<銀雪編>
21:00
銀雪·マミ「ごちそうさまでした」
晩御飯を食べ終え、俺は食器と片付けた後の事。
マミさんが、
マミ「銀雪さん、ティーポットとティーカップってあるかしら?」
と聞いてきた。
銀雪「はい、あまり使ってないので少し洗わないといけませんが、食器棚の中にありますよ」
マミ「ありがとう♪少し使わせていただくわ」
と言うと、マミさんはキッチンで何かを始める。
銀雪「(……何してるんだろ?)」
テーブルの椅子に腰掛けてマミさんを待つ。
──────
10分後
マミ「お待たせしたわね♪」
そう言う彼女が持つトレーの上には紅茶の入ったティーポットとティーカップが乗っていた。ちなみに紅茶だと分かるのはカップもポットも耐熱ガラス製で透明だからだ。結構丈夫である。
銀雪「紅茶ですか?」
マミ「ええ、私、紅茶がとても好きなの♪」
銀雪「……私も、好きですよ、紅茶」
マミ「あら、それは嬉しいわね♪」
ティーカップに紅茶を注ぐマミさんを、相当慣れていそうな手つきだと、俺は感心しながら見ていた。
マミ「はい♪」
銀雪「ありがとうございます」
俺はティーカップを受け取った。
銀雪「いただきます」
俺は紅茶を一口飲んでみる。そして驚愕した。
銀雪「これは…!何と言う美味しさですか……!」
そう、言葉に出来ない位美味しい紅茶だった。
落ち着いた気分にさせる香り、砂糖がいらないくらい苦みがしつこくない。
マミ「まあ、そこまで褒めてくれるの?♪これ、アールグレイって言う紅茶の中では基本的な茶葉なの♪」
銀雪「……アールグレイ」
その名前だけなら俺も聞いた事があった。しかしこんな味、アールグレイはおろか、他の高級な茶葉の紅茶でも味わう事の無さそうな味だった。
銀雪「…最高です」
俺は一瞬でこの味の虜となった。
マミ「……ねえ銀雪さん」
マミさんがさっきまでとは話し方を変えて話し掛けてくる。
銀雪「はい?」
紅茶を飲み終えた俺はティーカップをテーブルに置く。
マミ「さっきご飯を作っている時の話なのだけど……」
銀雪「ご飯を作っている時……あっ」
俺は自分の赤い親指を見た。
マミ「その…聞きそびれてしまったものだから……」
銀雪「……まだですよ」
マミ「…え?」
銀雪「杏子とは…まだしてません」
マミ「そうなのね……」
マミさんは少し黙り込んで顔を下に向けた。
そして、少し覚悟したような目のする顔をあげて
マミ「銀雪さん、少し目を瞑ってくれないかしら?」
銀雪「え?は、はい」
俺は椅子に座ったまま言われるままに目を瞑る。
銀雪「(何をされるのだろうか……?)」
そんな不安と心配でいっぱいになりそうだった。
しかし次の瞬間、それらは全て消え去ってしまった。
マミ「…ん///」
……チュッ
銀雪「(……!?!??!!?)」
唇に何か柔らかい感触が伝わる。それと共に、さっきまで飲んでいた紅茶と同じ味がする。
目を瞑っている以上、確かめる事は出来ない。しかし、俺は今にも心臓が爆発しそうなくらいドキドキしている。
約1分近くに及んだ後、唇から感触が離れる。
マミ「…良いわよ///」
目を開くと、その目には顔を真っ赤にさせたマミさんが映った。
マミ「貴方も私も、お互い初めてね///」
銀雪「……マミさん///どうして…?///」
2人して顔を真っ赤にしていた。
マミ「……練習よ///」
銀雪「練習?///」
マミ「いつか…銀雪さんが佐倉さんとする時の為のね…///」
銀雪「私が…杏子と……?」
マミ「ええ…」
──────
23:00
-銀雪の部屋-
その夜はとても眠れなかった。夢なのかと思って頬をつねってみても痛かったので、あれは現実だったのだ。
銀雪「(マミさん、相当本気の様な顔をしていた……あれは本当に練習だったのだろうか?)」
唇に残る感触は、いつまでも消える事は無かった。
こうして、17年間封印されたままだった少年の“初めて”は遂に奪われたのだった。
-第4話- 初めては紅茶の味? 終
皆さんは紅茶は好きですか?
私は紅茶が大好きです。