ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~   作:羊merry羊

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24.現れた巨大トカゲ

「何なのよアイツ、キモ過ぎるわ。貴方達早くアイツを倒して!」

 

今までの敵よりも大きくあふれ出るインパクトにより半狂乱となるアルマ。目の前に現れた存在は、同じ造形でも大きさによってこうも印象が変わるものかというのをまざまざと見せつけてくれた。大きな眼はより大きくこちらを睨み、肌を覆う鱗は凹凸を際立たせている。そこに拍車を掛ける如く、水で濡れテラテラ光る様は爬虫類が苦手なものに大いなる恐怖を与えるのは誰の目にも明らかであった。

 

「アレは流石にボクもちょっと無理かも」

「まあ分からんでもないけど。ソラはアルマさんを離れたところに誘導してくれ」

 

アルマは後ろを向いてしゃがみ込み、顔を覆っている。ここまで拒絶反応が出ていると戦うどころの話ではないが、このままこの場に居ては敵に狙われたり余波を受ける危険性が高い。ならばまずすることは、避難させることとその時間を稼ぐことだ。カケルは前に出て挑発をしながら攻撃し、注意を引き付ける。その隙にソラはアルマに駆け寄った。

 

「アルマさん、今のうちに離れましょう」

「うう、なんで私の庭にあんな奴らが繁殖してるのよ……」

 

ソラに手を引かれながらその場から離れるアルマ。本来の自分の力なら問題なく倒せるレベルの敵を新人に任せるという屈辱に涙を滲ませ肩越しに敵を睨み付けるが、カケルに向かって伸ばされた舌を見てしまい『ヒイッ』と引き攣った声を出し向き直る。

 

「アルマさん無理しないでここに居てください」

 

二人は離れた位置にあった花壇についた。背が高い花が咲いており身を隠すのに丁度よく、茎の隙間からチラっと覗くこともでき確認しようと思えば戦場の様子も窺うことが出来る。安全面を考えるなら状況が全く分からない所に位置するよりある程度情報があるほうが良いのである。

 

「それじゃボクも参戦してきますから気を付けて下さい」

「それは戦いの場に行く側のセリフじゃないでしょ。気を付けてね」

「はいっ!」

 

言うが早いか自慢のラビットスーツの跳躍力を活かしてあっという間に遠ざかっていく。その姿を見送ったアルマは歯ぎしりをしながら見送る。

 

「この私が駆け出しの奴らに後れを取るなんて……」

 

 

 

 

 

これまでであれば、例え今回と同じような敵が現れても部下に任せれば問題は無かっただろう。だが今回は一緒に戦っているのはゴードンとは関係のない者達だ。その上向こうはこちらを気遣っているばかりで、自分は先達として何も出来ていない。完全にあるべき立場が逆転していた。普段どれだけ周囲に助けられてきたか、アルマはこの時初めて知る。社長令嬢という立場で金と権力を持ち、ジャンパーとしての強さとプライドがあった。しかし今この場においてはそれら全て意味がなかった。それらはそれに対応できる他者が介在しなければ機能しないものだからだ。プリズミックに対する恐怖や嫌悪感ではなく、自身の情けなさに涙が浮かんだ。茂みから現場を覗くと今も必死に戦う二人がいる。苦戦しているようで、ぬめる肌に攻撃の通りが悪いように見える。打撃や銃撃は体を滑り、衝撃波や爆撃は鱗に阻まれて効果が薄いようだ。対するトカゲは大きな体から繰り出す伸びる舌で二人を捕まえようとし、近づく者には爪撃をお見舞いする。負けじとカケルが纏わりつこうとするが、身体を捻り尾を振り回してきた。溜らず距離を離すがそこに好機と見たか一歩踏み出したトカゲが再び爪を振るった。その攻撃を回避しようした結果大きく体勢を崩すカケル。そこに狙いを澄ました敵は尻尾を発光させて振り上げた。

 

「危ないっ」

 

