ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~   作:羊merry羊

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13.迫り来るプリズミック

 ハルタの冗談とも本気とも取れる言動に大騒ぎしたカケル達だったが、現在は落ち着きを取り戻して線路の上に降りて各自調査を再開していた。

 

「ハルタさんが見つけた痕跡ってどんなものだったんですか?」

 

 ソラからの問いかけに面倒くさそうな顔をするハルタだったが、それでもキチンと説明はしてくれた。

 

「普通の電車なら線路の上を走るから、普通と違った点ってもの自体がねえんだよ。全部が同じ場所走んだ、当たり前だ。だが俺が見つけたのはその線路の横に沿って(はし)った何かの跡だ。それも100メートルはあった長えのがな」

「それってやっぱりプリズミックがそこを走ったってことなんですかね?」

「恐らくはな。線路じゃねえ所を走ってるなら電車乗ってる奴らも窓から見えるのも頷けるってっこった」

「「おお──!」」

 

 ハルタの推理に感心した様子の二人。

 

 

「ハルタさんって見た目によらず頭いいんですね」

「見た目によらずは余計だゴラァ!」

 

 強面(こわもて)な割に中身は意外と面倒見がいいハルタに、すっかり慣れた様子の二人は冗談も言えるほど打ちとけたようである。

 

「ちなみにその線って最終的には途切れたりしてたんですか?」

「そうだな。線路に近い所から始まって、最後はぷっつりと消えちまってた。勿論その周りは良く調べてみたが、特になんも見つからねえからその先調べてたらお前らとカチ合ったって感じだな」

「どういうことですかね?まさか銀河に向かってスリーナインした訳でも無いでしょうし」

 

 三人であれこれ考察をしながら探ってはいたものの、これといって進展もない。そんな時、あることに気が付いたカケルは口を開いた。

 

「ルイカ先輩、さっきから難しそうな顔してやけに静かですけどお昼ごはんでも食べ過ぎました?」

「カケルデリカシー無い!女の人にそんなこと言ったらダメなんだよ!例え食べすぎによる腹痛でも」

「失礼な!食事の調節位普通にしてるよ!私だって乙女なんだからね?いやそうじゃなくて、ハルタさんの言ったことやその他を諸々考えてたらさ、もしかして逆なんじゃって思って」

「逆ってどういうこと?」

 

 問いかけられた疑問に答えるべく、顔の横に人差し指を添えて首を(かし)げるルイカ。

 

「ドラマとかでも前後関係とかが食い違ってて真実と違う見え方がするってパターンがあったりするじゃない?そんな感じで私なりに逆の考え方をしてみたんだけどさ」

 

 ふんふんと相槌を打ちつつ続きを促すと、予想だにしない事を告げられる。

 

「ハルタさんが見たっていう消えた跡があった場所だけどね?あそこが終着点じゃなくて出発点なら?」

「「出発点?」」

「最初の『線路から近いところから始まった』をひっくり返すと『線路に合流した』って解釈出来るんじゃないかなって」

「「つまり?」」

「擬態したプリズミックが今は線路を走行してたりするのかなって……」

「おいおいおい、それがマジだったら笑えねえぞ。他の電車と同じ速度で走る訳じゃねえし、ましてやソイツは律儀に駅で停車してくれねえだろう。急いで駅の奴らに教えてやんねえと」

 

 黙ってルイカの考察を聞いていたハルタもこれには焦りを顕わにし、詰め寄ってくる。

 

「落ち着いて、もしかしたらって私の予想だから外れてる可能性もあるよ」

「それこそ合ってる可能性もあんだろうが!何が起こるかわかんねえなら、注意出来る事だけでも対処しといた方がマシってモンだろ」

 

 そこへ、ピピピピピピっと電子音が鳴る。どうやらルイカの持っている通信機の受信音らしい。

 

「はいこちらルイカ。ロージアさんどうかした?」

『ルイカちゃん、こちらで地下を高速で移動するエネルギーを感知したの。そちらではなにか変わったことは無いかしら?』

 

 どうやら本部のロージアが異常を知らせてくれたようだ。するとルイカと端末の間にずいっと割り込んだハルタが声を張り上げる。

 

