ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~ 作:羊merry羊
一同の足取りは重い……
さっき知らされた衝撃の事実に、一部が幽鬼の如き面持ちと足取りでの行軍となっているためである。
「ま、まあそんなに落ち込まなくても、今回は事情を鑑みて組織から幾らか出るよう交渉しよう。少なくとも現場処理を全部任せたスタンピードについては回収された数は把握できるから、そこから分配しておく」
「それって幾らくらいになるんですか?」
提案された二次案により少し回復できたソラが聞く。
「実際に書類を確認するまではわからないが、あの規模のプリズミックなら恐らく一人頭1万から2万って所だろう」
「2万円!?それなら欲しかったアヤネちゃんの限定版CDも買えるぞやったー!いでっ」
現金なもので、既に皮算用を終えているソラは嬉しさに飛び跳ねる。そしてそのままの勢いで天井へと頭をぶつけてしまった。この地下水道は通路の高さは三メートル程確保しているが、忘れてはいけない、彼女たちはプリズミックを上空から攻撃できる性能を持ったジャンパースーツを着ているのだ。本気で跳べばビルの五階位まで跳べる者もいるのだ。
「大丈夫か?一応仕事の一環だからあまりはしゃぎすぎるのは良くないぞ。あと水を差すようで悪いが、スーツや武器の改修や修理にも費用は掛かってしまう。限定版というのがどれ程の値段かは知らないが、ある程度は手元に残すようにはしておいた方が後々苦労が少なくなるとは助言しておく」
「気を付けます……」
耳を垂れ下げシュンとうなだれるソラ。さっきから頭をぶつけたりテンション下がったり忙しい奴である。シオンも可哀そうだとは思うが、この辺りはしっかり財布の紐を管理しておかないと、本人の為にならないので下手なフォローも入れる気はないようだ。
ともあれ一通りの説明も終わったので、改めて部屋を見渡す。鉄パイプやボルト、角材やら何に使うか分からない布等様々なものが置かれている。その中でシオンは、隅のテーブルに乗っていた一枚の紙を手に取る。
「ここの地図の様だな。配管同士の経絡や注釈も書かれている。任務を終えるまで借りるとしよう」
「俺も見せてもらって良いですか」
ほれと差し出された地図をのぞき込むカケル。細かいことはよく分からなかったが、気になる事はあった。
「この奥にある大きいスペースってなんですかね?」
地図の中心から上の方に他の配管や通路が集中する大きなスペースが見られた。
「恐らくだが水源からの水を分配する起点になる箇所じゃないか?想像でしかないが、分配するなら一度貯めておく貯水槽のような物があった方が何かと都合がいい筈だ。そう考えると大きなスペースを取っているのも納得はいくな」
「ゲームだとこういう重要な場所にボスって居がちですよね。ソラはどう思う?」
「なんでもゲームを基準に考えるのやめてよね。でもボクもちょっと気になるな。シオンさん、これから何処に向かうか決めてるんですか?」
「いや、元々地図なんてない行き当たりばったりの予定だったからな。折角だからまずそこに行ってみるか。外れても他のルートに枝分かれしてるから行き止まりで引き返す必要もない」
全員一致したことで、次の目的地は大広間へとなった。
「いや、私意見言ってないからね?」
全・員!一致で決まったのである。
資材置き場を後にすること二十分、現れるプリズミックを一蹴しながら進んでいたが、先行するシオンが止まれとハンドサインを送り警戒態勢を取る。前方の薄暗い道を凝視し身構えていると、暗闇の向こうから対象が姿を現した。
「だからあんな奴等俺にかかればちょろいもんだって」
「ふん、俺の作戦が素晴らしいからこその結果だろう」
「……どうでもいいから早く帰ろう」
白い短髪、赤い長髪、茶色のショートヘアという統一性の無い男女三人組だ。全員見るからに若く、高校生くらいの印象か。
「俺達はスカイジャンパーズのハンターだ。君たち何者だ、ここで何をしてる」
「おわっビックリした!こんなとこで人に会うもんなんだな」
「驚いてないで返答しろ。俺達はゴードンのハンターだ。ここのプリズミックを始末しろと指令を受けてたった今終わらせてきた所だ」
「……おなかすいた」
三者三様の反応であるが、赤い長髪のおかげで現状は掴むことが出来た。
「終わらせた所って、もう全部倒したのか?俺達も同じような指示をだされて来たんだけど」
今度はカケルが問うと、白髪が自慢げに啖呵を切る。
「応とも。俺達期待の新人の活躍によりここのプリズミックは全部倒したぜ!俺の名前はハク、すぐ有名になるから今のうちに覚えててくれよな。ついでにこっちの眼鏡の赤い奴がセキで女のほうがイズミな」
「人を勝手に紹介するな。あとついでみたいな扱いはやめろ。俺の作戦があってこそと理解しろ」
「…………人いっぱい苦手」
なんとも賑やかなチームの様だ。だがお陰で情報は仕入れることが出来た。
「俺達は一応自分たちの目で確かめてから帰るが君たちはこれからどうするんだい?」
シオンはそのまま鵜呑みにせず、あくまでも自ら確認をする模様。他のグループが終わったというから何もせず帰ってきましたでは、社会人としてもありえない事なのでさもありなん。対してゴードンの新人グループの反応は、帰りたいという思いが聞くまでもなくあふれ出ていた。
「俺達はこのまま帰るつもりですよ。折角早く終わったんだから、さっさと引き上げて遊びに行かなきゃ損ってもんです。ちなみにこの先に進んでも何もないっすよ。十匹以上居たプリズミックの集団を俺達が全部倒しちゃいましたからね」
「そうか、引き留めて悪かった。ゆっくりと楽しんできてくれ」
「あざーっす。そんじゃ二人とも行くぞ」
「勝手に仕切るな。迷子になっても捜索願出さないからな」
「……さよなら」
そう言って三人組は去っていった。水路の奥へと消えていったのを確認してからカケルが口を開く。
「シオンさん、アイツ等ああ言ってましたけど信じていいんですかね?」
「情報に虚偽は無いと思うぞ。但し、それだけで終わるとは思えない」
「ですよね。アイツ等が十匹倒してても、ボク達が倒したの三十匹以上超えてますもんね」
人数の差というのはあるだろうが、それ以上に遭遇数自体が違う。ならばもっと良く探せば更なる数が現れてもおかしくは無いのだ。それに別の懸念もシオンにはある。
「彼らの証言にはボスと戦闘したという気配は感じられなかった。ならばまだこの任務は終わっていない」
シオンは地図を取り出し、現在地を確認。それから三人組が通ったであろうルートを数パターン考える。予測された経路を確認すると顔をあげる・
「俺達は地図を見ながら最短で大広場に向かっている。この先、大広場に行けるルートは入り組んでいて、闇雲に歩いているようでは辿り着くには時間がかかる筈だ。それを踏まえると、あの三人は恐らくここには行ってない。でなければ遭遇したプリズミックはもっと居たはずだからな。やはりここは大広場を目指すのが良いと思う」
一様に頷き反対意見が出ない事を確認すると一行は途中プリズミックを蹴散らしながら進んでいくのであった。