ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~ 作:羊merry羊
指摘された2話3話の内容重複を確認し、各話数を調整しました。
本文に変更はありませんので、引き続きお楽しみください。
カケル達は現在、走り抜けた電車の後を追っていた。とは言え徒歩で追いつける訳はなく、正確には追うというより同じ方向に進んでいるといった表現の方が的確である。
何故そんな事をしているのかと説明するには少し時を遡る。
「全員生きて帰るって、口で言うのは簡単だけど何か考えはあるの?」
ルイカのから零れた疑問は至極もっともであり、皆の視線がハルタに集中する。
「一応はな。まず根本的な話として、ここの地下鉄は環状線だ。アイツが線路の上を走っている限り、その内一周してきてもう一度オレ達の前にツラ見せるから、そこを叩く」
「なるほどね。で、その叩く方法ってのも勿論考えてあるんだよね?」
「ああ、俺の対プリズミックデバイス『バイオレットブローヴァ』の特性は蹴りの増幅だ。こいつを使って地面を踏みぬくと局所的な地震が起きる。そうすればアイツを脱線させることが出来るはずだ。後は動きが止まった所をタコ殴りにすりゃいいだろう」
「脱線した本体がそのまま突っ込んできた時はどうするの?」
「そん時は……そん時だな」
「「ひいいいいいいいいいいいいいっ」」
表面上は良く練られたように感じた作戦も、いざ蓋を開けてみたらとんでもないデンジャラス展開にソラ達の悲鳴が木霊した。どうでもいい事だが流石は地下トンネル内、声がよく反響する。
「はぁ、仕方がない私がリスク減らす役になるから、皆は倒すことに専念して。その代わり戦闘が始まったら私の力は当てにしないでね」
ルイカ曰く、彼女のハイドロシューターから発射される液体にはいくつか種類があるとの事。以前パトランプリズミック相手に使用されたペインティングショットも同様で、その性質によって作用も変わるとの事。今回はそれを利用して、なるべく粘度の高い液体を放出し、相手の駆動部を弱らせスピードを落とす様に仕向けるとの事。しかし、正面から一瞬浴びせた程度では相手のスピードと巨体によって大半が弾かれるのを危惧して、線路上に広域散布し、走行する度に次々と車輪に絡んでいくイメージでのアプローチを試みるのだそうだ。
「どれくらい効果があるかは分からないけど、何もしないよりは安全になるでしょ。私は逆方向に進むから、目標がそっちに着いたころには遠くで追いつけないと思うから頑張ってね」
そう言ってルイカは暗いトンネルに謎の液体を振り撒きながら消えていくのだった。去り際に「でもどうやって線路に乗り入れ出来たのかなぁ」という不穏なセリフを残して。
そうして時は現在へと至り……
「さっきの水が弾かれるって、プリズミックコートなら45キロで雨吹っ飛ぶとかそんな感じなのか?」
「カケル何言ってるの?意味わかんない」
「えっ!?わかんないの?」
「馬鹿なこと言ってないでさっさと行くよ」
同じ時代を生きてきたはずなのに何故……とブツブツ言ってる約一名は放っておき、ルイカは独り線路を逆走して出来るだけ長い距離に放水する手筈となった。一方ハルタ含む三人は、同じく距離を稼ぐためにプリズミックを追う形となったのである。なお、ただ距離を稼いでもルイカの出発地点からこちら側に向かっては放水されないため、気休めでも撒けたらと粘液を入れたぺットボトルを2本渡されてた。既に一本目は空になり、二本目の口を切った所である。
「お前ら今のうちに作戦を確認しておくぞ。奴さんが音ならして近づいてきたら戦闘準備、まず俺が脱線させて足止めするから、お前らはそのまま突っ込んでくるのに注意しながら上に飛び乗れ。一度取り憑いちまえば安全だろうし、逃げられる心配もねえ。地面が揺れるから、お前らまで動けないなんて事ならねえように気をつけろよ」
「地震が起きる瞬間にジャンプして回避とかまるでゲームだな」
「あんまり大きく飛びすぎたら、空中で身動き取れないまま敵が突っ込んでくるかもだからカケルしっかりね」
冗談で言っていた映画の様なアプローチをまさか本当にやるハメになるとは想像していなかった一同だが、いざやると決めてしまえば腹を括るのは早かった。
「そういえばハルタさん、今回の作戦思いつくの早かったですけど、いつもこんな修羅場潜ってるんですか?」