「おうネーチャン、緊急事態だ!擬態したプリズミックが線路を走行してる可能性がある。すぐ地上の奴らに教えて線路上から他の電車をどかせ!」

「えっ?どちら様ですか?」

 

 突然知らない者が割り込み、大声で(わめ)かれて戸惑いを隠せないロージアに、尚も詰め寄らんばかりに息を荒げるハルタ。

 

「俺はゴードンのハルタだ!たまたまコイツ等と同じ目的で行動してる。いいから言うとおりにしろ!死人が出るぞ」

「そ、そんなこと言われても、走行中の電車をいきなりどかせってどうしたらいいか……」

 

 困惑するロージア、ハラハラと見守るカケルとソラ。何かを考えこむルイカと三者三様を見せる。そんな中打開策を挙げるのはハルタだった。

 

「線路には何かあった時に退避できるよう、一定区間ごとに避難用線路があんだ。見回りの最中それらしい所も確認した。そこに入れてやればポイントを切り替えない限り安心d……」

 

 ハルタが言葉を言い切ろうかというタイミングで、ファアアアアアアア!っと汽笛を鳴らしながら近づいてくる影があった。実はこれまでも調査中、何度も一般の電車が走ってきて避難するという事態はあったのだが、それらは走行音とライトにより接近を感知していた。汽笛はあくまで近くに来てから、車掌がこちらを認識してから鳴らされるものであった。

 しかし、今回近づいてきた物はこちらが認識するより前から鳴らしている。まるで自己顕示をするかのように。

 

「音鳴らしながらこっちに来るって今まで無かったよね?」

「こりゃあ嫌な予感が当たっちまったな。間違いなくプリズミックだろうよ」

「だったら直ぐに止めないと!」

 

 電車の前に駆け出そうとするカケルだったが、ガシッと肩を捕まれ動きを遮られてしまう。

 

「馬鹿野郎!テメエ死ぬ気かっ!?」

「でも止めないと沢山の人が死ぬかもしれないんですよ!」

 

 手を振り払って尚も向かおうとするが、より強い力で引っ張られて体制を崩す。そのまま胸ぐらを捕まれお互いの顔が急接近した。

 

「テメエ一人命掛けたところであのスピードは止まらねえんだよ!ちったぁ現実見やがれ!」

「それでも誰かがやらなきゃ……」

 

 本気で叱られ意気消沈したカケルだが、まだ納得しきれていないと態度が物語る。そうこうしている内に、プリズミックは一行の側を走り抜けていく。通過するのを見送った事で全体の大きさも把握する事が出来たが、一般的な電車4両分といったところか。ハルタの言うとおり高速で動くあの質量だと、例えカケルが何をしようとも無駄に終わった可能性が高かった。

 

「この先で事故が起きちゃうのかな?……止める方法って無いのかな?……」

 

 ソラの独白にも似た疑問に答える者は…………居た。

 

「焦んな、なんとかならねえ事もねえ」

「え、何かあるんですか?」

 

 ソラヘ答える事ははせず、再び通信機と向かい合うハルタ。

 

「で、ネーチャン。さっきの話の続きだが、他の車両は避難出来そうなのか?」

「駅とは既に連絡を取って、6割程度は退避済みよ。残りの4割も少しポイントと離れているのが原因だけど、プリズミックに追い付かれる前には避難出来そうだわ」

 

 なんと現場が混乱している間に手を打っていたというロージア。それを聞いたハルタはニヤリと笑みを浮かべ、掌に拳を打ち付ける。

 

「しゃあっ!仕事が早えなネーチャン!だったら問題ねえ」

「どういう事ですか?」

「さっきはテメエ一人の命掛けてもって言ったな?今でもその身を犠牲にする覚悟はあんのか?」

「は、はい!」

 

 スパンっ!

 

 直後カケルは頭を(はた)かれていた。

 

「簡単に命なんて掛けんじゃねえ、死なずに解決しろ」

「す、スミマセン……」

「掛けるなら他の奴らもまとめて掛けて、リスク減らしやがれ」

「へ?」

 

 呆けた顔で見上げる先には笑ったハルタが居た。

 

「全員で協力して無事に帰るぞクソガキ共」

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