ホップステップジャンパーズ~空へと翔る道~ 作:羊merry羊
今日からカケルとソラの初任務である。午前中は昨日省略した事務手続きに時間が掛かってしまい精神的にもグッタリな二人だが、今は昼食も食べてモチベーションも回復したようだ。
「確か午後からは先輩と一緒に行動するんだったよな?」
「そうだね。私たちの教育係ってことで、最初のうちは三人でチーム組むんだって。早く一人前になりたいな」
食堂から今後の活動予定を確認しながら歩いていると、その先にルイカが立っているのが見えた。予定の集合時間にはまだ早かったが、何かあったのかと思い駆け足で近寄る。
「先輩早いっすね、何かありましたか?」
「あっ二人とも。もうご飯は食べた?」
「はい、今しがた食堂で済ませてきたところです」
「なら良かった。本当は急ぎってわけじゃなかったんだけど、念のためにって事でなるべく早く調査に行ってほしいって言われてね」
ハイと差し出された一枚の紙。そこには『近頃発生している連続
「私は知らなかったけど、最近街でちょいちょいボヤが起きてるらしいんだよ」
「言われてみればサイレンを聞く頻度が多かった気はするね?」
「でも大規模火災じゃないし、ボヤなら騒ぐほどでもないんじゃないっすか?」
若者の意見を聞いて頷くルイカだったが、眉をひそめている。
「私もそう思うんだけどね、ロージアさんはそうは考えてないみたいで、というか警戒してるって言い方が正しいかな」
「というと?」
「事件の裏にプリズミックが関係しているのを懸念してるみたい。もしも本当にプリズミックが関わっていたら、今後大規模火災が発生する可能性は高いかもってね。だからその辺りを含めての調査任務って事らしいよ」
「単純なプリズミック被害よりも火事のほうが
「分かりました。調査は直ぐ行くんですか?」
「うん、私の方は準備済ませてあるから、そっちが良ければこのまま行こうと思うんだけど」
「ボク達は問題ありません」
「よし、それじゃ出発しよう」
ロビーを抜けて街へ向かう背中に『頑張ってくださいね』とロージアから応援が掛かり、三人は手を振り返えしながら見送られて行くのだった。
「さて、イッチョ調査開始するよ」
「調査って具体的には何をすればいいんですか?」
「普通ならボヤが起きた現場に行って燃焼規模とか出火原因を特定するんだろうけど、私たちは専門家じゃないからその手の事は分からない。それにその程度の事はもう終わってるだろうから、もしプリズミックに関係してそうと判断されていれば、正式に依頼が来ていると思うんだよ」
「考えてみればそうですよね。となると普通とは違うアプローチを掛けるって言う事ですか?」
「そういうこと。それで今回はこれを借りてきたんだ」
ルイカが取り出したのは時計のような見た目の機械だった。
「これはプリズミックスカウター。プリズミックの強さを大まかに測れる機械なんだ。とは言っても正確には強さではなくて反応の大きさを測るもので、近くに行けば針は大きく振れるし、反応が大きい小さいから戦闘能力とイコールではなかったりもするから目安でしかないんだよね」
「もしかして、試験の時に予想とは違ったって言ってたのはこれが原因ですか?」
「鋭いねソラちゃん。あれは前もって反応が弱そうな個体をこれで探しておいて、活性化しそうな日に
それにしてもあれはちょっと特殊な例だったけどね、と付け加えながらスカウターを見つめるルイカ。その目は細く引かれ、眉間にしわが寄っている。
「どうしたんスか先輩。難しい顔してますけど」
「うーん、普段より針が安定してなんだよ。それに0から1を行ったり来たりするような振れ方じゃなくて、5から6を行ったり来たりみたいに通常より高い位置を中心にして動いてる……」
「つまり?」
「こりゃロージアさんの予感的中しちゃったかなぁ。これは私のカンだけど、今日にでも活性化して一波乱ありそうな気がする」
「昨日の今日でまたですか」
「どうなるかは分からないけど、とりあえずパトロールしようか。私はこれ見るのに集中するから、カケル君は周囲の警戒専門、ソラちゃんは軽く警戒しながら前見ない私を誘導してね」
「「了解です」」
一行はそのまま街を歩き、たまに反応が変わった地点を観察しながら時間が経過していった。
そして一時間が経過したころ……
「二人ともストップ!大きい反応が出たっ」
突然声を荒げたルイカに驚きながら、二人は周囲を見渡す。すると数百メートル先の建物から白い煙が上がっているのが見えた。
「先輩!前方のビルから煙が出てます」
「このタイミングでってことはやっぱりこれは……」
「そうだね、多分プリズミックによるもので間違いない。あ~あ、今回は見回りだけの楽な任務だと思ったのになぁ。面倒だけど二人とも行くよ!」
急いで現場付近に駆け付けると、先ほど見えた煙はより勢いを増し、黒煙を吐くようになっていた。しかし周囲の人々はあれだこれだと言いながらもスマホで動画や写真を撮影しており、緊張感は薄く見える。
「ちょっとこれはヤバいかもね」
「何がですか?」
「今、ここにいる一般人には危機感が無い。この状況でもしプリズミックが現れたら、状況の変化に着いて行けずにパニックが起こるかも。おまけに火事ってことはプリズミックが何かしなくても被害が広がる可能性があるから、色々被ったらどうなるのか想像したくないわ……」
うわぁ~……とその様子を想像してしまった二人は顔を歪ませる。と、その時
ガシャアァァァァンッ!
「カケルあそこ!」
ビルの窓が割れ、何者かが飛び出してきたのをソラが指さす。そこに居たのは赤い肌に蝙蝠のような翼、角を生やした異形の怪物。見た者に恐怖を与える悪魔が降臨した。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」
耳障りな甲高い叫び声に身が
あ……という声を誰かが発した。
カケルとソラは目の前で人が死ぬ瞬間という物を初めて見ることになる。守るべき存在だった人を力が及ばず守り切れなかったのなら、悔しいだろうが健闘したとは言えるかもしれない。少なくとも戦うことで時間を稼ぎ、何人かが逃げることは出来たかもしれない。
だが、敵の威嚇に怖気づき、棒立ちのまま何もしなかったのではなんの為にここに来たのか、ジャンパーになったのか分からない。
カケルの眼には涙が浮かんだ。
何かを思ったのではなく、ただ自然と溢れていた。
走馬灯のようにゆっくりと流れていく世界で、とうとう人々に炎が到達する、
直前、
「させない!ウォーターキャノン!」
ジュバァアアアアアアアアアアアアアアッ!
間一髪、炎と
「皆早く逃げて!二人ともいつまでも呆けてない!アイツを倒すよ!」
「「は、はいっ!」」
ここにきて体感時間が現実に追いつき、体が動くようになったカケル達も戦線に加わるのだった。