天地無用!魎皇鬼 ~アナザー~   作:ロン

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三話

 

~ 柾木家リビング 白眉鷲羽 ~

 

「鷲羽ちゃん、彼が倒れた原因は」

 

「…アストラルパターンも異常なし。ふむ、力を発現した事による疲労だね」

 

自分を守り倒れた青年を心配そうな顔で見つめる天女殿に私はそう言った。

4枚羽の光鷹翼を出現させた青年、遥照殿の子孫であり私達が気づかなかった天地殿と同じ可能性を持つ神城遥一殿。

 

「鷲羽ちゃん、彼は俺と同じなのかい」

 

「Zみたいな存在とか言わないよな」

 

「それはないわね。そう言う存在がいたとして私達3人が揃って気づかないって事は有り得ないわ。検査したところ彼の体に人為的に弄られた痕もないし、考えられるのは天地殿と同じ力を持つ可能性が高いわ」

 

「昔この村に住んでいたお爺ちゃんと霞お祖母ちゃんの子孫で間違いないと聞いてるし、可能性はゼロじゃないんでしょうけど」

 

「確かに遥照お兄様の血を引いているのなら天地様と同じ様な方が居てもおかしくはないのでしょうけど…」

 

「先程調べた限り勝仁殿と霞殿の血を引いているのは間違いないわね。それとは別に気になる情報があったから、今それを訪希深に調べさせているわ」

 

「姉さま」

 

噂をすれば何とやら、訪希深からの報告はある意味予想通りでありながら、外れて欲しいかった答えとは別に気持ちの良くない内容が含まれていた。

天女殿や勝仁殿が彼から聞いた力の発現したタイミングに引っ掛かりを覚え、調べさせたがどうやら全宇宙に与えた影響で眠っていた力が目覚めたと推測される。

天地殿が次元の殻を突き破り掛けた際、私達3人の力の殆どを天地殿に費やしたことで全宇宙に大小な余波が発生していた。

この宇宙に大きな影響を与える物は直接修正し、時間を巻き戻す事で修正される程度の小さい物に関してはあえて手を加えなかった。

 

「全員が知っておかなければならないから告げたが、巻き戻す前の時間軸で彼は天地様が力を発動した余波が原因で起こった建物の崩落で亡くなっている。しかし今の時間軸では同じ様に建物の崩落が発生したが、彼が光鷹翼を発現させた事で軽傷者は出たけど死者は0で彼も生存していると言う事だ」

 

彼の側で起こった事故もこの小さい部類に入る物で直接介入はしなかったのだが、報告を聞けば巻き戻す前は何名もの死者や重軽傷者を出す大惨事だったが巻き戻した後は軽傷者はいたが死者は1人も出ていなかった。

訪希深により最後に伝えられた内容に全員が沈んだ気持ちになった。

 

「本来の時間軸だと遥一が死んでいた…」

 

「参ったわね。生きていてくれた事は素直に嬉しいんだけど、皇家の樹の力を借りずに光鷹翼を生み出せる存在が天地殿やZ以外に存在してしまったのは完全にイレギュラーよ」

 

「知り合ってしまった以上、再び時間を巻き戻すのは余りにも酷です。それに短期間で更なる巻き戻しをした場合、この世界にどんな影響を与えるか分からない以上好ましくありません。不幸中の幸いは唯一のイレギュラーと思われる彼がここを尋ねて来てくれた事ですわ」

 

「そうね、津名魅の言う通り私達の元に来た事に何らかの意味が有る訳だし、私も彼が知らないとは言えみすみす殺す様な事はしたくは無いわ。こうなったらしっかりサポートしましょう、それが私達に出来る最大限の贖罪ね」

 

「ん…」

 

「思った以上に目覚めが早いけどこれもこの地に来た影響かしら。とりあえず光鷹翼の事などは明日勝仁殿の方から話して貰い暫くここに滞在して貰いましょう。皆も今聞いた事は遥一殿には他言無用よ」

 

幾ら遥照殿の血を引いているとはいえご両親が地球人の筈の遥一殿が何故力に目覚めたのか、それに力を使った直後に気絶する事からも覚醒が完全では無い事は間違いなくこのまま東京に返す事に不安を感じた。

正木村に住んでいるなら直ぐに駆け付けられるが、そうではない彼の場合は何かがあってからでは目覚めが悪い。

まだまだ不明な部分も多いし詳しく調べる為にも彼の協力は不可欠であり、完全に覚醒させるにしてもまずは自身に流れる血の事をしっかり伝えておく必要がある。

黙って聞いていた天女殿の顔色が悪いのを見て、女神全員が揃ってるのだから安心する様に伝え彼にはそんな顔を見せない様に慰めることにした。

 

~ 鷲羽サイド エンド ~

 

 

~ 柾木家リビング 神城遥一 ~

 

