ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~   作:羊merry羊

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8.宴もたけなわ

「皆楽しんでるところちょっと悪いが聞いてくれ」

 

 皆が見える位置に移動したシオンはおほんと咳払いを入れて話し始める。

 

「まずは改めてカケル、ソラ、試験合格おめでとう。そしてようこそスカイジャンパーズへ。今回の試験はちょっと不測の事態が発生してしまって、そのお詫びも込めて諸々の手続きをすっ飛ばしての歓迎会となった。その為、説明の行き届いてない事があった。明日からは普通の任務が始まってしまうから、今日のうちに言葉で説明出来ることはしておくべきだとソフィが言うので、この場を借りてさせてもらう。あの酔っ払いの代わりにな」

 

 全員の視線がある一点に集まるが、当の本人は軽く手を挙げてグラスを煽っている。

 皆ああはならないようにしようと心が一つになった瞬間である。

 

「とは言う物の、俺も幾らか飲んでしまっているので上手く伝えられなかったり、変な発言が混じるかもしれないがそこは知らん顔して流してほしい。疑問があったら話の途中でも割り込んでくれて構わないからな」

「具体的にはどんな話が始まるんですか?」

「組織についての話だ。自分たちがどんな場所にいるのか、どんな任務をするのか。それを心得た上で今後活動して貰いたい」

 

 酒が入っているとは思えない真剣な表情で語られると、自然と全員の背筋が伸びていた。

 

「まず俺達が所属しているのはスカイジャンパーズという組織だ。これは神龍事件のあとに親っさん、テンカイさんが『ジャンパーは個々でいるよりも集団でいた方がより大きな成果を挙げられる』と言う思想の元に発足した物だ」

「神龍事件の時には他のジャンパー組織は無かったんですか?」

 

 ソラからの質問に神妙な顔で頷くシオン。

 

「そうだ、当時は個人の繋がりこそあったものの、それを纏める機関が存在していなかった。だからこそ事件は大事になったし、それを防ぐ人員も不足していた。それを(うれ)いた親っさんは、事件解決後に協会に一人掛け合って組織制度案を提出。見事協会に必要性を認められたが、それにより他の力を持った集団も同じ様に自前の組織を発足していった流れとなる。まあ一部は違うがそれについては今は置いておこう」

「お父さんが制度を作ったの!?アレが!?」

 

 驚愕の事実に目を見開くソラ。他のテンカイを知る面子もそりゃ驚くわといった顔である。

 

「自分の親をあまり卑下(ひげ)するものじゃないぞ。身内からすれば色々と思うところもあるのかもしれないが、少なくとも外部に対しては立派な人だ。家族の前であまりいい姿を見せないのだとしたら、きっと甘えているのだろう。家族には飾らない、ありのままの自分を見せることが出来る、掛け替えの無い空間なのだろうさ」

 

 そんなもんなのかなあと頭を傾げるソラ。だがこれ以上この件に対して突っ込んでくることは無かった。

 

「親っさんの考えはこうだ。『俺の愛する家族と仲間たちを守りたい。だからこそその者たち、及びその周辺の環境を守るのが、平穏な日常に繋がる』。つまりただプリズミックと戦うのではなく、暮らす街の安全も守ろうと言うのが主張だ。今日も二人が試験前半でやってくれていた街の清掃活動もその一環。街の美化運動をしつつ、パトロールをして異常はないかと目を光らせる重要な仕事だから、今後とも皆よろしく頼む」

 

 憧れであった英雄が頭を下げて頼む姿に、最初はゴミ拾いと馬鹿にしていたカケルとソラも、理由を聞かされて甘い考えだった自分を反省する。そして明日から頑張ろうというやる気に満ちた瞳を向けた。

 

