葉月の異常な愛情~または僕は如何にして心配するのを止めて近界民を愛するようになったか~ 作:Amisuru
2期のOPイントロで毎回独りぼっちの緑川のところで一時停止するじゃないですか。
見る度に『俺! 総勢1名参上!!』を思い出して笑ってしまうので
3期になったらちゃんと他3名が追加されてたらいいなと思いました。
でも戦闘員しか立たせないみたいなんで今度は草壁隊長がハブになってしまうというジレンマ…隊長なのに…
長くなってしまったので今回も前後編です。
後編はなるべく早いうちに。
――ところがどっこい、そう何もかもが上手くいったら苦労はないという話で。
「
『「「ほげえええええええええええええええ!!」」』
『戦闘体活動限界、大庭ダウン。勝者、出水公平』
負けました。
というか、その、試合になりませんでした。
『「……はっ!? 私また死んでる!?」』
ブースのベッドに叩き落とされた直後、即座に身体を起こして頭を抱える
『……葉月? 妹? なんでてめーら、いつまでもキューブ抱えたままぼっ立ちだったんだ……?』
「いや、例の
『「…………」』
そう。ノータイムで合成弾を創れる
『「うふふふふ……これは私がボーダーNo.1
とかウチの愚妹が過去最高に調子乗ってたことも記憶に新しい。
で、合成弾のコントロールも僕は陽花に任せることにした。というのもこの
陽花さん、事件に関して何かコメントをお願いします。
『「……どんな風に
「などと被疑者は意味不明の供述をしており――」
『「私の頭がおかしいみたいに言うなあ!! ……伝わんないかなあ?
「…………?」
何のこっちゃ。普通に何も考えずどばばばばーって雑にぶっ放せばいいだけの話じゃないのか? 僕が
『……あー、そういうことね』
そんなことを思っていたら、意外なことに公平が納得したかのような反応を見せている。え? わかんの?
「出水さん、解説をお願いします」
『妹の方とややこしいからその呼び方やめろ! ……あー、
「……ふむ」
そういえば那須さんも言っていたな。自分の中にある
……なるほど。確かに妹の言う通り、
で。
僕の知る限り、こいつにとっての理想の弾丸っていうのは――
「要するに、那須さんみたいな弾が撃ちたいんだよな。おまえは」
『「ふぇあっ!?」』
『あら。私?』
自分の名前が挙がるとは思っていなかったのか、意外そうな反応を示す那須さん。でも実はそうなんすよ。ウチの妹、ちょっと前になんて言ったと思います? 聞いて驚くことなかれ、那須さんの全てが欲しいだなんて大胆発言を……。
『バラしたらころすぞ……』
まあ怖い。最近の子は気軽に死ねとか殺すとか口走るから教育に良くないわ。誰に似たんざましょ。でもちょっと前に僕も陽介にぶちころすぞとか言ってたような気がするな。なんだ僕か。
それはさておき、空から降る一億の
しかし今回、陽花が相手にしたのは周りに遮蔽物も何もない状態の公平である。路地裏に潜んでいたことで弾丸の進路が限定されていた時と違って、
『「殺す!!」』
「きゃあ、じぶんごろし!!」
『まあ、ダメよ陽花ちゃん。そんな物騒な言葉を使ったら』
『さっきから全っ然話が進まねぇー……』
『おまえはまだ話に混ざれるからいいだろ弾バカ。オレの今味わってるソガイ感ってやつわかるか? だからオレ一人だけ
すまん陽介。おまえがそんな寂しさを抱いているだなんて気付かなかった。感情が
とりあえず、どうもウチの妹は無から何かを生み出す能力に欠けているようだ。とはいえ、別に悲観するような話でもない。誰だって最初は模倣から始めるのだから。
初めに好きや憧れがあって、それを真似しているうちに、少しずつ理想と現実のズレを自覚するようになっていくのだ。
けれど、そんな自分を否定しようとは思わない。笹森くんにも言った通り、僕は『こいつ死ねばいいのに』って感じの大庭葉月だ。その自分を受け入れている。だから陽花も、まずは無心で那須さんの真似から始めてみればいいのだ。どうせ描いてるうちに、『私ならもっとこうしたい』とか『ここはこう描きたい』とか思うようになる。だって僕らは人間だから。
どれだけ理想を抱いてみても、
両親がどれだけ手を尽くしても、大庭葉月が
『「…………」』
そうだね。楽しくない話はやめようね。せっかく皆と
とにかく、今の妹に必要なのは『那須さんだったらどう
……いや待て、案外快く引き受けてくれるかもしれない。紳士ウィルバーによって魔改造された那須さんの思考はイマイチ読みづらいところがあるからな。どうする? いっちょ駄目元でお願いしてみるか……?
『――ねえ、陽花ちゃん? あなたさえ良ければ――』
『「……!? は、はい! はいはいはいはい!!」』
おっとぉ? おっとっとぉ? この流れはまさか……あるのか? まさかの逆オファーあるのか? しかしもう少し食いつきを隠せんものかなウチの妹は……目の前に餌を吊り下げられたワン公じゃあるまいし。返事を丸々鳴き声に変換しても違和感ないぞこれ。ワ、ワン! ワンワンワンワン!
