ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~   作:羊merry羊

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32.エルメスの装備

 浴場から引き上げてきた三人は、一応カケルと合流してから本部に連絡しようと思い休憩所までやって来た。

 

「ってボク達がオフの日にプリズミックと戦ってるのに、一人だけ休みを満喫するなー!」

「痛って、何だよソラ。人が気持ちよく寝てたのに邪魔するなよ」

 

 畳の上で眠りこけていたカケルを見つけたソラは、問答無用でゲシッと蹴りを入れて叩き起こす。

 

「寝てる場合じゃないよ。お風呂にプリズミックが現れたんだよ。しかもなんか訳ありっぽいタイプ」

「訳ありって何だよ」

「その辺についてはウチから説明させて貰うわ」

 

 ソニヤが説明を引き継いで、事のあらましを話した。最初は施設内にプリズミックが出現したことに驚いていたカケルだが、話を聞く内に自分にも心当たりがある事を思い出す。

 

「実は俺、皆が風呂に行ったあとニュースを見てたんですが、東京の方でも変わったプリズミックが現れたって報道してたんです。もしかしてそれと関係してるのかも」

「何やて?それ今見れるか?」

 

 急いでテレビを付けてチャンネルをザッピングしていく。3つほど切り替えたところで、ある中継が映った。

 

『こちら横浜では現在、武装したプリズミックによる破壊活動が散発しております。ジャンパー協会の発表によりますと、『各個体の強さは恐るべきものではない。しかし、重火器を装備している点から様々な被害が発生すると思われる。付近の市民は慌てずに避難することを願う』とのことです。現在も各所から出動したジャンパーによって撃退が行われていますが、事が収束に向かっている様子は感じられません。今後、より深刻な事態に発展しないことを祈るばかりです。現場からは以上です』

 

 CMに移って明るいムードになる画面とは対照に、休憩所に漂う空気は重いものとなった。そんな中最初に口を開いたのはソニヤだ。

 

「これはマズイな。横浜とこれだけ離れたここでも同じもんが現れたっちゅうことは、全国的に広がる可能性も無きにしもあらずや」

「それって神龍事件みたいにですか?」

「流石にあの規模にはならんやろうけど、基本的に擬態したプリズミックが別の場所で確認されることは稀なんや。ウチが考えてるプリズミック像は、何にでも興味がある子供ってな感じなんよ」

 

 子供とは?と首を傾げる二人に補足説明をするはエルメス。

 

「何かに変身しても、別の面白そうな物を見つけたらそっちに擬態し直すから、どんどん姿が変わるのデス。飽きっぽいとも言えマス」

「そんな飽きっぽい連中が、遠くに来ても同じ姿を保ってる。そこから考えると、より広い範囲に広まる、もしくは既に広まってる可能性があるっちゅうことや。司令塔とか親玉がいる可能性が高いな」

「もしそうなら一大事じゃないですか、すぐに組織に連絡しないと」

 

 慌ててスマホを取り出すカケルを宥め、ソニヤも同じ様にスマホを取り出した。

 

「悪いけどそっちの組に連絡するのはちょっと待って貰うで」

「何でですか?こういうのは多少不確定でも速やかに情報共有したほうが良いと思うんですけど」

 

 尤もらしいカケルの意見へ返すのは目を瞑って首を振るソニヤ。

 

「実はな、あのプリズミック達が持ってた武器なんやけど、あれエルメスの装備やねん」

 

 一瞬なんの事を言われてるのかわからないカケル。当のエルメスへと首を向けると、苦虫を噛み潰したような表情で自身の装備を取り出して見せる。

 差し出されたそれは確かにニュースで見た物とよく似ている気がした。

 

「なんでエルメスさんがそんな物を持っているんですか?」

「ああ、君にはまだ言っとらんかったな。ウチら二人はアイアンバレットってジャンパー組織に所属してん。だからこれは正式なジャンパー装備なんやけど、それがどっかで流出してる可能性があんねん」

 

 ソニヤの話によると、アイアンバレットの装備は非ジャンパーでも扱うことが出来、おまけに重火器の姿をしていることから様々な犯罪に用いられる可能性があるとの事。だからこそ、本来なら携帯していない武器弾薬はアイアンバレット本部にて厳重に保管されている筈なのだとか。しかし、今回の事件では何らかの理由によりそれらの一部がプリズミックの手に渡ったのではと推察したのだ。

 

