「なあ、剣也」
翔悟に勉強を教えていたはずの零は、いつの間にかタイロンにバトンタッチしていたようだ。手元のルービックキューブを弄りながら、巡の下敷きになってる剣也に話しかけた。巡は寝ている。
「お前この前さ、ボーンが意思を持って、適合者を選ばずに俺らと戦ってた的なこと言ってたよな」
「ああ、言った なんだ、否定できる根拠でも見つかったのか?」
「いや、そうじゃなくてさ」
零は完成したルービックキューブをコトン、と机の上に置き、寝転がる。
「ゴモラボーンと戦ったあと、確かに足跡は1つ足んなかった けど、敵にはゴモラボーンともう一体居たんだ で、そいつの分の足跡はあったんだよ てことは、てことはだぞ?」
バッと剣也が起き上がった。落とされた巡が「イテッ」と声を上げて目を覚ます。剣也はそのポーカーフェイスに珍しく動揺の色を浮かべている。
「あのボーンとの戦闘、もっと言えばあのボーン達の存在までもが、誰かが故意に行ったことによるものだということか!?」
「え?なになに?どうしたの剣也」
巡が打ち付けたらしい頭をさすりながら、キョトンとして言った。
その話はすぐにルークに伝えられた。
「……それは、詳しく調べて見る必要があるな」
それから、私達だけが知っていても何もできまい と、ボーン研究所へ行くことが決まった。
そしてその、車の中。ルークが用意したその中は、9人乗っても余裕がある。
「……ああ、剣也がワクワクしてる……怖いなー」
無表情ながらも雰囲気がお花畑になっている剣也に、巡が不安そうに言う。零にはそれを払拭してやることができない。
「?なぜだ、確かにこの宇宙に存在する技術には興味があるが……」
「お前がそうやって興味を持つのはヤバイことが起きる前兆なんだよ」
零にそう言われたものの、よくわからない、といった顔の剣也が、ダンに視線をやる。ダンは目をそらした。
「剣也さんってなんかあるのか?」
翔悟が尋ねると、零は頷く。
「なんていうか……クールなレナード?」
あの研究者についての話を、零は翔悟から沢山聞いていた。側でそれを聞いていたアントニオが吹き出す。
「それは、なんと言うか……」
タイロンは言葉を探すが、見つからない。彼も、レナードが今まで積み重ねてきたことを知っている。
「ぼく、そのレナードってのがどんな人かは知らないけど、もう剣也の実験台にはなりたくないよぉ……」
「何を言っているんだ巡、俺はまだ何もしていないぞ」
「今はまだ、ね!」
「落ち着け、巡 何言ってもこの人はどうにもならんさ」
ぽん、とダンが涙目の巡の肩を叩いた。
ふと、剣也が外に視線をやった。
「どうかしました?」
ギルバートが尋ねるが、彼は答えない。
それから数秒して、呟く。
「……来るぞ」
その瞬間、ボーンカードが一斉に光りだす。
「うっそだろ!?なんでわかったんだよ剣也さん!」
「勘だ!」
ギョッとする翔悟に、剣也はドヤ顔で答える。
ルークが慌てて車を止めた。するとまたも剣也が口を開く。
「何人か……5人位は残って欲しい こちらに戻ってきて、相手に適合者がいるようなら確保してほしいからな」
言われた8人は顔を見合わせる。
じゃんけんぽん!
