ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~ 作:羊merry羊
「やりましたねソニヤさん」
「うちら二人の最強コンビに勝負を挑むには10年早いっちゅうねん。わっはっは」
いえーいとハイタッチを交わす二人とは対象に、床に座り込んで荒い息を吐いているカケルとエルメス。
「いやいや、なんで会って間もないのにそんな息合ってんの?」
「そうです!これは事前に入念な準備をしていたに違いないデス」
「そんな事言われても合っちゃうもんはしゃーないやん」
やいのやいのと抗議の声を挙げる敗者達。しかし無慈悲な現実をそのまま叩きつけるソニヤ。
「いやーしかし久しぶりにええ運動したわ。いい汗も掻いたし、ひとっ風呂浴びてさっぱりしよか。ソラちゃんも一緒にどうや?」
「そうですね、さっき入っちゃったけどこのままだと風邪引くかもしれないし、お付き合いします」
「ほなら行こか。エルメスもいつまでも座っとらんで着いてきー」
「落ち込む暇も与えてくれない鬼畜なのデス」
立ち上がってフラフラと後を着いていくエルメスを心配するカケルだが、その姿は自分達のいつものノリに重なって見え、「これは落ち込んでる演技をして楽しんでいるのでは?」と思ってしまった。
「さて、俺は扇風機にでも当たりながらサイダーでも飲むかな」
女性に比べたら男なんてこんなもんである。自販機で買ったラムネを飲みながら休憩所の畳に寝転がりテレビのスイッチを入れるカケル。するとニュース速報が流れていた。
『現在東京各所にて目撃されているプリズミックですが、銃火器を備えている個体が確認されており、非常に危険と思われます。一般市民の方は普段の襲撃時よりも流れ弾や建物が崩落する恐れがある為速やかに避難をするよう願います』
「あちゃー、今日も向こうは大変なことになってるな。でも俺達休暇だし、ここ箱根だから今から向かおうにも電車とかも止まってるだろうから無理だよな」
普段は自らプリズミックと対峙しているハンターは、今この時ばかりは対岸の火事の如く見守っていた。本人は気付いていないが、ニュースで紹介されているプリズミックの画像がプレーンな状態のプリズミックにアルファベットのCの様な手が生えていたり、チョンマゲのように頭上から生えた小さな砲台など一見間抜けな絵面だったせいで、ここ最近退治してきたボスクラスの巨大さ、凶悪さと比べて可愛いものだと感覚が麻痺してしまった。
「この程度ならシオンさんやゴードンの人達もいるし、その内解決するだろ。ふぁああ〜、落ち着いたら眠くなってきたな。少し昼寝するか」
まるで中年オッサンのようなカケルであった。
一方その頃女湯では……
「ソニヤさんそっち行きました!」
「まかしとき!おりゃあ捕まえたでぇっ!エルメス!」
「ちぇりゃーデス」
エルメスの持つ巨大なペロペロキャンディーから光が放たれる。ソラが眩しさから覆った目を開けると、そこに敵の姿はもう無かった。
「お疲れさまです。だけど二人がジャンパーとは思いませんでした」
「そりゃこっちのセリフや。でもさっきの卓球のお陰もあってか連携しやすくて助かったで」
数分前、三人が温泉に入ろうと扉を開けると、そこには一匹のプリズミックが頭にタオルを乗せて入浴していた。
一瞬何が起こったのかわからずその場にいる者全員の動きが止まる。
お湯に流された手桶がカポーンと音を立てると時は動き出し、目があったプリズミックは『の○太さんのエッチー!』と言わんばかりに、いきなりビームを放って攻撃してきた。
そう、これは先程カケルが見ていたニュースに出てきたタイプのプリズミックである。
三人は慌てて脱衣所に戻り、各々の対プリズミック兵器を手に取り応戦したのだった。
「改めましてスカイジャンパーズ所属のソラです。よろしくお願いします」
「ウチらの所属はアイアンバレットや。仲ようしたってな」
「アイアンバレット?」
聞いたことのない組織名に首をかしげるソラ。その反応も予想していたのか、エルメスから続きが語られる。
「ワタシ達アイアンバレットは、移動型要塞を使って世界を旅しつつプリズミックをやっつける組織なのデス。日本に来ることは今まで少なかったから、こっちではあまり知名度が無いかもしれませんネ」
「そうだったんですか。ちなみに世界中を回ってる人達から見て、スカジャンについてはどんな知名度ですか?」
「そらモチロン知ってるがな。テンカイさんやシオン含めて神龍事件の立役者が3人もおる凄い組織やしな。あとは個人的にソフィーさんがおるからちょこちょこ情報仕入れるさかい」
父親の名前を聞いて一瞬顔を
「ソフィさんを知ってるんですか?シオンさん達に比べたらそんなに有名じゃない気がするんですけど」
「ウチらアイアンバレットはジャンパーの才能が無い者でもプリズミックを倒せる武器を開発しとんねん。で、ウチはその開発部門の責任者やっとるんや。だから天才同士っちゅう事で、色々参考にさせてもろてる訳やな」
なるほどと相づちを打つソラに、エルメスが耳元に顔を寄せて囁く。
「自称天才とか言ってマスけど、発明した物が爆発するのなんて日常茶飯事なのデス、っていたた痛いのデス!」
「しょうもない事ゆーとるんはこの口か?あんたの装備も開発したのは誰やと思っとんねん」
「でも先週も試作機を造って爆発してたじゃいひゃいひゃい」
餅のように伸びる口を引っ張られながら抗議する姿に、ソラはあははと乾いた笑みを浮かべるしかなかった。そんなエルメスを見ていると、先程の戦闘で感じた疑問を思い出す。
「そういえばさっきのプリズミックって変わった形の武器に擬態してましたけど、あれってエルメスさんの装備に似てましたよね」
「実はうちもそこが気になっててん。製作者のうちから言わせてもらうけど、あれは間違いなくエルメスの兵装やった」
「でもワタシはさっき脱衣所で外すまではずっと身につけてたから、どこかで接触して擬態するなんて事ありえないはずデス」
うーんと唸る三人だが、ここで話をしてもキリがないとして、一旦本部に連絡を入れることにした。折角の温泉であったが、疑問を解消したあとにゆっくりと浸かろうと約束し、引き返すのだった。