ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~   作:羊merry羊

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26.本物を求めて

「アルマさんこの先なんですか?」

「多分ね、この先に水生植物を扱ってる大きい池があるの。"アレ"以上の何か潜んでいるとしたらあそこ以外考えられないわ」

 

 十数分前まで戦っていた気色の悪いトカゲを思い出し、顔を(しか)めるアルマ。

 

 

 

 三人が連携が始まってからは一方的な展開だった。あの時点でプリズミックは部位欠損が激しく満身創痍、攻撃も尻尾や舌が無くては単調になり動きが読みやすかった。そんな状態では前衛で動き回るカケルを捉えることは出来ず、腕を伸ばせばソラによって弾かれ、引こうとすればアルマに足元を焼かれるといった具合で涙目である。最後は再度口の中に攻撃を受けるという拷問のような仕打ちにより光へと還ったのだった。

 これで事件解決と喜んだ一同はアルマ主導の元、庭園を観覧することにした。一応、被害状況と安全面の確認という名目ではあったが、自慢の庭を見せ楽しませることでアルマなりのお礼をしたかったのだろう。二人もこれを承知し案内を受けていたのだが、ここで重大な問題が起きた。

 途中一匹のトカゲ型プリズミックが通りがかったのである。これの何が問題かと諸君は思うだろうが非常に大変な事なのである。以前シオンが解説していたが、集団化したプリズミックが繁殖型だった場合、ボスに当たる者を倒すとコロニーは瓦解する。これは一瞬で起きる訳ではないが、プリズミックは擬態模倣する種族である以上、上位の者が滅ぼされるとそれに関連する擬態は直ぐに解かれるのが一般的だ。これは上位の者が元となった存在を模倣しているのに対して、下位の者は上位者を模倣している事に由来する。噛み砕いて伝えると、真似をする者が居なくなって形を保てなくなったという訳だ。

 ボスを倒した今、トカゲ型プリズミックは消え去り、周辺に逃げ遅れたプリズミックが居たとしても、通常のキューブ型であるはずなのだ。そのことから導き出される答えは『更に上の存在がいる』だった。そしてアルマの予想では、大型トカゲが水場から飛び出してきた事もあり、アレよりも大きな個体がもっと大きな池に生息している可能性が予測されるとの事。

 こうして一同は引き続きプリズミック退治をするべく、水生植物を扱う池へと向かうのだった。

 

 

 

 

「ここがうちの見せ場の一つ『ビクトリアガーデン』よ」

 

 アルマに案内された場所は横幅五十メートルはあろうかという巨大な池だった。大きな蓮の葉が広がっており、薄桃色や黄色、青等様々な花が咲き誇る美しい場所だった。

 

「うわー綺麗。素敵な場所ですね」

「俺この葉っぱテレビで見たことある。上に乗れる奴だ。アルマさん、ちょっと乗っても良いですか?俺夢だったんすよ」

「そんなのダメに決まってるでしょ!これは遊ぶものじゃなくて見て楽しむものなんだよ!」

 

 カケルはソラに叱られちょっと調子に乗り過ぎたかと反省する。だがアルマは意外な返答をする。

 

「あら、いいわよ?私もちょっと興味あるのよね。よく挑戦しようとした人は知ってるんだけど、目の前でやった所は見たこと無いのよ」

「マジっすか!?それじゃお言葉に甘えて」

「気を付けなさい」

 

 この言葉をキチンと聞くか一度振り向けば後の展開も変わったのかもしれないが、カケルは気付くことは無かった。アルマが悪戯っぽい笑みを浮かべている事に。

 

「あの、アルマさん。本当に良いんですか?」

「ええ、貴方もよく見ておくといいわ。多分滅多に見れる光景じゃないだろうし」

 

