ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~   作:羊merry羊

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20.巨大な敵との戦い方

 上方から振り下ろされた脅威は圧巻の一言に尽きた。

 地を揺らす振動、空に響く轟音、そして何より震源地に残された巨大なクレーターが破壊力を物語る。

 

「これ洒落にならんでしょう。掠っただけでも死んじゃいますよ」

「総員回避を最優先に動け!攻撃は二の次で良い、なるべく固まらずに常に動いて狙いを付けさせるな!」

 

 一瞬の油断が即、死につながる緊張感にソラの額に冷や汗が伝う。拭う手に違和感を感じ目を向けると、小さく震えていた。こんなコンディションではいつ不測の事態に陥るかわからない。

 

(今はとにかくシオンさんの言う通り回避に専念して気持ちを落ち着かせながら様子を見よう)

 

 余裕なんて無い筈の頭にふと思い出されるのは初の実戦を行った時の事だった。

 

『今まで確認されていないタイプのプリズミックと戦うときの基本は様子見をすること!相手がどんな攻撃パターンをしているか、どう潜り抜けて攻撃に転じればいいか、弱点は何処か。その他もろもろを回避と牽制をしつつ見極めるんだよ!』

 

 ルイカに教わった対プリズミック戦の基本。普段はあんな性格の割に、決めるべきところだけはしっかりと決める先輩の姿が浮かび、そして今また傍で一緒に戦っている。真剣な表情で必死に牽制をしつつ動き回るルイカを見ていると、何故か笑みが零れふっと肩の力が抜けた。

 

(先輩たちが居るんだ。ならサポートをするだけでも力になれるはず。シオンさんだっているんだ、言われた通りにしてればきっと上手く行く。神龍事件に比べたらこんなの楽勝な筈だもんね)

 

 もう一度手を見つめるとそこにもう恐れはなかった。

 

「ほーらこっちだよ!人参ミサイルをくらえ!」

「いきなりどうしたソラ?テンション上がってるな」

「ちょっとビビってたけど、先輩たちがいるならいつも通りにしてれば上手く行くって気付いただけだよ。おりゃりゃりゃりゃ」

 

 完全に調子を取り戻したソラは広くて障害物のある空間を利用して縦横無尽に跳ね回る。白い軌跡が駆けた後には無数の弾幕が張られ、誰よりも目立っていた。それに釣られてか、敵もソラをターゲットにして拳を振るうが全くついていけてないようだ。

 

「ソラ!その調子で左手方向に誘導してくれ。こっちに考えがある。ルイカも念のためそっちに回ってくれ」

「わかりました!ついてこいウスノロ!」

 

 言われた通りソラは敵の左手側だけで立ち回っている。ルイカも合流し、弾幕戦を醸し出している。

 

「シオンさん、どうするんですか?」

「この手のデカブツには火力が物を言うのは分かると思うが、それだけでは倒せない敵もいる。そんな時に使える手段をレクチャーするから見ていろ」

 

 シオンの武器である風牙に風が集まっていく。それはどんどん威力を増していき、今では小型の台風の様に渦巻く。

 

「ソラ!そのまま奥へと進んでくれ!あとなるべく高い位置に陣取るように」

 

 はーいと返しつつ直ぐに壁を蹴って上へと駆け上がる。するとそのタイミングで敵の右手が体の動きに合わせて捻るように打ち出される。縦ではなく横の動きに加えリーチも伸びるこれにカケルは「あぶないっ」と叫んだが、その瞬間暴風が吹き荒れる。ソラへと襲い掛かる筈だった拳はそのまま軌道を逸らされ、その勢いを保ったままあらぬ方向へとすっぽ抜ける。途端────

 

 ビキィィィイイイイイイイイイイッッッ!

 

 敵の腕が異音をあげてへし折れた。呆然とするカケルにシオンが解説する。

 

「デカい奴はそれに合わせて防御力も高い傾向が強い。自身の火力だけでは突破出来ない場合もあるだろう。そんな時に使えるのが今の敵の力を利用して攻撃に転換する方法だ。ついでに言うなら今の攻撃で敵の腕の中身が見えている。どうやらアイツは複雑な機械の組み合わせではなく、材料を寄せ集めて束ねた存在のようだな。ロボットではなくゴーレムに近いか。この手には電気や火器が効きづらいから覚えておくといい」

「そんな事も分かるんですね。まあ火器はともかく電気は使える場面が中々ないと思いますが留めておきます」

 

 ゴーレムの右腕は肩から脱臼したように伸び切って動かなくなっており、振り回そうと体を動かすが力なくプラプラ揺れている。とは言っても伴う質量が並ではないだけに、それはそれで怖いのだが。

 

「もう一本の腕も同じように破壊するんですか?」

「いや、敵が学習して同じ戦法が通用しない可能性がある。ならこっちは正攻法で単純火力で落とそう」

「単純火力って……あれを真正面からぶち抜くんですか!?」

 

 驚愕の発言に口を開けて固まるカケルにシオンは更なる爆弾を投げる。

 

「以前ならもっと威力が出せたが、さっきの手ごたえなら今の力でもなんとかなる筈だ」

 

 開いた口が塞がらないカケルは『アンタ一体どんだけ強かったんスか』と言いたかったが開きっぱなしの口では話すことが出来なかった。

 

「よし、今度はカケルが注意を引き付けてくれ。ソラとは違って遠距離からチクチク削る感じでいい」

「了解です。シオンさんはどうするんですか?」

「俺は懐に潜り込んで一発かましてくる」

 

 あんな物を相手に接近戦とは信じられなかったが、あのシオンが言うのだから勝算があるのだろう。迂回しつつ接敵していくのを見送りながらカケルは気を取り直して拳を振るうのだった。

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