それから、これからは敵のボーンのことはダークボーンと表記させてください。表現が難しくて死にそうなんです。
意識を失った零は、メルボルン研究所に送られた。翔悟たちもそれについてきている。
余計な装飾の一切ない病室。規則正しく音を鳴らす機材。人工呼吸器をつけれられている零。その父親、ダンは片時も彼の側を離れようとしない。常に零の片手を握っていた。
「ダンさん」
それに、翔悟が話しかけた。
「ダンさんと零は、なんで名字が違うんですか?」
仮に親が離婚していたとしても、使う名字は親権を持つ方と同じになるはずで、零とダンの名字が違うのは不可解なのだ。そして今、苦しい沈黙を破る話題が思いつかなかった。
翔悟にダンは苦笑で返す。
「気にしないでくれ くだらない理由なんだ」
意識の奥深く。そこに差し込んでいる光をたどって、彼は暗黒から抜け出そうとしていた。さっきまで動きの邪魔をしていた、ドロリとする不快な闇はもうない。ただ、中途半端に落ちすぎた。自分がしていたことが、考える気力がなくて本能に従って動かしただけの体の記憶が、上にあがるほど蘇る。
俺は、何をした?
考えるのをやめなければ、わずかにでも本能に抵抗しすべてを受け入れられたかもしれない。
底の底まで落ちてしまえば、思い出すこともなかったかも知れない。
けれど、もう遅い。
彼は、知ってしまった。
「ぁ……」
零が目を開ける。
「零!!」
ダンが慌てて声をかける。零は何度か、ゆっくり目を瞬いて、父親の姿をみとめた。
「おや、じ」
ダンは頷いて少し微笑んだ。
少し目線をずらした零の目に、翔悟が、仲間たちが映る。
「っ……!!」
「零?どうかしたか?」
「え、あ……そうだ、おれ……みんな、を……」
こうげき、しようとした……?
突如、怯えているような様子を見せた零をダンは抱きしめ、彼の視界を覆った。研究員の1人、アンナが持ってきた鎮静剤を彼に打ち、もう一度眠らせる。
わけがわからない。そんな空気の中、目を伏せたダンが口を開く。
「……以前、零の仲間から聞いたことがある」
それは、彼の心に深い傷を残した出来事。悪意の塊とも言える存在に体の自由を奪われ、己の仲間を惨殺したという、絶望に満ちた事件。
「こいつは、それをもう一度繰り返すところだった」
それから、数日が経った。日本には帰ってきたものの、零は翔悟たちと会おうとしない。学校を休み、家に閉じこもっていた。事情を知っているダンはそれを咎めることができず、ただできるだけ刺激しないように彼に接した。
(このままじゃあ、だめなんだが……やはりきっかけがないとな)
ため息をついて、ダンは食事の用意ができたと零を呼んだ。
「ルーク、どうすればいいと思う?」
「……零のことか」
「うん」
あれから、5人は以前のときのようにはしゃげないでいた。出会ってから時間こそ経っていないものの、彼らの中には零を仲間だと思う気持ちが既に強くあった。
「オレも暴走したことはあったけど……それより前に零みたいな体験はなかったからさ どうすればいいんだろって」
ルークの手の中のアイスは、既に溶け出していた。
その時バン、と音を立てて戸を開け現れたのは、意外にもギルバートだった。そちらを見れば、タイロンとアントニオもいる。
「ショーゴ!ボーンカード光ってる!」
「!!ホントだ、今いく!」
自分を呼ぶアントニオに返事をして、ルークと顔を見合わせて立ち上がった。
ダンは、リビングでボーッとしていた。
自分は零に何ができるだろうか。どこまで彼の心に踏み込んでもいいだろうか。そんなことを考えていた。
ふと、自分のボーンカードが光っていること気がついた。
(いけない、急がなければ)
その時、携帯の着信音が鳴った。切るつもりで画面を見て、目を丸くする。ルークからだ。切るべきではない気がして、電話に出た。
『ダンさん?』
「どうかしたのか」
『ダンさんは、こないでください』
「は?」
どういうことだろう 顔の見えない話し相手は、言葉を探しているようだった。
『零の側にいてほしいんです 彼は私達の友人で、仲間です ですが今、彼を誰よりも理解し寄り添うことができるのは、貴方ですから』
プツリ、と電話を切られる。ダンはしばらくその場に固まって、それからもう何度目とも知れないため息をまた吐いた。ボーンカードは危機を知らせるのをやめ、ダンを後押しするように淡く輝いている。
フッと笑う。
「ありがとう」
さて、父親として、転んだままの息子を立ち上がらせなければ。
展開したコクーンの中に、8人のボーンファイターがいる。ドラゴンを中心とした5人に向き合う、3体のダークボーン。
「……さっさと、片付けなければいけませんね」
レオの言葉に頷いて、5人は駆け出した。
「入るぞ、零」
「……親父」