「ん…」

 

「これでひとまずは大丈夫だよ、ただ疲労が完全に抜け切れたわけじゃないから早めに休ませるようにね。私はそろそろ研究室に戻るわ」

 

「ありがとう、鷲羽ちゃん」

 

段々と意識が鮮明になっていき、気を失う前の事を思い出した。

空から巨大な船みたいなのが落ちて来て湖畔にいた俺と天女さんに…

 

「そうだ、天女さん無事ですか…うっ」

 

「急に動いちゃ駄目よ。私はこの通り傷ひとつ無いわ、それよりも神城君が倒れたほうがビックリしたわ」

 

彼女に再度横になる様に言われ、横になりながら辺りを見回すと先程まで居なかった褐色の女性がノイケさんに引きずられてやって来た。

 

「神城様、美星が大変申し訳ありませんでした」

 

「ごめんなさい、まさか人が居るとは思わなくって」

 

「このお馬鹿、市民を守るGPの人間が逆に迷惑掛けるとか始末書じゃ済まない事よ」

 

俺に頭を下げる褐色の女性の名前は九羅密美星さん、どうやらこの家に住む最後の1人のようだった。

GPと言う名に聞き覚えは無いがノイケさんの言葉から警察関係の人なのだろうか、空から落ちて来た船の様な物について聞くとノイケさんから機密事項に当たる事柄なので今はお話し出来ないと言われた。

 

「こ、光の羽の様な物を使うと遥一の体力を大きく消耗するみたいでそれが原因で気絶した様なんだけど、一晩休めば問題ないだろうってもし異常があるようなら教えてくれって鷲羽ちゃんからの言伝」

 

「鷲羽ちゃんって医師か看護なのか」

 

「何といえば良いのか下手な医者よりも優れた医療知識を持っているのは保証する。それと明日の昼頃に爺ちゃんから話があるから社務所に来て欲しいってさっき連絡があった」

 

落下して来た大型の物体の事も含めてと、色々聞きたい事があったが明日勝仁さんに聞けばいいかと思い、疲労感が完全に抜けていないのでそれから暫く休んだ後天女さんに案内され俺が当面寝起きする部屋へと向かい寝る事にした。

 

「私も一緒に来る様に言われてるから、そんなに不安そうにしなくて大丈夫よ」

 

「カッコ悪いところみられちゃいましたね。天女さんも一緒に来てくれるなら心強いです」

 

「ちょ、ちょっと何言ってるのよ。お姉さんを揶揄うんじゃありません、それにカッコ悪いなんて思わないわ、普通考えられない様な未知の出来事に触れれば不安になるのが普通よ。そ、それに庇ってくれた時の君はカッコ良かったわ、それじゃおやすみなさい」

 

頬を染めて早口でそう言った彼女を見送り、部屋に入った俺は既に敷かれていた布団に横になり今日の出来事を思い出しながら不安な気持ちも浮かび上がったが、それ以上の賑やかさと安心感に包まれ直ぐに眠りについた。

 

「おはようございます。遥一様お早いのですね、昨日はよくお休みになられましたか」

 

「遥一お兄ちゃん、ノイケお姉ちゃんおはよう。遥一お兄ちゃん体はもう平気?」

 

「ノイケさん、砂沙美ちゃんおはよう。ぐっすり寝られたお陰で体調もこの通り万全だよ」

 

光の羽の様な物に守られた翌日は疲労が抜けず朝起きるのも大変なのだが、今日に限ってはそんな事も無く逆に何時もより早く目が覚めた事に驚きながら用意しておいてもらった木刀を片手に体を動かしているとノイケさんと砂沙美ちゃんが起きて声を掛けてきた。

心配をされたが軽く体を動かす事で問題ない事をアピールすると安心した様で5分程言葉を交わすと二人は台所へと朝食の支度に向かった。

2人との会話で分かったのは、炊事とくに食事作りに関しては砂沙美ちゃんとノイケさんが以外の人間は宛にはならないらしい。

阿重霞さん、魎呼さん、美星さんに関しては全くこなせないと言う訳では無いが後始末に多大なる労力が掛かるらしく食事の支度はさせられず、

鷲羽ちゃんに関しては部屋に籠って作業をしている事が多く、砂沙美ちゃんが体調を崩すなどの緊急時にのみ出張って来るレベルらしい。

台所へ向かった二人を見送ると大浴場は24時間入浴出来ると言われ汗を流すべくそちらに向かった。

 

「すいません勝仁さん、もう一度言っていただけますか」

 

「天地とアヤツの父を除いて全員がこの星の人間では無い」

 

「はぁぁぁ~~」

 

風呂で汗を流した後、午前中はのんびりと過ごし昼を少し過ぎたところで、天女さんと向かった勝仁さんの社務所で聞かされた話は突拍子もない物だった。

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