残ることになったのは、ルーク、タイロン、アントニオ、零だった。
ルークが剣也にアミュレットを手渡す。
「何かあったら迷わず呼んでくれ」
「そうさせてもらう」
ドラゴンとレオの前には、見たことのない2体のボーンがいる。
「えっと……巡と、剣也さん、だよな」
尋ねるドラゴンに、2人は頷いた。
「ぼくが巡 オセロットボーンだよ」
「スワローボーン、剣也だ」
それから、現れた3体のダークボーンを視界に捉える。
「どうやら見た感じ、普通のボーンのようだが……」
言いながら、スワローがふわりと舞い上がった。風属性らしく、重力にとらわれずに空中を移動する。
ふとオセロットと敵のうち1人の目が合った。相手はフッと笑った。
「……イツノマニ、増エテイタンダ?」
なんのことだ と聞き返そうとして、目の前に敵が迫っていることに気が付いた。慌てて飛び退く。ネコ科の動物をモチーフに作られた彼のボーンは、中身に衝撃を与えずに床に降りた。
「びっくりした!」
オセロットがついさっきまでいた場所に、敵はいる。上空のスワローはそれを数秒の間観察し、首を傾げた。
「……特に変わったところのない、普通のボーンだな」
それから、そう言って背に畳まれていた翼を広げた。その縁は鋭く光っている。滑空する。目標は、先程オセロットに迫った敵。
ガキンと音がして、背を向けていた相手に右翼がぶつかる。そこを支点としてクルリと回ったスワローは、再び上へ昇った。よろめいた敵に、レオが追撃する。
「はあ!」
「グ、フ」
相手が数歩後ずさる。その懐にオセロットが入り込んだ。
「さっきのお返し!」
バイザーの中でいたずらっぽく笑って、手の甲に着いた爪での攻撃を相手のボディパーツに叩き込んだ。
ドラゴンはダークボーンと向き合っていた。お互い様子見が続いている。と、ドラゴンの視界に、敵を追い詰めるレオとオセロットの姿が映った。
「オレも急がなきゃ」
呟いて、飛び出す。繰り出した蹴りは読まれていたらしく、体を落とした相手にそれは避けられた。しかし、その体勢をバネに前に出ようとする敵の動きを、ドラゴンもまた読んでいた。後ろではなく、横に跳ぶ。
「ホォ」
少し驚いたように、敵は声を漏らした。そのヘッドパーツに拳を打ち込もうとするが、それは受け止められた。けれどドラゴンはニヤリと笑う。
「頼む、スワロー!」
「承知した」
上から聞こえた声にダークボーンがハッとしたときには、既にその翼が視界を埋めていた。
「む」
しかし、ダメージは与えたものの、まだボーンクッシュには届かないらしい。よろめきながら立ち上がった。そこに、オセロット達が相手をしていたボーンが合流する。
「スワロー、コクーンの残り時間は大丈夫ですか?」
「あと……3分と少しと言ったところか」
答えを聞いたレオは そうですか と頷いて、ダークボーンに向き合った。スワローが翼を畳みながら降りてくる。オセロットが腰を落として構え、翔悟は相手を見据える。相手も、もう力の出し惜しみはしないらしい。雰囲気が先程までとはまるで違った。
「情報ニナイボーンガイルトハネ」
「ヤルコトニ変ワリハナカロウ」
どこか機械音のような声を発する。けれど今はそれを気にしている暇はない。
だから、迷わず飛び出した。
オセロットとレオは、さっきまでドラゴンが相手していたダークボーンに殴りかかる。が、その相手はいきなり不自然に体を丸めた。困惑しつつもその腕は止めず、拳はうまくヒットした。しかし
「うわあ!?」
「これは……」
硬い。至極単純に、硬かった。殴りかかっているはずなのに、こちらのほうがダメージを受けている。上空から重力の助けを借りて蹴りを叩き込んだスワローの反応も同じようなものだった。
「背の側に装甲があるのか!」
それなら スワローにはもう、攻略法が頭にあった。
「ん?」
コクーンの外。待機していたルークが、ふと気がついた。剣也が開発したコクーン内に持ち込めるデバイスから、連絡が来ている。
「“ルークだけ来てくれ”……ああ、水属性が必要なのか」
「ルーク?」
「呼ばれた 行ってくる」
アントニオに必要最低限のセリフを残し、ルークの姿はコクーンの中に消えた。
コクーンに現れたシャークに、ドラゴンは驚きを隠せない。
「え、なんで」
「呼ばれた」
それだけを答える。その隣にスワローがやってきた。
「……剣也か?」
「ああ 今はスワローと呼んでくれ」
