<銀雪編>
《魔女の結界》
銀雪「やあっ!」
目の前にいる魔女の手下を剣で斬りつける。
杏子「喰らいな!」
後ろで杏子が魔女の手下を串刺しにする。
俺達は今、背中合わせで戦っている。周りには魔女の手下がいっぱいだ。少しも気を抜けない。
キュゥべえ「このままじゃキリが無いよ!」
俺の肩に乗っているキュゥべえがそう言う。
銀雪「ああ、そうだな。こいつら一体ずつは雑魚いが、数がやたらと多くて面倒だな。」
まるでデパートの大売り出しにいる客だ。
杏子「どうするんだ兄貴?こいつらしつこいぞ。」
銀雪「何か一気に倒す方法は無いものか………。」
多数を攻撃する手段は俺達にはあまりない。策を考えようと俺は辺りを見回す。すると一際小高い足場を見つける。
銀雪「あそこからなら………。杏子、あそこへ行く為に道を作るぞ!」
杏子「ん?ああ、分かった!」
俺と杏子は同時に攻撃をして、足場へ続く道の手下を一掃した。
銀雪「今だ!」
俺と杏子は足場を目指して走り出した。
不思議な事に、何故か2人とも“手を繋いで”いて”………。
──────
<杏子編>
あたしは兄貴に言われた通りに、足場へ向かう道を作り、一緒に走った。その時、兄貴があたしに向けて手をのばしていた。そして、それをあたしは握った。
そう、“手を繋いで”いたのだ。
あたしにもどうしてそうしたのかは分からない。況してや、どうして兄貴が手をのばしたのかも分からない。心配だったのだろうか?考えても答えは出なかった。
そうしていると、足場に辿り着いた。
銀雪「良いか。今からあいつらを全員凍らすから、杏子はあいつらを一撃で全滅させてくれ」
杏子「ああ、任せな!」
あたしは攻撃準備に備える。兄貴は手に魔力を収束し始める。兄貴の手には、青い光が球体のように集まっていった。
銀雪「いくぞ!杏子!」
兄貴は青い光球を地面の手下に投げつけた。
すると、手下達が全て氷漬けにされ、全く動かなくなった。
銀雪「今だ杏子!」
杏子「喰らえーーー!!」
あたしは足場から飛び降り、その力で槍を思い切り地面に突き刺した。その衝撃で氷が割れ、手下達は粉々に砕け散り、全滅した。
兄貴も飛び降りて来て合流する。
銀雪「流石だな、杏子」
杏子「まだまだこんなの軽いさ」
あたし達は結界の更に奥へと足を進めた……。
──────
<銀雪編>
杏子と大量の手下を始末してから少し経った頃、俺達は結界の深部へ進んでいた。さっきの時の数がおおすぎたのか、今は敵は全然現れなくなった。
杏子「なあ兄貴」
銀雪「ん?」
杏子が突然口を開いた。
杏子「兄貴はあたしと会う前はどんな感じだったんだ?」
銀雪「いきなりどうした?」
杏子「いや…、何と無く気になっただけだ……」
本当に唐突な質問だった。それに、杏子の声に何か“悲しさ”を感じた。
銀雪「……俺の人生談なんてつまんないもんだぜ」
俺はただそれだけを言った。
杏子「…兄貴……」
銀雪「お前はどうなんだ?」
杏子「………。」
杏子はしばらく黙り込んだ。きっと何か言いたくない事があるのだろうと俺は考えた。
杏子「……兄貴と…同じかもな………」
銀雪「そうか…悪いな……」
杏子「いや、大丈夫だ……」
そんな会話をしていると、一際広い空間に出た。
そして、何か大きな音が聞こえる。
銀雪「いよいよおでましの様だな。」
杏子「ああ、この前みたいなヘマはしないさ!」
空間の反対側から魔女が現れた。
キュゥべえ「銀雪、杏子!生命反応はこの空間からあるよ!」
銀雪「本当か!?」
杏子「よし!だったらこいつをとっとと片付けるか!兄貴、あんたは親子を探してくれ!」
銀雪「ああ、お前こそ、あんな奴にやりたりするなよ?」
杏子「勿論だぜ!」
親子を守るには防御も出来る俺の魔法の方が、魔女を倒すのは攻撃に適した杏子の魔法が良いのは2人共分かっている。
銀雪「親子は…どこにいるんだ?」
俺は魔力を使って生命反応を探る。魔法少女同士なら魔力で分かりやすいが、通常の人間を探るのは簡単ではない。心で生命の光を探るしか無いのだ。
ふと、心の中に何か2つの光が見えた。
銀雪「これが……?」
──────
<杏子編>
