転生者はテリウス大陸へと:蒼炎の軌跡外伝!!! ライバルはアイク!?   作:幸福野郎

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大海を知る時

「ほう? 大変美しい女とな?」

「はい。領主さまの好みに合うかと」

「ほほほ、それはそれは……」

 

「あのオリヴァー殿の後継者……このドリー! 見過ごすわけにはいかんな!!」

 

◆肥満体の男性の笑い声が、綺麗な飾り物が多い部屋に響く◆

◆ドリーと名乗る男の左掌が、一瞬だけ強い光を放った◆

 

「……むむ、今のはっ」

「どうした?」

「恋のライバルの予感……!!」

「ああ、そうか。よかったな」

「よくねぇよ! くそ! なんてこった!」

 

 人気のあまりない通りを歩くガーネフ一行。

 昼なのにどうにも活気のない町並みに、サザは顔を曇らせた。

 デインに来てからそれなりの時が経ち、彼等はようやくミカヤの足取りを掴むことが出来た。

 

「この町にミカヤがいる……」

「ふふふ、これは結婚までのカウントダウンが間近だなっ」

「それに金がこんなに……はは、ついてるなぁ」

 

 道中なんやかんやあって、大量の金銭を獲得することに成功した彼等。

 これによって当分は滞在費に困らない。

 時々マカロフが金をちょろまかそうとするため、サザとガーネフで分担して金を管理している。

 

「で、アシュナード君は……」

 

「我は目ぼしい強者を探してくる。……前に言ったこと、忘れるなよ?」

 

「相変わらずやねんな」

 

 アシュナードを除いた三人は、ミカヤの情報を求めて町を練り歩いていた。

 そして彼女の目撃情報に辿り着くまでわりと早かった。

 数日前にミカヤらしき女性を見たという成人男性の証言。

 

「だが、彼女は……」

「なんだ? ミカヤがどうしたって言うんだ!?」

「……」

 

 言いにくそうにしていた男性は、その口を開いた。

 どうやらミカヤは町で横暴な態度をとっていたベグニオンの兵を止めようとして、捕まってしまったらしい。

 さらに行き先は……。

 

「領主ドリーの館……?」

 

 この町を治めている領主ドリー。

 大変美しいものが好きな貴族で、そういった品物や動物を見つけては、横暴に奪っていくという。

 当然評判は悪く、さらにはベグニオンの兵ともよからぬ取引をしているとかなんとか、絵に描いたような悪の貴族である。

 

「そんな奴に……!?」

「こ、これはいかん! ミカヤちゃんの危機!!」

「あちゃー、なんていうか……どこにでも腐った権力者っていうのはいるもんだな」

 

 ガーネフとサザは焦り、マカロフは飄々と受け流す。

 彼等の次の目的地は決まったようなものだ。

 

「よし! その館に――」

 

「おっと待ちな。そこの奴等」

「は?」

 

「見ない顔だな……ちょっと、おれ様たちに付いてきてもらおうか」

 

 ガーネフたちに声を掛けたのは、ベグニオンの鎧を着た、長身で青い髪の男性。

 腰に携えた剣を抜き、完全な戦闘態勢で彼等を睨む。

 

 

 

「……は、ぐ」

「はは、弱すぎんだろ。こいつ!」

 

 ガーネフは地に伏せていた。

 持っていた槍はまるでベグニオン兵に通じず、ただ無駄に空回るのみである。

 マカロフとサザも片膝を突いていて、もうすでに体力は少なくなっていた。

 

「そっちの剣士とナイフ小僧のボスじゃないのかよ! 一番弱いじゃないかよ! ははは!!」

「さすがはロンさん、やるー!」

「はは、まあ、おれ様にかかればこんなもんよ。……あの狂王もおれ様が始末したかったんだが、残念……アイクってやつに決闘を挑むのもいいかもなぁ!」

 

 三人を倒したロンと言うベグニオン兵は、高笑いを上げながらガーネフを見下す。

 町民達はその光景を見て見ぬふりで流した。

 この程度のことなど日常なのだろう。

 

「さて、しかし歯向かった罪は重いぜ。このけじめはボスのお前にとってもらわないとな!」

「!?」

「ここで首を刎ね飛ばす!」

 

 ロンは剣を振り上げ、ガーネフの首を狙い定める。

 いきなり処刑されそうになっていることに混乱するガーネフは、恐怖で震えて動けない。

 

(そんなまさか……嘘だろ。ここで死ぬ!?)

 

 ベグニオン兵の好き勝手ぶりなら、いくらでもプレイヤーとして見てきたので、死を実感してしまう。

 サザとマカロフも助けには入れず、アシュナードの気配もない。

 当然ちんけな呪いなんて効きはしない。

 

(完全に詰んだ……)

 

 どうしようか悩んでいる間にもロンの剣が迫る。

 命乞いしようと思った時には、時既に遅く――。

 

「うわあぁああ!!」

 

◆衝撃がガーネフの体を走り抜けた◆

 

「あ?」

 

◆それだけで、痛みは皆無に等しい◆

 

「こ、ここはっ」

 

 見渡すとそこは木々の中。

 そして聞いたことのある女性の声。

 

「大将! 大丈夫!?」

「あ、主ちゃん……」

 

 迷いの森の中だ。

 なぜかデインの町から一瞬でここに移動したらしい。

 この不可解な現象については、森の主から説明がなされた。

 

「実はさ、森から出る前にビンタしたアレ、ワープのマーキングみたいなものなんだよね」

「!」

「逃げたいと思った時に、ここに戻ってこれる魔法なんだ」

「なんと……」

「そんなことより何があったの? 話してみてよ、大将」

「ううぅ」

 

 涙を流しながら、デインの町で起きたことを話す。

 正直めちゃくちゃ怖かったので、歯ががちがち鳴りまくっていたら、森の主にうるさいと注意された。

 

「大変、早くみんなを助けにいかなきゃ!」

「無理だ」

「え、なんて?」

「だから……無理、無理、無理」

 

 完全に絶望した声で語るガーネフ。

 ぶつぶつと呟く姿にはいつもの調子に乗った、いきりまくった彼の元気さがない。

 

「もう俺、ここに引き籠る……」 

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