「随分と大変なことになったな傷無」
「....兄ちゃん、他人事みたいに言わないでくれ」
俺と傷無は今、姉貴の仕事部屋にいた。何故ここにいるかというと、総会が終わった後、
ハロに伝言を頼んでここに来るように言われたからだ。
「ていうか、兄ちゃんは姉ちゃんが総司令ってこと知ってたか?」
「ん? あぁ。一応姉貴が何の仕事をしているかも大体知ってる」
「そ、そうだったのかよ。何で教えてくれなかったんだ?」
「....姉貴から口止めされてたからな」
そう話していると、姉貴が部屋に入ってきた。
「すまない二人とも。会議が長引いてしまってな」
「別にそこまで待ってねぇよ」
「それで、俺達に何か用なのか?」
「あぁ。お前達に渡しておく物があってな」
そう言って、姉貴は俺達にスマホの形をした通信機のような物を渡してきた。
「これは?」
「アタラクシア専用の生徒手帳も兼ねた通信用端末だ。まぁ色々なものをその端末で
全て管理できるぞ」
「説明雑....」
姉貴の説明の雑さに俺はそう呟いた。
「まぁ細かい事は気にするな。それと、お前達二人の端末にある
立ち上げてみろ」
そう言われ、俺達はそのアプリを立ち上げた。すると、そこには
身長やら体重やらがこと細かに書かれていた。
「おい姉貴....思いっきり個人情報じゃねぇか」
「だからお前達しか見る事は出来ないのだ。基本的な生体情報やら位置情報を常に
リアルタイムでモニターしている。ハイブリット・カウントというのを押してみろ」
そう言われ、俺はそこの部分を押した。すると、三機のハート・ハイブリッド・ギアの
エネルギー残量が見る事ができた。
「そこに書かれているのが三人のエネルギー残量だ。傷無はイエローゾーンに入る前に
接続改装を、真はエネルギー残量が少なくなった者の援護をしてやってくれ」
「....はぁ、了解」
すると、傷無が頭を押さえながら叫んだ。
「ちょっと待ってくれよ! もう色々と何が何だかわかんねぇよ! 姉ちゃん! もうちょっと
俺にも分かるように説明してくれ!」
「....わかった。明日にでもしっかりと説明をしよう。だから今日はゆっくりと休め」
「わ、わかった....」
傷無は渋々といった表情だが納得した。
「さ、傷無は部屋に戻れ。真は少し話がある」
「俺にか?」
「あぁ」
「わかった。傷無、お前は先に帰っとけ。多分長くなりそうだ」
「わ、わかった....」
傷無はそう言って部屋から出ていった。
「....で、俺に話って?」
傷無が部屋から出て行ったのを確認すると、俺は姉貴にそう聞いた。
「実はさっき、姫川がお前に謝罪したがっていてな」
「姫川って....」
「
ネロスの所有者だ」
「あぁ....さっきのか」
俺はさっきの戦闘を思い出しながら天地穹女神のアプリを開いてその少女のデータを
開いた。そして、俺はデータを見ていると一つ気づいた事があった。
「風紀、委員....」
俺は自分で気づいていないうちにそう呟いていた。そして、俺は彼女の写真を
ジッと見ていた。
「真、どうかしたのか?」
「っ、な、何がだ?」
「....いや、固まったように画面を見ているが、何かあったのか?」
「別に何でもねぇよ....話は終わりか?」
俺はぶっきらぼうにそう答えた。
「....あぁ」
「そうか....じゃあ俺は部屋に戻る」
「....そうか。今日はご苦労だった」
姉貴の言葉を背中に受けて、俺はフードを被って自分の部屋に向かった。
〜〜〜〜
「きゃっ!」
「っ!」
もう少しで部屋に着きそうだったその時、曲がり角で俺は一人の少女とぶつかった。
「すまん、大丈夫....!」
俺はその少女に手を差し出した瞬間、身体が固まった。何故なら、ぶつかったのは先程俺を
攻撃してきた少女、姫川 ハユルだったからだ。
「は、はい。こちらこそすみませ....!」
姫川も姫川でぶつかったのが俺だという事に気付いて驚いていた。
「ひ、飛騨 真さん....」
「姫川 ハユル....」
俺達はしばらくお互いの顔を見て固まっていた。そして少し経つと....
「....とにかく、立ったらどうだ?」
「は、はい。ありがとうございます....」
俺の言葉に姫川は答え、俺の手を握って立ち上がった。
「....悪かった。少し考え事をしながら歩いていた。次からは気をつける」
俺はそう言ってこの場から急いで離れようとしたのだが....
「ま、待ってください!」
俺の腕は姫川に掴まれた。
「っ!」
「あの、先程は味方とは知らずに攻撃してしまい、本当に申し訳ありませんでした!」
姫川はそう言って俺に頭を下げてきた。
「....別に謝罪はいらねぇよ」
「で、ですが! それでは納得できません! 私の勘違いであなたにはとんでもない事を....」
「っ!」
そう言っている時の姫川の目を見て、俺は昔の事がフラッシュバックした。
「(コイツの目、何でここまで似てるんだ....)」
そして、俺の頭の中には一人の少女の姿が浮かび上がり、俺は頭を押さえた。
「あ、あの、大丈夫ですか....?」
姫川は急に頭を押さえた俺に心配そうに聞いてきた。
「....少し疲れているだけだ」
「で、でしたら部屋まで送りましょうか?」
「....大丈夫だ」
俺はそう言って逃げるようにしてその場から立ち去った。そして、部屋に戻ると
俺はベッドの上に寝転がった。
「クッソ....何で、何であんなにアイツと似てるんだよ....」
俺はそう呟きながら目を腕で覆った。
〜〜〜〜
姫川side
「さっきのは一体....」
私は飛騨さんが去っていった方を見ながらある事を考えていた。それは、さっき私が
謝罪している時に飛騨さんがしていた表情の事だった。あの時、飛騨さんは驚いた表情を
しながらも、どこか悲しそうな表情をしていた。
「(どうして、あんなに悲しそうな目を....)」
飛騨さんは、ものすごく悲しそうな目をして逃げるように立ち去ってしまった。
「(もしかしたら、総司令の言っていた心の傷というのが関係を....)」
私は総司令が総会で言っていた事を思い出した。
「(何か、私にできることはないのでしょうか....せっかくこの学園に
転入されたなら、学園での生活を少しでも楽しんで欲しいのですが....)」
私は一人、そう考えながらこの場所から離れた。