妹の残念っぷりが一気に増してしまったような気がする……昨日までのこいつはキャラ作ってたんだろうか……?

 

 

 

 

 

「本当に――クソだなって思いながら見てたよ」

「そんなお兄ちゃんがさあ、私の存在を蔑ろにして、楽しいことを独り占めするなんて、許されるとでも思ってるの? おかしいよね? ありえないよね? それは本来、()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 ……そういう訳でもない、か。

 察するに、今のこいつがここまでぶっ壊れているのは、抑圧されていたものが弾けた結果なんだろう。求めたガールだなんて言ってしまったが、()()()()()()()()()がこいつにはある。こいつはずっと、欲しがっていたのだから。自分だけのものを。僕ではない、()だけのものを。

 いいだろう。存分に弾けてしまえばいい。鼻毛真拳を習うのは御免だとおまえは言っていたが、誰に習わずともおまえは立派なハジケリストだよ。だから遠慮せずに今日からこう名乗りたまえ。クイーン・オブ・ハジケリスト大庭陽花と……。

 

 

『「私の鼻に毛なんか生えてねえ――!!」』

「ぐわあああああああああああ!!」

『だから何でてめーらは那須さんに変化弾(バイパー)習おうって話からボーボボに話題が飛んでんだ……?』

『でもよ、葉月とツンデレシスターの流れガン無視したこのノリって微妙にボーボボっぽくね?』

『あー、言われてみりゃなんとなくそんな気も――』

『ぼーぼぼ……』

「『『『那須さんは知らなくていい』』』」

『……みんな酷いわ……』

 

 

 すまない那須さん。君が悪いんじゃない。恨むのなら僕達じゃなくて天の助を恨んでほしい。

 そうだ天の助……よくも那須さんを悲しませたな……殺してやるぞ天の助……!!

 

 






殺してやるぞ天の助

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