ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~   作:羊merry羊

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19.地下水道の奥に潜むモノ

「ここが大広場の様だな」

 

 ハク達三人組と別れてから約一時間が経過していた。広場に近づくにつれプリズミック達との遭遇頻度も増えていき、これまでの戦闘回数は優に二桁に上る。それでも誰一人として負傷者を出していないのは個々の力の高さは無論の事、シオンによる戦況全体を見渡す力が一番大きいであろう。幾度かカケルとソラが襲われそうになった場面もあったのだが、これを予測していたのか将又(はたまた)驚異的反射神経かは本人のみぞ知るところ、瞬時にフォローに入り無傷と相成った。

 

「ふぇえええ、やっとついた。私クタクタだよ」

「そうは言ってもルイカ先輩は後衛だから比較的動かないじゃないですか。俺とかシオンさんのほうがよっぽど疲れてますよ」

 

 カケルの非難は疲れたもんは疲れたんだもーん等という子供じみたセリフと共に流され、その場に腰を降ろす。

 全くこの人は……と残りの者達の心がシンクロしているのもいざ知らず、常にマイペースを貫くのがルイカたる所以である。

 

「まあ確かにここまで休憩らしい休憩も無かったからな。二人も少しここで休んでいるといい」

「二人はってシオンさんは休まないんですか?」

「俺はそんなに疲れていないからな。少しこの辺りを調べて回るさ。それまでゆっくりしているといい」

 

 すぐさま踵を返して遠ざかるシオン。

 

「ここまで結構連戦続きだったのにシオンさんは凄いね」

「俺達とは鍛え方が違うって事なんだろうけど。そうだ、折角だから俺シオンさんに色々話聞かせてもらってこよう。現場じゃなきゃ聞けないこともあるだろうから。ソラは休んでろよ」

「頑張ってねー」

 

 とたとた小走りでシオンを追ったカケルはすぐシオンに追いつく。

 

「どうしたカケル、何かあったか?」

「いえ、この辺りは広い割にパッと見た感じではプリズミックも居ないから、散歩がてらさっきみたいに捜査の方法とか心構えとか色々教えてもらえないかと思いまして」

 

 カケルの言葉を聞いたシオンはふっと笑い、表情を緩める。

 

「流石兄妹だけあって似ているな。リズも向上心が高くてよく俺に指導を願い出ているんだ。飲み込みが早くて教えた技術をすぐ覚えてしまうし、教えてない技だって稀に使っている時もあるから驚かされる」

「アイツはセンスありますからね。元々運動神経がいいから大概のことは出来ますし、シオンさんに教えてもらってるなら尚更でしょう」

「上手く教えられているのかは自分ではわからないからな。ロージアの方が向いてる気はするが」

 

 そういう意味じゃないんすけどねと小さな声でツッコむがよくわからないといった顔をされてしまった。

 

「ところでシオンさん、こういう場所ではどういった事を気を付けて調査すればいいんですか?」

 

 余計な事を喋って馬から蹴られるだけで済むならまだしも、リズに蹴られるのは勘弁と話題を切り替える。勿論これは元々聞きたい事でもあったのだから、真面目に聞くことにする。

 

「そうだな、まず全体の広さや構造を把握。その後大きな物から順にといったところか。正直調べる順番については近い場所からや右から左へ等個人の自由で構わないと思う。ただ、全体の把握に関しては何か起きた時の避難経路や有効活用出来る物を知っておく為にも先にするのを薦める」

「群れに襲われて逃げた先が行き止まりとか洒落にならないですからね」

 

 早速周囲を見渡すカケル。今までの通路とは違い、階段や梯子を登っていく箇所やバルブにレバーなど工場の中に居るかのような構造である。全体の広さは今歩いている通路が100メートル程もある。奥行きについては機械や壁阻害している為詳しくは分からないが、50メートル程ではないかと思う。しかしそれ以上に目を向く物があった。

 

「この下って何ですかね?」

 

 奥へと向かう途中に大きな穴が空いており、下層を見渡す事が出来た。ここから地面までは10メートルほどで下にはスペースがあるようだ。

 

「近くまで行かなきゃ分からないが、ここは貯水槽があるとされる場所だ。ならあの奥にある可能性があるな」

「言い方を変えれば中枢って事ですか。行ってみる価値はありそうですね」

 

 二人は近くに掛かっていた梯子から下へと降りた。そこは上よりも配管等が整理された区画であり、見通しが良かった。なので目的であった貯水槽もすぐに見つけることが出来た。

 

「パッと見た感じ特に異常はなさそうですね。専門知識ないから詳しい事わかんないっすけど」

「ふむ、俺もこういった事には疎いがおかしな点は無いように見えるが……待て、あの溝はなんだ?」

 

 貯水槽の上1メートル程に謎の窪みがあった。正方形の穴で、何かを嵌めこむ様な雰囲気だ。そう思っていると、視界の端に何かが横切った。

 

「あっプリズミックがあそこに!」

 

 シオンがすぐに迎撃しようと構えたが、タンクに纏わりついた為に咄嗟に手が出せなかった。そうしているうちにプリズミックは先程の窪みへよじ登っていく。

 

「シオンさん、俺なんか嫌な予感がするんですけど」

「奇遇だな、俺もそう思っていたところだ」

 

 手出し出来ずに眺めていると、とうとうプリズミックが窪みに到達した。体を反転させると器用に後ろ向きに穴の中に納まっていく。そして完全に収まった時、眩い光が放たれ────

 

 ガッシィィィイイイイイイイイイン!

 

 何処からともなくマンホールのような物が飛来し、派手な音を立てて窪みの位置に被さる。すると貯水タンクから機械のパーツのような物が次々飛び出し、辺りを占拠していくではないか!これにはカケル達も一旦退避することを選択し、急いで道を引き返す。そのまま休んでいた女子組まで走ると息を荒げながら状況説明をした。

 

「つまりプリズミックが施設と合体したって事!?」

「状況を考えればな。ただ、あのタンクに元々あんな窪みは無い筈。それを考慮すると──」

 

 途端ズシン、ズシンと大きな音がした。何かを言いかけたシオンだったが苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

「話は後だ。皆まずはアイツを止めるぞ」

「止めるって"アレ"をですかっ!?」

 

 カケルとシオンが昇ってきた梯子のある場所、つまり中央の吹き抜け空間からこちらを睨むモノが居た。穴から飛び出すは巨大な上半身。下から伸びているであろう下半身を考慮しなくても、優に10メートルはあろうかといういで立ちに圧倒されるソラ。青いタンクをボディーとして配管が複雑に絡み合い、ロボットのような見た目のソレは、体から伸びるこれまた巨大な腕を振り上げスカイジャンパーズへと襲い掛かった。

 かくして戦いの火蓋は落とされた。

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