頷いて、自分のするべきことを探す。と、スワローが
「あいつが硬くてな まるで歯が立たない」
そう言って飛び立った。ルークは周りを見渡して、丸まった格好のボーンを見つける。
「あいつのことか」
そう言って彼は、床の下に潜った。
それをドラゴンはぽかんと眺めて、自分がするべきことを思い出す。何を思っているのか、残るもう一体はドラゴンどころか、ボーンを見ていない。
チャンスだ。
一度の跳躍で眼前に迫り、拳を振り抜く。慌てて相手はそれを躱した。
「アア、危ナカッタ」
本気で安堵しているようだ。
「何してたんだよ」
流石に気になってしまって、ドラゴンは尋ねる。
「イヤナニ、目的ノ者ガイナカッタダケサ」
「目的の者?」
「君ガ知ル必要ハナイナ」
(これ以上聞いても教えちゃくれないか)
本当はこれで済ませたくはないのだけれど そう思いながらも、ドラゴンは戦う体制を整えた。
そう離れていない距離から、膝蹴り。ダークボーンは難なくそれを避けた。ドラゴンは相手を通り過ぎて着地する。ダークボーンは次は自分の番だとでも言わんばかりに腕に力を込めた。けれど
「させるか!」
相手が本気を出す前に。そのヘッドパーツに、ドラゴンの後ろ回し蹴りが命中した。予期していなかった攻撃に、バランスを崩す。勝負は決まった。
「炎竜拳!!」
反撃の隙などは、与えない。
「フフ、俺は要らなかったか」
その上空で、スワローが羽を畳んだ。
(ドラゴンが一体、仕留めたようだな)
水中のような空間。コクーンのエリア外にある、いわば地下。シャークはそこで、狙うべき相手の影を探した。水面は揺らめかない。故に上の様子がはっきりとわかる。敵は、すぐに見つかった。丸まり、レオたちの攻撃をほぼ無傷でやり過ごす、そのダークボーン。その真下から飛び出した。
「はっ!!」
「ヌウッ!?」
狼狽えるダークボーンを見て、スワローは一人頷く。
「わざわざ体を丸める理由を考えれば、体の前面の装甲はさほど硬くないはず 思ったとおりだ」
シャークは再び潜る。これでダークボーンは迂闊に丸まれなくなった。必死に思考しながら、ダークボーンは起き上がる。が、その上から何やら攻撃が降ってきた。ドラゴンによるかかと落としだ。
「ドラゴン、そっちは片付いたんですか」
「おう」
尋ねるレオに頷く。
「そっか じゃあぼくも、頑張らないと、ね!」
前に倒れ込みそうになる敵を、オセロットが蹴り上げる。宙に飛ばされれば、スワローの翼で撃ち落とされ、シャークの追撃。レオ、ドラゴンの打撃がそこに繰り出されれば、もう、相手に為す術はなかった
「あ」
声を上げたのは零だ。
いきなり目の前に、見知らぬ人が2人、現れた。
「……適合者?」
「……でしょうね」
ほんの少しの間沈黙して、
「確保おおおお!」
零が走り出す。が
「っとお!?」
消えた。文字通りに、その場から。
「どういう、ことだ……?」
「わりぃ、剣也 うまくいかなかった」
「気にするな まさか消えるとは夢にも思わん」
すぐに、コクーンから仲間か達が帰ってきた。情報交換を行う。
「あのさ」
そう言って手を上げたのは翔悟だ。剣也が視線で続きを促した。
「あいつら、誰かを探しているみたいだった 目的の者がどうのこうのって」
「……そう言えば、情報にないボーンがいる、とかも言ってましたね」
翔悟に続けてギルバートが言う。
「なんか、声が機械みたいだったね なんでだろ」
巡が不思議そうに首を傾げた。
「わからないことだらけだな これから研究所に着くまで何もないといいが」
報告用だろうか、メモをとっていたルークの呟きに、アントニオが フラグ立てるなよルーク と言って笑っていた。
倒されたのは、エレファントボーンとアルマジロボーンです ぶっちゃけモブです
Z「本日もボーン紹介のを始めるでございます!
まずは、オセロットボーン これは耀巡が使うボーンでございますね 火属性のボーンで、手の甲に長い爪という武器があるのです さらに、コクーンの中に浮いている、菱形の物体の側面に立つことができるのだそうです!どういう状態の格好になるのかすごく気になりますなあ……
続いてスワローボーン 燕がモチーフになったとしている、科野剣也のボーンでございます 風属性のボーンで、背中の翼が武器になっているんだとか!コクーンの中を自在に飛んで周り、悪いやつにさっそうと攻撃!すごく強そうですな 零師匠とどっちが強いんだろう」