超次元ゲイムネプテューヌmk2 ~黒球に転生した者~ 作:legends
「こんにちはー……あ、人がいる。あの、あなたが箱崎チカさんですか?」
「……」
俺達は難なくリーンボックスの教会に着いて中に入り、長い緑色の髪の女性が後ろを向いたままそこにいてネプギアが話しかけたのだが、反応なしだった。
「あのー、チカさん? じゃないんですか?」
ネプギアがもう一声かけるとその教祖は驚いたように後ろを振り向いた。
「え……? あ、あああ! そうです。わたしが箱崎チカです」
……何か声が上ずってるような……。
「ええと、あなたはネプギア……さん。だったかしら?」
「わあ、私のこと、知っててくれたんですね」
ネプギアは嬉しかったのか両手を合わせて笑顔になる。
「ぎくっ。い、いえ。それはその……」
「ギアちゃんに用事があるって言ってたですから、知ってて当然ですよー」
「あはは、それもそうですね」
「……用事?」
「はい、私に会いたいって言ってたっていーすんさんから聞きました」
……他の面子は怪しいって思っていないのか? 変な言動といい、教祖自身がネプギアに至急の用事だってイストワールを通して連絡をしたはずなのに分からないって……少しは疑おうよ。
「会いたい……あ、ああ、そうだったわね! うん。すごく会いたかったわ!」
ほら、テンパってるテンパってる。こういう事をしてる辺り、もう既に怪しい。
怪しさしかないが……ネプギアに何の用事があったのか一応聞いてみる。
「……で、どうして、ネプギアを呼び出したの?」
「えー、あー、それはその……えっとえっと……そう! モンスターを退治してほしいのです!」
「それだけの用で、わざわざネプギアを?」
アイエフがチカ? にキツめの口調で問う。
「うう、それは……ほら! この国には女神がいないから! モンスター退治も一苦労なの! だから、ベテラン女神候補生のネプギアさんに、ぜひ助けて頂こうかと!」
「や、やだ、ベテランなんて! 私なんて全然まだまだ未熟ですよ」
「そんなご謙遜を。まあそんなわけで、街の近郊の草原にいるモンスターを退治してきてほしいんですよ。大したモンスターではないですから、ネプギアさんなら楽勝ですよ。きっと」
「はい! 任せておいてください!」
ネプギアは随分と意気込んだ様子だった。
「ネプギア。こっちにも用事があるでしょ?」
「あ、そうでした。あの、私達リーンボックスにいるゲイムキャラの力を借りに来たんです。それで、ゲイムキャラの居場所とか知ってましたら……」
「あ、はいはい。戻ってきたら教えてあげますよ」
「わ。すごくあっさり」
日本一が驚く。ここまで言ってて気づかないのか?
「協力的な方ですねー」
いやいや、んな事言ってて気づかないのかー? コンパは。
「ありがとうございます! あ、でも。私がゲイムキャラを連れて行ったら、この国の加護が……」
「あー、別に大した事ないですよゲイムキャラの加護なんて。いくらでも持ってっちゃってください」
「……ンだと?」
この国の教祖なのにこんな感じで大丈夫かと思ってしまう。ゲイムキャラを連れて行くのだって少しは渋るはずだ。というかそもそも本当に教祖なのか疑わしいし。
なので俺は少しカチンとしてボソッと呟く。
「よかった、それなら安心です。それじゃ、急いでモンスターを退治してきますね!」
だが、ネプギアは浮かれてしまってて俺の呟きに耳を貸さなかったようだった。
「はーい。よろしくお願いしますねー」
そそくさとネプギア達が出ていく。チッ、非常に癪だが、ここは敢えて引っかかったふりをして出ていくか。問いだそうとしたけど。
俺は急いでネプギア達の後に続いた。
「ふう。急に来やがったから焦ったぜ……へへっ、バカが。この完璧な変装にまんまと騙されやがってよぉ……」
その者は教祖チカ、ではなく下っ端の声を発した偽物だった。
──☆──
「……ねえ、なんか怪しくない?」
教会から出てきてアイエフが開口一番に言ってきた。
「え? 何がですか?」
……気付いてなかったんかいネプギア。
「そいつは俺も同感だ。何せ、ゲイムキャラを連れて行くのだって難なく許可するし、加護も大した事ないって言ってたしな」
「それに態度も、全体的に胡散臭かったような……」
俺の意見にアイエフが考えを付け加えてくる。
「そうでしょうか……あまり人を疑うのはよくないと思うですけど」
コンパ……お前さんは優しすぎんだよ。
「がすとも、あの人にはなんだかウソっぽいけはいをかんじましたの」
余裕の感づきだ。次元が違いますよ。
「でも教祖様だよ? 教祖様が悪い人なはずないよ」
「私も気にし過ぎだと思いますけど……」
日本一とネプギアも疑いを持っていないためそう言える。
もっと真に受けていないでちゃんと確認しろよ……とは説教じみた言い方に聞こえるので声に出しては言わない。
「……まあ、注意だけはしておきましょう。真偽が分かるまでは、絶対油断しないようにね」
そう思いつつ、俺達は依頼されたモンスターを倒しに行くのだった。
──☆──
「いました! あれがチカさんの言ってたモンスターですよね?」
はい、という訳でモンスターのいるガペイン草原にやってきた俺達。その場所に着いてすぐモンスターが見つかった。
「うん! ……あれ? あのモンスター、結構強そうな気がするよ?」
確かにそれは分かる。他のモンスターとは違うような雰囲気を醸し出している……嵌められた?
