天地無用!魎皇鬼 ~アナザー~   作:ロン

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二話

「さっきの遥一お兄ちゃんの型、本当に綺麗だったよ」

 

「あはは、ありがとう」

 

「ご謙遜なさらずとも良いのですわ。私どもも何度か拝見した事はありますが、勝仁様にも劣らないと思いますわ」

 

「勝仁さんの他にも全ての型を扱える方はいるんですか」

 

「天地お兄ちゃんは勝仁お爺ちゃんのお孫さんだから一通り出来ると思うよ」

 

これからお世話になる家の人か、祖母以外で剣の型を扱える人が居なかったから楽しみだ。

2人は知識として知っていても剣を扱うのは苦手なの用で、勝仁さんのお孫さんで柾木神社の跡取りの人が扱えるようだ。

そんな話をしているうちに目的地である柾木邸に到着した。

 

「遥一お兄ちゃん着いたよ」

 

「ようこそいらっしゃいました、神木ノイケと申します。この子は魎皇鬼みんなは魎ちゃんと呼んでいます」

 

「みゃみゃ」

 

緑色のショートカットの妙齢な女性神木ノイケさんと茶色い小動物魎皇鬼に出迎えられ家にあがらせてもらった。

天女さん、阿重霞さん、砂沙美ちゃん、それにノイケさん、他にも2人いるらしいが本来の家主である天地さんの父親は仕事場のある岡山にいるらしく

6人の女性と住んでいるとは世間の男が知ったら嫉妬の嵐だろう。

 

「家主の天地様はまだ畑から戻っておりません。天女様を除いて後3人いるのですが夕飯までには戻ると思いますのでごゆっくりしてください」

 

「すいません、お世話になります」

 

阿重霞さんは作業の途中だったらしく二階へと上がっていき、俺はノイケさんと砂沙美ちゃんと共にまったりとお茶をしながら、俺に興味津々な魎皇鬼と言う小動物を砂沙美ちゃんと撫でながら談笑していると、

暫くして階段の脇にある扉から赤い髪を頭の後ろで纏めた少女が姿を見せた。

 

「おやおや、お客さんかい」

 

「そうだよ鷲羽お姉ちゃん。天女お姉ちゃんが言ってた東京から来た天地お兄ちゃん達の親戚に当たる人だよ」

 

「みゃみゃ」

 

「天地殿の親戚の方かい、始めましてわたしは白眉鷲羽」

 

「初めまして、神城遥一と申します」

 

白眉鷲羽と名乗った女性が右手を出したのでその手を握り挨拶を返した。

背丈は砂沙美ちゃんと同じ位だが、その瞳は見掛けと違い理性的で見掛けとは違う感じがした。

 

「ノイケちゃんと砂沙美ちゃんは、そろそろ夕飯の支度もあるし休憩がてら天地殿が戻られるまでお客人の相手は私が務めておくよ」

 

「よろしくお願いします(鷲羽お姉ちゃんお願いね)」

 

ノイケさんと砂沙美ちゃんと魎ちゃんが台所に向かい、鷲羽さんと話していると御神木の逸話や正木村についてなど色々な事を教えてくれた。

 

「あの御神木も遥照様が植えられたんですね」

 

「そうさね、凶悪な2匹の鬼が蘇らない様に建てたのが柾木神社で戦いで荒れた土地を癒す為に植えたのが御神木だよ」

 

「ただいま、お客さんが来てるんだって」

 

やはり見掛けに騙されちゃいけないな、鷲羽さんの話す内容の豊富さに改めてそう感じた。

台所の方から男性の声が聞こえ、ノイケさんと砂沙美ちゃんが俺の事を伝えると居間と台所を仕切る扉が開き一人の男性が姿を見せた。

 

「はじめまして、柾木天地と言います」

 

「えっと…はじめましてですよね。すいません、神城遥一と言います。お爺様の勝仁さんにご相談があり東京から来ました。暫くの間お世話になります」

 

作業着を着た170センチ後半の短髪、服の上からでも分かる農作業と鍛錬で鍛えられた締まった感じの体躯の持ち主この人が勝仁さんのお孫さんでここの家主の天地さんだろう。

目があった時に妙な既視感を覚えた。

 

「神城殿、どうかしたかい」

 

「天地さんと会うのは初めてのはずなんですが、どこかで逢った事がある気がするんです」

 

「神城さんもですか、俺も同じ様な感想を持ちました」

 

「天地殿はここ数年岡山を離れた事はないはずだけど、神城殿も岡山に来たのは今回が初めてで間違いないかい?」

 

鷲羽さんの問い掛けに自分が覚えている限りは無い事を告げる。

考えても思い出さない以上、何かの間違いなんだろう。

 

「天地殿も戻られた事だし私は部屋に戻らせて貰おうかね。砂沙美ちゃんちょっと調べたい事が出来たから悪いけど夕飯はあっちに持って来て貰えるかい、それじゃ神城殿失礼するよ」

 

「はい、機会があったらまた話をきかせてください」

 

「ああ、直ぐにいろいろあるさね…」

 

そう言うと鷲羽さんは階段脇の扉に消えていった。

その後、天地さんに誘われ一緒に風呂に向かったのだがどんな技術で出来ているのか空中に浮かぶ巨大な浴場にとても驚かされた。

 

「始めて入った人は驚きますよね、土地だけは空いているのでお風呂ぐらいは贅沢しようかなと思って作ったんですよ」

 