兄貴と別行動を始めたあたしは、魔女を前に戦闘態勢に入る。 魔女は見た目からして、力は強いが、その分素早さがあまり良くない様だ。
杏子「だったら……」
あたしは両手を前に組み、祈る様なポーズをとった。
杏子「……必殺!」
そう言うと続けて
杏子「ロッソ・ファンタズマ!!」
あたしはそう叫んだ。すると、あたしの周りに沢山のあたしが現れた。この技は、13人のあたしの幻影を作り出して敵を混乱させたり、一斉に攻撃して大ダメージを与える事も出来るとっておきの技だ。
杏子「今日は速攻で片付けてやるぜ!」
あたしは幻影の内の6人を連れて魔女に突っ込んでいく。後の7人は後ろで待機させる。
杏子「やあっ!」
幻影と6方向から魔女に攻撃する。1~2人の幻影は攻撃を受けてしまったが、それでも残りの幻影とあたしの攻撃でのダメージは大きい。魔女は大きく怯んだ。
今の内にあたし達は後方へ下がり、待機していた幻影と交代する。そう、要するにループだ。簡単に言えば、“長篠の戦いの信長鉄砲隊”だ。こうすれば隙もほぼ無く被害も抑えられる。
これを繰り返している内に魔女は反撃の余地も無くかなり弱っていった。
杏子「これで…」
あたしは幻影を円状にして魔女を囲む。
杏子「トドメだぁーーー!!」
──────
<銀雪編>
遂に見つけた。ニュースで見た行方不明の親子だった。
幸い怪我も無く無事だった。
銀雪「大丈夫ですか?」
親子(母)「え、ええ……あの…ここは……?」
銀雪「大丈夫です。私達が今助けますので。」
親子(娘)「私達、助かるの……?」
娘の方は今にも泣きそうだった。まだ7歳くらいだろうか、こんな状況なら誰だって恐いだろうと俺は思った。
銀雪「勿論だよ。お兄ちゃん達に任せてね。」
娘を安心させる為に俺はそう言った。
銀雪「2人共、私の傍から離れないで下さいね。」
親子(母)(娘)「はい(うん)。」
もしかしたら魔女の手下がまだいるかもしれないと踏んだ俺は、2人を守る為に警戒した。
すると、何かが見えた。紅い影が、それも沢山の。
そして、
「ドゴォォォン!!」
と大きな爆発音がした。
場所的に杏子と魔女がいた場所だ。きっと決着がついたのだろう。その時の俺には、何故か不安は無かった。
「勝ったのは杏子だ」
と、確信したのだ。
そして、それは現実のものとなった。
こちらに歩いてくる紅い影、そう、“佐倉杏子”だ。
彼女は魔女に勝ったのだ。
杏子「……楽勝だったぜ。」
杏子は余裕の笑みでそう言う。グリーフシードを見せながら。
銀雪「こっちもな。」
俺も笑って返す。後ろでは親子が安心していた。
魔女の結界が消え、俺達は現実世界へと戻った。誰も怪我する事無く。
親子(母)「助けて頂いてありがとうございました!!」
母は礼儀正しくお礼をした。
親子(娘)「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう!」
娘も元気にそう言った。
親子(母)「このお礼はいつか……」
銀雪「いえいえ、お礼なんて結構ですよ。」
杏子「そうだぜ、これがあたし達の使命だからな。それと、この事は内緒で頼むぜ。」
母はそう言われて少し戸惑ったが、
親子(母)「では、せめてお名前だけでも……」
俺と杏子は顔を見合わせ、
銀雪「私は桜銀雪」
杏子「あたしは佐倉杏子」
銀雪·杏子「魔法少年(少女だ)です」
親子は一瞬ぽけーっとしたが、
親子(娘)「……カッコイイーーー!!」
娘は目をきらきらさせていた。母も引いた様子は無く、微笑んでいた。
少し会話をしたのち、
親子(母)「では、そろそろ時間が遅くなるので……」
銀雪「そうですね、では、お気を付けて」
杏子「お前もだぞ~」
杏子は娘にそう言っていた。
親子(母)「本当にありがとうございました。銀雪さん、杏子さん」
親子(娘)「ばいばーい!」
俺達は親子と別れた。そして、俺達も帰り道につく。
-第7話- 少年少女と事件(Ⅱ) 終
すみません、悩んだ挙げ句魔女ネタが浮かばなくて説明がありません………。
尚「ロッソ・ファンタズマ」については、「12人の幻影+杏子」なのか、「13人の幻影+杏子」なのか、私もはっきりと知らない為、この作品では後者の「計14人」で攻撃する魔法として登場させます。