「あん?んな訳ねえだろ。普段はもうちょい安全だ。それに俺はやばいと思ったヤマはなるべく回避してるからな。お前にも言ったが、簡単に命なんて掛けもんじゃねえ。俺は周りに卑怯だなんだと言われようが無理そうならさっさと手を引く。死んでいい事なんか何一つねえんだからな」
「だとしたらちょっとおかしくない?普段よりヤバイと思ってる案件に付き合ってくれるって言ってることがちぐはぐなような」
矛盾した主張に食いつくソラ。思わず顔を
「一人でだったらって話だ。俺は普段一人で行動するのが基本だから他の奴等の事を考える必要がねえ。だが今はあっちで別行動してるネーチャン含めて三人。こんだけいりゃ出来る事は増えるし、リスクも軽減できる。全体で見りゃ極端にやべえ事にはならねえだろうってハラだ」
「ツンデレ?」
「ツンデレだね」
「ごちゃごちゃうっせーぞテメーら!そろそろ撒く水も切れんだから配置についとけ!」
完全に照れ隠しなのはわかりきっていたが、これ以上
そうしてポジショニングや装備の点検をしているうちに、遠くから再びフォオオオオオオオオと甲高い音が聞こえてきた。
「さて、チキンレースの始まりだ。当たり前だが、地震の威力は俺に近いほど強くなる。なるべく引き付けて確実に道外させるから、お前らも気をつけろよ」
言うや否や、線路上に踊りだす。衝撃に多少の指向性を持たせることで、より多くの振動を伝えようというのである。
「やっぱり危険なんじゃないっすか!無理はしないでくださいよ」
「馬鹿野郎、誰に向かって言ってる。危機管理能力なら世界有数の俺だぞ。自分たちの心配だけしてろ」
言葉を紡ぎ終わるとゆっくりと片足を持ち上げていくハルタ。正面を見据えて呼吸を整える。暗闇を切り裂く魔物の眼光がカーブの向こうから飛び出し、視線と視線がぶつかる。
「来ましたハルタさん!」
「いちいち言わなくてもわかってる。黙って見てろ」
迫りくる
一人と一匹の距離が50メートルまで近づいた瞬間、それは起きた。
「沈めっ!地撃震!」
振り下ろす過程すら見えない速度で打ち込まれたそれは、周囲にプリズミックから鳴る音を凌駕して爆音を掻き鳴らす。それと共に激震が走り、地は荒れ狂い、線路は波打っていた。二つの揺れによってトレインは宙に舞い、連結車両は蛇の様にくねっていた。そしてそのままの勢いで地面へぶつかっていった。
ガシャアアアアアアアアアアアアアアアンッ!
激突した際、曲がった後部車両が衝撃で衝突しあいジョイント部からバラバラに散った。くわんくわんと残響を残す惨状に「今だ飛び移れ!」と叫びが飛ぶ。そして見事本体に取り着いたカケルとソラの姿が見えた。
「さて、それじゃあゆっくりと料理してやるかってなんだありゃ?」
危険な工程を終えて一安心したハルタの目に映ったのは、トレインから飛び出したアームであった。決して長いわけでもなく、車両の上に乗る二人に届くようにも見えない。そもそも電車型の物体には凡そ不必要にしか思えない。それが起動するまでは……
「オイオイ、マジかよ」
トレインは完全に脱線してノロノロと地面を走っていたが、線路に近づいた所でなんと自身を持ち上げ線路に復帰したのである。そう、これこそ外部から線路上に合流することが出来た秘密だった。
「マズイ!こいつを止めないと!」
「カケルもっと力入れて!」
当初、下からハルタが攻撃を加える予定でいた為、車上の二人は敵を逃がさないのと安全面を考慮していただけに有効な攻撃手段という物を持ち合わせていなかった。というのもその筈、ソラは有限なフィールドにおいては跳弾や爆発に巻き込まれフレンドリーファイアの恐れがあり、派手な攻撃は出来ないのだ。
一方カケルは、拳で殴るという単純なものだがこれまた制限があった。ゼノディザスターは溜めが必要なうえ足元を攻撃して爆発する危険がある。ではプリフリート戦で使われた衝撃波を飛ばす技『バスターブロー』ではどうか?しかしこれもダメ。放たれる拳圧に比例して威力が上がる性質は踏ん張りが効きづらいこの場では効果が薄い。なにより真下へ向かって振るうパンチには腕の力しか乗らないために子供の駄々っ子パンチと大差ないのである。
手ぐすねを引いているとトレインが再びフォオオオオオオオオと汽笛を鳴らし、加速を始めた。揺れによって転倒したカケル達だがハルタから声がかかる。
「テメー等しっかりしがみ付いてろ」
ドンドン加速していくプリズミックだが、スピードが上がりきる前にハルタは追いつき跳躍。ズシンと車体を揺らしながら二人のそばに着地した。
「予定にはなかったがこのまま走りながら戦うしかねえ。テメー等サポートしろ」
戦場を移し、第二ラウンドの幕が開ける。