思わず声が出てしまったが、離れた位置にいる自分の声が届くわけもなく、仮に近くに居てもこの震える体ではどうすることも出来なかっただろう。無慈悲に振り下ろされる鉄槌に目を背けたくなった。だがそれは杞憂に終わる。

 

 

 

 

「させないよ!」

 

頭上に敵の影が降りた時、反射的にヤバイと感じたカケルだったが、そこに更なる影が飛び込んできたのだ。白い影は迫りくる尾に向かって人参をばら撒きながらやってきた。だがこれまでのやり取りからこの攻撃では防げないと"二人"は思った。

一人は無茶だと思った。

もう一人はやっぱり無茶だと思った。

だが二人の思いは一緒ではなかった。

 

「おりゃあああああああああああああ」

 

ゲシィィィィィッッッ!

なんとソラは発射したミサイルを後ろから蹴りこんだのだ。そしてそのまま一緒くたに尻尾に押し込み両者がぶつかり合い派手な爆発を起こす。爆風に押され地面を転がるカケルとソラ。どうやら相打ちになったようで、プリズミックも尻もちを付いている。

 

「ソラ!お前なんて無茶すんだよ!」

 

詰め寄るカケルに、あははと乾いた笑いを返すソラ。

 

「いやぁ、ジャンパースーツってジャンプ力上がるから蹴る力も上がるじゃん?私のスーツってウサギがモチーフだからその辺折り紙付きだし、ハルタさんみたいな凄い蹴りなら弾けるかなって思ったの。でも流石にあれは真似できないから別の方法でブースト掛けれないかなぁって思い付きでやったんだけど、咄嗟だったしちょっと無謀だったねえ」

「ちょっとどころじゃないだろ、脚大丈夫なのか?」

 

ソラの脚は装備が焦げて焼け付き、損傷していた。肌は露出していないものの、受けたダメージは多そうに見える。

 

「怪我は多分してないと思う。でもちょっと痺れてて、少しの間立てないかも」

「マジかよ……これは流石にヤバいぞ」

 

戦場で動けないのは致命的である。動けるものは守りに入らざるを得ないし、自分だけではなく他者にも配慮した立ち回りが要求される。だからこそ先程はアルマを離脱させて憂いを無くした訳だが、また振り出しに戻った。いや、正確には先ほどよりも状況は悪い。ソラを避難させる為にはカケルが運ばなければならないが、その為には護衛か敵の注意を引き付けるものが必要だ。だがここにはそれを実行する戦力が残っていない。プリズミックに視線を向けると、向こうも立ち上がろうとしているところだった。が、上手く行かずに再び転んでしまった。プリズミックは不思議そうに自身の体を見ると、先程まで生えていた尻尾が中ほどから消失していた。どうやらソラの攻撃は相手の防御を貫き、ダメージを与えていたようだ。

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

 

のたうち回るプリズミック。だがそれにより起き上がりやすい体勢を見付けたのか、暫くすると再び二足で地を踏みしめた。

 

「これは万事休すか。いや、俺がどうにかしないと今他にやれる奴なんていないだろうが」

「カケル!ボクの事は良いから逃げて!」

 

決死のカケルと必死なソラ。このままではどちらも共倒れになりかねない。互いに相手を守りたいと願うが、そんなことはお構いなしに尾を切られて激昂したプリズミックは二人を屠るべく飛び掛かってくる。せめて後ろにいるソラへ攻撃を通さない様にと腕を交差させ足腰に力を入れるカケル。勢いを載せて振るわれた爪は止めることは出来ないだろうと悟る。だがそれでも退かないと覚悟し構える。そしてカケルの頬を熱いものが撫でる。

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

 

プリズミックが叫び、よろけながら後退する。大きく開けた口から煙を吐き、頭を振り回して悶えていた。

 

「へ?」

 

何が起きたかわからない。自分は攻撃を喰らった筈ではと頬を擦ると、茶色く焦げたものが付着する。ますます疑問が募るが止まった空気はソラによって割られた。

 

「アルマさん?」

 

地面に倒れてまだ起き上がれなかったソラが見つめる先にはアルマが立っており、震える肩で息をしながらパラソルをライフルの様に構えていた。

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