ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~ 作:羊merry羊
「皆さんお疲れ様、その顔を見るに試験は大成功って所かしら。シオンまで一緒に帰って来たのはちょっと意外だったけど。何か予定外の事でもあったのかしら?」
「ロージア、その辺については後で報告書に纏めて渡すから、目を通しておいてくれ。それ絡みで新人たちの気分転換を早くしてあげたくてな、今日は試験の事務手続きだけさっさと済ませて歓迎会に移りたいんだ。俺は人を集めてくるからそっちはそれ以外の事をやってもらいたい」
「あらあら、何か事情がありそうね。わかったわ、最低限のことだけ処理してそっちに移るわ」
「それじゃ俺はここで一旦お別れだ。改めて二人ともお疲れ様、そして合格おめでとう。ロージア、後は頼む」
そう告げるとシオンは
「二人とも合格おめでとう、私はロージアと申します。ジャンパーとしても戦えますが、最近は受付や事務作業がメインって感じよ。これからは同僚としてよろしくお願いしますね」
「「こちらこそよろしく願いします」」
「本当なら幾つかやって貰うことがあるんだけど、誰かさんにせっつかれてしまったから、今は登録確認の書類だけで後は追々済ませましょうか」
差し出された書類にサインをして返す。それを上からじっくりと確認するとにっこりと笑うロージア。
「はい、問題ないです。これでお二人は正式にスカイジャンパーズに登録されたことになります。これが証明ライセンスです。お疲れさまでした」
「よっしゃーっ!念願のジャンパーライセンスを手に入れたぞ!」
「殺してでも奪い取る!」
「なんでっ!?」
ケラケラとロビーに響き渡る笑い声。それにつられてか金髪の少年が近付いてきた。
「おいおいなんの騒ぎだ?オレ様のいない所で楽しいことしようってんならちょっと酷いんじゃねえか?」
「あらガンマ君、こちらたった今うちに所属する事になったカケル君とソラちゃんよ。仲良くしてね」
ロージアから紹介を受けたガンマという少年。モノクルのような片目しかないアイシールドに腰にこしらえた大きな銃が目に付く。
「新入りか、オレ様を目指して精々頑張んな。ま、ヒヨッコがいくら頑張ってもオレ様に追い付ける訳無いんだけどなハッハッハ」
「何偉そうなこと言ってるかね君は。ガンマだって先月に受かったばっかりの新入りじゃん」
「なっ!それは言わない約束ッスよルイカさん!」
はぁ、と重たい溜め息を吐くルイカ。
「大体ね?君が試験で戦ったのは暴れてると言っても擬態前の通常プリズミックだよ。それに比べてこの二人はついさっき、初めての戦闘でガーディアンを倒したんだよ。それも通常よりも強い特異体をね。君だったら倒せたのかな?そんな心構えじゃ追い付くどころか直ぐに追い抜かれるよ」
「そ、そんな……」
冷静な指摘を受け愕然とするガンマはよろけて数歩後退る。そうして俯き、体を震わせ始めた。
(ちょっと、泣いちゃったよ?どうするのこれ)
(俺に聞くなよ。ルイカさんが原因なんだから先輩がどうにかしてくださいよ)
(嫌だよ面倒くさい。形だけ繕ってる人って嫌いなんだよね、私)
本人そっちのけで交わされるひそひそ話。するとそれ等が聞こえたのか分からないが、突然ガバッと顔を上げ、そのまま指を付き出してきた。
「カケルって言ったな!お前をオレ様のライバルと認めてやる!置いて行かれないよう精々頑張るんだな!」
ふんっ!と鼻息荒く立ち去るガンマだったが、そこに待ったを掛ける者がいた。
「ストップ!ガンマ、これから二人の歓迎会開くんだけど、シオンが皆を集めるために動いてるんだ。バラバラになってまた探すのは面倒だし、このまま一緒に会場準備手伝ってね。先輩命令だよ」
(うわ~この先輩エゲツねー)
(格好つけて立ち去ろうとしたのに引き止めた上、一緒にいろとか拷問だよね)
(空気読めない人って怖いわー)
(ほら、顔真っ赤にしてぐぬぬ言ってるよ可哀そう)
「そこなにコソコソ喋ってんだ!俺様は忙しいんだからさっさとやっちまうぞ!」
そう言ってヤケクソ気味に先導していく姿は哀愁が漂っていた。
~一方その頃~
「シオン様、この飾りはこっちでいいんですか?」
「ああ、問題ない。料理の方も準備していてくれて助かった。ありがとう」
「キャーッ、シオン様に感謝されちゃったどうしよう溶けちゃいそう」
人を集めていたシオンだが、あの場に居なかったメンバーはガンマを除いて全員招集出来ていた。
また、当初買い出しや出前等でどうにかしようと考えていた宴会の料理についても既に完成しており、それならばと会場設営に従事することにしたのである。ガンマについては賑やかにしていればどちらかの場所に勝手に現れるだろうという目論見の元、気にしないことにした。いざとなったら携帯に連絡すればいい。
「ところでリズ、今回の歓迎会は突然繰り上げたから時間がなかったはずだが、何故こんなに準備がいいんだ?」
「それは勿論、お兄ちゃんが念願のジャンパーになれるって言うんだから祝ってあげたいなって思ったからです」
このリズという少女、何を隠そうカケルの妹なのである。赤い瞳に茶色がかった短い髪をバレッタで留め、肩から肘にかけて露出した肌とスカート下のスパッツが健康的で大変よろしい。リズはシオンに対し強い憧れを持っており、その思いと勢いで試験に合格した過去を持つ乙女である。とは言え、ジャンパーには年齢規定があるせいで、現在はジャンパー見習いとして籍を置いている形になる。
「先日のガンマの歓迎会ではここまで大仰な準備はしていなかったが、やはり家族ともなれば違う物か」
妹の微笑ましい家族愛に頬を緩めるシオンだったが、それに反してリズの表情は影を落とす。
「ちょっと違いますね……お兄ちゃんは小さいころからジャンパーに憧れていました。でもなんやかんやあって先にジャンパーになれたのは私。あまり私に見せないようにはしてましたけどお兄ちゃん、私を見る目がたまに羨ましそうだったり、悔しそうだったりしたんです。でもそれについて自覚もあるようで、自分の問題で妹にそういった感情が沸き上がることが恥ずかしいというか、情けないというか……とにかく心がちょっと不安定になったりしてたんです」
家族だからこその思い、家族だからこその距離。そういったものがないまぜになって溢れてくると、不純な思いで一足先にジャンパーになった自分自身の軽率さに嫌気が差す。
「だからこそ、今回ジャンパーに成れたことを心からお祝いしてあげたい。もう妹なんかに負い目を感じる必要なんてないんだよって教えてあげたい」
「そうか、リズはカケルが好きなんだな。俺は兄弟がいないからわからないが、仲がいいのは素晴らしいことだと思うぞ。それに相手の事を思いやれるのは優しい人の証拠だ」
「優しいかどうかは自分じゃわからないけど、シオンさんにそう言ってもらえて嬉しいです」
そういってはにかむリズの姿がとても眩しく見えたシオンであった。
「ロウセ~ン、ビールもう一本取って」
「まだ皆が集まっていないのに、これ以上のアルコールは不味いと思う。闇から忍び寄る
「うっさい、たかがビール二本で酔っぱらうわけないじゃない。いいから寄こしなさい」
結構いい雰囲気だったのに、それをぶち壊した元凶に殺意を込めてガンを飛ばすリズと呆れ果てるシオンだった。