零はベッドの隅にいた。帰ってきてからずっとそうなのだ。ダンはその隣に腰を下ろして、なるだけ優しい声で話しかけた。
「……何を、考えていたんだ?」
零は三角座りの膝の間に顔を埋め、小さな声で答えた。
「これから、どうすればいいんだろうって」
ダンは黙ってそれを聞き、その言葉の続きを誘う。
「それで、俺……もう、仲間はいらないかなって 過去に一度仲間を手にかけて、もう二度と同じことにはしないって誓ったのに、俺は、また……」
でも と、かすれた零の声は続けた。
「なんか、そう決めたら、こう、心に穴が開いてるみたいな感じがして、何かが足りなくて 仲間なんてもう持つべきじゃないのに、昔みたいに、あの頃みたいにまた1人になるんだって思うと、動けなくて……ねえ親父、俺どうすればいいんだろう」
顔は見せてくれないけれど、すすり泣くような声が聞こえた。話したことで、感情が抑えきれなくなってしまったのだろう。
そんな零を、ダンはそっと抱き寄せた。どうやら彼の負の感情の原因の一端には、かつての自分の行動があるようだ そう思うと申し訳ない気持ちで一杯になって、ダンもしばらく動けないでいた。
けれどすぐに、それではいけないと思い直す。
「零」
腕の中の少年が、ピクリ、と体を震わせた。彼が聞いていることを確かめながら、ダンも言葉を紡ぐ。
「お前が仲間に選んだ彼らは、今のお前の考えを聞いたらなんて言うだろうな」
零は黙っている。
「絆とは、そんなものなのか? 彼らがお前に寄せる信頼はあんなことで容易くかき消えてしまうものなのか?」
「けど、俺はみんなを裏切った!」
未遂と言えど、それは彼の心に残る傷を抉り直すのには十分な出来事だった。
それでも、ダンは諭すように零に語りかけ続ける。
「……お前は、あの出来事を己が罪だと思うのか?」
零は、コクリと頷いた。
そうか とダンは呟いて
「なら、償わなければいけないな」
零が、顔を上げた。それにダンは優しく微笑む。
ガン、と音がする。発生源は、ライノーだった。彼が壁にぶつかるほどの強さで飛ばされたらしい。ドラゴンがライノーを助け起こす。
「大丈夫か?」
「ええ!……と言いたいところですが、そうでもないかも知れません ゼットンボーンとの戦いのときのダメージがかなりキツイですね……」
その横に、ジャガーが来る。様子からすると、一旦引いたようだ。敵に組み敷かれたレオのヘッドパーツがボーンクラッシュしたのが見えた。その敵の後ろからシャークが奇襲を仕掛け、レオからどうにかそれを引き剥がした。しかしその彼のヘッドパーツはすでにボーンクラッシュしている。
苦しそうにシャークが呟いた。
「ダンさんに助けを求めるわけにはいかないんだがな……」
少し驚いたような顔をした零に、ダンは言う。
「お前がプラズマスパークに手を出そうとしたときの罪は、お前が宇宙を救ったことで帳消しに、いやむしろプラスになったというのが警備隊内での一般論だ。では、仲間を裏切ろうとしてしまったお前は、どうやって罪を償えばいいんだろうな」
零は少しうつむいて考え込んで、それから わからない と首を振った。
「簡単なことだ」
至極優しい声でダンは言う。
「お前が傷つけそうになった彼らを、仲間を助けなさい そしてマイナスを埋めて、その上で、彼に償いの方法を求めなさい」
「え……」
「お前が思う償いをしたとしても、彼らがそれで納得するとは限らないだろう?」
零はしばらく唖然として、しばし考えてから力強く頷いて、それから立ち上がった。
「翔悟くんたちは戦っている たぶん、北の方だ お前とルークくんがお気に入りのドーナツ屋が来る、あの広場」
それに頷いて、零は階段を駆け下りていった。
それを見て、ダンは笑う。
「今は俺達は要らなそうだな なあ、《ノーウェルボーン》」
セブンがゼロを強く叱っているところが想像できなかった。のでこうなった。思ってたんと違う。まあいいでしょう、これ以上いろいろやるとあたしが身動き取れなくなっちゃうし。
Z「こんにちわ、ボーン紹介のコーナーを始めるのでございます!今回紹介するのは、ノーウェルボーン! 零師匠のお父様、諸星ダン師匠が使う地属性のボーンで、イッカクという地球の海に生きている動物がモチーフなのだそうです
ついこの前まではホワイト状態だったそうでありますが、零師匠の暴走を止めたいという気持ちだけでアイアンボーンになったそうです。ダン師匠、零師匠が本当に大事なんでございますね、素敵なことだととても思います!
そして、これはなにかの拍子に翔悟たちがいる宇宙からウルトラマンのいる宇宙に迷い込んでしまったボーンとしてあるため、通常のボーンとは特に違いがないんだと仰っておりました
また、ボーンに宿る意志は、零師匠を大切にするダン師匠の思いをよく察してくれるそうです いい、人?……い、いいボーンなんでございますね!」