「良い顔になった。これなら安心して任せれるな。次に組織メンバーについてだ。俺達スカイジャンパーズは新入りを含めて現在12名となる。実際は事務作業や医療関係などもっといるんだが、所属しているジャンパーはこれで全部だ。この場に居ないのは親っさん以外にスズ、アンジュの二人がいる。どちらも任務で遠征しているが、その内帰ってくるはずだ」

「シオンさん、ジャンパーが12人っていうのは他の組織に比べて多いんですか?少ないんですか?」

「多い方だと思う。俺も他所(よそ)の全てのを把握してるわけじゃないから正確なことは言えないが、ゴードンコーポレーション何かは8人位だったと思う」

「うちって結構大所帯なんですね」

 

意外そうにカケルが話す。まさかそこまで大きな組織に所属したとは思わなかったのだろう。

 

「そうだな、そもそもの成り立ちが違うんだが、他の組織は殆どが母体となる別の集団がある。話に出たゴードンで言えば世界規模で運営してる会社の中にあるジャンパーズ課って扱いだ。それに引き換えうちは、ジャンパーを援助する集団だから特化していると言えるな」

「へぇプロフェッショナルって訳か。格好良いよな、ガンマ」

「あ、ああ。そうだな」

 

 ただ同意を得ただけなのに、何故か動揺を見せるガンマ。

 

「どうした?何か気になる事でもあったらカケル達以外も質問してくれて構わないぞ」

「いや、いいッス。気にせず続けてください」

「そうか、なら続けよう。とは思ったんだが、他に説明することはもう無かったな。質問がなければ宴会を続けたいと思うが何かあるか?」

 

 見渡したが、特に反応を見せる者は居なかった。

 

「よし、では引き続き楽しんで……」

「ちょっと良いかしら。何も無いなら私から一つ忠告を」

 

 誰の発言か、皆が首を向けるとそこにはスタスタ歩いてくるソフィの姿があった。

 

「お前酔っ払って立てない言ってただろう」

「あれっぽっちの酒で潰れるわけないでしょ」

「テメエ面倒くさくて俺に押し付けやがったな」

 

 呆れと怒りでキャラが変わってるシオン。こちらは少し酒が回っていたのだろう、先程までの落ち着いた話し方とは別物になって、若干ガラが悪い。そんな珍しい姿を写真に納めてる約一名がいる事には触れないでおく。

 

「まあまあ、楽しい席で怒らないの。場の空気悪くなるわよ?」

「誰のせいだと思ってるんだまったく……」

「話を戻すわね。今後任務を受けてもらうわけだけど、その時に一つ心得ておいて欲しいことがあるの

 」

 

 あーあれかと呟く声が聞こえたので、皆は既に教えられているのだろう。

 

「率直に言うわね。ジャンパーとしての活動をしている最中に発生した人命、及び公共物の破損についてなんだけど、プリズミックによる被害であれば賠償金はジャンパー協会から支払われるわ。でも、」

「「でも?」」

「ジャンパーの攻撃や不注意による被害の場合、所属する組織に請求が来るの。だからなるべくは街を破壊したりしないようにしてね。ある程度ならこちらで負担するけど、あまりに頻度や額が多いと自分達で支払って貰うことになるわよ」

「「ひぃっ!」」

「ソフィが言ってることは半分以上が脅しだが、被害を抑えれるようなら小さくすることにも尽力してくれ。人命は掛け替えの無いものだし、破壊された施設だって修復費用を払ったところで一朝一夕では直すことは出来ない。その間、不自由を強いられる人達がいる。人々の生活を守るという事はそういう事だ」

「ってわけで、綺麗に纏まった所で酒飲みなおすわよー」

「オンオフが激しすぎるだろっ!ったく、それじゃ皆、あとは気楽にやってくれ」

 

 シオンに促されて宴会は再開される。

 この日、夜更け過ぎまで部屋の灯りが消えることは無かった。




公式二コマの消火栓の請求書を見るシオンネタを取り入れてみましたがいかがだったでしょうか?
覚えてない人、見たことない方は今一度公式サイトに行って懐かしんでみては?
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