 こんな素晴らしい景色を玩具にするなんて激怒すると思われたアルマが楽しそうにしている。あれほど自慢の庭だと言っていたのに、その言動とのギャップにどこか違和感を抱きながらも言われた通りカケルを見守ることにした。ああ言ったものの、実はソラ自身も興味はあった。ファンタジーの世界が現実に舞い降りたような光景を喜ばない女の子など居やしないのだ。この場にいる者全員がワクワクとしつつ、カケルがゆっくり歩を進めていく。

 

「そーっと、そーっと。おりゃっ」

 

 池のふちまでたどり着いたカケルは恐る恐る足を差し出し、葉の上に足が掛かると万感の意を込めて飛び移った。しかし、

 

 バシャアアアアアアアアアアアン!

 

「えええええええええええええ!」

「あっはははははははははははは」

「ぶぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」

 

 なんと大方の期待を外してカケルは池の中に沈んでいったではないか。三者三様の反応を見せつつ、慌てて引き上げに向かう。

 無事池の(ほとり)に達したカケルは両手足を付きながら息を整えていた。

 

「ぶはぁ、酷い目にあった……」

「ふふふ、良いものが見れたわ。ありがとう」

「アルマさん、もしかしなくてもこうなる事知ってました?」

 

 ずぶ濡れのカケルを楽しそうに眺めながらアルマは肯定した。曰く、この蓮の葉『オオオニバス』であるが、これに乗る重量は20~30kgが限度であり、子供ならまだしも体重が重い大人はほぼ乗れないのだとか。おまけに葉のふちがせり上がっていることにより揚力が働きやすいのだが、そのまま上に物が乗ると、一部途切れている個所から浸水し、あっという間に沈むのである。よく体験会などで乗る葉では、この部分をテープなどで補強し、浸水しないように工夫されているのだ。それを一切手入れしていない物に乗るとどうなるのかはご覧の有様である。

 

「酷いじゃないっすかアルマさん、お陰で死にかけましたよ」

「そういう割には貴方余裕あったじゃない。親指立てながら沈んでいったの見逃してないわよ。こっちこそ腹筋が攣るかと思ったわ」

「うぐ、よく観察しておいでで」

 

 実はカケルが溺れかけた地点は水深80センチメートルと脚が付くレベルのものだった。焦りはしたものの、落ちてすぐ脚が付いたのでパニックにはならずに済み、折角なのでちょっと遊ぼうとしたカケルだった。

 

「でもそれを置いといてもこの仕打ちはあんまりじゃないですかね?」

「ごめんなさいね。貴方が好奇心を抑えられなかったのと同じで、私も抑えられなかったのよ。それに……」

 

 今までの笑みを消し、スッと引かれた瞼を何処かへ向けるアルマ。二人もその視線の先を見ると、池の中心が波打っていた。

 

「この池は外周部こそ脚が付く位の深さだけど、中心に向かうにつれて深くなっているわ。恐らくボスがいるならソコね。そして大きな音を立てれば縄張りを荒らされたと思うんじゃないかしら?」

 

 ズズズズと低い地響きを唸らせ、池が隆起する。その高さは徐々に増していき、10メートルまでに達した。ドーム状に膨れた水は徐々に流れ落ち、木々に覆われた蒼い格子模様が姿を現す。

 それは巨大な亀であった。甲羅から飛び出す腕は岩のような質感をしており、人間なら肘に当たる部分には棘が生え、鋭利な爪と合わせて対象を薙ぎ払うと容易に想像できた。

 

「GUGYUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!」

 

 住処を荒らされ怒りを顕わにする敵を前にし、警戒を強める二人。そう、またしても"二人"である。

 

「なんでトカゲを倒してやってきたのに最後に出てくるのが亀なのよ!折角少しだけ慣れてきたのに台無しよおおおおおおおおおおおおおお」

「そんなこと言ってる場合ですか!来ますよ!」

 

 どこか緊張感が足りずイマイチ締まらないジャンパー達だが、無情にも戦闘は開始されるのだった……

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