『――あなたも一度、
『「
『……へ? おれが? 葉月妹に……?』
そう来たかー……まあ、願望っていうのは打ち砕かれるためにあるようなモンなんだよ。勉強になったなマイシスター。
とはいえ、これはこれで願ってもない提案である。A級1位
けれど生憎、大庭陽花は
『「やだ! 小生やだ! お姉様の
『……これ本当に妹の方が喋ってんだよな? 葉月じゃねーよな?』
「超心外」
『ショーセイってなんだ? サウザーとなんか関係あんのか?』
『これ以上バカが増えたら収拾付かなくなるからてめーは黙ってろ』
『「いずみサン?
『そこで葉月じゃなくて自分のこと言われてると思っちまう時点で自覚あんじゃねーかバカ妹……つーか那須さん、そういう提案はおれから妹に持ちかけるモンでしょーよ』
『ああ……ごめんなさい。私の
なるほど。理屈自体は間違っていない。しかし僕の個性理論に基づくのであれば、公平の
『「そんなの嫌……私いずみサンに鼻毛真拳の使い方なんて教わりたくない……」』
『てめーら兄妹の脳内会話は一体どうなってんだ……?』
『はなげしんけん?』
「『『『那須さんは知らなくていい』』』」
『そ、そう……みんなは普通に知っていることなのね……少し寂しいわ……』
すまない那須さん。しかし理解ってくれ。いかに紳士の魔改造を受けた那須さんであっても越えてはいけない壁というものは存在するんだ……那須玲とボーボボの組み合わせなんて合体事故以外の何物でもないんだ……ビュティのようにコマの隅っこで目ん玉飛び出しながらツッコミ入れてる那須さんとか誰も見たくないだろ……? 少なくとも僕は見たくないぞ……。
閑話休題。
「真面目な話に戻ろう」
かつてないほど男らしい声で僕は口にした。この流れは良くない。僕の良くない癖が出ている。話が明後日の方向に脱線し続けていつまで経っても進まない悪癖がモロに出ている。5000字近く話してるのに本筋が微塵も進んでないとかあり得ないだろう。ぼちぼち僕らは、お使いを済ませて
ちら、とブース備え付けの時計を見る。
16時を僅かに回ったところだった。
「那須さん。聞いての通りウチの妹は、那須さん以外の
『「キレそう」』
「でも、こいつの気持ちが理解らないこともないんだ。僕は」
『「――え」』
何しろ僕も、
他人に期待はしないという信条を掲げていた癖に、その信条を捻じ曲げて影浦隊へと入った僕。那須さんの
ただ――ろくでなしの兄が願望を叶えておいて、妹の方が夢を抱いたら駄々っ子呼ばわりというのも筋が通らない。こいつにだって、
「
『「な、なななな……!」』
『あら、それは光栄ね』
さすが那須さんは器がデカい。割と大胆な告白だったと思うのだが、実にすんなりと受け止めて下さっている。それと陽花さん、
「どうだろう那須さん。こいつの
『そうね――』
今、僕の瞳に那須さんの感情は
去年の末から2週間程度の付き合いではあるが、那須玲という少女と言葉を交わすうちに、僕が抱けるようになった――
『――私なんかで良いのなら、喜んで。素敵な
『「…………!」』
――彼女への、
『「わ――!! きゃ――!! ぅやほぉぉ――――う!!」』
「喜ぶのはいいけど先に感謝の気持ちを伝えなさい」
『「あなたの犬になります!!」』
「そんな感謝の表し方ってある?」
『まあ、かわいいワンちゃんね。うふふ』
『……これ本当に』
「公平くん」
『いやー、なんつーかマジでツンデレシスターって葉月の妹なんだなってのがよくワカったぜ』
それは一体どういう意味だ陽介。僕だってここまで猿みたいな奇声は上げなかったぞ。なんだか今日一日で妹の残念っぷりが一気に増してしまったような気がする……昨日までのこいつはキャラ作ってたんだろうか……?
……そういう訳でもない、か。
察するに、今のこいつがここまでぶっ壊れているのは、抑圧されていたものが弾けた結果なんだろう。求めたガールだなんて言ってしまったが、
いいだろう。存分に弾けてしまえばいい。鼻毛真拳を習うのは御免だとおまえは言っていたが、誰に習わずともおまえは立派なハジケリストだよ。だから遠慮せずに今日からこう名乗りたまえ。クイーン・オブ・ハジケリスト大庭陽花と……。
『「私の鼻に毛なんか生えてねえ――!!」』
「ぐわあああああああああああ!!」
『だから何でてめーらは那須さんに
『でもよ、葉月とツンデレシスターの流れガン無視したこのノリって微妙にボーボボっぽくね?』
『あー、言われてみりゃなんとなくそんな気も――』
『ぼーぼぼ……』
「『『『那須さんは知らなくていい』』』」
『……みんな酷いわ……』
すまない那須さん。君が悪いんじゃない。恨むのなら僕達じゃなくて天の助を恨んでほしい。
そうだ天の助……よくも那須さんを悲しませたな……殺してやるぞ天の助……!!
殺してやるぞ天の助