ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~ 作:羊merry羊
走行を再開したプリズミックはどんどん加速していた。
「ハルタさん、ここからどうやって攻撃します?威力があり過ぎると自滅しかねませんし、かといってちまちまダメージを与えてたらスピードが上がりきって、倒した後放り出されてお陀仏って事にも……」
早く倒さなくてはいけないがそれ相応の火力が求められる。
「プリズミックってのはな、擬態したものの特性を強く引き継ぐんだ。生物に擬態したときは元の生物についての知識がなけりゃ分からない事が多いが、幸いこいつは機械に化けた。それを踏まえて、なんでこいつがこんなに早く走れるのかを考えろ。何でもいい、思いついたことから話せ」
「えっと、電車が早く走れる訳?あまり考えたこと無かったけど、電車って言うくらいだから電力でバーッて動いてる?」
あまりに大雑把すぎる表現にカケルがツッコミを入れようとしたが、意外にもハルタはそこに着目した。
「悪くねえ考え方だ。ただその電力に相当するものは残念ながらプリズミックの持つパワーだな。そこから先に電力、パワーをどうしてる?」
どうやらいきなり核心を探そうとするのではなく、ブレインストーミングの様に次を想定して本質に迫っていこうという考えだと二人も悟る。
「電力なら普通は増幅する場所に送られるか、もしくはモーターに行くんじゃないですか?」
「なるほど、モーターから車輪を動かしてスピードを出してる可能性は高そうだな」
「じゃあそのモーターか車輪までの伝達部分を破壊出来たら減速して行くって事ですね!」
「ああ、ついでに機械なんだから大事なもんは箱の中に仕舞ってるのが定石だ。俺が脚を振り下ろせばダメージも問題ないだろう」
三人寄らばなんとやら。短い時間で解決策が見つかり希望が見えてきた。しかし安心したのもつかの間、バラララララっと突如一堂に銃弾が降りかかった。
「あっぶな!何これ何処から撃たれたの?」
「あそこだ!奥の小さい奴!」
カケルが指差す先には黒い帽子を被ったプリズミックが居た。
「何アイツ、コスプレしてる?」
「車掌さんだな。でもなんでいきなり攻撃してきたんだ?」
「無賃乗車はおやめくださいって事だろ。お前らはアイツを相手しろ。俺はモーターを探す」
「わかりました、気を付けてください」
後ろを二人に任せるとハルタは床に這いつくばって地面に耳を当てる。ガタンゴトンと音が響き、それに合わせて揺れが起きる為脳味噌をシャッフルされる幻視をしつつ耐える。
そして小さな移動を繰り返しながら暫くすると、何か反応見つけたようだ。
「この真下にありそうだな。ちょっとツラ見せろや」
モーターらしき反応に向けて脚を振り下ろすハルタ。だが直前に青白い光がプリズミックを覆い、それに弾かれたような感覚を受けた。
「あん?手応えがねえ……オイ!そっちで今何かあったか」
「車掌がなんかレバー操作してました!」
「その瞬間に光が出たから、何かの切り替えスイッチだと思います!」
再度踏み付けをしてみるが、鉄壁の守りになったようでまるで効いてる気がしない。
「先にそっちを始末しねえといけねえか」
ハルタがカケル達の元に向かおうとするが、今度は赤い光に包まれる。
「次から次へと何だってんだ」
「多分今度は攻撃主体の変化だと思います!相手の攻撃が激しくなってます!」
「手数は同じくらいだけど、このままじゃ
急いでハルタも救援に向かおうとしたが、ある事に気付く。
(なんだアイツ?体の傷がドンドン増えてやがる)
真新しいボディーだった車掌プリズミックだが、それに次々と傷が増えていっているのである。恐らくはソラの弾幕や跳弾、爆風なのだろうが、目に見えて増えていく。
(さっきからアイツらとはドンパチやってた筈だ。その時から傷なんて増えてる筈……なんで今このタイミングで次々増えやがる?)
一瞬考え、とある予想が浮かぶ。
(パワーは上がってるが防御はペラくなった?それなら!)