「そう言えば、神城さんは先祖である遥照が使った剣術の型を一通り扱えるんですよね。今度見せて貰えませんか」

 

「それは構いませんが、砂沙美ちゃん達から天地さんも一通り扱えると聞いていますよ」

 

「お恥ずかしい話なんですが、一通り習ってはいるんですが基本の型以外は全然でして…」

 

「折角二人いることですし相対もやりましょうか。アレは1人では出来ないですし」

 

相対とは鍛錬で使われると同時に祝いや祭りごとなど神事で披露する事もある2人で行う物だ。2人が相対し剣を合わせながら一通りの型を行うのだがこれは相手がいないと出来ない。

剣の事で打ち解け歳も近い事でお互い敬称無しで呼び合おうと言う事で一致し、後は普段どんな生活をしてるのかなど話していると突然裸の美女が現れ天地に抱き着いた。

 

「て~んち」

 

「魎呼!」

 

「…突然女の人が現れた」

 

「誰だコイツ」

 

「姉さんが言ってただろ、お客様が来るって」

 

「ワリィ、すっかり忘れてた。あれ?コイツの瞳ジジイそっくりじゃねえか」

 

「いいから女風呂に戻れ」

 

「へいへい、じゃまたな」

 

突然現れ嵐の様に去って行った美女に混乱する俺に天地が平謝し間もなく夕飯の時間だと急いで湯に浸かった。

魎呼と呼ばれた美女が突然現れた事を問い詰めると、物陰から出て来たと言う言い訳で誤魔化された。

 

「天地様、神城さんも間もなく用意が終わりますので席におつきください」

 

「よっ、さっきは悪かったな。てっきり天地一人だと思っちまって名前は知っていると思うけど魎呼だ。まあよろしくな」

 

「魎呼さん、また天地様が入ってる時にワザと間違えましたわね」

 

先程の女性が魎呼さんか。彼女と阿重霞さんの言葉であんな事が度々起こっていると理解し少し羨ましくなった。

2人が喧々囂々やり合っている間にも砂沙美ちゃんとノイケさんが手際よく食卓に料理を並べていく。

 

「美味い、こんなに美味い物は初めてですよ。こんな料理なお嫁さんが居て天地は幸せだな」

 

「えへへ、いっぱい食べてね。お替りも沢山あるよ」

 

「ぶっ…ノイケさんは許嫁で、砂沙美ちゃんにはまだ早いよ」

 

俺の言葉に阿重霞さんと魎呼さんが揃って自分が天地の嫁だと主張し口論を始めるのを眺めながら、

天地、阿重霞さん、魎呼さん、ノイケさん、砂沙美ちゃんにニンジンを食べている魎皇鬼を含め6人と一匹と言う大勢いる食事など始めての経験だが大変騒がしいものだった。

料理は上手いし、何と野菜は天地が育てている自家製らしいがこんなに野菜が美味しいと感じたのは初めてだった。

 

「そう言えば、天女さんともう一人同居している人と方はどちらに」

 

「天女様は社務所にいる勝仁様とご一緒で、もう1人九羅密美星と言う者がいるのですが出張で明日帰って来る予定ですわ」

 

「遥一は天女姉さんが気になるのかい」

 

「いやいやいや、柾木家の女性は皆さん綺麗だから全員揃ったら眼福だなぁと思っただけだよ」

 

「お上手です事、ご飯のお替りはいかがですか」

 

「みゃあみゃあ」

 

「勿論、魎皇鬼ちゃんも綺麗だよ」

 

「まあまあ、神城様は良く分かってらっしゃる」

 

「阿重霞、お前の本性をみたら遥一もドン引きするぜ」

 

「なぁんですってぇ~」

 

賑やかな食事も終わり、家の前にある湖のほとりで月を眺めていると天女さんから声を掛けられた。

 

「何をしていらっしゃるのですか」

 

「天地に月が綺麗に見えると聞いたのでお月見です」

 

両親は物心付く前に亡くなり、唯一の肉親である祖母も高校に入学して亡くなり天涯孤独となった。

親戚もおらず食卓はずっと2人だけだったから大人数での食事がこんなに温かいものだとは思わなかった。

 

「女の子が多いから騒がしかったでしょ」

 

「ずっと祖母と2人きりだったし、その祖母が亡くなってからは1人だったので楽しかったですよ」

 

「親戚の方はいらっしゃらなかったの」

 

祖母や弁護士から聞いたことはなく、葬式にも参列者はいなかったし手紙を読むまでは親戚筋にあたる家がある事もしらなかった位だしな。

そんな事を考えながら月を眺めていると空から凄まじいスピードで迫る物体が目に入った。

 

「あれはなんだ」

 

―おい、美星の奴が帰って来たぞ

 

―外には神城様達が居るはずよ、知らせないと

 

―不味いあの馬鹿、また逆噴射忘れてるぞ

 

あっと言う間に近づいた強大な船の様なものが湖に激突し、衝撃で津波が俺達に迫って来た。

 

「神城君」

 

「うわぁぁぁぁ」

 

津波に飲み込まれると思った瞬間、あの光の羽の様な物が俺と天女さんを包み込み津波から俺達を守ってくれた。

 

「こ、光鷹翼…」

 

「「「(ご)無事か(ですか)」」」

 

「天女さん、ご無事ですか」

 

「ええ、貴方のお蔭で無事ですわ」

 

「よ、良かった…」

 

凄まじい脱力感に襲われ、彼女の無事を確認すると俺は意識を失った。

 

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