「そんなはずないですよ。大した事ないってチカさん言ってましたし」
ネプギア……それは罠だってことを今思い知らされたんだが……するとネプギアが自信満々に胸を張った。
「よし、皆さんはここで待っててください! 私一人で倒してきちゃいますから!」
「あ、こら! 油断するなって言ったばかりでしょうが!」
「そうだぞ! お前はあいつにいい様にされて……行っちまった」
俺とアイエフの言葉に反応すらせず、ネプギアは一直線にモンスターのところに行ってしまった。
あの教祖ではない何者かに調子良く言われ、舞い上がってたんだろう。……全く、やれやれだぜ。
「さあ、覚悟してください! 今、私がやっつけちゃいますから! えいっ!」
ネプギアが自身のビームソードでモンスターを切る。
「……ぐあ?」
だが、意外にもかなり軟質なボディで、一瞬凹んだと思ったらそのまま形が元に戻り、剣が弾かれてしまった。
「あ、あれれ? おかしいな……今度は本気でいきますよ! とりゃっ!」
ネプギアは焦りと困惑を覚え、再びモンスターを切る。だがやはり同じような結果だった。
「ええええ? うそ? 全然、効いてない?」
「ぐああ……ぐあああああ!!」
攻撃が通っていなくて困惑しているネプギアに、敵と認識したモンスターが襲い掛かってきた。
「わ、わわ! ちょ、ちょっと待ってー!!」
モンスターがネプギアを襲いかかろうとした瞬間―――。
「……危ない」
―――と何者かが言ってモンスターの攻撃を自身の得物で防いだ。
「え……? あなたは……?」
「下がっていて。こいつは私が片付ける」
突然の乱入によって訳の分からないネプギアだったが、赤髪のツインテールの女性の言葉でネプギアが後ろに下がる。
そしてその女性がモンスターの方に向き直ると気合を溜め、剣で一閃し、そのままモンスターは消滅した。
「す、すごい。一撃で……」
「調子に乗って敵の前に立つとそういう目に遭う……覚えておいた方がいいわ」
「は、はい……」
ネプギアはシュンとする。
「ていっ!」
「あうっ!」
近くにやってきたシャドーに頭を叩かれた。本人は至って力をいれていないつもりだったが、びっくりして間の抜けた声を上げる。
「ったくお前ってやつは……」
そうシャドーが溜め息を吐くと、アイエフやコンパ達もやってくる。
「ギアちゃん! 大丈夫ですかー?」
「まったく! 何やってんのよ、アンタは!」
彼女達からも心配された。
「ご、ごめんなさい……あの、危ない所をこの人に助けてもらって……」
「見てたわよ。悪かったわね。うちの子が迷惑かけて」
「気にしなくていいわ。半分仕事のようなものだから。それよりも、あなた達は、何故この危険な草原にいるの?」
気にしない様子のその女性は、真剣な表情でシャドー達を見る。
「教祖様に頼まれたんだよ。大した事ないモンスターだから、倒してきてーって」
日本一が言うと、表情を曇らせつつも「そう」と言い言葉を続ける。
「チカに……チカの様子はどうだった? おかしなところはなかったかしら?」
「おかしいところだらけだったですの。きょどうふしんで、言ってることも変だったですの」
「そう……一体どうしてしまったというのかしら。チカは……」
女性は思考を巡らせる。
「ねえ。よかったらこの国のこと少し教えてもらえないかしら。私達、来たばっかりでいまいち状況が掴めないのよね」
「構わないわ。……そういえば、自己紹介もまだだったわね。私はケイブ。このリーンボックスの者よ」
「あ、私はネプギアです。よろしくお願いします」
ケイブという女性が軽く挨拶した後、ネプギアも続いて挨拶をする。彼女がネプギアの名前を聞いた途端、考え込む動作をする。
「ネプギア……? では、あなたがプラネテューヌの女神候補生?」
