ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~ 作:羊merry羊
シルバースタンピード事件からはや一週間が経過していた。
命名権についてあれだけ騒いでいたカケルも、今では記憶をさっぱり無かったことにして気持ちの切り替えに成功している。そんな彼らに次の調査依頼が出されたのが数時間前。聞けば渋谷の地下を走る巨大送水管があるのだが、最近そこでプリズミックが多数目撃されているそうだ。今回はプリズミックの一掃と何故そこに群生しているのか調べるという訳である。善は急げと一行は渋谷地下水道へと向かったのだが、これまでとは一つ違いがあった。それは、
「現場に出るのは久しぶりだ。足を引っ張らないよう努めるが皆よろしく頼む」
「そんなシオンさんが頼むなんて言わないでくださいよ。俺達の方がよっぽど足手まといですよ」
「そうそう、ボク達シオンさんと一緒に仕事できるなんて光栄です」
「なんだいなんだい、二人とも私だって先輩なのにまるで扱いが違うじゃないのさ」
何を隠そう、スカイジャンパーズ最強と名高い疾風のシオンが同行しているのである。かつて世界を救った英雄と肩を並べる事に感動している二名。その後方には面白くなさそうに頭の後ろで手を組んでいるのが一名。以上四名が今回の探索チームとなる。
「いや本当にあまり期待しないでくれ。古傷のせいであまり自由に体が動かなくてね。動きにキレがなくてイマイチ上手く立ち回れないんだ。攻撃も大振りになりがちな割には威力に欠けるしな」
数年前、神龍事件を解決した立役者であるシオン。当時の彼は間違いなく世界最強のジャンパーであった。しかし、事件での負傷により第一線を退いてしまい、今では後任の育成とデスクワークが主な仕事となっていた。
「だったらどうして今回に限って俺達と一緒に来てくれたんですか?」
「事務作業ばかりしていたんじゃ体が鈍ってしまうからな。時折こうやって運動がてら
「すみません、『ずいはん』って何ですか?」
申し訳なさそうにカケルか尋ねる。するとシオンは苦笑いして説明してくれた。
「堅苦しい言い方してすまなかった。一緒にって意味だ。親っさん……テンカイさんが居ない時は俺が仮の代表として色んな所と顔を合わせなきゃならないから、テンカイさんに恥を掻かせない様に普段から面倒な話し方をしてるんだ。仲間と話す時くらいもっと砕けろとロージアにも言われているんだが中々使い分けられなくてね」
「シオンさんに余計な気を使わせて……うちのお父さんは一体どこほっつき歩いてるんだ!」
「ぶっ!はっはっはっはっは!」
ぷんすか怒るソラを見たシオンは思わず噴き出し笑い出した。あのシオンの思わぬ反応に、つい先ほどまでの怒りも消え去り、呆然と眺める。
「はっはっは。いや悪い悪い、宴会の時のソフィーと同じこと言うもんだからつい。心配しなくても俺は好きでやってることだし、親っさんも俺達が本当に困った時にはふらっと帰ってきてくれるから大丈夫だ。心配ないさ」
「困った時ですら、ふらっと帰ってくるから腹立つんですよ。どっちかというなら慌ててバタバタ帰って来た方がまだ許せます」
唇を尖らせてむくれる姿にシオンは先程とは違う笑顔で話しかける。
「ソラは親っさんが大好きなんだな。年頃の女の子だと帰ってくるなとか、野垂れ死ねばいいなんて言葉が出る場合もあると聞くが、ソラから出てくる言葉は帰ってくると信頼してるものばかりだ」
「そ、そんなことありません!あんな放蕩親父、野垂れ死ねばいいんです!」
顔を真っ赤に染めてオウム返しにすることしか出来なかった自分に気付き、ますます気恥ずかしさに紅潮させ、ついには俯き口をつぐんでまった。
「シオン、女の子苛めてそんなに楽しい?」
「人聞き悪いこと言うな。これは後輩たちと円滑なコミュニケーションを取るための馴れ合いだ。それに親っさんを慕う者同士反発する必要もないしな」
「はぁ、シオンは親っさん親っさんとそればっかだねえ。テンカイさんが色んな意味で凄い人なのは私も認めるけど、あまりにも身内を褒めちぎられるのも具合が悪いってものなんだよ」
「うーん、そんなものなのか?カケルもそうか?」
「はえっ!?お、俺ですか?」
突然話題の矛先が向いて焦るカケル。しかし自分自身が同じ立場になったことを想像した上で返答する。
「俺は家族がリズしか居ませんからね。褒められれば兄として嬉しいとも思いますけど、どうなんでしょうね?まあ程々にしておくのが無難なんじゃないですか?」
「成程、過ぎたるは
「いえ、お気になさらず……」
未だ顔に挿した朱は完全に抜けきってはいないものの、平静さを取り戻した様子。それを確認したシオンは、空気を変えるためにも仕事の話をする。
「それじゃ気を取り直して今回のミッションについて再確認だ。任務は二つ、一つはここ地下水道にいるプリズミックの生態調査。もう一つはこれらの討滅だ。皆怪我の無い様気を引き締めてくれ」
「「はい!」」
こうして一行は長い時間をかけ、探索を開始したのであった。