突如軸足を元に華麗なターンを極める。そして烈迫の気合と共に大きく足を振ると、ドンッ!と大きな音が鳴る。そして数瞬の間を開けて、ガーン!と聞こえたかと思うと車掌プリズミックが遥か彼方へ吹き飛んでいった。
「へ?ハルタさん今何を?」
「飛翔脚って技でな、防御ペラそうだから空気の塊ぶつけて弾き飛ばした。もう追ってこれねえし、切り替えレバーも圏外だろ」
「ボク達結構苦労してたのにこんなオチって……」
「しょげんなって。お前らの攻撃があったから変化がわかったんだ。それに一人じゃ片方しか相手出来なくて対処出来なかった。まあそれは置いといて、さっさとコイツをぶっ壊して帰るぞ」
気落ちしているソラのフォローをしつつも足元をつま先で小突く。先程とは違い、よくある金属の感触を確認すると口元を吊り上げる。
「少々手間取ったが、改めてご対面といこうや」
振り上げた脚を勢い良く下ろすと、破砕音を上げながら大きな穴が出現した。穴の中には高速で回転するモーターが見え、駆け寄って来たカケル達も覗き込む。
「あれがモーターか。結構大きいですね」
「でもあれを壊せば止まるんだよね。早くやっちゃおう」
ダダダダっと早速マシンガンを打ち込むが、どうやら頑丈な保護枠に阻まれており、またしても思うような結果が得られなかった。
「しゃあねえ、もう一働きするか」
穴から飛び降りたハルタは保護枠の硬さを確かめると、脚に紫焔を纏う。
「ハルタさん俺も手伝います」
カケルも降りてきて双拳に光を溜める。
「二人共急いだほうが良いかも!レールがルイカ先輩の水で色変わってるの!この調子で進んだら、壊したレールの所でまた脱線事故起きちゃう!」
「少しくらい余裕持たせやがれってんだ!カケル!そっちはチャージ終わるか!?」
「はい!いけます!」
腕全体が輝いたゼノディザスターの時とは違い、拳だけが光っている。貫通力を上げ衝撃を周囲に洩らさない攻撃法なのだろう。
「だったら合わせて行くぞ!いち!にーっの!」
「「さんっ!」」
ズドン!と重い一撃が保護枠を貫通し、モーターに突き刺さる。半端な攻撃であったなら回転するモーターに身体を巻き取られミンチにされるであろう未来もあったが、そんな心配を他所に深々と二人の手足が機械を貫いていた。
直後、ガクンとスピードが落ちていく。
「これで一安心ですかね」
「いや、まだ油断すんな。動力が消えただけで慣性はまだ効いてる。どこで止まれるかはわかんねえぞ」
「そんな……」
ショックを受けたカケルを置き去りに、ハルタは上に登りソラに問いかける。
「今どんな感じか分かるか?」
「スピードはドンドン下がってます。恐らくですけど半分って所です。ただ何処まで線路が無事かは全然予想出来ないから……」
目算でしかないが現在の走行速度は60kmほど。周囲は明かりもまばらで、飛び降りるには少々危険に思える。
(仮にぶっ壊した線路が見えるギリギリまで我慢したとして、何処までスピードが落ちる?そこから飛び降りても俺達自身が慣性持ってたんじゃ流れで荒れた事故現場に着地しちまう。それならいっそ見切りを付けちまった方が……)
最悪を想定しているハルタだったが、ふとした疑問が浮かんだ。
「そういやソラ、別行動したネーチャンって見たか?」
「ルイカ先輩ですか?いや、今のところは覚えが無いですが」
それを聞いたハルタは笑みを浮かべる。
「二人共!事故現場までスピードが落ちきるかわからねえ。だからどっかで見切りを付けて飛び降りる」
「どっかってどこで?」
下からよじ登りながら問うカケルに自信ありげに返答するハルタ。
「ルイカのネーチャンとすれ違うまでだ」
ハルタが言うには、ソラが線路の水を見た所が元々いた位置。だがそこに姿が無かったなら、最初にプリズミックが走り抜けたあとに事故現場迄引き返してる筈だとの事。事実彼女も間に合うのを期待するなと言っていたので間違いないかと思われた。
つまり、ルイカを追い越してしまったらその先には事故現場だけだが、仮にルイカが事故現場まで辿り着いていたのなら、あの水鉄砲で受け止めてくれる可能性がある。そこをデッドラインと定めるには確たる理由付けになろう。
「わかりました。腹くくります」
「ボクはまだ怖いけど、それが一番マシなんだよね」
全員前方に集中していつでも飛び降りれるよう身構える。そしてその時が訪れる。
「見えた!先輩があそこに立ってる!」
「お前ら準備はいいか、なるべく速度が落ちるように、後ろに走って飛び降りる。オラ走れ!」
「ちょっ、聞いてないんすけど!」
慌ててハルタの跡を追うカケル。最後の瞬間までバタバタしたが全員が飛び降りた。固い地面に手足からつき勢いのまま転がっていきやがて止まる。全員が顔を上げたタイミングで、奥の方から爆発音が聞こえてきた。
「イッテテ、間一髪って所か」
「かなりギリギリの所だったね」
「もうこんな危ない任務はこりごりだ」
愚痴を言い合う三人にルイカが駆け寄りタオルを渡す。
「皆おつかれ。大丈夫だった?」
「大丈夫じゃないッスよ先輩。何回死にかけたことか」
「そうそう、ボク達危ない橋渡ってきたんですからね!」
「そう言ってやるな二人共。なんだかんだで地面に着地した時の勢いって予想してたよりも少なかったろ?」
まあ確かにと言うよく分かってない二人。なので仕方なく説明を続けてやる。
「スピードがあそこまで落ちた理由ってのはな、多分だがネーチャンがまた粘着液ばら撒いてくれてたからだと思うぞ」
「その通り!この私が皆を追いかけてる最中も再び放水していたのだ!だから二人共私に感謝するように」
(一言余計に言わなければ素直に感謝出来るんだけどな)
(ほんとほんと。縁の下の力持ちって喜ばれる筈だけど、縁側ごと持ち上げるのはちょっとね)
「どうしたキミタチ?反応がないぞ~?」
「アリガトウゴザイマスルイカサン」
「タスカリマシタカンシャシテマス」
「はっはっは、気にしなくていいよ。後輩を助けるのは先輩として当然だからね」
なんであんなに感情がこもってないセリフだったのに、この人は有頂天になれるのだろうと心底理解できない二人であった。
「とりあえずこれで事件解決だな。テメー等最初は足手まといかと思ったが、思ったより見込みがあったぞ。うちの三馬鹿もちったあ見習えっての……」
「ありがとうございますハルタさん!」
「ボク達ハルタさんみたいなカッコいいジャンパー目指して頑張ります!」
「俺を目標にするのはどうかと思うが、まあ精々頑張れよ」
そう言ってハルタはポケットに左手を突っ込み、右手はひらひら振りながら去って行った。
「あれー?なんか私と扱いが違う?まあそんな筈ないか」