「は、はい。そうですけど……」
「あら、意外と情報通なのね」
「……あなた達が知りたいのは私の事ではなく、この国の事でしょう?」
ケイブは淡々と話し続ける。
「知っての通り、この国は三年前から女神不在の状況が続いているわ。それを機に、犯罪組織の活動が活発化し、犯罪神の信者は日々増える一方、国力は目に見えて落ちている……」
「女神が、いなくなってから……」
それを聞いたネプギアが暗い表情をする。
「そう悲観的になるなよ。ネプギア。着々と救出の道に進めてるんだから」
「カービィさん……ありがとうございます」
シャドーの励ましにより、暗い顔ではなくなった。
「……話を続けるわね。それでも、教祖であるチカを中心に、最低限の秩序は保たれていた……ほんの数日前まではね」
「数日前に、何があった?」
「犯罪神崇拝の規制が解除されたのよ。チカの一存でね。今この国では、誰もが自由に犯罪神を信仰できる」
「そんな! どうして教祖さんがそんな事をするです?」
「…………」
シャドーは、あのチカはやはり本物ではない上、犯罪組織の誰かがチカに化けている……と考えた。
「良い方に解釈すれば、秩序を乱してでも、国民の生活水準を上げようとした……と言えるわね。犯罪組織に身を投じれば、少なくても、日々の食事に困ることはなくなるから」
「じゃあ、悪い方だったら?」
「……乱心した、という言葉が適当かしら。この数日の間にチカに何が起きたか、正直私にも理解できないわ」
「ほんの数日前ってのがちょっと気になるな」
「今、話せるのはここまでね。あまり憶測で物を言うのは好きではないし」
「ありがとう。参考になったわ」
やっと堅苦しい話が終わったとシャドーが思った時。
「それとそこのあなた。一体何者? まさか犯罪組織の者……ではないようね。今、こうして彼女達と同行しているのだし」
シャドーに目を向けて真剣な顔で言い放つ。一瞬犯罪組織と一緒にされるかとドキッとしたが、ケイブが表情を緩ませたため、安堵する。
「……まあ、この体だしな。間違えられても仕方ないっちゃ、仕方ないが……」
「では何故、そんな体なのかしら?」
「まあ色々あってな……聞きたい気持ちは分かるが、悪いけど詳しくまでは話せないな」
「……余程やむを得ない事があったのかしら。分かった。これ以上聞かない事にするわ」
ケイブがシャドーに話し終えた後、一呼吸置く。
「では、これで失礼するわ。また会う事もあるかもしれないわね」
そう言ってケイブはこの場から立ち去った。
その後、彼らは本物ではないチカに不信感を抱きながらモンスター退治の報告をしに教会に戻る事にした。
感想が来ているかどうか確認するのが楽しみになってしまった今日この頃……。
没シーン
教会から出る直前、俺はチカ? にあるものを手渡す事にした。
「おいチカ」
「は……? あ、ああ、はい! どうされましたか? 何か忘れ物でも? チッまだいたのかよ黒チビ……」
「……ああ―――ホイっとな」
敢えて投げ渡した。
「わっとと!? な、何ですこれ?」
「護身用具のアイテムだ。とはいえ、衝撃を与えたり軽々しく投げたりすんなよ? 場合によっちゃ危険物になり得るんだから」
「危険物!? てかあなた投げましたよね?」
「気にすんな。それよりも、ソレ、何だと思う?」
彼女が手に持ってるのは赤と白を基調とし、まるでベーゴマのような形、そしててっぺんに"B"の文字が刻まれている物体。
「は? こんなの、知ってるワケが……」
愚かな奴め。この"B"の意味するものが分からんとは……!
「敵味方関係なく巻き込む爆発物(当社比)、スマートボム!」
「!!??」
この後彼女が仰天して落としたか、投げ捨てたか定かではない……。