ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~   作:羊merry羊

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21.繰り出される二つの奥義

 一陣の風となって疾走するシオンは先程のソラよりも更に早く、最早残像しか追えない。これはシオンの持つ風を操る特性により、追い風を身に纏い加速する技であった。これにより高速移動を可能にし、跳躍力の上昇、果ては擬似的な飛行能力まで得ることが出来るのだ。とはいえこの障害物が多い空間では宙を飛ぶ事は無いであろう。

 一気に接近して鎌で切りつけているようで、躯体(くたい)に次々と傷跡が刻まれていく。カケルはその光景に驚いているが、シオンは思ったより硬く刃の食い込みが浅い手応えに渋い顔をしていた。

 

(やはり大技を使わなくては効果が薄いか)

 

 シオンは一度敵から離れると腰を深く落とし、力を貯める。その際カケルの方へ向くと、引きつけるようアイコンタクトをする。指示を理解したカケルは攻撃を激化していく。それに釣られてゴーレムもカケルの方へと攻撃をしようとするが、遠くにいるため攻撃が届かなかった。苛立つように何度も拳を叩き付けるが、届かないものは届かないのである。そうやって拳を振るっていると、ビキッと嫌な音がカケルの耳に聴こえた。

 

「ん?なんかこっちから変な音が、ってぶほっ!」

 

 突然カケルに大量の水が叩きつけられた。どうやら壁を通る配管が破裂したようなのだ。

 

「ぶっは!なんでいきなり水が……」

 

 するとゴーレムが肩を揺らして喜び始めた。察するに先程の乱打はただ叩きつけていたのではなく、施設の特定箇所にダメージを与える事によって配管を破壊する計算された攻撃のようだ。

 

(コイツ、そんなことも出来る知能があるのか。さっさと片付けないと何をしてくるかわからないぞ)

 

 改めてカケルは気を引き締め、全方向に注意を向けつつ牽制を繰り返す。先程までと違い、移動をしながら一つ処に留まる事をしない。そんな様を見つめていたシオンはほっと胸を一撫でし、より力を溜める。渦巻く力が体全体を覆い、小規模な竜巻が形成される。ここにきてゴーレムもこちらの意図に気付いたのか、狙う相手を変えるべく態勢を切り替えようとしたが既に遅かった。

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

「くらえ、風牙断空陣」

 

 突如シオンがその場から消えた。その身に纏っていた竜巻は今やゴーレムの全身を取り囲み、身体をねじ切らんばかりに軋ませる。いやこれはシオンが形成し制御している暴風、正しくねじ切ろうと意思を持って襲い掛かっていた。その証拠に関節を極めるようにゴーレムの残された腕がいびつに歪む。必死に抵抗しようと藻掻くが、その力を受け流し逆方向へと誘導する陰がいた。これこそがシオンであり、荒れ狂う空間を自在に飛び回り敵を滅多切りにするのがシオンの持つ奥義『風牙断空陣』であった。風の流れに乗じて繰り出される連撃にどんどんあらぬ方向へ曲がる腕。そうしてとうとう終わりを迎える。

 ゴギンッと甲高くも鈍い音が響き、ゴーレムの左腕も折ることに成功した。これにより敵の攻撃手段は無くなり、後は安全に本体を潰す作業をする……筈なのだが、

 

「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

 

 ゴーレムが天高く咆哮を挙げた。カケルは身が竦む思いをしたがパトランプリズミックとの戦闘による経験が活きた。咄嗟に片耳を塞ぎ地面を殴りつけ自身の周りに音の壁を作ってこれを相殺、なんとか恐慌状態にはならずに済んだ。

 

「アイツ喋れたのかよ。マジビビるわぁ……」

 

 遠巻きに窺っていると、再び咆哮が挙がる。しかし今度は様子が違う。胸元に光が収束していくのだ。

 

「これってまさか……」

 

 頬を伝う一条の雫、それが顎から地面に落ちたのを皮切りに全力で横っ飛びするカケル。

 

 ピチュ────ン!

 

 その跡を光が通過する。放たれた奔流は壁へと吸い込まれ、消失させた……

 

「ビームとか反則じゃん……」

 

 相手に残された攻撃手段等精々頭突き程度のものだろうと思ってた。だが現実はそんなに甘くなく、まだ奥の手が残されていたようだ。

 

「大丈夫か!」

「はい、間一髪でしたがなんとか」

 

 シオンが駆け寄って心配をしてくれたが、ギリギリ回避に成功したので問題はなかった。

 

「それよりアレの対処ってどうすれば……」

「難しいな、チャージも短かったしスピードもある。どうしたものか」

 

 流石のシオンもこれには直ぐ対応策を練るのは難しい様だった。その反応に事態の重さを受け止めたカケルだったが、ふと疑問が湧いた。

 

「でもなんで今まで撃たなかったんですかね?チャージに時間が掛かる訳でも無いなら最初から撃ってもよさそうですよね」

 

 ハッとしたシオン。確かにその通りだ。片腕を機能不全にされた時もやったのは遠隔での配管破壊で、その時に撃っても良さそうなものである。それが行われなかったという事はつまり……

 

「一発限りの大技、もしくは何らか制約が掛けられたものである可能性が高い、か?」

「だったら次撃たれるまでの間に警戒しながら攻撃すればいいってことですね」

「油断は禁物だがそれで行くのがいいだろう」

 

