ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~ 作:羊merry羊
「一掃って言われるだけあって結構な数がいるね」
現在は出発から約一時間、プリズミックと遭遇した回数は5回目で、総数は20匹を超えている。
「そうだな。だが出てくるのは雑魚ばかりだから、油断さえしなければ不意打ちをされても怪我をすることもないだろう。何よりこの人数だ。危ない面はいくらでもカバー出来る」
「でもキリがないから肉体はともかく精神的に疲れますね。そもそもどこまで倒したら一掃って言えるんですか?」
「そうか、カケル達は最近活躍が目覚ましいから忘れがちだったが、まだ入って間もないんだったな。折角だから少しレクチャーをしよう」
今までは中盤か最後尾で
「まずプリズミックの発生には基本的に2種類がある。突発型と繁殖型だ。突発型は以前の火を吐くプリフリートやパトランプリズミックが例に挙げられる。これらは予測がしづらく、仮に予想や捕捉することが出来ても、実際に出現した時にこちらの予想を上回る事態に発展しやすい特徴がある」
「確かにどっちも予想されたものより強かったみたいですし、俺達は毎回ピンチになってますね」
「毎回ハラハラドキドキの連続だよ」
冗談混じりではあるが危ない場面を何度も切り抜けてきた自分達。それを誇りこそせず事実と受け止める。これからそれを自信へと昇華出来るか自惚れと繋がるかは今後の成長、もとい先輩である自分の指導によると考えているシオンは軽く頷き続きを語る。
「次に繁殖型だが、これはプリズミック同士が集団で集まり巣のようなものを形成する。そこで仲間を増やしていくというものだ。今の研究ではプリズミックが実際に繁殖行為や分裂により増殖しているのか、それともあくまで個として周囲から集まって増員しているのかはハッキリしていないが、放置していると際限なく増え続ける可能性あるとされ長期的に見た場合はこちらの方が危険度が増しやすい。特徴としては群れのボスに当たる存在が居て、それを倒すことにより統率が取れなくなって解散する。少し前にあったシルバースタンピードがこれに挙げられる」
「でもアイツの時って他にプリズミックを見た記憶無いんですけど、それでも繁殖型なんですか?」
「そうだ。あの後現場調査を行ったら、複数のプリズミックの形跡が確認された。これについては環境の関係でな、どうやら集まってきたはいいがその殆どが電車に撥ねられて消滅していたようだ。電車の運転手にも確認を取ってみたが、小石を撥ねたような違和感や音を複数人から聴取できた」
プリズミックが交通事故で死亡したと聞いてそんな事もあるんだなと思ったカケル。その様子をイメージするとまぬけでシュールな絵面が浮かんできてツボに入りかけて
「つまりは雑魚を蹴散らしながらそのボスを見付けて退治すればいいんですね」
「その通り。ついでにその調査の方法も一つ、今から教える」
そこまで言うとシオンは歩くのを止め、皆を手で制する。前方には曲がり角があり、その先に顔を覗かせ様子を探る。顔を戻すとゆっくりと二人にこっちに来るよう手招きをし、小声で話す。
「最初のうちは目につく奴を倒していくが、ある程度まで数を減らしたり奥まで進んだ場合には残ってるプリズミックには手を出さずに後をつけるのが有効だ。戦闘中の敵ならボスの居るところまで逃げる可能性があるし、巡回しているような奴は重要な箇所に案内してくれる可能性が高いからだ。丁度目の前に一匹だけいるから後をつけてみよう」
そういうとシオンは曲がり角の奥に消えていくプリズミックを気付かれないよう追う。なるべく音を立てないよう振る舞っており、これを見ていたカケルはテンションが上がってきた。
「こういうのスニーキングミッションみたいでちょっとワクワクするな」
「ワクワクするのはいいけどもうちょっと声小さくしてよね。気付かれたらどうするのさ」
悪い悪いと手を顔の前に立てて謝るが、あまり反省しているようには見えないカケル。言っても無駄だとため息一つだけつき自分だけでもしっかりしようと思うソラであった。
その後10分程後をつけていると、とある扉の前にたどり着く。
「どうやらこの中に入っていったようだな。二人とも警戒を怠らない様にしてくれ」
「わかりました」
「よし、それじゃ開けるぞ」
ギギっと重い音を立てながら開けられたドア。その先は水路のメンテナンス用の資材置き場であるようだ。そこにプリズミックが10匹ほど集まっていた。
「いっぱい集まってるね!まとめて蹴散らしちゃおう」
「まて、様子がおかしいぞ」
こちらに気付いたプリズミック達はお互いに身を寄せ合い、なんと次々合体していった!ボウンッという音と煙を上げて新たに生まれた個体は、これまでのプリズミックとは違い2メートルはあろうかという巨体に、どうやって調達したのか不明だが王冠のようなものまで携えている。
「まるでキングスラ〇ムだ……」
「こいつはキングプリズミックだ。稀に目撃されることがあるタイプで、合体前後の強さが個の足し算と釣り合わないから気をつけろ。あとなるべく周囲に被害が出ないよう立ち回ってくれ」
「「了解!」」
「よし、これで終わったな。二人とも怪我はないか?」
「はい、まあこれといって……」
「ほとんど何もしないままシオンさんが一人で倒してくれましたので……」
二人の言う通り、カケルとソラは周囲に展開してタイミングをみて攻撃していただけである。肝心のシオンはを言うと、接近戦で敵の攻撃を難なくかわし、自身のデスサイズの形状をした武器『風牙』で相手の体力を文字通り削り取っていった。鎌を振るごとにプリズミックは体積を減らし、時に柄で殴られ吹き飛んでいた。
「あのーシオンさん。今回のシオンさんってリハビリなんですよね?」
「そうだな、全盛期の四分の一も動けていない。かといって傷が完治ことはもうないと医者も言ってるから、現在の体で動きを最適化していく他ないのが辛い所だ」
(あれで四分の一以下ってどういう体してんの!?)