「コルトさんに限ってはうっかりミスでやらかしたり、攻め込まれて盗まれたなんて事は無いと断言できるから、それ以外の何かやろな」

「そのコルトさんというのは?」

「アイアンバレットの倉庫番してくれてる人や。しっかり者で物理精神共に鉄壁のガードで何者も寄せ付けん頼もしい人や」

 

 説明するソニヤの表情に尊敬を見出したカケルは、それだけ人望が厚い人なら信用できるのかなと思い疑うのを止めた。

 

「そんな訳で悪いけど、こっちの報告が終わるまではそっちが報告すんのは待って貰えるか?もしかしたら取引先とかが裏で悪いことでもしてるっちゅう可能性もあるんでな」

「了解です。下手に広めると相手に逃げられたりするかもしれませんしね」

 

 そういうことやと頷くソニヤはどこからか端末を取り出して連絡を入れる。やり取りを聞いているだけのカケルはその間にエルメスに質問をすることにした。

 

「ところでエルメスさんのその装備って変わってますね。何というか近未来的というか」

「これは特注なのデス。アイアンバレットの装備は基本的にソニヤさんが全て開発しているのデスが、その中でも性能がピーキー過ぎてワタシ以外には使えないシロモノなのデス」

 

 改めてそれを見せてくれたエルメス。砲身だけを形どった銃のような印象を受けたそれを、エルメスは何か操作をするとなんと宙に浮いたではないか。

 

「神経とリンクさせることで稼働するのデス。指を動かすことで本体を操り、色々な角度から攻撃することができるけどその分扱いが難しすぎるのが問題点デス」

 

 空中に漂うそれをエルメスは器用に操り、二人の周りを周回させたりアクロバット飛行のように動かす。

 

「カッケーッ!ファン○ルじゃん!それって俺達も練習すれば使えるようになったりしますか?」

 

 戦闘ロボアニメに出てくる物を現実に見てはしゃぐカケルだが、エルメスは申し訳無さそうに答える。

 

「多分無理デスね。これは練習とかじゃなくてセンスによるものが大きいと思いマス。具体的に言うと、指の関節の曲げ具合で操っているのデスが、人差し指の第一関節だけを曲げたまま薬指の第二関節を曲げてそこから小指を真下に向かって曲げたり割と複雑なのデス」

 

 言われながら自身の指を動かしてみるカケル。ぎこちないを通り越してロボットダンスの振り付けでもしているかのような歪さを醸し出す。

 

「な、なんとか出来ないことも無いような頑張れば俺も…………」

 

 夢の兵器に憧れを抱くカケルはどうにか自分にも使えないかと奮戦するものの、エルメスは死刑宣告を行う。

 

「それを足の指でもやるデス」

「…………ほえ?」

 

 意味が飲み込めずアホみたいな声を漏らしてしまった。エルメスは苦笑しつつ更に説明を続ける。

 

「これは手足の指一本づつがワンセットで動くのです。手はともかく、足の指の関節を意識して動かそうって考えたこともないデスよね?」

「……………………」

「おまけに一本づつがワンセットということは、指は10セットまでありマス。左手でも全く別の動きをしたりしますし、それを10個同時に操作するのは残念ながら努力でどうにか出来る範疇ではないのデス……もし出来たとしても10年とか練習に掛かるかもしれませんし、それだけ時間があれば別の兵装をソニヤさんが作るデス。あとタイマー的にも無理デス」

 

 口から魂が抜けてくカケルを尻目に、ソラは疑問をぶつける。

 

「操作が難しいのはよくわかりましたがタイマーってなんですか?」

「ソニヤさんが作る物は基本的に1年しか動かないのデス。毎度1年で壊れるから皆ソニヤタイマーって呼んでるデス。流石に市場に流すような物は長持ちデスが」

「つまりは遅くとも1年更新で新しい装備に切り替わるから、最初から感覚で操作できるくらいじゃないと実用性が無いって事ですね」

 

 そういうことデスと気の毒そうにカケルへ視線を向けるエルメス。ソラも男のロマンはわからないものの、意気消沈する幼馴染に憐憫(れんびん)の視線を送る。

 

「わかったで、それじゃこっちも動くから司令もよろしゅうな。話はついたで、ってあんたらなんかあったんか?」

 

 真面目に対応していたソニヤは場の空気の違いに気付いたが、乾いた笑い以外の答えを返す者はいなかった。

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