 策とは言えないもののやるべきことは決まった。ならばあとは実行するのみ!と息巻いていた所に、ダダダダダと銃弾が降り注ぐ。

 

「うりゃりゃりゃりゃ!こっちを忘れるな!」

 

 左サイドに回り込んでいたソラが跳び回りながら銃撃していた。厚い装甲に覆われて効果は低いようだが、相手の気を散らすという点では有効なようだ。

 

「こちらから意識が逸れたな。今のうちに俺達も接近して攻撃に加わろう」

「了解です」

 

 共に駆け出しシオンは右サイド、カケルは正面に分かれて攻撃を再開する。身の回りを飛び交うジャンパー達に苛立ちを感じているのか身をよじるものの、既に機能していない腕では振り払う事も出来ず悲しき声を上げるゴーレム。と、その時ある箇所に掠ったソラの弾にビクンッと身体を引き攣らせた。

 

「なんか今変な反応したよ!」

 

 他の者にはよく見えなかったが、正面にいたカケルには被弾した部位がしっかりと見えていた。

 

「あそこは確か最初にプリズミックがハマった場所だよな。もしかして……ソラ!ミサイルで胸のマークを集中攻撃してくれ!」

「アイアイサー!」

 

『渋』と書かれた鉄板に次々攻撃が命中していく。

 

「ガ、ガガガ、ガガ」

 

 先程マシンガンの弾が掠るだけで反応した場所に銃撃よりも威力のある攻撃を連続で叩きこまれたゴーレム。体を痙攣させながら途切れ途切れの言葉を紡ぐ。そうしたかと思うと、バッと頭を下に向けて体を折りたたみ防御しようと試みる。が、そんな思惑も叶うことは無かった。

 

「折角うちの新人が見つけた弱点なんだ。隠してないで大人しく見せてくれよ」

 

 いつの間にかシオンがゴーレムの顔の下に陣取っている。風を纏った一撃を顎目掛けて打ち込むと、その威力と風の推進力により大きく仰け反らすことに成功した。そこに追い打ちをかけるかの如く降り注ぐミサイル。とうとうその威力に耐え切れず『渋』の鉄板が吹き飛んだ。そこに残されるはハマって身動きの取れないプリズミック。現れし影は両手に光を(たた)えし者、それ即ち────

 

「こいつで終わりだ!ゼノディザスターッ!」

 

 カッ!

 

 光がプリズミックに吸い込まれる。一瞬遅れてドオンッと激しい爆発が起こり、全身の至る所から炎と煙が立ち上る。ゆっくりと前倒しになるゴーレムは、粒子へと姿を変えていくのであった。

 

「二人ともよくやった。新人がこのクラスのプリズミックを撃破するとは信じらん。凄いぞお前たち」

「よっしゃー!シオンさんに褒められた!頑張った甲斐があるぜ」

「ありがとうございます!いけない、キューブ拾わないと!」

「ソラ、ズルいぞ!俺も拾う!」

 

 戦闘していた時よりも必死な顔でキューブ集めをする新人二人に苦笑いしてしまうシオン。と、カケルが何やら拾ったものを見せてきた。

 

「シオンさん、これってあの時の奴と同じですかね?」

 

 その手にはパトランプリズミックの時に拾った虹色のプリズミックキューブに酷似した物が握られていた。

 

「またこれか……一体何が起こっているんだ」

「そういえば勢いと流れで倒したって喜んでましたけど、これ本当に俺達が倒せたんですか?俺最後に中のプリズミック殴っただけですし、俺よりシオンさんの方が攻撃力も高いじゃないっすか。あれであの巨体を壊せるのか自身無いんですけど」

 

 今になって冷静に分析をするカケルにシオンから解説が行われる。

 

「恐らくカケルが倒したプリズミックはあのゴーレムの操縦士か核となる存在だったんだろう。プリズミックを倒すとその支配下にあるものはコントロールを失い自壊する。操縦士なら自身と繋がりのある機体も消滅するし、核であるならアレそのものがゴーレムの命と言える。どちらにせよあれを倒す事でゴーレムを倒したことは間違いない」

 

 そこまで説明を受けたことでカケルも納得することが出来たようだ。

 

「良かった、これで今倒したのはコピーで本物は別にいるとかいう漫画的な展開も無いわけですね」

「そうだな、倒したのが所謂(いわゆる)中ボスでもっと強いボスがいるといった場合も無きにしもあらずだが、今回はその心配も無さそうだ。これでミッションコンプリートだ」

 

 話を聞いていたソラが身震いして「ここからボス連戦とか考えたくないよ」とこぼすが仕方が無いことだろう。シオンも言っていたが、二人はまだ新人なのだ。カケルももう暫く戦いはいいや等とクタクタのようだ。

 

「まだまだ独り立ちは早いと思っていたがこの調子なら少し早めに次の段階に進んでも良いのかもな」

 

 シオンの独り言は二人に届く事はなく、彼方へ流れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜新宿某所〜

 

 薄暗い部屋の中、モニターを見つめる人物がいた。

 

「地下に放った実験体の反応が消えたか。アイツは半端な力では倒せない筈だが大物が動いたか?最近はプリフリートといいシルバースタンピードいいイレギュラーが多い。早急に研究を進めなくてはこちらが成果を出す前に認識されてしまうかのうせいもあるな……忌々しいジャンパー共め」

 

 紡ぎ出される言葉の真意は不明。だがカケル達を待ち受ける事件は着実に進行している様だった……

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