(きっと任務遂行のために作られた強化ジャンパーなんだよ!)
失礼な奴らである。幸いにもシオンには聞こえていない様子で、仮に聞こえていても特に怒ったりもしないだろうが。
「でもキングプリズミックって、安直な名前だよな。この調子だとメタルプリズミックとかゴールデンプリズミックとかも出てきたりしてな」
「そんなの居る訳ないでしょ!カケルはゲームのやり過ぎなんだよ!」
「いや、メタルプリズミックもゴールデンプリズミックも両方居るぞ」
「うそぉおおおおおおおおお!」
シオンから衝撃の発言をされて目を剥くソラ。シオンの事だから冗談などではないとは思うがにわかに信じがたかった。
「ゴールデンプリズミックを倒すとプリズミックキューブが大量に手に入るんだ。滅多に会うことは出来ないが、遭遇したら是が非でも倒しておくといい」
「あの虹色の奴が沢山出てくるんですか?」
「いや通常の金色のプリズミックキューブだ。そういえば二人とも、これまでキューブを回収してるそぶりが無かったがいいのか?」
「いいのかって何がです?」
「なんだと……」
信じられない言葉を聞いたと眩暈がしたシオン。一人で何やらブツブツと言い始め「歓迎会が……」とか「オリエンテーションはどうだ……」等の単語が聞こえる。やがてバッと顔を上げたかと思うとある者に問う。
「プリズミックキューブの役割について話していないのか!?ルイカ!」
「はえ?私?私はしてないよ」
そう、これまで最後尾でずっと黙っていたパイセンことルイカである。居たんだとか忘れてたというつぶやきが聞こえてきたが気にしたらいけない。
「なんでだ!二人は普段と経緯が違うから説明を聞いていなかったんだ!プリフリートの時もシルバースタンピードの時も拾ったり説明する機会はあっただろう!?」
「そんなこと言われても説明を聞いてないとか聞いてないし、そもそもその事件は火の時はカケル君が火傷で緊急搬送されたのに付き合ったし、電車は後から調査班が全回収してたじゃん。私だってその時は拾ってないからね?」
「うぐ、そうなのか……まあ今気づけて良かったと思っておこう。二人とも大事な話だ、聞いてくれ」
真剣な表情で向き直ったシオンにカケル達は息をのむ。
「プリズミックを倒すともれなくプリズミックキューブという物を落とす。これは様々なエネルギーに変換出来る事に加え、対プリズミック兵器の強化や改造にも使えるんだ」
「え、確かに敵を倒したら出てきたのを見てはいますが、誰も反応しなかったからちょっと綺麗なゴミかと思ってました……」
「ボクも似たような感想だった。最初の虹の奴しか皆反応しなかったし、こっちは要らないんだろうって」
「すまない、最初の時は変わった物が発見された影響で、そっちに頭が回っていなかった」
カケル達は説明を受けていないのに加え、周囲の反応から不要なものと断じていた事に改めて責任を感じてしまうシオン。
「それでだ。このプリズミックキューブだが、兵装の強化に使えることからもジャンパーにとって重要な物だとはわかると思うが、もう一つの役割もある」
「もう一つ?ちょっと想像つかないですね。ソラは分かるか?」
「うーん、ちょっとわかんないや。どんな役割なんですか?」
素直に聞かれたシオンは眉間に皺を寄せて、言いづらそうにしつつも答えてくれた。
「金だ……」
「「え……」」
周囲が静まり返り、配管を流れる水の音だけが響き渡る。
「さっきも言ったが、これは電気やガス等の代替えエネルギーもなるんだ。だからこれを機関を通して国に売ることで、組織と個人に対価が支払われるんだ。これはジャンパーにならなきゃ知らされない事項だ。素人が小遣い稼ぎにプリズミック狩りをして怪我をするといけないからな。仮に手に入れても組織を通さないと売買できないから、どっちみち無駄な徒労に終わるがな。まあそんな訳で、お金と組織に対する貢献度が稼げるアイテムだったという事だ」
「つまり俺達は……」
「お金を道に投げ捨ててた……」
「残念ながらな」
余りに残酷な現実を突きつけられた二人は深呼吸をし、そのまま大きく息を吸った。そして……
「「そんなのあんまりだよぉおおおおおおおおおおおおおお」」
地下水道に悲しみの